■「そらうた」(フロントウィング) レビュー
●はじめに
珍しく、スルーしていた作品のレビューを書くのですが、
…すいません。
「フロントウィング」というと、ぶっ飛んだ設定、ハイテンションな不条理ギャグ、
…のメーカーのイメージが定着してまして、この作品、やっていなかったんですよ…。
で、何となく始めてみたら、その辺の「らしさ」は若干残っているものの、
きちんとした作りで、非常に好感が持て、なおかつ切ない気持ちにさせられました。
ということで、今回も色々と書いてみたいと思います。
いつものように申し上げておきますが、出来るだけぼかしたつもりでいても、
例によってさり気なくネタバレに触れることもあるかと思います、ご注意を。
では、また後でお会いしましょう。
●あらすじ
瀬戸内海を望む、小さな田舎町。
この町に住む少年、小西道隆は、子供の頃に両親を亡くし、従姉の霊子(たまこ)と暮らしていた。
彼には、不思議な能力があった。
それは、魂だけとなった幽霊達を見る事が出来、その言葉を聞き、触れられるという能力。
そんな能力のせいか、彼は沢山のさまよえる者たちが、
世界との別れを告げ、旅立って行く姿を何度も目にしてきた。
魂だけとなった人の声は、誰にも届く事はなく――
誰にも触れる事が出来ず、ただ、世界から隔離された事を、否応なく思い知らされる。
そして魂は、死を受け入れ、別れの言葉を口にする――
「――さようなら――」
――それは、魂の死、という紛れもない現実――
夏休みも終わりに近づいたある日。
何かと世話を焼いてくれていた、祖母が、亡くなった――
親しい人だったのに、泣く事も、出来なかった。
僕は、冷たい人、なんだろうか――
――翌日。
「たまねえ」が、いなくなった。
一通の、置き手紙を、残して。
戸惑いつつも、新学期が、始まる。
悲しい別れの予感を孕んだ、新たな出会いが、始まる――
●システム
きわめてオーソドックスなタイプのアドベンチャーゲームです。
「物語を楽しむためのゲーム」だったりしますので、攻略はそれほどでもなかったり。
結果的に言うと、攻略に影響しないダミーの選択肢が多いので、
2周目以降、選択していない項目を選んで、反応を見てみるのも良いかと。
END対象ヒロインは5人いますが、霊子だけは他の4人をクリアしないと行けない仕様になってます。
システム画面で、アイコンが表示されます(進んでいるルートのヒロインが明転します)ので、
セーブ時とかに確認してみると良いでしょう。
なお、初回版にはちょっとした不具合があり、修正ファイルが公開されています。
インストール後、スクリプトバージョンを確認した方が宜しいかと思われます。
(最新はVer.1.03です)
●グラフィック
どちらかというと、「智代アフター」でおなじみ(笑)なんですが、
原画担当はフミオ氏がなされております。
氏が原画を担当されている作品としては、他に「ゆきうた」(フロントウィング扱い)
がありますが、この作品が2作目という事もあり、絵的にはそれほど問題はありませんでした。
ただ、一部の立ちCGとかで、「あんた誰?」みたいなものも若干ですが有りました。
敢えて苦言を呈するなら、それくらいでしょうか。
枚数を確認しておりませんが、背景CGに関してはちょっと少ない印象を受けました。
「田舎町=もっと色んな景色がある」、という偏見かもしれませんが。
イベントCGなどでは、「後ろからそっと抱きしめる」系の構図が多く、
ヒロインの満ち足りた表情といい、ロマンチックな感じがして良かったと思います。
●サウンド
