ライダーを守る三種の神器(その3) : ヘルメット(02.06.16)


事故の目撃談をもうひとつ。友人がバイクと車の事故の発生直後の現場に居合わせたが、その惨状から多分ライダーもダメだろうと想像した。まわりにちらばったバイクと車の破片に混じって、ヘルメットがすぐ足下に転がっていたので、それを拾い上げようとしたら、ズッシリ重かった....というのは、実は作り話で、昔バイク雑誌にあった4コママンガのブラックユーモア。その「ズッシリ重かった」というコマの少年の表情がおかしくて、よく覚えています。

ヘルメットは、車のシートベルトやエアバッグ以上に、ライダーを事故の際に守ってくれるものですが、所詮生身をさらしているライダーにとっては、一旦事故ったら、ヘルメットの「中身」が無傷でも、他が致命傷になることだってあるでしょう。

レースを観ていると、あんなスピードで転倒して、よくライダーが無事だなあと感心します。革のツナギやプロテクターのせいもあるでしょうが、一般道の転倒と違うのは、対向車との事故ではないので、言わば自損事故のようなものですね。

現に、私の友人でも、バイクでツーリング中に居眠り運転してしまい、気づいたら、星空を見上げていた、なんてことがあります。これはほんとの話。これなど、ヘルメットが命の恩人であるケースでしょう。

ここで三種の神器を取り上げたのは、事故の際にライダーを守ってくれる、というパッシブな安全よりも、事故らないようにライダーを助けてくれる、アクティブな危険回避の要素を認めたいという気持ちからでした。ヘルメットは、そのかぶり心地の良さでライディングを楽しくすることもあれば、フィットしないサイズのものは、かえって事故を招いてしまうこともあるでしょう。

私が初めてかぶったヘルメットはフルフェースタイプで、その印象は、意外と軽いものだな、というものでした。それは、内装の感触と重心の位置が関係していると思いますが、なによりも、そのホールド感がぴったりしていたものです。それと、高速で走行しても、あまり風切り音がしないことと、風圧を感じないことも、ライダーになって初めて気づいたものです。その意味では、ヘルメットは転倒した場合の防御というよりも、運転を快適にするツールとして見たほうがいいのではないかと思います。

シールド越しに見える世界は、ちょうどカメラのファインダーを通して見る世界が肉眼のそれと違っているように、いくらか違って見えます。顔を覆うという意味では、これは仮面のようなもので、ヘルメットをかぶると別人のように変身するライダーも、中にはいるかも知れませんね。私も、酒が入っても、いったんヘルメットをかぶるとシャキッとして、酔いが飛んで、運転もしっかりと....というのは冗談 (^^; で、酒酔い運転はいけません。今年から罰則も厳しくなりました。

ヘルメットの悩みは、何と言っても、ヘアスタイルを乱すことでしょう。女性ライダーの長い髪がヘルメットからなびいているのは、かっこよくて羨ましいかぎりです。でも多くのショートヘアのセットには、ヘルメットは敵でしょう。現に私も髪が細いので、すぐにペタリと寝てしまいます。ツーリングのときはまだしも、通勤にバイクを使う場合には困りもの。そこで私は水性のハードジェルで固めるようにしていますが、こればかりは他にいい知恵がありません。

ヘルメットは、その安全性の尺度が衝撃吸収度で規格化されていました。それはレースで培われた技術のフィードバックでもあったでしょう。私も、少々値が高くても、JISのCやスネル規格のものを買っていました。でも、転倒することを前提に設計されているレース用ヘルメットと、日常の足やツーリングが主な目的のライダー用ヘルメットは、その設計コンセプトが違ってしかるべきだと、今では思います。たとえば、ヘルメットは、かぶっている時のためばかりではなく、それを脱いだときに髪がどうなっているかも関心事のはずですし、汗や整髪剤で汚れた内装を簡単に洗えるようにするのもひとつでしょう。それも結局は、安全と無関係ではないと思うのです。



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