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延焼火災の事例研究 03[窓]
                              A9−37   08.11.22 

  1,延焼火災 03

 延焼火災で、木造建物から耐火建物への延焼がある。
 木造建物の火勢が強いと耐火造と言っても延焼することはままある。
 その場合どの“個所=部分”から、耐火建物への内部に延焼するのか?
 意外と、「木造建物から、しかるべき距離が取られていれば、延焼しない。」と考える建築者もおられる
 がそうはいかない。だいたいが、“しかるべき距離”と言うのが、曲者となる。
 
 延焼する個所は、だいたいが、「窓」又は「換気口」が多い。
 そこで、基準法の耐火建物では、窓の規制をかなり厳しくしているが、それでも火勢圧は窓を狙う。

 今回は、木造建物から、耐火建物に延焼した火災事例として、その延焼・個所を見てみる。
   2, 延焼火災事例 03⇒ 窓枠を延焼媒介として内部に拡大した火災
    火災は、平成19年、都内A区の木造3階の作業場の火災により隣棟の耐火建物
    に拡大延焼した。火災は3月の昼過ぎ頃に発生した。
    作業場は木造建物の2棟からなっており、
    @が建て91u、延べ273u、
    Aが建て87u、延べ163uあり、消防隊到着時、すでに2棟が炎上していた。
    
 ポンプ車16隊、はしご隊・特救隊・指揮隊・棟支援隊15隊  計31隊が活動
     
焼損棟数11棟、焼損床面積545u、焼損表面積(主に耐火建物)320uを焼損。
    けが人なし。
     
  中央の建物が、木造の作業場で、ここが火元だ。
  消防隊到着時すでに2棟が炎上していた。
 2棟の建て面積は、178uあることから、全体とし
 ては、その建て面積の建物が、軒高約8mの大きさで、
 燃えたことになる。
  
   手前が焼損した崩れた木造3/0の作業場の建物。
   奥が、延焼した「耐火建物3/0」で矢印の3Fの
 「窓」から部屋の内部へと延焼拡大した。
    
  
  火元建物が「炎上」している火災現場。
  左の建物が延焼した耐火建物で3階建て。
  火元建物は切り妻屋根が2つ重なり合って接続した
  構造で、炎が強く上がっているのが右側の切り妻屋
  根で、左の切り妻屋根は、まだ燃えないで残っている。
  軒高が約8mあり、耐火建物との距離は約7.5m。
  
 左の写真の、耐火建物の「2F窓」を拡大して見て
 みると、窓枠に「火が点いて」燃えているのが分かる。
 かつ、耐火建物からの「黒煙」も確認できる。
 この着火している「窓枠」は「ガラス窓の枠のパテ材」
 である。
 
耐火建物の3階の部屋の窓側全体の焼損状況だ。
 窓ガラスは、網入りのガラスで昔の乙種防火戸の
構造である。 上段の中央の窓枠のアルミ枠がゆ
がんで、その左の窓全体がズレている。
焼損状況から、右側の棚の上部に置かれていた
ダンボール入りの書類等が焼損して、部屋全体の
焼けを形成した。

  
  耐火建物の2階の部屋の焼損状況だ。
 部屋全体として、3階に比較して、棚等の可燃物がなく、
大きな延焼拡大要因とならなかった。
 しかし、室内の内部に延焼しているのは認められる。
この2階の窓をさらに詳細に見ると、下写真のように
3階とほぼ同じであったことが分かる。たまたま
 この部屋には、壁に沿って棚や段ボール箱などが
 なかつたことが、幸いした。
   2階の焼損個所を細かく見てみる。
 @右隅の暖房用パイプの保護材が焼損している。
 A窓の中断のかもい、を見ると、アルミ枠が焼損して
  いる。
 B矢印の上段の縦枠がゆがんでいるが、3階の同じ
 個所と同じゆがみが見られる。つまり、同程度に熱輻
 射を受けていたことが分かる。
 このように、耐火建物の窓は、アルミ枠とガラスの間にパテを入れており、これが燃えると
 室内への延焼媒介となる場合と、アルミ枠の窓枠そのものが変形して、窓枠に隙間が生じ
 て内部に火が入ることが分かる。
 木造建物と耐火建物が混在する日本の建物事情では、常に隣棟建物への延焼危険がある
 と言える。