「ねこ」作品とかでおなじみ、「Elements Garden」様が担当されている関係上、
突出したものは少ないですが、
のどかな田舎の雰囲気とか、秋を迎えつつある雰囲気にマッチした楽曲が多いですね。
主題歌は、これまたおなじみの佐藤裕美嬢が担当されております。
ただ、軽快でさわやかなテンポの曲なので、
もうひとつ、切ないバラード調の歌も欲しかった所です…この辺はちょっと惜しいです。
(エンディング時にはBGMではなくてボーカル曲が欲しかった、という事です)
BGMとしては、やはり別れのシーンとかで流れてくる、
バイオリンを中心にした楽曲のイメージが強力に残っていたり。
弦楽器って、結構いいな、と改めて思ったり。
●ストーリー
全体を貫くテーマとしては、「愛ゆえに」なわけですが、
相手の意思や気持ちが分からないからこそ、すれ違ってしまったりとか、
好きだからこそ、今の状態でい続けることは出来ない、と苦渋に満ちた選択を強いられたり、
乗り越えていって欲しいから、忘れて欲しいと口にしたりとか、
どんな犠牲を払ってでも、愛する者を取り戻したい、と願ったりとか。
それぞれの立場から描かれる、愛のかたち。
最後のシナリオをクリアした時、納得はしないまでも、理解は出来ると思います。
そんな、人の世の情念を描いた作品ではなかったかなと。
●シナリオランキング
毎度毎度のことですが…各ヒロインのシナリオの関係上、
完全なパラレル世界の結末というよりは、少しづつ事件の真相に迫る感じなので、
以下に挙げた順番で攻略していった方が良いかもしれません。
好き順位に関しては、例によってコメントで判断していただければと。
◆知夏シナリオ
割と基本に忠実?な恋愛もの、だったような気がしたり。
主人公がトウヘンボクなのは設定上致し方なかったわけですが…。
ほかのヒロイン達も交えて、メデタシメデタシ…と思わせておいて、
ほんの少しだけ、「あれっ?」と思わせるところが心憎いです。
…で、事件の真相に迫るべく、2周目を手がけてしまう罠、にハマるシナリオでした。
◆真奈シナリオ
事件の直接的な被害者であるヒロインのシナリオなんですが、
「主人公と一緒に真犯人を見つけ出す」かと思いきや、
ひとり残された親友を立ち直らせるために頑張るお話になりました。
元々彼女が未練を残してしまったのは、親友である澪が原因な訳で、
それを取り除くことが彼女の望みだったり。
本来の目的を果たした後、今度は彼女自身の望みを叶え、
…あるはずのない、言葉をどんなに尽くしても足りない、最後のひととき。
切なさで一杯になりますね、こういうお話。
◆澪シナリオ
ありがちでは有っても、起こり得るお話ですね。
年月を重ねた場合であっても、別れは常に悲しいものですし、
ましてや様々な可能性を秘めた若い身でそうなったりした場合、
その哀しみは想像を絶するものがあります。
別れってのは、いつも突然だと思います。
「さよなら」の一言も無しに、ある日突然、視界から消えてしまう事だってあるわけで。
でも、認識は出来ないものの、親友はそこにいたわけで。
キチンとしたお別れが出来るというのも、それはまた幸せなことだったのではないかと。
このシーンは、涙なくしては語れないと思います。
◆葵シナリオ
不思議系に分類されるヒロインのシナリオなんですが、彼女もまた、
真奈とは違った形で、事件とのかかわりを持っていたり。
このシナリオにおいて、初めて明かされる彼女の本当の素性。
核心に迫るかに見えて、何か矛盾を孕んだ事件の結末。
でもってまた、切ない気持ちで一杯になりつつ、後日譚へと続く罠。
◆霊子シナリオ
先の4人をクリアすることでプレイ可能になる、いわば後日談的なシナリオなんですが…。
