回 石 田 波 郷 俳 句 大 会      


大賞   波郷忌の石鎚雲を払ひけり       柚山美峰     西東京市

 

市長賞  病得て見えてくるもの鳥兜        飯島千枝子    渋谷区

 

角川学芸出版賞 秋灯や波郷遺品の丸眼鏡       吉田ひろし    川崎市

 

 

第二回石田波郷俳句大会

 

新人賞   「白磁の中」  小野あらた  17歳    開成高校

 

準賞    「大根」    市川きつね  23歳    東京外国語大学「古志」

 

奨励賞   「縄梯子」   山口萌人   16歳    開成高校

 

奨励賞   「大人」    阿久津学   28歳    市役所  無所属

 

 

第二回石田波郷俳句大会

 

ジュニアの部

小学生

大賞    雪だるまほほえみながら消えてった    町田莉紗 (小5)

市長賞   たんぽぽのわたげがとぶよひかってる   山崎響生 (小4)

教育長賞  たん生会おおぜいがいてさくらもち    大和琢菜 (小3)

 

中学生

大賞    夕暮のブランコ一人で動き出す      磯谷貫太 (中1)

市長賞   咲きました風がしらせる金木犀      竹田絵里香(中2)

教育長賞  動物園暑し動けぬものばかり       織部 翔 (中1)





回 石田波郷「新人賞」

        「白磁の中」   小野あらた



海老の足きれいにもげる淑気かな

 

それぞれの顔に等しく初明り

 

初旅や畦くつきりと交はりぬ

 

腕時計の銀重さうな霜夜かな

 

イヤホンに熱の籠もれる風邪心地

 

春めくや白磁の中のほの明し

 

やはらかく開くおしぼり草青む

 

囀や林のふつと深まりぬ

 

磯遊びサンダルのいろ散らばれり

 

花冷えのホースに溜まる暗き水

 

サイダーの氷の穴に残りをり

 

葉脈の一本ほつれ落し文

 

夏シャツの肩の揃へて干されけり

 

蜘蛛の子の縺れてしまふ一歩かな

 

扇風機羽根の光の震へをり

 

八月の油絵の海乾きけり

 

一塊の草の暮れたるきりぎりす

 

東屋の腰掛に傷薄原

 

天高し鉄橋の弧の交はりぬ

 

ふりかけの魚の固きそぞろ寒

 




回 石田波郷「新人賞 準賞」

「大 根」   市川きつね


歌がるた心に決めし札のあり

 

早起きの人が動かす初電車

 

あたたかやたれもがふれてゆく地蔵

 

ひとめぐりしても大きな桜かな

 

ふらここを降りてまつさらなわたし

 

青田風とほくの山の裾野より

 

好きな物みんなありけり冷蔵庫

 

雲の峰飛行機雲につらぬかる

 

数へつつ石段登る洗ひ髪

 

上京を一日延ばさん冷し酒

 

諳んじて大好きな詩や天の川

 

秋の蝉ゆるく放つて飛びたたす

 

迎火に雨の集まる暗さかな

 

折鶴を開けば月の一句あり

 

木の実降るぢつと目を閉づる間も

 

大根を持つておどけてみたくなる

 

時雨るるやクレープさつとくるまれて

 

巣鴨にて北風に聞く国訛り

 

白鳥の舞ひ降りし日のお話を

 

くるぶしをごしごし洗ふ大晦日

 

 



2回 石田波郷「奨励賞」

「縄梯子」   山口萌人



石室に星座の紅く冬ざるる

 

襖にも川向かうにも濤崩る

 

塩田は光を積みぬ帰り花

 

黒々と焚火に水や匂ひ立つ

 

雪空の海に捨てたる魚の骨

 

仰向けの足の白さや涅槃西風

 

夜も余震は続いてをりぬ沈丁花

 

胡蝶いまうすむらさきに山染めて

 

さくらさくら乗れば偏る縄梯子

 

道なりに曲がる坂なり猫の恋

 

初夏の鳥翔つやうに水を撒く

 

紫陽花やぶはりと止まる室外機

 

あざやかにチョークの折れて青葉風

 

ラムネ飲むいつもサドルは腰に当て

 

待たされしままもよろしき蛍の夜

 

ほほづきや少女髪編むとき遠し

 

銀漢へメールは音もなく送る

 

散髪のさらさら終はる秋の暮

 

黄落をビラのごとくに踏む男

 

銀幕の人名一斉に夜寒

 


2回 石田波郷「奨励賞」

「大 人」   阿久津学



鈴虫とポストの中の葉書かな

 

流星や触れてしまひし夜の鏡

 

日もすがら母体ざわめく野分かな

 

わが窓に来たる真夜中月赤し

 

焼け残る父の質量天高し

 

枯野ゆく足音聞けぬほどの風

 

小春日や王の棺に王の骨

 

まだ起きて働く妻の咳おそろし

 

零といふ福豆の数眺めけり

 

春寒し耳鳴りに耳澄ましつつ

 

水温む水門赤く水黒く

 

包帯の小指・野生のチューリップ

 

はくれんに届いてしまふ大人かな

 

人の世に過労死のあり石鹸玉

 

掌のさくら羽毛の湿りあり

 

大栃の花は花火のごとく消ゆ

 

入梅や使はず生きる力こぶ

 

スタンドへボールを運ぶ風涼し

 

短夜や明日捨てるものうづたかく

 

追伸に記す金魚のその後かな

 

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