稀少難病愛知・きずなの会セミナー 2011年3月27日

「経口では栄養確保が困難はケースに関して」

まず私が簡単にご挨拶です。

本日はお集りいただきありがとうございます。
まず、今回の東北地方太平洋沖地震により被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。

さて、本日のセミナーは、このところ、新聞等のメディアで胃ろうに関することが話題となっていることから企画致しました。
あまり、話題になるので私自身がこの生きる手段が正しいのかと迷うことさえあります。 口から食べらなかったら死んじゃうという方がいます。
この意味には二つあって、肉体的に栄養不足で死んでしまうということと食べるという行為ができないと気分的に死んでしまうというものです。
食べたいいう感情は実に厄介のものです。

ご存知の方も多いのですが、私は経鼻栄養、中心栄養を経て、今は胃ろうです。今は、胃の中に入っても流れが悪い為、カテーテルの先端を小腸にまで延ばし一時間あたり90cc程の速度で栄養剤を流しています。

先ほども申しました様に、明るい話題として扱われているのではないので、今の時点で幸いにもお元気なご高齢の方が「自分は胃ろうにしない」とお知らせくださるケースもあります。
しかし、胃ろうイコール高齢者の物ではありません。
加えて胃ろうは、腸の狭窄閉塞の際にはドレナージもできます。

本日のテーマ「経口では栄養確保が困難なケースに関して」ですが、平たく言えば、口で食べられなかったらどうするかということです。
「口で食べられない」と一言で言ってもその原因は様々で、それらに適した方法があります。そのあたりのお話を愛知医科大学病院消化器外科教授、宮地正彦先生にお願いいたしました。


愛知医科大学病院消化器外科 教授 宮地正彦先生

今日お話できるのは、胃ろうの現状と、どうしてこのような栄養が普及してきて、更に今後どのようになるのかということです。

ある程度、国が関係したシステムづくりに影響をうけていること、それを理解することが大切になります。システムを変える事は非常に困難なことだと福祉に関係するお仕事をされている皆さんはご存知だと思います。ですから、そのシステムを変えずに何ができるかが重要な問題となります。

また、今回の地震の被災者に関して、片岡さんからの依頼でいくつかの製薬会社に問い合わせ、お願いをしました。
それぞれ考えているが、輸送方法及び何が必要なのかが解っていない段階ということです。
最初の2週間栄養されていなければ、その後いくら栄養をしても衰弱した体は吸収できません。 ですから、食べることができない人は、残念な事に更に苦しい状況になるかなと想像できます。

さて、今問題になっている胃ろうですが、自分はしたい、または、したいしたくないといろいろです。

それでは、皆さん、食べられなくなった時、これは一二週間、体の調子が悪くて食べられないのではなく、長期にあるいは一生食べられないということです。 その時、自分はどうするかを選んでみて下さい。
栄養法と場所との関係で作ってあります。

あなたが食べられない状態になられた時、どうされますか。以下の1から6のどれかを選んで下さい。


1.	何もしないで、家で過ごす。
2.	何もしないで、病院・施設で過ごす。
3.	点滴のカテーテルを入れて、点滴で栄養してもらい、家で過ごす。
4.	点滴のカテーテルを入れて、点滴で栄養してもらい、病院で過ごす。
5.	鼻または胃からカテーテルを入れて、栄養剤で栄養してもらい、家で過ごす。
6.	鼻または胃からカテーテルを入れて、栄養剤で栄養してもらい、病院・施設で過ごす。

胃ろうとは腹壁と胃に孔を開けて道を造る事で、胃ろう=栄養ではありません。
また、胃瘻には腸閉塞の時に鼻から管を通す事なく減圧(腸液を体の外に出す)事が可能で、一人の人に双方に使う事ができます。

ここで、最初に胃瘻を作った時のことをお話します。
17年程前、当時は、全身麻酔で外科医が三人で造りました。
一人は脳血管障害の患者さん。
当時は食べられない人は一生病院で過ごすしかなかったのですが、この家族は、家で家族と同じ食事を与えたいということで胃ろうを造りました。
他の家族と同じ食事をミキサーにかけて入れていた為に直ぐに詰まってしまいました。

もう一例は、食道がんの患者さんで、本人の希望で手術をせずに放射線治療を行ったが、食べることができない。しかし、彼女は、自分で食べたいものを作り、目で自分はそれを食べたという感覚を得て、それからミキサーにかけて注入するために、太いチューブを入れていました。