まぁ、え○の一つでも無いと、華がないですから…(苦笑)。
選択肢は一切なく、事件の真相が次々と明らかになり、
物語は一つの結末へと導かれます。
劇中で語られている、本物の「そらうた」がどんな「うた」なのか、かなり気になっていたり。
●キャラランキング
えっと…毎度のことなんですが、今回も敢えて順位をつけず、コメントしてみました。
筆者的に一番のお気に入りが誰なのか、文面で判断していただければ幸いです。
◆佐倉 智夏(CV:神村ひな)
幼馴染&フロントウィングお得意のぶっとび担当のヒロイン。
挨拶の代りに怪しげなマイブームらしき「何か」を発することが多いです。
いつも暗めな主人公を励まそうと、無理してハイテンションを装っていると思えば…
…カワイイと思うかもしれません。
にしても中の方のキャラのせいか、「カ○ナねーちゃん」を連想してしまう自分…
◆永澄 真奈(CV:赤白杏奈)
一般的なギャルゲーならば、彼女は「気さくな女友達キャラ」だったのですが、
本作においては、主に悲劇的側面を背負った表側のヒロイン。
キチンと話をするようになったのは、なんと幽霊になってしまってから。
男性に対する慣れ、みたいなモノがあるように見えて、実は男友達自体、
主人公が最初で最後。
少しづつ慣れていって、最後には××な関係に至るあたり、妙に可愛かったり。
後に出たドラマCD等では主役級の扱いになっている所を見ると、
本作のメインヒロインはこの方では無いかと。 <力説
◆夕凪 澪(CV:まきいづみ)
真奈の親友キャラ。事件を機に、主人公と急接近するわけですが…
この方も、一般的なギャルゲーならば、「引っ込み思案な大和撫子」というところです。
(でも個別シナリオに入るまでは、ちょっとおっちょこちょいな面も…)
突然いなくなってしまった親友の死を悼み、涙するシーンが印象的でした。
後、ラストシーンで見せた菩薩のような柔らかな笑顔…
愛娘の愛くるしい笑顔と共に、素敵な表情を見せていました。
…こんな家庭、築いてみたいものです。 <無理
◆瀬戸内 葵(CV:野神奈々)
真奈が表側の悲劇的ヒロインならば、こちらは裏側のヒロイン。
所謂「不思議系」でちょっとズレ気味の彼女ですが、それにはちゃんとした理由があったり。
表面上は「記憶をなくした少女」という事になっていますが…。
飄々としているように見えて、実は一途な所があったり、中々可愛いキャラでした。
◆小西 霊子(CV:吉田皐月)
幼い頃両親を亡くした主人公の母親代わりであり、また姉でも有った彼女ですが…
ぽけぽけとした言動、メガネ、…そのくせ○乳(ぉ、
ラストシナリオを請け負うキャラとしてはちょっと弱めだったり。
…まあ、悲劇の当事者たるヒロイン達と比べてしまうから、そう思ってしまうのでしょうが。
淡々と進んでいってしまったから、あまり印象に残っていないのか、
単なる謎解き要員だったから、ヒロインとしての風格?に欠けたのか…。
●妄想プレビュー編 〜智夏のひとこと(多い)コメント付き〜
◆その1・智夏編
――幼馴染の、アイツ。
何でか、いっつもたまねえ、たまねえって…
理由はどうあれ、たまねえが居ない以上、あたしが、道隆を支えてあげないと…
――でも。
中々感情を表に出さないあいつのこと、分からなくなってきて不安になる。
なんだか妙に気負いこんじゃって、空回りしちゃう――。
――わたしは、道隆が、好き。
でもあいつは、私のことどう思っているのか、全然分からない。
――そんな気持ちは、行動の結果に出てしまう。
…もしかして、わたし、嫌われちゃってる?
