288話 唇を奪われた女刑事
<予告編のナレーション>
ハードボイルドGメン75 次の活躍は、
アメリカで研修中、捜査官と激しい恋におちた女性Gメンの再会。
ニューヨーク銀行強盗が、盗んだドル紙幣が日本で発見。
ギャングのアジトを襲い、火を吹く銃撃戦。
母の仇と狙う黒人少年に捜査官が撃たれ、女性Gメンも捕えられ絶体絶命。
だが救出に現われたはずの捜査官の意外な行動。
女性Gメンの知らない捜査官の隠された顔。
次は、「唇を奪われた女刑事」
<監督:鷹森立一、 脚本:西島 大、 内藤 誠、 高久 進>
1.作品について
帰って来た女刑事シリーズPart3
これが、速水涼子刑事(森マリアさん)の最後の作品となる。
速水刑事はレギュラー時代と違う雰囲気で、クールな女刑事になり、
逞しくなっている。 上手な射撃シーンは、レギュラー時代には見られなったもので、カッコいいシーンが幾度もある。
予告で 「激しい恋におちた女性Gメン」 とあるが、これまでのGメンには例がない。
Gメンを降板した後だから、可能な表現だろうか。
注:DVDでも発売されている作品なので、少し詳細に書くことにする。
<タイトル>
それにしても、じつに思わせぶりなタイトルである。
通常は「連想」させるものが多いが、これはズバリとしたタイトルである。
(ところでこの作品、かつての西部劇に時々あったストーリーに似ている。
例えば、「怒りの荒野」 1967年製作(主演:ジュリアーノ・ジェンマ、リーバン・クリフ)
リメイクではないが、少し似ているところがある)
2.モーガン捜査官
凄腕のFBI捜査官。(ロペス・ニックジルさん)
優秀な捜査官らしい不敵な面構え。
この外人俳優は、速水涼子刑事との相手として選ばれたのだろう。
(個人的には、胡散臭そうな感じがするが、いい面構えではある)
張り込みをする速水刑事にコートをかけるシーンは良かった。
予告編で匂わせているから書くことにするが、
彼は速水刑事を殺そうとするが、それはなぜなのか?
3.黒人 ジョージ
黒人ジョージの行方を追う速水刑事は、教会の神父から彼は2ヵ月前に日本に来たと聞く。(2ヶ月前では、早すぎると思う?)
ジョージが速水刑事らの車を盗んだが、車を盗むのが目的ではなかった。
車は放置し、鞄の中の拳銃を盗って逃走した。
つまり、ジョージは速水刑事の動向を観察していて、彼女が鞄を置いたまま車を遠く離れたので、行動に移ったのだろう。
(しかし拳銃が目的なら、ドアを強引に開けて、鞄を盗って走って逃げれば簡単。
車を盗むのは動かそうとする間に、気付かれる恐れが高くて不利だと思う)
4.銀行ギャング一味
ニューヨーク・シティ銀行から、100万ドルを強奪したボスの計画は周到だった
全員を捕えたにも拘わらず、現金は出てこなかった。
速水刑事とモーガン捜査官は、現金の行方を追う。
マリオ船具商会
速水刑事らは、マリオ船具商会が怪しいと睨んで乗り込む。
("マリオ"とは、280話の1人目のギャングと同じ名前)
5.速水涼子刑事の活躍
このシリーズの速水刑事には、デビューしたときの未熟で拳銃操作にも不慣れな姿はもうない。
逞しく成長し、そしてクールな女刑事になっている。
これらの変化は、帰って来た女刑事シリーズのページでも書いているが、やはり吹雪刑事の登場に影響を受けていると思う。(これは津川警部補にも言える)
1)モーガンとの出会い
FBIでの研修時代にモーガンと恋におちたと言う。
研修時代の速水涼子の射撃訓練シーンはカッコいい。
厳しいモーガンの指導。そして2度もピンチを救われることにより、速水刑事はモーガンとの絆が深まっていく。
2)笑顔
実はレギュラー時代の速水涼子刑事は、笑顔があまり印象に残るものが少なかった。しかし、この作品の笑顔は良かった。
速水刑事の本当に楽しそうな笑顔が見れるのは、モーガンのおかげである。
3)射撃
速水刑事とモーガンは、ギャング一味と睨んだマリオ船具商会を張り込む。
そしてついに、一味の3人が姿を現わす。
速水刑事は逮捕しようとするが、彼女の目覚しい射撃シーンが見られることになる。
4)ミス