人間は食べる時は、座っています。立ってということもあるけれど、まず寝て食べるということはありません。
栄養をしている場合は、起きる事ができない人は、横になったまま栄養を入れることになります。そうすると何がおこるかというと逆流してしまう。そして、それが肺に入り誤嚥性の肺炎をおこすことになります。

普通人間は、一日3回食事を摂ります。 腸は、食べて休む、食べて休む、これが基本です。
関連してでるホルモンは、食事が来たぞとまず動き出すホルモンがあり、その指令によって他のホルモンも活動を始め腸を動かします。
ところが、持続して行うと、このあたりのバランスが崩れてくることが考えられます。そのあたりまで詳しく研究はなされていないけれど、食べて休む食べて休む方が消化管ホルモン、栄養の吸収に関しては正しいと思います。

また、栄養剤に関しても、昼間行うとしてもボトルの中にずっと入れっ放しということは、普通の食べ物を朝から起きっぱなしにしておく事はないのと同様、変化すると思います。

胃ろうを造設してから、経口に戻る事ができた患者は5,4%です。
口から食べることが可能になっても、これで生きていられるならばいいとのケースもあります。
つまり、食事を準備して食べるという行為は非常にエネルギーが必要なことだと思います。

胃ろうを勧める時には、医学的理由と社会的理由が存在します。

入所する施設によって栄養法が制限されます。

場所によって可能、不可能な栄養方法を色で分けてみました。
ピンクが可能、グレーがやや困難(訪問看護師等の助けが必要)、ブルーは不可能、又は困難です。

中心静脈栄養末梢静脈栄養経鼻栄養胃瘻
病院(急性期)
病院(慢性期)
介護老人保健施設××
老人福祉施設×××
××

胃ろうについて思う事

延命措置か?

本人が生きたい気持ちがあれば、延命措置ではない。
本人の意思が確認できない場合は、家族が生きて欲しいと思えば、延命措置とは言えないのではないか。しかし、途中で考えが変わった時は延命措置となり得る。

胃ろうは止められるのか?

胃ろうを止め、栄養補給をしなければ、数週間で生命が尽きてしまう。
この決定は家族だけでなく、医師にとっても困難な決定である。
では、どうするか?
1投与量を減らして行く。迷えば元に戻せる。
2施設にいれば自宅にもどし、何もしないで家でみとる。

更にお話の中では、外科的に造る手技と内科的に内視鏡を使って造る手技の双方をお話いただきました。瘻孔の出来上がるまでの時間の違いも解りました。
図を用いて、胃瘻のタイプとそれぞれのよい所問題点をお話されました。

さて、皆さんのアンケートの結果です。

「食べられなくなった時どうしますか」

最初に配られた設問です。


1.	何もしないで、家で過ごす。
2.	何もしないで、病院・施設で過ごす。
3.	点滴のカテーテルを入れて、点滴で栄養してもらい、家で過ごす。
4.	点滴のカテーテルを入れて、点滴で栄養してもらい、病院で過ごす。
5.	鼻または胃からカテーテルを入れて、栄養剤で栄養してもらい、家で過ごす。
6.	鼻または胃からカテーテルを入れて、栄養剤で栄養してもらい、病院・施設で過ごす。

講演後と比較して表にしてみました。

自分の考える生き方講演前講演後
15人5人
22人2人
35人2人
41人0人
56人10人
61人1 人

更に以下の様なご意見がありました。

  • 胃瘻についての基礎知識がなかった。勉強になった。
  • 知っている様で知らなかったので詳しいことが解りました。
  • 大変解りやすいお話で、胃瘻の基本的知識について勉強になりました。
  • 社会的、医療情勢手にな視点からのお話も聞く事ができてよかった。
  • 胃瘻と医療制度に関連があることを初めてしりました。
  • 何となく七期としては知ってはいたが自らの場合んあれば、天寿であると考えて、胃瘻をしたくない。
  • 勉強になりました。私はやはり胃瘻は延命措置だと思います。
  • 命について考えさせられました。
  • 胃瘻と聞いただけで自分には縁のないことだと思っていたが、今日のお話で、胃瘻とはどういうものかよくわかったので頭からあるいは、イメージだけで拒否することはなくなりました。
  • 年齢とどのような病気かによって選択は変わってくると思います。
  • 現在の自分の年齢で家族のことを考えるとどれを選ぶか迷います。
  • 意思を示す事ができる今は5を選択します。しかし、環境や身体、精神状態が大きく変化した場合、自宅ですとすことには家族の負担がかかることを考えると答えがぶれます。
  • 胃瘻に関しての知識がなかった。
  • 胃瘻と医療制度に関連がある事が解った。

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in the POUCHは「きずなの会」代表片岡の個人PHです。

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