294話 香港の女カラテ対Gメン Part3
<予告編のナレーション>
ハードボイルドGメン75 次の活躍は、
香港警察に捕えられた、日本人麻薬売人の口から、
生き別れの娘の消息を聞いた、麻薬取締りの警視。
娘はなんとコネクションの女カラテ使い。
だが警視は殺され、父親の愛情に目覚めた女カラテ使いが、
女性Gメンと少年を助け出したが、全ては敵の罠。
絶体絶命の時に飛び込んだ、雲の上のドラゴンが巻き起こす、
必殺のカラテ決闘。
「81 香港カラテ ロケシリーズ
香港の女カラテ 対 Gメン Part3」
<監督:山口和彦、 脚本:高久 進>
注)Part1で書いたが、東映ビデオは 「Gメン75の人気投票」 を、
2008年に実施し、この3部作のPart1が、見事に" 第4位 "に選ばれた。
また、Part2が "7位" 、Part3が "8位" となり、 3作全てがベストテン入り
するという、快挙となった。
1.作品について
香港カラテシリーズ最大の3部作も、いよいよ Part3
主役は、合気道が得意な吹雪刑事だが、カラテ軍団のパワーの前に、
苦闘が続いている。
Gメンたちが、彼女を助けるべく活動を開始し、張雲竜もやっと動き出した。
Part2のラストでは、杏子が吊り天井の仕掛けに襲われてしまう。
絶望的な状況におかれながらも、吹雪杏子は懸命に立ち向っている。
各国の取締り組織に挑戦する、香港コネクション。
第3話は、日本人孤児の話が持ち上がり、歴史問題は複雑な様相を見せる。
白鳥警視と秀欄の出会い。 この2人が親子だということから、展開は新たな方向に変化していく。
杏子からの連絡の成功で、敵のアジトを発見したドラゴンとGメンは、カラテ軍団に最後の闘いを挑む。
銭(ヤン・シー)が、女カラテ使いが、本田貢が、彼らの前に立ち塞がる。
コネクションのアジトで、ドラゴンがカラテ使いとの死闘を演じる。
2.張姉弟
姉 : 張麗花(中島めぐみ
(中島はるみの実妹))
弟 : 張少年(中井徹)
少年は、鳩を飛ばすことに成功した。
その直後、鳩へ向かって「槍」が鋭く投げられる。
<伝書鳩>
女カラテ使いの懸命の一投。 しかし杏子と少年の必死の願いを乗せて、
槍をすり抜けて伝書鳩は、大空に飛び立つ。 (右の画像)
僅かに数秒なのだが、まことに感動的で秀逸なシーンである。
ところで、
伝書鳩への伝言分は、吹雪杏子が書いているが、通常なら少年の姉に出すのだから、張少年が書くべきだとは思う。 伝言分は中国語で書かれているから、吹雪刑事は中国語も堪能ということになる。
3.呂秀蘭(アニー・リー)
ナイフ投げが得意な彼女は、カラテを使う場面は無いが、一応タイトルの女カラテの1人。 登場シーンとしては、こちらの方が多い。
秀蘭は、幼い頃に別れた父親を捜していた。
そこで本多貢の手引きで、娘を捜しているという白鳥警視と出会う。
突然現れ、父親と名乗る男に、戸惑いと反発をする秀蘭。
しかし反発するのも相手が生きているからこそ。 その父親が殺されたとなると話は別になる。 秀蘭はその感情に大きな変化をもたらす。
果たして、白鳥警視と秀蘭は本当に親子なのか? 違うのか?
