が <終助>[意]強く言い切ったり、主張したりする時の語尾に付いて言葉を強める。[例]そげんこつぅ、いうきい、好かれんのじゃが(そんなことを言うから好かれないんだぞ)
※竹田・水瀬さん
かいい <形>[意]痒い。
〔用〕かゆうなる [意]痒く。[例]かにくわれち、そこらそんげ、かゆうなった(蚊に刺されて、そこらじゅうが痒くなった)。
〔仮〕かいから [意]痒ければ。[例]かいから、きんかん、ぬっちょきよ(痒ければ金柑を塗っておきなさい)。
【邦訳日葡辞書】「カイイ」痒みを感じる、あるいは、むずがゆい。
〜がいいで <句>[意]ひとの話の言葉尻をとらえて馬鹿にするようになぞって語尾につける。「〜がいいやん」「〜たゆう」に同じ。[例]にっぽんいちがいいで(日本一だってよ)。
〜がいいやん <句>[意]相手をおちょくる際の接尾常用句。関東では「〜だってよ」となる「笑っちゃうよな、まったく」といった意味合いがこもる。笑い話に軽く同意を求める場合にも使う。「ちょっと聞いた、あんた?」に似る。女性は「〜がいいこと」としとやかな語感になる。[例]@あんたやぁ、飲みすげちひっくりけえっちしもうち、ず〜っとねちょったにぃ、わしゃみな覚えちょる、がいいやん(あいつときたら、飲みすぎてひっくり返ってしまっていたのに、私は全部覚えている、だってさ)。A大臣が言うことじゃろかなえ、なんかいいアイデアがあったら教えて下さいよ、がいいやん(大臣が言うことなのかね、何か良いアイデアがあったら教えて下さいよ、だってさ)。<類>「〜たゆう」
※江戸川、松崎菊也さん
がいてい <名>[意]画鋲。画釘と表記するのではないか。
がいと <副>[意]たくさん。
がいどめ <名>[意]どんどやき。
【解説】清川村大字六種字宮津留では正月6日、14日の夜、祖母六社大権現健男霜凝日子神社の前で行われている。神社裏山から切り出した孟宗竹を神社境内に立て、各戸から供出してもらった薪を竹の回りに立てかけて燃やし、古い御札などを焼くほか、餅を焼いて食べる。この餅を食べると風邪をひかないとされた。
かつては薪集めなど一切を地区の子供が担い、夜も子供たちだけで火の管理などを行った。地区の古老によると、昔は「がいのめ」だった。点火後、参加した子供たち一同が火に背中を向けて「がいのめ」「がいのめ」と大声で叫んだという。それがいつのまにか「がいどめ」と変わった。「がいのめ」の語源は不明だが、燃え盛る炎に、この年に起こるであろう天災や凶作などの厄災を飲み込んでくれと祈ったものかも知れない。
『あさじ昔ばなし』によると、朝地では「月ぬすみ」「やっこめぬすみ」と呼んだ。旧暦九月十三日を「みいげ日(にち)」といい、月を祀る行事をした。家ごとに、焼き米を作り、十三夜の月が上がるころに枝豆や里芋などと一緒に供え、それを子供たちが盗んで回った。
かいむる <動・中三>[意]荷物などを頭に乗せて歩いて運ぶこと。命令形は「かいみい」で、大分独特の変形下二段活用の中三段活用である。
〔未〕かいめん
〔未〕かいみゅう
〔命〕かいみい
※清川・康晴さん
かいる <動・五>[意]帰る。高年齢層は「いぬる」を使う。
〔未〕かいらん [意]帰らない。高齢者は「いなん」。[例]まだ、かいらんの(まだ帰んないの)。
〔未〕かいろう [意]帰ろう。高年齢層は「いのう」を使う。[例]なあ、もう、かいろうえ(ねえ、もう、帰ろうよ)。
〔仮〕かいら [意]帰れば [例]いま、かいら、まにあうで(今帰れば間に合うよ)。
〔命〕かいれ [意]帰れ。高年齢層は「いね」を使う。[例]はよ、かいれや(早く帰れよ)。
かいわるる <動・中三>[意]孵化する。命令形は「かいわりい」となるので、大分独特の下二段活用の変形「中三段活用」である。
〔未〕かいわれん [意]孵化しない。
