289話 裸の女囚たち

(注:ストーリーが判らないように解説していますが、ネタバレの内容は含んでいます)

<予告編のナレーション>

ハードボイルドGメン75 次の活躍は、

女囚刑務所に、囚人を装って入った女性Gメン。
前科のある古強者、売春常習犯、シャブの不法所持、
そして刑事殺しの女囚の夫は、国外からひそかに帰国した過激派だった。

だが、子供が怪我をした知らせにふと浮んだ母の顔。
やがて、殺人犯女囚を狙う冷酷な組織の武装蜂起が迫る。

次は、「裸の女囚たち」

    <監督:鷹森立一、 脚本:山村英司、小松範任>              DVDのトップ画像と同じシーン

1.作品について

「帰って来た女刑事シリーズ」のPart4で、最後の作品。
そして、津川蛍子警部補(夏木マリさん)の最後の作品でもある。

このシリーズは、 「帰って来た女刑事を、カッコよく見せる」 という目的があるため、派手なシーン・荒唐無稽と思われるシーンも幾つかあったが、この作品は外人も登場せず、他に比べるとそういった傾向は少ない。

とはいえ、津川警部補の射撃シーンや、彼女が最も苦手とする格闘シーン
(相手は女だが)さえもあり、逞しい女刑事としてのアクションを見せている。

                                               ↑ レギュラーの頃は、見られなかった表情

松延の妻 真弓は、刑事殺しを自首して服役しているが、不審だと睨んだGメンは、その女囚刑務所へ津川警部補を潜入させる。
そして事件は、テロに絡む事件へと展開していく。

途中までは、女囚刑務所内での地味な作品かと思うが、最後は派手な銃撃戦の火蓋が切られ、視聴者を楽しませてくれる趣向も凝らされている。

サブタイトルが出る場面は、通常は予告と本編では違うが、(少なくとも80年度は、これまで全て違う)、今回は同じシーンでサブタイトルが入っている。

前作288話に続いて、タイトルが思わせぶりである。個人的には別のタイトルの方が良かったと思っている。

  注:DVDでも発売されている作品なので、少し詳細に書くことにする。


2.松延真弓

 真弓は、自分の信ずるところ従って懸命に生きている。
 その真弓を演じる水原麻紀さんは、思いつめる表情が印象的で上手い。
            (262話「真夜中の偽装殺人」もそうだった)

 真弓の子供が、ハーモニカを受け取って喜ぶ姿は、素晴らしい演技だった。
 江島たみが、その子を見つめる時、自分の孫を見つめるような表情だったのが
印象的。
 このシーンは、殺人事件捜査の中での清涼剤のような効果があるだろう。


3.テロリスト松延

テロリスト松延(遠藤征慈さん)は行動的には、253話「白バイに乗った暗殺者たち」の2部作、テロリスト影山に似ているところがあると思う。(他にもいるかも?)
    (中近東の砂漠でのセリフや、超法規による釈放、日本への帰国、など)

しかし、松延はテロリストといっても、「影山」のような鍛え上げられたプロではない。 また1話完結ということもあるだろうが、リーダー以外の顔は全く印象に残らない。
そして女性を道具としか見ていない、視野の狭い男である。


4.他の女囚たち

さすが囚人だけに、一癖ありそうな連中ばかりが並ぶ。
しかし津川警部補アクの強さでは負けていない。
このあたりは、夏木マリさんの個性が光っている。

真相を探ろうとする、津川警部補の活躍が始まる。



柳田ミカ(吉岡ひとみさん)−−津川警部補と同時に入所するが対立する。

江島たみ(荒木道子さん) −−最年長者(牢名主というほどの、強い存在ではない)

吉村淳子(飛島裕子さん) −−江島の子分。
        (後の297話「ラッシュアワーに動く指」では、刑事役のゲストで、吹雪刑事とともに活躍する)



5.女囚ものドラマ

女囚ものは、キイハタンーの29話「その名は女外番地」が最初だろうか?

映画では、梶芽衣子さん主演の「女囚701号 さそり」のシリーズがある。
  (じつ私は、この映画は2作くらいしか見ていないので、詳しくはない)
この映画で松島ナミを演じた梶芽衣子さんは、妖艶な美女だが、夏木マリさんなら充分に対抗できると思う。


ところで、映画「さそり」と今回の作品には、類似点がある。
  1)さそりが入った独房は  701号
  2)津川警部補が入ったのは 17号 (701号をひっくり返したような号数だ)

  1)「さそり」の梶芽衣子さんの名前は、 「松島ナミ」
  2)「裸の女囚たち」は、「松延真弓」と、 「江島たみ」(房の長老) 

 偶然である可能性もあるが、似ているとも思う。


6.津川警部補の活躍

この作品も、レギュラー時代とは違う雰囲気だが、前回280話「パリから来た〜〜」の「鉄の女」のようなイメージに比べると、レギュラー時代にまだ近いかもしれない。 そしてアクションでは、レギュラー時代には見られない活躍をする。