たくましく成長した速水刑事だし最後の作品なのだが、この作品はどうしてなのか不注意が多い。 脚本を3人で書いたからかも知れない。 以前に3人脚本で、不幸の連鎖が十回以上も続いた作品があったが、似ているように思う。
帰って来た女刑事シリーズはどれも力作であるが、展開には無理やミスが多くなる傾向がある。
前半の2作は、吹雪刑事がミスを犯す設定になり、このPart3は、速水刑事のミスが多い。
(順不同で書くと)
1)撃たれた男へ走り寄るのはGメンでも良くあるが、周囲をチラッと見て、後は全く警戒しないのは不注意
すぎる。
犯人が近くにいる可能性が高く、かつ彼女は狙われていることを知っている。にも拘わらずである。
2)「拳銃」を車の座席の上に鞄にいれた状態で、遠くに離れている。−−これは絶対にやってはならない。
3)犯人を待ち伏せしていながら、遠くから名前を呼んだ為に逃げられてしまう。
相手は拳銃を持っているのだから、近くへ来るまで気付かせてはいけない。
4)仮に相手が素手で掛かってきたら、速水刑事は対抗できないだろう−−1人の待伏せはやはり無理
5)拳銃を持っている男を追跡するが、拳銃を向けられて万事休す−−これがあまりにもあっけない
どうしてなのかと思うほど、今回の速水刑事の不注意が続く。
カッコいい場面は幾つもあるのだが。
5)ピンチ
速水涼子刑事は、レギュラー時代は不思議なほどピンチが少ない。
ところが、帰って来た女刑事シリーズでは、2話とも失神し捕えられる。
今回は思い出の分も入れると、実に5度のピンチに見舞われている。1話としてはレコードだろう。
(帰って来た女刑事シリーズがピンチが多いのではない、逆に津川警部補は
レギュラー時代はピンチが何度もあったが、このシリーズではピンチが少ない)
1度目のピンチ(思い出)
アメリカで、おとり捜査中に身元がバレて、速水刑事はピンチに陥るがモーガンに助けられる。
速水刑事は頬を何度も張られたが、抵抗できず殺されかける。
しかし相手は1人で最初は素手だし、張り飛ばしたあと相手はじっと見ているだけだから、何とか抵抗できなかったのか?
FBI研修で射撃の腕は上がったが、格闘能力は変わっていないのか。
2度目のピンチ(思い出)
スラム街への捜査で怪我をする。撃たれたのだろうか?
そして、又もモーガンに助けられる。
<研修中>
この2度の時は、速水刑事はFBIの捜査官ではなく「研修中」だから、
潜入捜査や貧民街の捜査は出来ないはずである。
3度目 ジョージに捕えられる。
4度目 モーガンに殺されかける。
5度目 モーガンに拳銃で狙われ殺されかける。
6)最後の作戦
速水刑事は、犯人は 「必ず逮捕します」 と言っているが、彼女には逮捕する気はなかったとしか思えない。 クールに非情に立ち向かう。
最後は、まさしく西部劇の決闘シーンである。
相手は、自分のかつての上司であり、教官だったモーガン。
速水刑事は、モーガンの実力も性格も読んで 「必勝の作戦」 を立てる。
彼は自首など絶対にしない。
そのうえ実力は抜群で、まともに戦えば速水刑事は勝てない。
そこで、速水刑事はトレンチコートの中で拳銃を握って近づいていく。
(本当なら、モーガンの後ろに通行人がいて、速水刑事は発砲できないだろう)
ラストで○○○を、投げ捨てるシーンの速水刑事はカッコ良く。あのシーンは気に入っている。
6.Gメンたち
吹雪刑事と島谷刑事の2人は、殆ど姿を見せない。
また黒木警視正らも出番は少ない。鳴った電話を黒木警視正自身が取るのも珍しい。
(これらの理由は、下記7.に記載)
病院に立花警部ら3人は行って、速水刑事と話をするが特に活躍はない。
7.吹雪刑事について
この作品は、ゲストの速水刑事が主役で、吹雪刑事はワンカットのみである。
他の作品では、吹雪刑事は少しのシーンだけでもセリフがあったが、この作品はほんの一瞬の出演だけ。
<出演が少ないのは>
香港カラテ3部作の撮影は、KAJITA巡査さんのHPでの情報によると、80年11月26日から12月8日までとのこと。とするとこの288話の撮影時期と、バッティングするために、別班でそれぞれ撮影しているのだろう。
つまり、中島はるみと宮内洋さんは、別班で香港に行っていた為だと思う。
メンバーが少ないために、丹波さんが電話に出ることになったのではないか。