(途中省略)
初めて、吹雪刑事に自分のことを語る秀蘭。 (右の画像)
4.カラテ軍団
1)銭烈山(ヤン・シー)
銭烈山を演じるヤン・シーは、香港カラテの代名詞ともいうべき男。
今回は、吹雪刑事を苦境を落としいれ、島谷刑事も撃退した。
いつもながら、Gメンとドラゴンの前に、強力に立ち塞がる。
裏切った秀蘭を睨みつける銭烈山は、さすがに迫力がある。
秀蘭は仲間だったときと違って、恐怖におののく。
最後の、ドラゴンとの一騎打ちは必見。
2)女カラテ使い
コネクションの女幹部 沙翠玉(オー・メイメイ)は、ヤン・シーとともに、
メインとなるカラテ使い。
槍を投げるシーンが2度あるが、このシーンは実にカッコいい。
女カラテ使いと吹雪刑事との闘いを予想したが、期待に反して女カラテ使いは、"卑怯”だった。 素手では吹雪刑事と一度も闘おうとしない。杏子と相対するシーンは4度もあるが、全て武器をもって構えている。
最後は、ドラゴンにも槍を持って闘いを挑む。
5.白鳥警視
白鳥警視(鈴木瑞穂)は、自らの弱みを本多貢に気付かれて、苦境に陥る。
遺書を胸に、ある行動をとる。
6.本多貢
本多貢は、辻萬長さんが演じているが、はまり役である。 (右の画像の左側)
あの鋭い眼光や不敵な面構えは、この作品の本多にピッタリだった。
(283話「オホーツク海の幽霊船」 の犬丸捜査官も良かったが、やはり悪役が似合う)
白鳥警視を手玉に取り、香港コネクションにも上手く入り込んでいる、かなりの「悪」である。
7.雲の上のドラゴン
Gメンの助っ人「張雲竜」を演ずるのは、ブルース・リャン(梁小龍)で、力強いカラテ技を見せてくれる。
伝書鳩を使った、吹雪刑事からの連絡で杏子らが監禁されている場所を知ったドラゴンは救出に向かう。 必殺のヌンチャクを持って。
高い塀から飛び降りるのは現実離れしているが、香港カラテシリーズならこれが許される。 Gメンの通常の作品ならまず無理で、キイハンターの千葉真一さんでもやらなかったと思う。
カラテ使いたちをぶちのめしていくドラゴン。 槍を持った女カラテ使いと対決し、
そしてヤン・シーとの対決を迎える。
8.Gメンの活躍
Gメンは黒木警視正以下の全員が香港に集結しており、吹雪刑事からの連絡でコネクションのアジトに突入する。
しかし全般としては、80年度の香港シリーズなのに、Gメンたちの活躍が少ない。
81年度と違って、空手の島谷・田口、 柔道の中屋、 合気道の吹雪と、 揃っているにも拘わらずである。
島谷刑事は、せっかく吹雪刑事と一緒に来ているのに、Part2以外は出演シーンそのものが少ない。
もう少し、島谷刑事の活躍を入れて欲しかった。
Gメンの活躍が少ないのは、ひょっとしたら香港側に気を使っているのかとも思う。
やはり 「267-268話」 や 「270話」 のように、ドラゴンの来援はあるが、吹雪・中屋・島谷・田口の
4人の総力戦で、カラテ軍団を叩きのめす活躍は"最高”に良かった。
9.吹雪刑事の活躍
吹雪刑事の主役だが、カラテ軍団の人数と武器に圧倒され大苦戦となる。
杏子は苦闘しながらも、持ち前のタフな精神力で立ち向かうが、第2話でも
危機に陥ってしまった。
第3話は、杏子が"吊り天井”の部屋に閉じ込められた場面から始まる。
吹雪刑事は第1〜2話では失神するなどかなりやられたので、第3話での杏子の活躍が期待された。
1)吊り天井 秀蘭と向き合う吹雪刑事
吊り天井に張少年と閉じ込められた吹雪刑事。
天井から、刃物が一本ずつ落ちてくる、恐怖のシーンから始まる。
少年とともに、さすが気丈の杏子も恐怖におののく。
杏子は、恐ろしい刃先から、少年を守るように上にかぶさる。
死の直前という絶望の時、自らを犠牲にしても、少年を守ろうとする吹雪杏子のタフな精神力と行動は、何度見ても美しい。
やがて、、、その吊り天井が、、、杏子と少年に覆いかぶさってくる。
2)秀蘭
吊り天井から逃れた杏子と少年は、階段で待ち受ける秀蘭にギョッとする。
しかし、秀蘭には変化が現われていた。
唯一の肉親を知り合ったとたんに、殺されてしまった悲しみ。
秀蘭が、感情を抑えながらも、敵の杏子に写真を見せる。
その姿をみた吹雪刑事は、彼女の変化を察知した。
杏子も秀蘭に対して、急速に親近感を覚える。
自分を罠にかけた悪女だったが、杏子は直感で秀蘭を信用する。
3)本多貢の話
本多が女カラテ使いの沙との裏話を、偶然に聞くことになる吹雪刑事。
しかし、
Gメンに限らず刑事ドラマでは、「悪魔のような偶然」 が良く発生する。
ドラマでは、この程度の偶然は、全然不思議ではない。
4)囮になって疾走
吊り天井から逃れた杏子たちは、外部への連絡にも成功する。
しかし、見つかりやすくなった。 このままでは、張少年に危険が及ぶ。
少年を守るためには、カラテ軍団を自分に引きつけるしかない。
吹雪杏子は自分が"囮” になるために、隠れていた部屋から飛び出していく。
今度捕まえられたら、吹雪刑事は再びリンチにあう。 或いは命は無い。
幸いにも、彼女は走りが自慢で、男に負けないスピードがある。
もし追いつかれら、、、その時こそ、合気道で対決する。と覚悟を決めた。
杏子は意識的に目立つように、勇敢に駆け出していった。
計画通りカラテ使いに見つかったあと、 通路を、、階段を、、杏子は懸命に走った。
女のスピードは男の90%以下と言われるが、 やはり吹雪刑事の足は速かった。
カラテ使いたちは、 全力で彼女を追いかけるが差はまったく詰まらない。
吹雪杏子が、その特技を生かした活躍シーンである。
5)非現実的?
