茨城県サイクリング協会

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トークリップ

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いまさらトークリップでもないだろう。

そりゃぁ長所もある。しかし欠点が多過ぎる。

まだ使った事が無い人は、あえてトークリップを使う必要は無い。どうせなら、 SPD ペダルを使おう。以下を読む必要も無い。

SPD ペダルの方が、ずっと安全で、効率が良く、快適で、疲れない。


短所を知る

それでも興味を持っている人の為に、先ず、トークリップシステムの欠点を書いておこう。

トークリップシステムの絵

トークリップシステムとは、右図のようにペダルにトークリップとトーストラップを取り付け、靴底にシュープレートというペダルプレートを嵌める溝を切った固定具を取り付けた専用靴で、足をペダルに固定するやり方の事だ。

欠点は、

  • 簡単には外れない。

    手を使わなければ無理。

  • 血行を阻害する。

    足の甲を帯で締めるからね。痺れてくる。

  • 足を入れるのが大変。

    シュープレートはすぐにカチっと収まるものではない。靴がほんの少しでも斜めになっていると嵌らない。位置も分かり難い。

  • 足を固定するのも大変。

    手でストラップを締める。締め加減も微妙に調整する。

  • ペダルを安易に裏踏みすると、トークリップを地面に当てて割ってしまう。

    焼きが入っているので割れやすい。

  • どんな靴でも入るとは限らない。

    トークリップに当たる靴も多い。靴底の厚い甲高の靴は入らない。スーツに合わせるような革靴も爪先しか入らない。コバのある靴も奥に入らない。

  • 歩ってしまうと、シュープレートに泥や砂利が詰まる。

    SPD と違って自浄機能は無いので、泥や砂利が溝に入るとペダルには付かない。歩く可能性が少しでもあるなら、掻き出す物も携帯する必要がある。

  • シュープレートを着けた靴は、LOOK と同じで歩き難い。
  • サイズが少ない。

    シュープレートを靴に取り付けるのはミリ単位でできるのに、トークリップは S、M、L、LL からしか選べない。自分でバーテープを巻いたりして調整する。


簡単には外れないものだから、トークリップシステムは、慣れても安全なものではない。

だから、慣れていなければ本当に危険。慣れるまでには、何度か立ちゴケを経験するはずだ。

トークリップの絵

事故にだけはならないように、確実な技術を身に着けない内は、公道で使用するべきものではない。


公道でも、レースでも、落車の時には絶対に外れない。
トークリップシステムを使うつもりなら、落車したら地面にたたきつけられる覚悟はしておいた方が良い。

同じ転倒でも、SPD や LOOK よりも怪我は重くなる。
軽傷で済んだはずのものが重傷になったり、場合によっては死亡というのもありえるだろう。

これは、練習では回避できない。

想像してみよう。

- - - 走行中か立ちゴケかは判らないが、あなたは道路で倒れてしまった。両足ともペダルから離れないから、手から落ちた。かなり痛い。片手で支えきれる訳はないから、肘と肩と頭も打っている。指切り手袋が少し破れた。指先からは血が出ている。振り向くと車が来ている。路肩に逃げようと思うが、自転車は足に絡み付いたままで、必死に脚を動かしても外れない。しょうがなく、手と肘で這って逃げるしかない。自転車が絡み付いた下半身は重く、捻れたままだ。膝の横も怪我をしているのに気が付いたが、かまってなんかいられない。そのまま引き摺って行こう。クラクションが鳴り響く。 - - -


ハーフクリップ

トークリップシステムは、練習しても一日で身に付くようなものではない。

咄嗟の時に自然に素早く動作ができなければ、藻掻きながら倒れてしまう。その有様を第三者から見れば、嗤われるものか、蔑まされるものかもしれない。
自転車を知らない目には、滑稽にしか見えないだろう。

シュープレートの溝を、削って拡げたくなってくる。ペダルと靴を呪いたくなるかもしれない。


だから、「はじめはハーフクリップで練習をしなさい。」と言われていた。

ハーフクリップの絵

ハーフクリップは、右図のように靴の甲に当たる上面が短く、ストラップは取り付けられない。主に位置決めの目的で使用する。シュープレートを取り付けても、引き足の方向に気を付けないと、足がすっぽ抜ける。