なんだかあの事件以来、道隆は他の女の子と一緒に帰ったりしていた。
自殺したって言われてる子の、親友だったって、女の子。
もしかしたら、事故とか自殺じゃなくって、何かの事件に巻きこまれて、
本当の犯人は別にいて、あの子のことも狙っているって…
――わかっている。
わかっている、つもりなの。
――でも、
私のこと心配してくれた子達が、勝手なこと始めたりして…
――そんなこと…
話せる、わけないじゃない…
道隆に、ぶたれた。
――わたしたち、もう、おしまい、なの、かな…
「私に優しくしてくれたふたりが傷つくの、もう、耐えられないから…
…だから、おねがい…なかなおり…して…」
――ありがとう。
――やっと、気持ちが、通じ合えたね…
***
猿轡をかまされて、後ろ手に縛られて、目隠しまでされて――
でも、怖くなかったよ――
――絶対、道隆が、助けに来てくれるって、信じてたから――
***
「でへ…でへへ…やっと彼女にしてもらえたね…でへ…」 <ニヤケ顔
「や、だからおまえ、そんな事してっから、引かれてたんじゃねぇか?」
「ぶー、元気付けようとしてただけなのにぃーーーっ!!」
◆その2・澪編
――彼女とは、夏休み中に、最悪の出会いをしていた――
もっとも彼女は、その事を知らなかったのだけれど。
新学期が始まって以来、彼女はいつもふさぎこんでいた。
――親友が、何の前触れも無く、居なくなってしまったのだから――
幽霊となった真奈が一番心配していたのは、彼女の事だった。
真奈には、自分の事内緒にしておいてくれ、って言われたけど、
…なんだか騙しているようで気が引けるけど、それで彼女が立ち直ってくれるのなら――
彼女は最初、一緒に真奈を殺した犯人を捜そうとした。
でも、殺された当の本人は、そんなこと、望んではいなかった。
あの日、絵本の話の続きを考えようとして、図書室で別れた。
二人で完成させようとしていた絵本は、何処へ行ってしまったのか。
僕も、真奈も、続きが見たいと思った。
出来れば、澪ちゃんだけで、ひとりで完成させてもらいたい。
――もう、一人でもやっていけるって、真奈を、安心させてあげるために――
絵本が、完成した。
真奈が飛び降りたその現場に佇み、完成した物語をくちずさむ――
――それは、親友の死を乗り越えていこうとする、悲しく、つらい決意のものがたり――
お話の中の動物達は、みな、誰かに似ている、気がした――
僕にだけ聞こえる、真奈の、嗚咽にも似た声。
ふたりの、震える肩を、…そっと、…抱き寄せた。
搾りだせた言葉は、お互いの名前だけ。言いたい事は沢山有る筈なのに、ただ、それだけを繰り返す――
「…ずっと、私の事、見守っていてくれたんだね、真奈…」
もう、ひとりでも、大丈夫って事、見届けて、欲しいから――
「…真奈、あなたも、見届けて」
私の分も、幸せになって欲しいから――
「おめでとう、澪。ちょっと、妬けちゃうな…」
これなら…もう、あなたは私がいなくなっても、大丈夫だよね――
「道隆…。澪を、澪を、お願いね…」
それでも、別れのつらさを振りきるには、足りないものがあるから――
「お願い…真奈の事、忘れるくらいに、私を、いっぱいにして…」
***
「何よ、みちたかぁ〜、私と違って、えっらい扱いが違うようなんですけどぉ〜」
「ま、ファーストコンタクトの差、かもなぁ…」
「ふんっ、アタシの方が胸は大きいわよ(怒)」
「…だから、そういう事言ってるから引かれるって…」
◆その3・真奈編
隣のクラスで、いつも二人一緒にいた、髪の長い、女の子。
今まで、特に接点とかはなかったんだけれど…
夏休みが終わった新学期の朝、ありえない場所に、一人の少女がたたずんでいた――
――そうか。
自殺したって言われてたのは、あの子の事だったのか――
あの時、あんなに離れていたのに、目が合った。
僕は最初、今まで見てきた自殺者がそうだったように、彼女もまた、
何か、人には言えない、悩み事を抱えて、自殺したんじゃないかって、思ってた――
廊下に出たら、彼女が話しかけてきた。
一人ぼっちの世界で、漸く見つけた、たった一人の、話し相手。
不思議だった。
話せば話すほど、彼女には死ぬ理由なんて、何処にもなかった。
むしろ、生きている人たちより、人間くさくて、…
…なにより、見かけとは裏腹で純情で、年相応の女の子らしかった。
