2004年7月16〜20日

 

 ワイバードが企画した「北の海鳥たちを訪ねて−北方四島クルーズ」に参加 してきました。

 このツアー、北方四島の沿岸を廻り、出会い頭の海鳥を見てしまおうという鳥オタク御用達の企画で、4月頃に発表された時に一も二もなく 仮予約を入れてしまいました。ご存知のとおり、北方四島は現在のところロシアの主権下にあるわけだし、その沿岸で海鳥を見られるなんて、もしかしたら 二度と行われないかもしれないじゃないですか。

 そんな訳で、仮予約はしたものの、正式決定までが長かった。ロシア沿岸警備隊の許可や運輸省の認可などの関係で、 途中には択捉島の先のウルップ島(完全なロシア領土)に上陸するためにパスポートとビザが必要との話しまで出ていた。航路の方も、最初は四島の沿岸をぐる〜と一回りする予定 だったのに、2週間前に航路が変更され、最終的には択捉島の北端まで行ったところで引き返し 、根室沖まで戻ってきた後に、再度、太平洋側を色丹島の先まで進んで戻ってくるという変則的な航路になってしまいました(航路図参照)。また、四島の沿岸3海里(1海里は1.852kmだから、おおよそ5km)を航海するため、「海岸に出てくるヒグマも見られるヨ〜」とのことだったけれど、結局12海里(22km)ラインに沿っ てということになってしまいました。

航路図:

知床半島の長さと比べると、北方四島がいかにデッカイか が良く判る。最大の択捉島は全長200km強、面積は東京都の約1.8倍 もあるのです。

 

7月16日(金)いよいよ出港:9時50分、東京からのツアー参加者17名が羽田に集合し、10時40分のANAで中標津へ向かう。最初の予定では野付半島あたりで鳥を見ることになっていたが、機材の遅れと滑走路の混雑が重なって到着が30分遅れたこともあり、中標津から直接根室港へ向かうことになった。途中、バスの窓からオジロワシハイタカノビタキが、トイレ休憩を取った風連湖の道の駅でタンチョウアオサギを見る。

 予定より少々早めに乗船、ここで根室集合組の方々が合流してツアー参加者25名が勢ぞろい。出港風景の取材に来ていたNHKのカメラに手を振りながら5時少し前に出港。ところが、船が岸壁から1mほど離れた時に、埠頭にタクシーが止まり、 コンビに袋を提げた新聞社の記者3人が慌てて降りてくる。どうやら出港が早まったことがうまく伝わっていなかった様子。船は慌てて出港をいったん中止し、3名を収容して再出港(買い物 からの帰りがもう10分遅れていたら、かれらの機材だけが北方四島を廻ることになっていたかも?)。出港が早まったのは、知床半島に沈む夕日を鑑賞させたいという船側の配慮だったようだが、途中から知床半島付近の雲が厚くなって日没は拝めなかった。夕方近く 、羅臼手前の海上では餌をくわえたウトウの群れが次々に飛んでゆく。船の近くから黒っぽいウミツバメが飛び出し、慌ててレンズを向ける。このクルーズで私が見た最初で最後のコシジロウミツバメだった。

 19時の夕食を機に今日の観察は終了、羅臼町の灯を横目で見ながらウイスキーを飲み、バカ話をして21時頃に就寝。

ロサ・ルゴサ号:480トン、船会社のパンフでは外洋観光船と謳っているが、なんかちゃちな船。船名はハマナスの学名から来ている らしい。 コシジロウミツバメ:知床沖 18時。 上尾筒の中央部に黒い縦線が入っているのが良く判る。 ウトウ:日没直前の知床沖 を群れが飛ぶ(真ん中の1羽はでっかい魚を銜えている)。

7月17日(土)国後島沖〜択捉島先端:朝3時 すぎに甲板に出る。船の周りにはフルマカモメが ついている。7時少し前にマッコウクジラが前方に現れる (噴気が斜め45度に上がるのがマッコウの識別点とのこと)。船は進路をクジラの方角に変更してユックリ近付いてゆくが、途中で気がついたのか、尾を高くあげて潜ってしまった 。再浮上を待ってしばらく停船している間に朝食。船が止まると、周りにフルマカモメが続々と集まってくる。近くの個体を写していると、突然オットセイが顔を出し、船を一周して去ってