火災調査探偵団                 Fire Investigation Reserch Team for Fire Fighters
Title:「火災原因調査について・通知文」
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「火災の原因調査に関する業務の運用について」
              

                 
   火災の原因調査に関する業務の運用について      

                                                     昭和38年5月8日  自消乙予発第12号
                                                     都道府県知事あて 消防庁次長    

     火災の原因調査に関する業務は、消防法第7章の規定に基づき火災予防を主とする消防行政上の必要をみたすため
   に認められたきわめて重要な業務であることは、御承知のとおりである。特に火災予防上の諸施策と原因調査の業務と
   は表裏一体の関係にあるといっても過言でないほど密接な関係にあって、この業務の円滑な実施は、ひいて予防行政の
   着実発展につながるものがあるといいうる。 しかるに、現状は未だ必ずしも十分に消防法所期の成果をあげているとはい
   いがたいので、今回本年4月15日付をもって消防法の一部を改正する法律(昭和38年法律第88号)が施行された機会
   に、今後この業務の効果的な実施を図り、もって予防行政の発展に資するため、下記事項に御留意のうえ、その本来の
   趣旨の実現に遺憾のないよう、よろしく管下市町村を御指導願いたい。
    なお、昭和31年11月26日付国消教発第50号「火災原因の調査について」は廃止するから御承知ありたい。
    また、本件については、警察庁と打合せ済みであるから念のため。

                                 記

   第1 調査の目的について
     消防機関の行う火災の原因調査は、火災予防の施策ないし措置の成果を検討し、その是正改善を図り、もって火災
   予防の徹底に資することを本来の目的とするものであること。これとあわせて、消防機関は、火災の初期における燃焼
   状況から火災の全貌を把握していること及び火災についての専門的知識経験を有することに基づき、警察官の行う放火
   及び失火犯の捜査に寄与し、協力することも副次的な目的とされている。
     なお、消火活動の効率化を図るための資料をうること、並びに消防情報及び消防統計作成の資料を得ることも調査を
   行う目的の一部と考えられること。

   第2 調査の責任及び権限について
     原因調査の責任及び権限は、消防長若しくは消防署長又は消防長を置かない市町村においては市町村長にあるも
   のであること。法第35条の3の規定により、都道府県知事が原因調査を実施する場合においては、都道府県知事にも
   調査の責任及び権限があることとなるが、この場合においても、消防長若しくは消防署長又は市町村長の責任を排除し、
   又は権限を失わせることとはならないものであること。

   第3 調査の範囲について
     原因調査の最も中心とするところは、出火原因についてであること。前述のとおり、原因調査は、本来予防行政に資
   するために行われるものであることから、出火原因の調査は、単に人のみならず、広く一般の現象事実にも及ぶもので
   ある。この場合、人の行為は、出火について責任のある人の行為である。又は、相当因果関係のある人の行為である
   ことを必ずしも必要とせず、その他の条件を与えた人の行為をも含むものであること。
     従って、放火又は失火の疑いの有無にかかわりなく調査を行うものであること。
     原因調査は、出火原因の調査とあわせて火災の延焼拡大の原因についても調査するものであること。
    火災が初期の段階で消火しえないで、たとえば部分焼の程度をこえるに至った場合においては、建築物等の位置、
   構造、設備又は管理の状況、その他防火管理の状況等を火災前の予防査察の結果等とあわせて検討しながら、出火
   の状況とあわせて、火災の延焼拡大の状況及び人命の損傷の状況を把握し、進んでその原因を探究することが火災
   予防の対策上重要であること。