〔未〕かいわりゅう [意]孵化しよう。[例]あしたにゃ、かいわりゅう(明日には孵化するだろう)。
〔仮〕かいわるら [意]孵化すれば。
〔命〕かいわりい [意]孵化しろ。
【解説】辞書には「かいわり」という言葉があり、「卵割り」「貝割り」「穎割り」の字を当て、「卵や貝の殻が二つに割れて開いた様」との語釈が載る。「かいわるる」は、これが動詞化したものと思われる。群馬県に伝わる古文書「甘楽郡楢原村ほかの御巣鷹山巣下ろし仕法報告書」は、徳川将軍の鷹狩りに使う鷹の幼鳥の捕獲方法を記しており、「御巣鷹巣於ろしの事 かい王り申し候而十八九廿日程ニ而於ろし可申事」(御巣鷹の巣おろしについて 孵化してから十八、九日、二十日ほどして下ろすべきである)との記述がある。
かう <動・五>買う[意]お金で商品、サービスなどを買う。標準語とは活用形が一部異なる。「飼う」との違いはアクセントで、「買う」は平板に発音し、「飼う」は語頭にアクセントがある。
〔未〕かわん [意]買わない。
〔用〕こうた [意]買った。
〔仮〕かわ、かや [意]買えば。
かう <動・五>飼う[意]家畜やペットなどを飼育する。標準語とは活用形が一部異なる。
〔未〕かわん [意]飼わない。
〔用〕こうた [意]飼った。
〔仮〕かわ、かや [意]飼えば。
かえしじも <名>返し霜 [意]霜がたくさん降りた日の翌日にふる大雨。
※清川・千枝さん
かえりぎり <連語>[意]帰って再び戻ってくるのではなく、帰ったままになること。[例]帰りぎりに帰った(帰って、そのまま出てこない)。
※清川・千枝さん
かかじる <動・五>掻かじる[意]引っかく。[例]ねくぅ、がまりよったら、かかじられた(猫をからかっていたら、引っかかれた)。
かかもらう <動・五>[意]嫁をもらう。妻帯する。娶る。[例]いつになら、かかもらうんな(いつになれば嫁さんを貰うの)。
〔未〕かかもらわん [意]嫁をもらわない。
〔用〕かかもろうた [意]嫁をもらった。
〔仮〕かかもらわ [意]嫁をもらえば。
※清川・久洋さん
かかり <名>[意]もっとも手前。[例]あんしん、いやぁ、道かり入ったかかりんいえじゃ(あの人の家は、道から入ったところにある最初の家だよ)。
ががり <名>[意]釣り針の先の返し。[例]こん、つりばりにゃあががりがねえ(この釣り針には返しがない)。
※清川・康晴さん
かかりご <名>[意]跡継ぎ。
※『岡藩のひらくち』
かかりちゃ <名>[意]仕事を始める前に飲むお茶。[例]なり、かかり茶をもろうち、しごつぅすっか(では、仕事前のお茶をいただいて、仕事にかかろうか)。
※緒方・みっこさ
かきあわん <句>[意]間に合わない。[例]しもうたのお、もう、汽車にゃかきあわんごとなった(しまった、もう、汽車には間に合わなくなってしまった)。
※『岡藩のひらくち』
かく <動・五>[意]書く。描く。掻く。標準語とは活用が一部異なる。
〔未〕かかん [意]かかない。
〔用〕けえた [意]かいた。
〔仮〕かか [意]かけば。
かくる <動・中三>[意]掛ける。架ける。懸ける。標準語だと下一段活用だが大分では下二段活用となる。ただし命令形が「かきい」となることから正確には中三段活用と呼ぶべきである。
〔未〕かけん [意]かけない。
〔未〕かきゅう [意]かけよう。
〔仮〕かくら [意]かければ。
〔命〕かきい [意]かけろ。
かくる <動・中三>[意]欠ける。「掛くる」「架ける」「懸ける」が「け」にアクセントがあるのに対して「欠くる」は平板に発音する。
〔未〕かけん [意]欠けない。
〔未〕かきゅう [意]欠けよう。
〔仮〕かくら [意]欠ければ。
〔命〕かきい [意]欠けろ。
かけばり <名>[意]犬が片脚を挙げて小便をすること。古語では尿を「ばり」「いばり」といった。
<参>蚤虱 馬の尿(ばり)する 枕もと(奥の細道)