(1)終盤前に、杏子が駆け寄るシーン
隠れていた吹雪刑事は、現実的には考えられない行動をする。
杏子の捜査は常に積極的で、相手を気遣うといっても荒唐無稽すぎる。
カラテ軍団のど真ん中に、1人で秀蘭に駆け寄るなど、あり得ない行動で、杏子がこんな無謀な事をするはずが無い。
考えられるのは、吹雪杏子には、自らの危険を顧みないという強い個性があるので、秀蘭の危機に思わず気づかって駆け寄ったということだろうか。
(2)合気道で抵抗しない
彼女が、合気道を使う気配すらなく無抵抗で、簡単に捕まるのも非現実的だ。
しかも 「この女に、もう用は無い」 と言われた後である。
このままでは殺される。と思えば、 当然 全力で闘うだろう。
ところが殆ど抵抗しない! 合気道を得意とする吹雪杏子が、何の抵抗もしないはずがない。
<台本では>
吹雪刑事と、カラテ使い3人が闘い始めたところで、ドラゴンが救援に入る。
つまり台本では、杏子は捕まってはいない。
以後は、ドラゴンの描写になるが、吹雪刑事も合気道で戦い続けていて、脱出はしていない。
6)救出
待ちに待ったドラゴンの登場。
数人に囲まれた杏子は、危ういところを助けられる。
しかしここでも、吹雪刑事の活躍場面が封じられている。
吹雪杏子は捕まえていた男を、肘撃ちでのけぞらせて脱出するにとどまり、ドラゴンは杏子を逃がして1人で闘う。
ファンとしては、吹雪刑事がカラテ使いを、せめて1人でも投げ飛ばして欲しかった。
「1対1」 ならカラテ使いに勝てる実力がある吹雪刑事を、1人主役に 両腕の血で、吹雪刑事の苦闘がうかがえる
据えながら、そのような場面を用意していないのが不思議でならない。
10.格闘場面を振り返って
1)Gメンの格闘
上記 「8.Gメンの活躍」 でも書いたが、今回はGメンの活躍が少ない。
Gメン最強の女刑事と、草野刑事の次に強い(と思う)島谷刑事の2人が、香港に行き、そのあとで全員が香港に行っているにも拘わらずである。
殆ど1人主役の、吹雪刑事は失神するなど何度も苦戦し、島谷刑事もやられてしまう。 そしてこの展開ならば、第3話は吹雪刑事と島谷刑事が、カラテ使い相手に活躍するシーンが、用意されているとファンなら期待する。
ところが、そうはならない。
ドラゴンの活躍は素晴らしい。 しかしながらファンは、レギュラーに思い入れがあるのだから、Gメンが悪者を倒す活躍があってこそ溜飲が下がり、気持ちがスカッとする。 ところがそれがなく、目覚しいのはドラゴンの活躍のみ。
ひょっとしたら、香港の一流スターである、ブルース・リャンらの出演などで、香港側にかなり遠慮したのだろうと思う。
2)吹雪刑事の格闘
3話もあるのに、吹雪刑事が 「対等の条件」 で格闘する場面が一度も無い。
吹雪刑事は強いが、圧倒的に不利な場面の連続で、条件が悪すぎる。
1)ヤン・シーは強すぎる。
2)常に相手が多人数である
3)その上に、武器も持っている
杏子が倒されるのも、これだけの不利な状況では仕方がない。
吹雪刑事の活躍場面は作れるはずだし、合気道を使えるシーンが何度もあったのに、吹雪杏子の本来の強い場面が少ない為に、彼女はあまり強くない印象になってしまっているのが残念である。
これらは、香港のスター出演に配慮し過ぎた為だと思われる。ラストも香港スターばかりの格闘で、美味しいところを渡してしまっている。
せめて最後は、銭烈山 (ヤン・シー) は、ドラゴンが倒し、
女カラテ使いには、タイトル通り、Gメンの吹雪刑事が一騎討ちで倒す展開にして
欲しかった。 女カラテ使いが素手ならば、吹雪杏子が本来の強さを発揮すれば、
勝てると思う。 例え、槍を持っていても、一対一なら展開を工夫出来るだろう。
本来は、Gメンが香港カラテの殺し屋どもと対決して倒すのが基本であり、
今回は、合気道に熟達した吹雪刑事を主役とし、杏子が香港カラテたちと
苦闘しながらも、事件を解決していくというストーリーにして欲しかった。
もちろんそこへ、ドラゴンの助っ人は必要であるが。
以上、思うままを書いたが、3部作での1人主役という重責を、吹雪刑事がまかされたことについては感謝したい。
全355話のうち、3〜4部作は計4度あるが、3部作を一人で主役を演じたのは吹雪刑事だけである。
吊り天井の恐怖 陳警部の強引な取り調べ 吹雪刑事の上から吊り天井が
危険の最中でも、他人を気遣う杏子 ドラゴン vs 銭(ヤン・シー) 白鳥警視と秀蘭