   第4 調査の方法について
    1 原因調査は、消防法に定める権限と手続きとに従って実施すべきものであること。従って、消防行政上与えられた
     権限をこえない範囲で、行き過ぎのないよう留意しながら調査を行うべきものであること。
       放火又は失火犯の捜査に協力して調査を行う場合であっても、あくまでも消防法第35条の2の規定による調査の
     権限を行使するものであって、捜査自体を行うものではないことに留意すること。従って、質問、提出命令又は立入
     検査を行う場合、消防法上調査権を付与された趣旨を逸脱しないよう注意するとともに、警察官の行う捜査にいささ
     かも支障を与えることのないよう厳に配意すること。
    2 原因調査は、火災の出火又は延焼拡大の原因となるべき物について科学技術的な調査に最も重点を置き、関係
     のある者又は目撃者等に対する質問による調査は、補助的な方法として実施するにとどまるものであること。
    3 原因調査の実施に当たっては、不当に個人の権利を侵害し又は自由を制限することのないよう留意するとともに、
     知り得た個人の秘密についても、みだりに他に漏らすことのないよう厳につつしむこと。
      また、その職務を利用して、個人の民事関係に立ち入ることのないよう戒めること。

   第5 調査詰果について
    1 原因調査の結果、放火又は失火の犯罪があると認められるときは、直ちに所轄の警察 署に通報すべきものである
     ことはいうまでもないが、一般に調査の結果は必ずしもすべて公表しなければならないものではないこと。特に、警察
     官の捜査に影響のある場合は、慎重を期する要があること。
    2 原因調査の結果に基づき、火災予防の対策を再検討のうえこれを事後の予防指導等の方針に織り込むとともに、必
    要があるときは、関係機関又は団体に連絡し、必要な是正措置につき協力を求める等適切な方策を講ずること。

   第6 警察機関との協力について
     消防機関と警察機関とは、火災の原因調査と放火又は失火犯の捜査について、一般的に相互に協力すべきものであ
    ることは、法第35条の4第2項の明らかに規定するところであるが、特に現場における具体的な個々の調査、現場の保
    存、資料の収集等に至まで、すべて協力して行うことが適当であること。
      原因調査は消防行政上の目的を達成するために火災の真因を探求するものであるから、その間に警察官の捜査との
    競争意識をもつなどのことのないよう厳に留意すること。
      警察機関との間の日常の連絡について必要があれば、都道府県警察との間に常置的な火災原因の連絡会議を設け
    て、火災原因の連絡、研究にあたるとともに、現場消防機関においても、現地警察機関との間に火災原因に関する情
    報交換を行う等、地方の実情に即して、適切な協力体制の確立に努めること。

   第7 調査担当者の研修訓練について
    原因調査の担当者は、火災予防一般に関する知識に加えて、原因調査に関する特別の高度な知識を必要とするもので
   あるから、つねに担当者の研修訓練について格別の配意を行うものとすること。そのため、消防大学校その他の研修機関
   を活用するほか、随時研究会、その他の研修機会を利用して、積極的に調査能力の向上を図るため必要な措置を講ずる
   こと。
    
 「火災原因調査における警察機関との協力について」

                                                                消防予第2 0 8 号
                                                                平成27年6月1日

   各都道府県消防防災主管部長
   東京消防庁・各指定都市消防長
                                                                消防庁予防課長
                                                                 ( 公印省略)
                  
火災原因調査における警察機関との協力について

     標記の件については、「火災の原因調査に関する業務の運用について」(昭和38 年5月8 日付け自消乙予発第12号。
   以下「12 号通知」という。)及び「消防法第35条の3の2に基づき消防庁長官が行う火災原因調査に係る警察との相互協
   力に関する警察庁との申合せについて」(平成15年6月18日付け消防安第100号。以下「100号通知」という。)により、火
   災原因の迅速な究明のため、警察機関との協力を行っていただいているところです。
    今般、警察庁から別紙のとおり「火災事件捜査における消防機関との協力について(通達)」(平成27 年6月1日付け
   警察庁丁捜一発第64 号。以下「64 号通知」という。)が発出されました。
   消防機関が火災原因調査を行う際には、警察機関が行う火災事件捜査と相互に協力することが必要であり、貴職におか
   れましては、64 号通知の趣旨をご理解の上、引き続き火災原因調査に係る警察機関との協力に配意されますようお願い
   します。
    また、火災現場における火災原因調査の結果を公表する場合において、警察機関から、犯罪捜査に影響を及ぼす旨申
   し入れがあったものについては、それを踏まえ、その取扱を検討されますようお願いします。
     各都道府県消防防災主管部長におかれましては、貴都道府県内の各市町村等(消防の事務を処理する一部事務組合
   等を含む。)に対しても、この旨周知されますようお願いします。
     なお、本件は警察庁と協議済みであること及び消防組織法(昭和22 年法律第226 号)第37 条の規定に基づく技術的
   助言として発出するものであること、また、警察機関との協力について、従来の12号通知及び100号通知の趣旨を変更す
   るものではないことを念のため申し添えます。