かさ <名>[意]山手、上手、上流。[例]もうちょっと、かさんほうまじさがしちみよ(もう少し、上手の方まで探してみろ。)<反>しも
がさご <名>がさ子[意]そわそわして落ち着きのない子供。[例]ちったぁ、じっとしちょれ、こんがさごが(少しはじっとしていろ、この落ち着きのないやつが)。
かさぜ <名>[意]川の上流方向。土地の高い方。「上手」からの転か。<反>しもぜ
※清川・久洋さん
かさぬる <動・中三>[意]重ねる。命令形は「かさにい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。
〔未〕かさねん [意]重ねない。
〔未〕かさにゅう [意]かさねよう。
〔仮〕かさぬら [意]重ねれば。
〔命〕かさにい [意]かさねろ。
かさっぱち <名>[意]頭皮にできるかぶれ。痒い。多くは乾燥している。「かざっぱち」とも。
※緒方・入道さん
かじくるる <動・中三>[古]悴(かじ)ける[意]縮こまる、成長が遅い、寒さで凍えて手足が自由に動かなくなる。命令形は「かじくりい」となるので、大分独特の下二段活用の変形「中三段活用」である。<類>「かじけ」
〔未〕かじくれん [意]縮こまらない。
〔未〕かじくりゅう [意]縮こまるだろう。
〔仮〕かじくるら [意]縮こまれば。
【邦訳日葡辞書】「カジクル」悪化する、弱る、痩せこけてやつれる、また比喩として、貧乏で家を持たない人のことをいう。
かじけ <名>[意]縮こまった状態。寒がり。[例]早よう炬燵かり出ち仕事に行かんか、こんかじけ坊が(早く炬燵から出て仕事に行きなさい。この寒がりめ)。
【邦訳日葡辞書】「カジケビト」貧乏で困窮している人。「カシケ」痩せる、やつれる、または、実を結ばない。
かしこ <名>仮しこ? 貸しこ?[意]本気ではない。メンコやビー玉で勝っても相手のメンコやビー玉を取り上げない。「じゃらこ」とも。[例]ぱっちんしてん良いけんど、かしこで(メンコをしても良いけど、真剣勝負じゃなくね)。〈反〉ほんこ
かじむる <動・中三>[意]整理する、しまいこむ、片付ける。命令形は「かじみい」となるので、大分独特の下二段活用の変形「中三段活用」である。[例]よい、はよ、かじみぃや(おい、はやく、片付けなさい)。
〔未〕かじめん [意]片付けない。[例]よい、もうかじめんか(おい、もう、片付けないか)
〔未〕かじみゅう [意]片付けよう。[例]うん、かじみゅう(うん、片付けよう)。
〔仮〕かじむら [意]片付ければ。
〔命〕かじみい [意]片付けろ。[例]なり、かじみい(それなら、片付けろ)。
かす <動・五>浸す、淅す[意]米など水にひたしておくこと。米を研いだ後、しばらく(20分ほど)水に漬けておいてから炊くと美味しく炊ける。辞書に載る言葉だが、標準語で聞くことはほとんどない。
〔未〕かさん [意]浸しておかない。
〔仮〕かさ [意]浸しておけば。
※清川出身・和弘さん
かぞゆる <動・中三>[意]数える。標準語では下一段活用だが大分では下二段活用となるが、命令形が「かぞいい」となるため、正確には中三段活用と呼ぶべきである。
〔未〕かぞえん [意]数えない。
〔未〕かぞゆう [意]数えよう。
〔仮〕かぞゆら [意]数えれば。
〔命〕かぞいい、かぞえよ [意]数えろ。
かた <名>方[意]家。単に「住宅」を指すだけでなく、「家庭」を意味することも多い。「がた」と濁って使われることもある。[例]あんたかた(あなたの家)、あんたがた(あなたの家)、うんどうかた(私の家)、うんどうがた(私の家)、うちかた(私の家、場合によっては自分の亭主を指す)、うちがた(私の家)、おれかた(俺の家)、おれがた(俺の家)。おれかた、そげんこたぁせん(おれの家では、そんなことはしない)。