気が動転した状態でも、藻掻けば何とか外れてくれる。


ハーフクリップが自在に使えるようになると、やがてトークリップに付け替えたくなってくる。無駄になってしまう部品のような気がしても、トークリップを使ってみたいのならば、やはり安全なところから試すべきだろう。

ストラップを取り付けていない状態のトークリップと比べてみても、ハーフクリップの方が、入れやすく外しやすい。

初めての人は、シュープレートも着けない方がいい。引き足がほとんど使えないが、アンクリングを入れて綺麗に足を回す練習にもなる。いきなり全てを身に着けようとするのではなく、間違えば危険性のある技術は、一つずつ覚えていった方が良いだろう。たぶんこの状態でも、立ちゴケを経験する人はいるはずだ。


どんなに綺麗に足を回せても、引き足はペダルを押さえながら引く訳だから、無駄な力を使っている。引き足の使えるクランク角度の範囲も、大幅に狭い。

ハーフクリップには、あまり大きな効果を期待するものでは無い。


私の使い方

自分ではトークリップも良く使う。近距離の走行なら、これもまた好きだ。

但し、本来のトークリップシステムとしての使い方ではない。

シュープレートは使わない。とうの昔に、シュープレートを着けた靴は捨ててしまった。ゴム底の靴で乗る。ペダルがゴムに食い込んで、シュープレートの役目を少しはしてくれる。

ゴム底靴は、自転車を降りて歩き回るのに適しているから、このスタイルが好きなのだ。

ゴム底靴の欠点は、ペダルへの食い込みと靴底のしなりによって、踏力が逃げてしまうことが大きい。食い込んだにしても、溝のようには引っ掛かってはくれない。

だから走りを楽しみたい時には SPD や LOOK を使うのだが、普段から寄り道が多く、短区間の乗り降りばかりしているから、これでも良いのだ。

そしてトーストラップも締め上げない。いつも緩めた状態で使っている。

それでは効果が無いと思われるだろうが、固定無しのペダルと乗り比べてみれば解るが、トークリップがあった方が格段に楽だ。もっとも SPD の効果に比べたら微々たるもので、ハーフクリップに近い使い方になっている。

トーストラップを締める時もある。ここぞという峠道の登りでは、右左をキュッキュッと締め上げて頑張る。但し長時間は使わない。傾斜が緩くなったらさっさと開放してしまうし、逆に足を着く程の急勾配になっても緩めてしまう。車が増えたり、路肩がヤだなと思った時もそうだ。

もっとも、ここ何年かはストラップを締めた事が無い。ストラップを締めるようなコースなら、バインディングペダルで出掛けた方がよっぽど楽しい。楽な上に、前へ進む。

ポタリング的使用法に限られているようだ。長距離は、やはり疲れる。


こんな緩い使い方をしても、SPD に比べると、効率の点以外にも欠点はある。

  • 長時間使うと、足が痺れてくる。

    ペダルプレートがゴム底面を押し上げ、足裏の一部に応力が集中し血行を妨げる。
    スニーカーのような柔らかいゴム底は、ストラップを締めなくても痺れが来る。(ビブラム底のような靴は、甲高になって奥に入らないしペダルを食わない。)