    ---------------------------------------------------------------------------------------------
  
   警視庁刑事部長    
   各道府県警察本部長                                      
                                                         警察庁丁捜一発第6 4 号
                                                         平成2 7 年6 月1 日
                                                          警察庁刑事局捜査第一課長

                  
火災事件捜査における消防機関との協力について(通達)
     
     標記の件については、火災現場における警察による捜査と消防機関による火災原因調査は互いに協力しつつ相互の
   目的を達成する必要があるところ、現場対応に当たっては、下記の点に留意し、遺漏のないようにされたい。
     なお、本通達の内容については、消防庁と協議済みである。
                                    記
   1 基本的考え方
     消防機関は、火災予防の施策ないし措置の成果を検討し、その是正改善を図り、もって火災予防の徹底に資すること
    を目的として火災原因調査を行い、その副次的な効果として警察の捜査に寄与し、協力することとしている。
     他方、警察は、捜査による当該事案等の原因究明及び責任追及を行うものであるが、あわせて、消防機関による原因
    究明を通じた火災予防に資するため、協力する必要がある。
   2 連携の在り方
     実況見分、検証等の実施に当たっては、警察側の連絡責任者を設定するなどし、消防機関側と開始日時、証拠保全の
    必要範囲、実施方法等について相互に調整し、齟齬が生じないようにすること。
     また、令状により検証を行う場合においても消防機関を排除する理由はなく、消防機関による火災原因調査の必要性
    を十分に理解した上、協力すること。
     なお、消防機関は、消防法第35条の2に基づき、警察の捜査に支障を来さない範囲で、警察が逮捕した被疑者に対す
    る質問及び押収した証拠物に対する調査を行う場合があることについても留意すること。
  3 保秘の徹底
    火災原因調査の結果は、その内容によっては捜査上の秘密に該当し得る旨、消防機関側にも申し伝えるなど、捜査に
   支障が及ばないよう保秘の徹底を図ること。
  4 その他
    多数の死者が発生するなど社会的影響が極めて大きい火災事件・事故等が発生した場合には、消防法第35条の3の2
   に基づき、消防庁長官は当該火災の原因調査(以下「長官火災調査」という。)を行うこととされており、警察庁と消防庁と
   の間で長官火災調査が行われる場合において、当該火災に係る捜査及び火災の原因調査の実施に当たって相互に協力
   するよう、別添1のとおり申し合わせを行っていることに留意するとともに、今般、消防庁予防課長から別添2のとおり各都
   道府県消防防災課長等宛に「火災原因調査における警察機関との協力について」が発出されたので参考とされたい。


⇒単なる執筆者追記この通知前に発生した火災
   追記
     ・ 平成27年5月17日午前2時10分頃、神奈川県川崎市川崎区日進町の簡易宿所「吉田屋」の玄関付近から出火、
      隣接する同じく簡宿の「よしの」に燃え移り、2棟合わせて約1,000㎡が全焼。17時間後に鎮火したが、11人が死亡、
      17人が重軽傷を負った。
    ・ 簡易宿泊所火災、放火が原因 川崎市消防局が報告書 平成28年2月(日経新聞)
      11人が死亡した昨年5月の川崎市の簡易宿泊所火災について、市消防局が原因を「放火」だったとする報告書を
     今月中にまとめる方針であることが2日、市消防局への取材で分かった。 市消防局によると、火元となった宿泊所
     「吉田屋」の玄関付近からガソリンのような成分が確認された。宿泊者の証言も踏まえ、火災原因に関する調査報
     告書で放火と結論付ける方針。

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