がた <名>方[意]「かた」に同じ。熊本の童謡「肥後手まり唄」に「あんたがたどこさ」がある。これは「あなたの家はどこですか」の意である。
かたかた <名>片々[意]別物同士の鍋と蓋を一緒にすること。後家合わせ。履物の左右が別々の場合にも使う。
※『緒方町誌』
かたぐ <動・五>[古]担(かた)ぐ[意]担ぐ。
〔未〕かたがん [意]担がない。
〔仮〕かたが [意]担げば。
〔用〕かてえだ [意]担いだ。
〔命〕かたぎい、かたげよ [意]担げ。
かたぐる <動・中三>[意]担(かた)げる。「かたぐ」と同義だが、「かたぐ」の方が古い形と思われる。連体形の「かたぐる」が終止形と同じ形になったのではなかろうか。命令形は「かたぎい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。
〔未〕かたげん [意]担がない。
〔未〕かたぎゅう [意]担ごう。
〔仮〕かたぐら [意]担げば。
〔命〕かたぎい [意]担げ。
かたぐる <動・中三>[意]傾げる。傾ける。「かたむくる」に同じ。
〔未〕かたげん [意]傾けない。
〔未〕かたぎゅう [意]傾けよう。
〔仮〕かたぐら [意]傾ければ。
〔名〕かたぎい [意]傾けろ。
かたし <名>[意]ツバキ科の常緑低木ないし高木、椿。
かたじぃ <接尾>[意]〜ながら、〜する一方で。二つの動作が平行して行われる際に使われる。[例]やぁやぁ怒るかたじぃ、たぁおこしよったで(やかましく怒りながら、田起こしをしていたよ)。
※『緒方町誌』
かたひる <名>[意]半日。
かたむくり <名>[意]傾き。偏り。偏った状態。[例]あんた、めしんとき、かたむくりじ、くうなあ(あなた、ご飯の時に片づけ食いをするねえ)。
※竹田出身・水瀬さん
かたむくる <動・中三>[意]傾ける。斜めにする。大分独特の変形下二段活用の中三段活用である。[例]ちっとぉ、かたむくるんじゃ(少し傾けるんだ)。
〔未〕かたむけん [意]傾けない。
〔未〕かたむきゅう [意]傾けよう。[例]もちっとぉ、かたむきゅうや(もう少し傾けようよ)。
〔仮〕かたむくら [意]傾ければ。[例]でらんなり、かたむくらいい(出なければ傾ければいい)。
〔名〕かたむきい [意]傾けろ。[意]まっと、かたむきい(もっと傾けろ)。
かだら <名>[意]体のこと。単なるいい間違いにしては使う人が多い。
かたる <動・五>糅(か)たる[意]加わる、仲間に入る。[例]わがも、かたるか(お前も加わるか)。うん、かたる(うん、仲間に入る)。
〔未〕かたらん [意]加わらない。[例]おまや、かたらんのか(お前は加わらないのか)。
〔未〕かたろう [意]加わろう。[例]なあ、かたろうえ(ねえ、加わろうよ)。
〔仮〕かたら [意]加われば。[例]かたら、いいに(加わればいいのに)。
〔命〕かたれ [意]加われ。[例]なんでんいいき、かたれ(何でもいいから加われ)。
かちくらわする <動・五>[意]ぶん殴る。命令形は「かちくらわしい」となるので、大分独特の下二段活用の変形「中三段活用」である。[例]いうこつう、きかんごたら、かちくらわするち、いえ(言うことを聞かないようなら、ぶん殴ると言え)。
〔未〕かちくらわさん [意]ぶんなぐらない。
〔未〕かちくらわしゅう [意]ぶんなぐろう
〔仮〕かちくらわすら [意]ぶんなぐれば。
〔命〕かちくわらしい [意]ぶんなぐれ。
かっこ <名>[意]夏に使用する虫除け。ひも状に編んだ木綿を藁で包み火をつけて腰に下げた。
※緒方・入道さん
かっする <動・中三>[意]加勢する。手伝う。命令形は「かっしい」となるので、大分独特の下二段活用の変形「中三段活用」である。[例]いねかりゅう、するんなり、かっするで(稲刈りをするのなら、加勢するよ)。
〔未〕かっせん [意]加勢しない。[例]ちょっと、かっせんか(少し、加勢しないか)
〔未〕かっしゅう [意]加勢しよう。[例]ひまじゃき、かっしゅうかのう(暇だから、加勢しようかねえ)。
〔用〕かっせた [意]手伝った。加勢した。
〔仮〕かっすら [意]手伝えば。[例]かっすら、よろこぶで(加勢すれば喜ぶよ)。
〔命〕かっしい [意]加勢しろ。[例]よこうちょらんじ、かっしい(休んでいないで、加勢しろ)。
がっぽんへ <名>[意]ドクダミ科の多年草、どくだみ。
かつる <動・中三>糅(か)てる[意]加える、仲間に入れる。命令形は「かちい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。[例]そんこぉ、かてちゃって(その子を仲間に入れてやって)。
〔未〕かてん [意]加えない。仲間に入れない。
〔未〕かちゅう [意]加えよう。仲間に入れよう。
〔仮〕かつら [意]加えれば。仲間に入れれば。
〔命〕かちい [意]加えろ。仲間に入れろ。
<参>標準語には「かてて加えて」という表現がある。
かどうちまわり <名>[意]婚礼の日に花嫁が嫁ぎ先の近所の家々に挨拶回りにいくこと。
※緒方・みっこさ
かな <名>[意]鉋(かんな)。
【邦訳日葡辞書】「カナ」鉋。
かな <名>[意]太さ。体格。[例]かなごんめえ(痩せている)。かなふちい(太っている)。
※清川・邦友さん
かな <数>[意]稲の苗の太さをいう。[例]かなごんもする(一か所に植える稲の苗の本数を少なめにする)。かなふつぅする(一か所に植える稲の苗の本数を多目にする)。
※清川・千枝さん
かなう <動・五>[意]手足や口が、寒さや障害による制約を受けることなく自由に動くこと。[例]ひばちじあぶったら、指がかなうごとなった(火鉢で温めたら、指が自由に動くようになった)。
〔未〕かなわん [意]自由に動かない。[例]あんまれさみいもんじゃき、ゆびが、かなわんごとなった(あんまり寒いものだから、指がかじかんでしまった)。のみすげち、くちがかなわんごとなった(飲みすぎて、ろれつが回らなくなった)。
〔用〕かのうた [意]自由に動いた。
〔仮〕かなわ [意]自由がきけば。
〜がな <名>[意]@分量。[例]こみゅう千円がな、こうち来て(米を千円分買ってきて)。A〜するだけの価値。[例]わだわだ行くがな、あんのか(わざわざ行くだけの価値があるのかなあ)、がなあるで(それだけの価値はあるよ)。
かなつき <名>[意]魚を突く道具。川に潜って使う。竹の柄の先端に戻りの付いたフォーク状の銛が付き、柄の尻には生ゴムの輪が付いている。魚を獲る際には、ゴムの輪に手にかけて柄の先端まで伸ばし、その反動を推進力とする。
がに <名>[古]蟹[意]甲殻綱十脚目のうち尾の短い一群の節足動物の総称、蟹。古くは「がに」と濁った。その名残りが「がにまた」。
かにくわるる <句>[意]蚊に刺される。大分では蚊は「刺す」のではなく「食う」もの。蜂は「刺す」。尻の針を使う虫には「刺す」を使い、頭部にある嘴を使う虫には「食う」を使うのであり、極めて論理的である。
【解説】江戸落語の八代目桂文楽や三代目古今亭志ん朝の「愛宕山」で使われる江戸時代の俗謡「コチャエ節」(はねだ節)には「お前待ち待ち、蚊帳の外、蚊に食われ、七つの鐘の鳴るまでは」とある。古くは「食われる」を使ったものが、いつのころからか「刺される」が多用されるようになったのかも知れない。
かばしい <形>[意]香ばしい。
〔用〕かばしゅう [意]香ばしく。[例]もっと、かばしゅうなる(もっと香ばしくなる)。
※清川・千枝さん
かぶぎり <副>[意]最初から。元から。全部。[例]あんしゃ、かぶぎり、かおをださんで(あの人は初めから顔を出さないよ)。
※清川・邦友さん
かぶする <動・中三>[意]かぶせる。命令形は「かぶしい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。