  • 靴底が傷む。

    ペダルプレートが食い込んでゴムが切れてくる。

  • 内側に膨らんだストラップがクランクに擦れる。

    クランクの表面が光ってくる。そしてわずかなエネルギーのロス。ストラップを締めてさえいれば当たらないのだが。

  • 靴先がトークリップと擦れて傷む。

    白い靴は金属と擦れて黒くなる、革靴は角に当たってささくれる。バーテープを巻いても擦れて汚れる。

  • 輪行の時は嵩張る。

    ストラップを引き抜いて、フレームを縛るのに流用できるのは便利だが。

  • 足を外して地面に着けるまでの時間は、SPD や LOOK より掛かる。

    例えストラップを締めて無くて、しかもシュープレートを使っていなくてもそうだ。

使うのには、やっぱり SPD の方が良いのだ。SPD の方が速く走れるし、坂も登れる。そして疲れない。

しかし、カンカンと音を立てて歩きたくないとか、階段で滑りたくないとか、石段を傷めたくないとか思った時には、トークリップとゴム底靴の組合せになってしまう。


入れ方

自然状態のペダルの絵

自然な状態では、右図のように、トークリップを付けたペダルはひっくり返っている。

基本は、

  1. ペダルの蹴返しを、こすり上げるように上に引く。

    蹴返しを支点にして、回転した靴の爪先がギリギリトークリップの端に当たらない位置を覚える。

  2. 後プレート上辺を支点にした回転に変わる。

    下を見なくても、感触でペダルの回転をイメージできる。

  3. ペダルが起きたら、足を入れる。

    完全にペダルが起きてからしか入らない。
    奥まで足が入ったら、ペダルを踏み込む。
    爪先しか入っていない状態で踏み込むと、ペダルを踏み抜いてすっぽ抜けることもある。

トークリップに入れる

ゴム底靴なら比較的簡単だ。

ところがレーサーシューズだと靴底が滑るから、こうは簡単にはいかない。そして、シュープレートが引っ掛かって邪魔で入れにくい。

シュープレートの形は、商品によって様々だ。ペダルの蹴返しも、商品によって位置や大きさ、尖り具合も様々だ。だから、自分のペダルと靴の組合せに合った感覚を覚える。

上図 1.の動作で、シュープレート自体を引っ掛けるのか爪先で起こすようにするのかで、動作は大分変わる。

トークリップの先端を調整する

上図 3.からの動作では、トークリップを少し押し上げる様にして奥に入れて行く。でないとシュープレートがペダルプレートに当たって、足が奥に入っていかない。面倒くさいのだ。

奥まで入れ過ぎてしまっても大変だ。シュープレートの、溝でない所に引っ掛かると抜けなくなるし、爪先が痛い。だからトークリップの靴先が当たる位置にはバーテープの残りでも巻いて、ピッタリの間隔に調整し、必要以上に奥に入らないようにしておく。

靴先に傷が付くのも防いでくれる。


どのような状態にしろ、ペダルに視線が行くようでは、公道での使用にはまだ早いのではないだろうか。


外し方

外し方は、ひねったり、横に踏み出そうとしてはダメ。慌てたら、余計に外れない。

  1. ストラップを緩める。

    体を屈め、左手をハンドルから離し、上死点にしたペダル横のトーストラップバックルを親指で押す。そして左手をハンドルに戻す。
    (押し拡げる量は、自分の靴との相性なので、自分で覚えるしかない。)
    止まる直前に緩めるのではなく、余裕を持ってその前に緩めてしまう。

  2. シュープレートが付いているなら、トークリップを上に押し上げるようにしてペダルから分離させる。

    足首に力を入れて真上に。
    ひねってはダメ。ひねりを加えてしまうと、ペダルプレートとシュープレートが食い込み合って、絶対に外れない。

  3. 真っ直ぐ後に引き抜く。

    トークリップのバネを上に押す力を維持しながら真後ろに引き抜く。
    後に蹴上げるようになる。

  4. それから足を横に出して地面に着ける。

    完全に引き抜くまで横に動かさない。

SPD のイージーさはどこにも無く、動作時間も長くなる。

トークリップペダルの外し方

足の動きが解るように、図中で赤丸を付けてみた。
SPD ペダルでの動作より、時間が掛かって当然だというのが判るだろう。


ストラップの扱い

トーストラップのセットの仕方にも流儀がある。

レースと違って、締めた余りをきちんとバックルに納めることはしない。そんなことをしたら、すぐに外すことなんかできなくなってしまうから、サイクリングでは、いつも弛みを作っておく。いつでも締めることができ、いつでも緩めることができるようにしておく。


下図のように、バックルの所に輪を作っておく。この輪に人差し指を入れて、親指と中指で両脇から摘んで、やや内側の上に引けば締まる。
緩める時は、親指でバックルの先端を、外に拡げるように押せばいい。

