279話 FBIから来た女刑事

(注:ストーリーが判らないように解説していますが、ネタバレの内容は含んでいます)

<予告編のナレーション>

ハードボイルドGメン75 次の活躍は、

アメリカ上院議員とその家族に対する、シークレット・サービスを要請された
Gメンは、FBIの研修を終えて帰国した女性Gメンとともに護衛するが、
たちまち襲い掛かる銃弾。

シャドーマンと呼ばれる狙撃者は、"ベトコン殺し”と異名をとる殺し屋。
ついに上院議員の娘がさらわれ、Gメンは恐怖のM16カービン銃との
対決を迫られる。

次は、「帰って来た女刑事シリーズ Part1
                   FBIから来た女刑事」

    <監督:鷹森立一、 脚本:高久進>

注)シークレット・サービスについては、403 SP隊員とシークレット・サービスも参照して下さい


1.作品について

「帰って来た女刑事シリーズ」が、ついに放送開始。
有名なシリーズで、全4話のこれが第1話。

  このシリーズについては、156.帰って来た女刑事シリーズに記載。

森マリアさん演ずる速水涼子刑事が、1年半ぶりに帰って来た貴重な作品で
速水刑事ファンにとって、思いもかけないプレゼントとなった。

FBIの研修を終えた速水刑事は、アメリカから連れてきた犬やGメンとともに
要人の警戒に当たることになる。
元ベトナム兵士の凄腕スナイパーらと、闘いを繰り広げる。

速水刑事は、犬に関連する作品が幾つかあり、苦手な犬との関係を克服する作品もあるが、今回も犬との共演作。
恐らく森マリアさん本人が犬好きなのだと思う。

この作品は、ヘリコプターを使用したりと力作であるのだが、展開には幾つかの疑問がある。

突然の字幕。話しているのはベトナム語だろうが。なぜ海外ロケや香港カラテの作品で、字幕に出来なかったのか?疑問がわく。


2.シャドーマンと一味

シャドーマンと呼ばれる元ベトナム兵士のスナイパーは、金のためなら誰でも殺す、一流の殺し屋。
小林稔侍さんは205話でSPの関警部補を演じて以来、凄みのある役柄が良く似合うようになったと思う。

武器は、予告編で「恐怖のM16カービン銃」と言われた銃。
  「M16」は吹雪刑事の登場編で、テロリスト影山が愛用した強力な
  ライフルが「アーマーライトM16」。 今回はその「カービン銃」である。

しかし今回は、途中からの登場であるうえに、強力な射撃シーンが無かったので、影山の時ほど実感がわかなかった。

<カービン銃とは>
 ライフルは長いので機動性に劣る。そこで銃身の短いコンパクトな銃として作られたのがカービン銃。
 しかし、狙撃者に必要なのは命中精度だが、カービン銃は命中精度が劣るので、強力だが狙撃向きの銃ではない。
 253〜254話「白バイに乗った暗殺者たち」で、テロリスト影山がアーマーライトM16の「ライフル」を狙撃に使ったのが
 正しい使い方である。


3.妹のビンと、夫のドク

彼らもシャドーマンの一味として、日本でアルバートの暗殺を画策する。

しかし、ビンとドクは犠牲者だと思う。
シャドーマンの敵討ちのためなら、反対できない立場なのだが、5年も前でもあるし、多分彼らは日本で幸せに暮らしていたのではないかと思う。

折角の生活をふいにしてしまい、もう元の生活は戻ってこない。


4.上院議員アルバート・モリス

アメリカ上院議員のアルバート・モリス(ジーエン・グレゴリー)は、なぜか命を狙われている。 その為に来日には涼子が同行し、Gメンとともに警護に当たることとなった。

偉そうで、鬼のような形相も良く似合っている。

この外人は、230話「零下50度からの逃亡者」に出られていた方であり、娘のケイトもその時の娘と同じだと思う。推測だがひょっとしたら実の娘なのかも?


5.速水涼子刑事らの活躍

「帰って来た女刑事シリーズ」のページでも書いたので詳細は省くが、レギュラー時代とは違うイメージで、クールでハードボイルドな女刑事で再登場した。

(今作品は、幾つかの突っ込みがあります)

1)空港での出会い

速水刑事と島谷刑事が初めて出会うシーンは、実にあっさりとしている、少しだけでも会話が欲しかった。

島谷刑事は、速水刑事を待って捜しているのにあまりにも注意不足。
しかも事前に写真を見ているはずだが、声をかけられて顔を見ても判らないとは。
それに対し速水刑事は、初めて見る島谷刑事を遠くからどうして判ったのか?
この2人の反応は逆だと思う。

   (注:次の280話で、吹雪刑事が津川警部補を迎えた時には、改善されている)

2)拳銃の使用許可への疑問

島谷刑事からの質問に、速水刑事は「FBIの許可を受けています」と
言っているが、日本の警察ではなくなぜFBIなのか? 