〔未〕かぶせん [意]かぶせない。
〔未〕かぶしゅう [意]かぶせよう。
〔仮〕かぶすら [意]かぶせれば。
〔命〕かぶしい {意}かぶせろ。
かぶる <動・五>[古]被る。[意]失敗する。し損なう。標準語の「買い被る」は「良いと思って買ったら失敗だった」、つまり「過大評価する」の意。大分では「かぶる」単独で使うことはない。[例]しかぶる(お漏らしをする。失禁する)、まりかぶる(大便を漏らす)、請(う)けかぶる(請け負った仕事をしくじる)、眠りかぶる(寝てはいけないのに、ついうたた寝をしてしまう)。
〔未〕かぶらん [意]し損なわない。
〔仮〕かぶら [意]し損なえば。
<参>「はいかけし 地蔵の顔も 三度笠 またかぶりたる 首尾の悪さよ」(お地蔵様に夜這いをしかけて、地蔵の顔も三度の諺通り、此方は旅の三度笠をかぶって、またとんでもないしくじりをしてしまい、何とも不体裁なことです=東海道中膝栗毛 岩波文庫)
【解説】大辞林には、広く物事をしくじるという意味で記述をしており、「かぶったら来やれと通な烏帽子親」(柳多留)という使用例を挙げている。また、三代目古今亭志ん朝の「お若伊之助」には「おれが、うちをかぶって親方んところに居候していた時……」というくだりが出てくる。ここでは「道楽が過ぎて親から勘当されて」の意味である。
がぶる <動・五>[意]何かの弾みで器から酒、水などの液体がこぼれること。[例]車ん助手席じ茶を飲みよったら、揺れたもんじゃき、がぶった(車の助手席でお茶を飲んでいたら、揺れたものだから、お茶がこぼれた)。
〔未〕がぶらん [意]こぼれない。
〔未〕がぶろう [意]こぼれよう。
〔仮〕がぶら [意]こぼれれば。
【解説】十七世紀初めにポルトガル人宣教師が編んだ『日葡辞書』には「ガブメク」という語がある。邦訳版は、「船がひどく揺れる」との説明を付している。「がぶる」は、船が「がぶめく」結果として起きる現象を言うように思われる。
かべ <名>[意]かび。[例]シャツぅぬれたまま、ほたっちょくと、かべい、はゆんので(シャツを濡れたまま放っておくと、カビがはえるよ)。
かべなし <名>[意]軒下。
かぼす <名>[意]ミカン科の常緑低木、柚子(ゆず)の一種。大分県、特に竹田地方の特産品。鍋もの、焼き魚、味噌汁など、食卓に上る大概のものに合う。正しい絞り方は、半分に切ったカボスの切断面を上にして絞るのが正しい絞り方。果汁と皮の汁とが混じって、より風味が出る。
かまげ <名>[意]蓆(むしろ)を二つ折りにして作った袋。穀類を入れるほか、古くなったものは堆肥を入れて牛馬の背にのせ運ぶために使われた。
がまだす <句>[意]精を出す。頑張る。熊本方言として知られるが、竹田市の西部でも使う。[例]せちいこともあろうけんど、がまだすんで(嫌なこともあるだろうけど、頑張るんだよ)。
※竹田出身・水瀬さん
がまる <動・五>[意]からかう。[例]そげえ酔いたくろうち、嫁入り前んおなごしゅうがまるもんじゃねえ(そんなに酔って、嫁入り前の女性をからかうもんじゃない)。
〔未〕がまらん [意]からかわない。
〔未〕がまろう [意]からかおう。
〔仮〕がまら [意]からかえば。
かみなりよけ <名>[意]ユリ科の常緑小低木、梛筏(なぎいかだ)。
※『岡藩のひらくち』
がむる <動・中三>[意]ひとのものを盗む。命令形は「がみい」となるので、大分独特の下二段活用の変形「中三段活用」である。
〔未〕がめん [意]盗まない。
〔未〕がみゅう [意]盗もう。
〔仮〕がむら [意]盗めば。
〔命〕がみい [意]盗め。
〜かや <接尾>[意]〜かな。[例]今日は何曜日じゃったかや(今日は何曜日だったかな)。