右の×印のようにしたら、親指で押しても緩んではくれない。締める時も、掴む所が無い。

トーストラップの末端処理 

別のやり方もある。

緩めた時にバックルから飛び出たストラップを、2〜3cm 残して邪魔にならないように切り取ってしまう。そしてその末端に摘みやすいようにストッパーを付ける。
こうすれば、一気に緩めてもストッパーが引っ掛かって、ストラップがバックルから脱けたりしないし、締める時もストッパーが指に掛かって掴みやすくなる。不必要な出っ張りも無くなる。

この方法の方が、操作は楽に早くできる。但し、ストッパーを外さないとストラップは脱けなくなる。靴を取り替えると必要なストラップの長さも若干変わるから、新たにストラップを加工しなければならなくなる。厚目の靴下を履いてしまった時もそうだし、レインカバーを着けた時もそうだ。汎用性は無い。


ストラップは、ペダルの中で滑ると具合が悪い。空回りしてしまうと、締める時に締まらなくなり、緩める時に緩まなくなる。

だから相性の悪いペダルと合わせて使うなら、下のように工夫をする。

  1. くさびを入れる。

    穴に詰め物をして、ストラップが動かないようにすれば良い。図の左ペダルの場合では、左に引っ張った時に食い込むように、内側から楔を打つ。
    針金でここを縛っても良い。

  2. 中でひねる。

    これだけでも、戻ろうとする力が働くから、効き目はある。
    (ガバガバの場合には効かない。)

  3. ペダルシャフトに巻く。

    穴がガバガバでも、シャフトとの摩擦抵抗ができて動かなくなる。ストラップの長さに余裕があればできる。
    (ペダルを裏踏みするとストラップが傷むのは欠点だ。)

トーストラップのズレ止め

専用ペダルの場合、この心配はいらないだろう。


適した靴

靴との相性もある。

爪先近くをベルクロテープで締めるような靴は、トーストラップにテープの帯が引っ掛かって脱け難くなる事も考えられる。注意して欲しい。

靴の甲は、凹凸がなるべく少ない形状が良い。

『外したい時に外れない』、これが一番危険なのだ。


最後に

トークリップは、クライミング界におけるブーリン結びのようなものだろう。命にかかわる重大な欠点があるのは明白であり、より簡単でより安全な代替法が確立されている訳であるから、指導者としては新人に教える技術ではない。ベテランたち全てが、「使わない」「教えない」「使っている人を見かけたら別の正しい方法を指導する」という行動をする事によって、世界を変えた事実がある。

但し、その全ての欠点を理解し、正しい範囲の使い方を知って、尚かつ身に着けている者にとっては、長所を活かせるものでもある。だから、まだトークリップも使っているし、必要な場合になれば、ブーリン結びも使う事はあるだろう。

しかし、私は他人に対して、ベテランであろうともトークリップの使用はお勧めしない。イージーで確実なバインディングシステムとして今は SPD があるのだから、サイクリングにはSPD ペダルの使用をお勧めする。走りだけなら LOOK が良いし、他でも良い。

では、何故、このような文章を書いたのかと言えば、トークリップについて考え直す事によって、使っている人にも危険性を再認識して欲しいのだ。新人に勧めて欲しくはない。メーカーには、完成車の標準構成部品に入れて欲しくないとも思っている。

トークリップは、あくまで希望するユーザがあってのオプション品であって、お店側から勧めるべき商品ではないと思う。

安易な懐古趣味は、負の要素をカモフラージュしてしまう。ランドナーだからと言って、トークリップペダルを着ける必要など無い。ましてや、トークリップの自転車に乗れなければ初心者扱いにするなどというのは論外だ。


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2007.3.28

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シュープレート

古いシュープレート

これはちょっと古すぎる。

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シュープレートの溝

シュープレートの溝幅と、角の調整は微妙だった。

ペダルによって若干厚みや表面処理が異なるから、同じ様で同じでもない。

新品同士の時は、手で合わせてみても入れ難かった。

角を少し丸めて入れやすくしても、お互いがこ擦れて摩耗してくると、抜け易くなって後悔した。

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プラットホームペダル

スニーカーのような柔らかいゴム底靴で、トークリップと組み合わせて使うのを前提に設計したペダルもある。

ほどほどに靴底に食い込み、過度に靴底を傷めないように、平面で当たる部分を設けている。

今のフラットペダルの思想に近い。

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SPD

SPD_Pedal

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