ただ、それでも、やはり幽霊になってしまった以上、
この世界でやり残した事とか、未練みたいなものはあるわけで。
それは、彼女を失った悲しみにくれる、親友の事。
自分と作り上げる筈だった、彼女の絵本を完成させる事。
安心して旅立てるよう、彼女の成長を見届ける事――
***
やっておきたかった事は、もうすぐ、終わりを告げるから――
「澪の事、ありがとう…
これで、後思い残すことは、自分の事だけ、ね…」
でも、その途中でもうひとつ、確かめたい事が、できたから――
「…だまって、ただ、…聞いてくれるだけで、いいの…」
叶えられなくてもいい――
ただ、伝える事さえ出来れば、それでいい、…と思っていた――
「ありがとう――
――あなたは、あたたかいね――」
叶ってしまうと、今度は、もう、どうにも出来ないことを、願ってしまう――
「――もっと早く、もっと違った形で、出会えていたなら――」
だからせめて、希望となるべき言葉を、選び出すしかできない――
「もし――
もしも、生まれ変わる事があったなら、もう一度――」
――最後の夜が、優しく、二人を包む――
***
きちんと、お別れの言葉を伝えたかったから、彼女との約束を、破る事にした――
「顔を合わせたら、別れるのが辛くなるっていうのに…
…でも、ありがとう…」
束の間の幸せだったけど、もう一度、今度は離れ離れにならないように――
「――あなたの事、絶対、わすれない――」
――月の輝きが二人を照らし、一人の影が、…
…ゆっくりと、天に吸い込まれるように、消えて行く――
***
「くっ…道隆って、結構ロマンチストなのね…」
「まぁ、おまえには悲劇のヒロイン役なんて無理だしなぁ…」
「学園内の人気なら私の方が上よっ!!」
「…おもにバラドルとしての人気だけどな…」
◆その4・葵編
記憶をなくした、クラスメイトの少女。
彼女が記憶を無くして以降、何故か、話をするようになっていた。
何も無い空間に向かって、しゃべる僕に、彼女は、ツッコミを入れてきた。
――え?
…僕以外に、幽霊が見える人が、いた…。
彼女の記憶を取り戻そうと、色々手伝ったりしてみたけど、
手がかりらしきものは全くなかった。
途方にくれた僕たちは、彼女の家に、まだ手がかりがあるのではと思い、
彼女が住む、マンションへと、足を踏み入れた。
そこには。
負の感情に満ちた、ひとりの、少女がいた――
彼女は、愛憎の末に裏切られた、悲しい、少女だった――
「あなたも…私と同じ地獄に、落ちてみる…!?」
「――やめてーーーーーーっ!!」
きっかけは、炎と火事の記憶――
「あなたは…いったい…だれなの…!?」
――ずっと彷徨っていたわたしは、〇〇〇〇あおい。
でも、心残りがあって、あの場所から、…離れられずにいた。
うん…やっと、望みが、叶えられたから…わたしは、あるべきところに、帰らないと…
***
愛し合う者が引き裂かれる様を見るのは、もう、いやだから――
「あなたは、それでいいの?ねえ!!…好きあっているのに、どうしてっ!!」
せめて、僕一人だけでも、彼女の事を、祝ってあげたいから――
「お誕生日、おめでとう、葵ちゃん――」
彼女は最後に、一人で旅立つ事を、決めていたから――
「道隆がそばにいたら、きっと、決心が鈍ってしまうから…ひとりで、いいの…」
楽しかった思い出を胸に、一人の少女が、
一縷の望みを託して、一人の少年が――
「…わたし…しあわせだったよ…ありがとう…みちたか…」
***
「なんだよ〜、今回は智夏ちゃんおいてけぼりじゃないですかぁ〜」
「ま、お前がいると、雰囲気ぶち壊しかねんからなぁ…」
「チャオソレッラーーーーッ!!」
「…だから、その意味不明なのやめろって…」
◆その5・霊子編
短い間に、色んな出会いがあり、別れがあった――
胸が、しめつけられる、そんな、気がした――
――これが、悲しみ、なんだろうか――
たまねえが、帰って来てくれた。
事件は一応解決したけれど、何かが、ひっかかる。
子供の頃からずっと、一緒に暮らしてきて
まるで、そこに居る事が、当たり前になっていて。
意識しだしたら、もう、止める事は、出来なくなっていた――
***
誰もいない夜のプールに、月の光がさす――
波立つ水面に、きらきらと反射する光と、たまねえの姿。
「みーくんは、わたしで、いいんですか…?