かやす <動・五>[古]返(かや)す[意]裏返しにする、ひっくり返す。「耕(たがや)す」は「田」と「かやす」を併せた語。
〔未〕かやさん [意]ひっくり返さない。
〔未〕かやそう [意]ひっくり返そう。
〔用〕かええた [意]ひっくり返した。
〔仮〕かやさ [意]ひっくり返せば。
〔命〕かやせ [意]ひっくり返せ。
【邦訳日葡辞書】「カヤス」返す。
かやる <動・五>返(かや)る[意]倒れる、ひっくり返る。[例]こないだん台風じ、稲いべらりかやっちしもうた(この間の台風で、稲がべったりと倒れてしまった)。
〔未〕かやらん [意]倒れない。
〔未〕かやろう [意]倒れるだろう。
〔仮〕かやら [意]倒れれば。
がやる <動・五>[意]植物が交雑してどちらかの特性を持った品種、あるいは中間の特性を持ったものに変化すること。
〔未〕がやらん [意]交雑しない。
〔未〕がやろう [意]交雑するだろう。
〔仮〕がやら [意]交雑すれば。
※『緒方町誌』
かゆる <動・中三>[意]変える。替える。代える。換える。標準語では下一段活用だが、大分では下二段活用となる。ただし、命令形が「かいい」となるので、正確に言うと中三段活用である。
〔未〕かえん [意]かえない。
〔未〕かゆう [意]かえよう。
〔仮〕かゆら [意]かえれば。
〔命〕かいい [意]かえろ。
【邦訳日葡辞書】「カユル」変、換、替、代。
からいもぐさ <名>[意]どくだみ。
※緒方・奥嶽入道さん
からぐる <動・中三>[意]着物の裾や袖などをまくり上げる。命令形は「からぎい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。
〔未〕からげん [意]めくり上げない。
〔未〕からぎゅう [意]めくり上げよう。
〔仮〕からぐら [意]めくり上げれば。
〔命〕からぎい [意]めくり上げろ。
【邦訳日葡辞書】「カラグル」荷物などを結ぶ、または、しばる。
からすこうべ <名>[意]うり科の蔓性多年草、烏瓜。
※『緒方町誌』
からすへび <名>[意]ユウダ科ヤマカガシ属に分類される蛇、ヤマカガシ(山棟蛇、赤棟蛇)。有毒。奥歯に毒があるとされる。
※緒方・入道さん
からめ <名>[意]子を産まない牛馬。
がらめ <名>[意]ブドウ科の落葉木、野生の葡萄。
※緒方・みっこさ
〜かり <格助>[意]〜から。[例]こっかり(ここから)、そっかり(そこから)、どっかり(どこから)、あっこかり(あそこから)。
かりい <形>[意]軽い。
〔用〕かるうなる [意]軽くなる。「かるなる」とも。
〔仮〕かるから [意]軽ければ。[意]もちっとぉ、かるから、いいにのお(もう少し軽ければ良いのになあ)。
がりかう <動・五>[意]からかう。
〔未〕がりかわん [意]からかわない。
〔未〕がりかおう [意]からかおう。
〔用〕がりこうた [意]からかった。
〔仮〕がりかわ、がりかや [意]からかえば。
※『緒方町誌』
かる <動・五>[意]借りる。標準語では上一段活用だが大分弁では五段活用となる。[例]かねだけは、ひとかり、かるもんじゃねえで(金だけは人から借りるものではないよ)。
〔未〕からん [意]借りない。
〔未〕かろう [意]借りよう。
〔用〕かった [意]借りた。標準語の「買った」は大分では「こうた」となる。
〔仮〕から [意]借りれば。[例]ねえなったんなり、から、よかろう(無くなったのなら、借りれば良いだろう)。
〔命〕かれ [意]借りろ。
かるう <動・五>[古]担(かる)う[意]背負う。[例]大けん風呂敷ぅ、かるうち、どこ行きですな(大きな風呂敷を背負って、どこに行くんですか)。<類>かたぐ
〔未〕かるわん [意]背負わない。。
〔未〕かるおう [意]背負おう。
〔用〕かるうた [意]背負った。
〔仮〕かるわ、かるや [意]背負えば。
【邦訳日葡辞書】「カルウ」荷物などを背負う。
かるる <動・中三>[意]枯れる、涸れる、嗄れる。命令形は「かりい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。
〔未〕かれん [意]枯れない。
〔未〕かりゅう [意]枯れよう。
〔仮〕かるら [意]枯れれば。
〔命〕かりい [意]枯れろ。
かるわする <動・中三>[意]背負わせる。
〔未〕かるわせん [意]背負わせない。
〔未〕かるわしゅう [意]背負わせよう。
〔仮〕かるわすら [意]背負わせれば。
〔命〕かるわしい [意]背負わせろ。
かるわるる <動・中三>[意]負ぶわれる。大分独特の変形下二段活用の中三段活用である。
〔未〕かるわれん [意]負ぶわれない。
〔未〕かるわりゅう [意]負ぶわれよう。
〔仮〕かるわるら [意]負ぶわれれば。
かれえ <形>[意]辛い。
〔用〕かろうなる [意]辛くなる。「かろなる」とも。
〔仮〕からから [意]辛かったら。[例]からから、うすめなあ(辛かったら薄めなさい)。
かわりごうし <連語>[意]交代で。
〜がん <名>[意]〜の所有物。[例]そんくたぁ、おれがんじゃが(その靴は、私のものですよ)。
かんがゆる <動・中三>[意]考える。標準語では五段活用だが、大分では下二段活用の変形である中三段活用となる。[例]おらぁ、かんがゆるなあ、にがてじゃ(俺は考えるのは苦手だ)。
〔未〕かんがえん [意]考えない。[例]なし、よう、かんがえんのか(何故、よく考えないのか)。
〔未〕かんがゆう [意]考えよう。[例]よう、かんがゆうえ(よく考えようよ)。
〔仮〕かんがゆら [意]考えれば。[例]ちっとぉ、かんがゆら、わかりそうなもんじゃ(少し考えれば分かりそうなものだ)。
〔命〕かんがいい [意]考えろ。[例]よう、かんがいいや(よく考えろよ)。
かんから <名>[意]ユリ科の蔓性落葉低木、サルトリイバラの葉。餅を包む葉として用いた。根は山帰来(さんきらい)と言い、利尿、解熱、解毒剤などとして用いる。
かんじょうみみ <名>[意]都合の悪いことは聞こえない耳。
※『岡藩のひらくち』
かんじらする <動・中三>[意]感じさせる。
〔未〕かんじらせん [意]感じさせない。
〔未〕かんじらしゅう [意]感じさせよう。
〔仮〕かんじらすら [意]感じさせれば。
〔命〕かんじらしい [意]感じさせろ。
かんしろ <名>[意]御燗をする係。御燗番。
※清川・邦友さん
かんす <名>鑵子[意]茶釜。広辞林には「関西で、羽のある真形(しんなり)型の茶釜」とある。子供の囃し言葉に「○○ちゃんが屁を放(ひ)った。いぃくつ放った。とお放った。隣んかんすぅ放り割った」というものがあった。
※緒方・入道さん
かんずる <動・四>[意]感じる。標準語では上一段活用だが、大分では複雑な活用をする。一応、四段活用に分類したが、中三段に活用させることもある。
〔未〕かんじらん、かんぜん [意]感じない。[例]いっこん、かんじらんで(何も感じないよ)。
〔未〕かんじゅう [意]感じよう。
〔仮〕かんずら [意]感じれば。
〔命〕かんじい、かんじれ [意]感じろ。
がんたれ <名>[意]おんぼろ、粗悪品。
※『緒方町誌』
かんたろう <名>[意]フトミミズ科フトミミズ属に属する大型のミミズ。シーボルトミミズ。長さ30センチを超え、太さは大人の指ほどもある。
かんね <名>寒根[意]マメ科の大形つる性多年草、葛。かんねかづら。
※緒方・みっこさ
がんねかなわん <句>[意]高齢になり身体の自由がきかないこと。「がんね」の語源は不詳。[例]としゅうとると、がんねかなわんごつなるんじゃ(年を取ると、身体が思うように動かなくなるのだ)。
※清川・千枝さん
かんぴん <名>燗瓶[意]お銚子、酒をお燗する際に使うとっくり。
※緒方・みっこさ