津川警部補が潜入することになったのは、以前の事件との拘わりの為。
その拘わりが津川警部補の最後の行動にまで影響を与えることになる。

Gメン部屋で、津川警部補が黒木・立花と話をするシーンがあるが、279話「FBIから来た女刑事」のように、印象に残る演出はなされていない。
             (280話から2回目だから当然だが)


津川警部補鋭い眼光と美貌は、レギュラー時代と全く変わらず、その上に彼女の魅力を語るとき、外せないのが 「妖艶」 さ。夏木マリさんの妖艶な仕草、表情は天性のものだろう。指導されて到達できるレベルではないと思う。

1)潜入捜査

目的は松延真弓、しかしなかなかキッカケをつかめない。
なんとか、真弓に真相を語らせようとするが、夫をかばうのか話さない。
そこへ手紙が来たことがにより、蛍子は不審な女囚と接触することになる。

2)格闘

中盤までは、女囚刑務所だけで派手な場面はほとんどないが、珍しく津川警部補の格闘シーンがある。

津川蛍子は格闘が弱いために、レギュラー時代は何度も窮地に陥った。
しかし今回の相手は「女」だから、津川警部補も負けられない。 ミカ(吉岡ひとみさん)を相手にバトルを3回も繰り広げて懸命に闘う。

<1回目> −−右の画像
津川警部補の張り手による先制攻撃から始まる。最初は互角だったが、蛍子も訓練を受けているだけあり、ついに押さえ込む。

相手が女だからとはいえ、レギュラー時代を含めても、彼女が取り押さえる
のは初めて。−−しかしこの為、独房の中で2度目のバトルとなる。


<2回目>
 詰め寄るミカに対し、鋭い眼光で睨んで「怒るよ」と津川警部補。(右の画像)
 しかし、今度は蛍子が先制攻撃を受けて逆転できず、吉村淳子と2人による
 リンチを、津川警部補は受けてしまう。
 抵抗できなくなって、ピンチに陥った蛍子を救ったのは江島たみ。

 相手が女でも、2人なら津川警部補は勝てないのだろう。
     (キイハンター29話「その名は女番外地」で津川啓子が、女囚たちを相手に
            闘ったのとはやはり違う−−少しコメディ的だが津川啓子は強かった)



<3回目>
 犯行現場で、後ろからミカの腕をとる津川警部補。
 あの腕の取り方はおかしいと思うが、それはともかく犯行現場で取り押さえるのに蛍子は成功する。


3)射撃

この作品では、津川警部補の射撃も見られる。
それは実にカッコ良く津川警部補の大きな見せ場となって締めくくった。

超法規での釈放などもあり、テロリストへの津川警部補の怒りは強かった。
蛍子は、相手の反応によって、射殺するつもりだったのだろう。

記憶では、最後は西部劇の決闘のようだったと思っていたが、事実は違った。

<決闘ではない「理由」は>
津川警部補は、拳銃をまっすぐに男の胸板に向けて構えている。
あれでは、たとえ松延が射撃の名手でも絶対に勝てず決闘ではない。

通常ならば、「拳銃を捨てなさい」で、相手は仕方なく捨てる状況である。
しかし男は捨てず、津川警部補も挑発する発言を行なう。

松延も本来ならば、津川警部補を安心させる行為をして隙を作ろうとするはずだが、
闇雲に撃とうとする。 松永は短絡的だった。


7.Gメンたちの活躍

最後だけだが、Gメンたちは派手に活躍する。

<1発必中の銃撃戦>
警官に扮したGメンたちは、テロリスト一味と銃撃戦を展開する。 しかしGメン75で、これほど次々と射殺していくのも珍しい。


激しいと言うより、小気味良い銃撃戦
     −−Gメンたちの一発毎に、テロリストたちは
        命中し倒れていく。
これほど次々と命中すれば、何の苦労もないのだが。

特に、バイクに乗って片手撃ちで発砲しながら突撃してきて、撃たれるシーンが2度もあるが、あれなどは西部劇のインディアンの襲撃に似ていた。


 (280話「パリから来た〜〜」では、車椅子でまっすぐに走る津川警部補は10発も撃たれたが、かすり傷だったのとは大違い)

レギュラーによる通常作品と違って、過去のメンバーが帰って来た、一種のお祭りのような作品でもあるので、これほど気持ちの良いほど射殺シーンも可能なのだろう。


8.吹雪刑事について

前288話に続いて、帰って来た女刑事が主役で、吹雪刑事はGメン部屋でのシーンのみである。 3度も映っているが、珍しくどれもメインではない。

  <出演が少ないのは−−前作288話と同じだが>
香港カラテ3部作の撮影は、KAJITA巡査さんのHPでの情報によると、80年11月26日から12月8日までとのこと。とするとこの288話の撮影時期と、バッティングするために、別班でそれぞれ撮影したのだろう。

ところが、宮内洋さんが最後の銃撃戦に参加できたのは、香港カラテの出番が吹雪刑事に比べると少ないからだろうと思う。

個人的には、射撃の名手の吹雪刑事が、あの銃撃戦でテロリストを撃ち殺す
シーンが欲しかったと思っている。




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