3)防弾ガラス

スナイパーが狙撃されるが、防弾ガラスが弾き返し、この防御が功を奏した。
Gメン車には、これまで防弾ガラスではなかったので、狙撃でいつもガラスが割れていた。 防弾ガラスは、今回が初めてではないかと思う。

4)速水刑事の走り

森マリアさんが演じた速水刑事の、一番のアクションシーンは、ダッシュ、全力疾走だろう。
車への狙撃に対して、速水刑事は警護は島谷刑事にまかせて、犯人を追うために車から降りて、得意の走りを見せる。
大好きな犬と一緒に、全力疾走で野原を駆ける。これはこの作品の大きな見せ場である。

森マリアさんは、高校時代に陸上競技の選手だったというだけに、走りはGメンの女刑事の中でもNo.1だろう。 (2番目は吹雪刑事だが、実力差がある)

草原の中を、犬とともに、全力疾走する速水刑事は美しく・カッコイイ。
涼子のこの走りを見せるために用意されたような場面である。


<しかしこのシーン、幾つかの疑問がある>
a.防弾ガラスで防護された車の中から、速水刑事はなぜ外へ出たのか?
    しかも、防弾チョッキも着ておらず無防備である。
    狙撃者が一流であることを速水刑事は知っており、かつ狙撃への対抗策は無いのに。

b.速水刑事の役割は、アルバート・モリスの護衛である。
    その任務から離れて、犯人を追いかけるのは、命令違反、持ち場を離れる行為である。
    勝手に大事な任務から離れたことも違反だが、
    万一、速水刑事が離れた後に、アルバートが死傷したら責任重大である。

c.犯人らは複数の可能性がある。1人で行くのは極めて危険。
    複数いたら太刀打ち出来ない。
    相手の武器の方が強力だから、接近戦以外は拳銃では不利だし。

d.「犯人を追います」と車の外に出たが、犯人の姿を見ていない
    姿を見ていないから追うことは出来ず、ジル号に向かって「行け」と命令したが、犯人の匂いも無くいくら
    訓練された犬でも、何も出来ないはず。

e.速水刑事は全力疾走しているが、どこに向かっているのか?
    犯人が見えてのダッシュなら判るが、実際は犯人がどこにいるか全くわからない状態なのだから、
    ダッシュできないはず。 −−どこに向かって走っているのか。

f.拳銃を手に持たずに走っているのも、気になる。
    急に犯人が現れると対処できない。

脚本の高久進さんは、速水涼子刑事のカッコイイ場面を見せようとされたのだろうが、このシーンはあまりにも無理がありすぎると思う。推敲が足りないとしか思えない。

しかしこのシーン。サラっと見ていると速水刑事がスピーディに走る姿の、
カッコ良さが強く印象に残り、上記には気づきにくいのではないかと思う。
そう感じるように作り上げた、鷹森立一監督らの力量は凄いと思う。

5)Gメン部屋にて

帰って来た女刑事のページで書いているが、
Gメン75の歴史の中でも、特筆すべき再会シーンがある。

6)外人バーにて

速水涼子刑事がジル号を連れてBarに入り、ビンに質問をするシーンはカッコイイ。 しかし犬を連れて行ったことが、思わぬ落とし穴になるとは?
犯人もなかなか反応が速い。やるものである。
あのワナは、血が出るくらいだから相当に痛いのだろう。

7)再び平原にて

立花警部のラストのセリフは良かった。
ヘリは、地平線から浮き上がって来るように見え始める時が一番カッコイイ。
映画「ブルーサンダー」が嚆矢だったと聞いた記憶がある。

立花警部と速水涼子刑事はしゃがんだだけだから、2人がどこにいるかは
シャドーマン(小林稔侍)なら判っていたはず。
そこに"銃弾”を打ち込めば良いのだが。


6.吹雪杏子刑事について

速水刑事の主役作品だが、吹雪刑事にも何度かの出番があるのは嬉しい。

ゲストの女刑事の引き立て役として、元SP隊員らしくないミスをするのはファンとして不満があるが、279話に関してはそれほどの不満はない。

1)隠れ家に、人が来たときに誰だか判らないのに、島谷刑事ではなく
  吹雪刑事が出ている。 普通なら男性刑事だと思うが。

2)吹雪刑事がアルバートの娘ケイトと遊園地で、一日遊ぶ姿はGメンでは
  他に例がなく、そのシーンを与えてくれた事には感謝せざるを得ない。

富士急ハイランドだと思うが、このためにわざわざロケに行ったというのも贅沢な作品ではある。 遊園地のシーンには、DVDの解説で響圭子刑事を演じられた藤田美保子さんもうらやましがられている。

3)ヘリコプターも使った、大掛かりな作品。

正面からはヘリに乗っている中屋警部補らが見えたから、間違いなく実際に乗っている。
吹雪刑事が乗っているシーンもある。 ひょっとしたら中島はるみは始めてのヘリ搭乗ではなかろうか?




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