…智夏ちゃんの事、ちゃんと、…けじめ、…つけられる?」
生きてるって事は、たぶん――
人を好きになれる事じゃないかって、思った――。
***
あのひとのした事は、決して許されることじゃないと思う。
――それでも、美しいと、思った――
愛する事って、なんだろう。
ひとを幸せにしようとすればするほど、誰かが不幸になってゆく――
辛かったことも、楽しかったことも、いつしか思い出に変わり、
ひとはまた、あらたな一歩をあるきだす――
生きているって、すばらしいことだと、僕は思う――
何処までも続く、青い空。
――美しかったのは、その有り様か、それとも、聞こえてきた「そらうた」なのか――
***
「あ〜あ…結局最後になってまた、たまねえにおいしい所持ってかれちゃったかぁ〜」
「いっそのこと、は○かにひんむかれて捕まってみるとか?」
「…立ちCGで体張った一発ギャグかましてみたけど、それじゃダメ?」
「…(これで最後だと思って、おもいっきりハジケてるよなぁ)…」
●考察っぽいものとか
この作品、いわゆるファンタジー要素がかなり薄めに設定されていますが、
幽霊とか、魂とか、あながち存在を否定しきれないものが多かったり。
もうひとつは、死んだ人を生き返らせるという、世の摂理に反する技が伝えられている事。
邪法、と言ってしまえばそれまでですが、
それが邪法とされたのは、その存在が人々の心を狂わせるからだと。
自分にとって、何よりも大切なひと。
不幸にして失ってしまった以上、取り戻せるものなら取り戻したい。
ただ、「そこにいる」という感覚だけがあって、
見る事は勿論、話すことも、触れることも出来ないもどかしさ。
ただ、たったひとこと、謝りたかっただけなのに、伝える事すら出来ない。
普通に考えれば、死んだ人は二度と帰ってこないからこそ、諦めもつくわけで。
もし、自分の家族や恋人にそういう事が起こったら…
本当に、取り戻す方法があるとしたら…
愛が深ければ深いほど、それを成し遂げるために必死になるでしょうね…
この作品は、そんな物語でした。
●ドラマCDとか
本作の人気を受けて、ドラマCDがリリースされておりますが、軽く触れておこうかと。
本編とは設定が異なっておりますので、真奈ファンの方にオススメだったり。
ま、要は真奈が幽霊にはなっていなくて、主人公とツンデレ寸前?の関係になっていたり。
各ヒロインにもそれぞれ見せ場(笑)みたいなモノもあり、
ついでに書き下ろしのイラストもいくつか入っていたりしますので、
本作のキャラが気に入ったのであれば、是非とも購入しておくべきアイテムかもしれません。
…にしても、レーベル部分の真奈さん…破壊力抜群です(吐血)。
●謝辞とか
さて、…毎度の事ですが、割と長めのレビューになってしまいましたね…
一応断っておきますが、今回の妄想プレビューに関しまして、
あえて「寸止め」形式で語っており、それぞれのシナリオでどんな結末(エピローグ)が有るのかは、
思いっきり割愛してあったり(若干、におわせていますけど)。
…ま、こうやって「崩してみたい」「プレイしてみたい」と思わせられれば、
書いた方としては満足なわけですが。
なお、当レビューに関しまして、ご意見・ご感想、その他要望等が有りましたら、
当サイトのBBS、または管理人まで直接メールをお寄せいただければ幸いです。
では、またどこかでお会いいたしましょう。
(2006.05.06)
●更新履歴
◆Ver.1.00 初稿完成に伴いWeb公開(2006.05.06)
◆Ver.1.01 誤字修正、その他コメント追加(2006.05.07)
◆Ver.1.02 文字修飾修正など(2006.11.04)
[EOF]
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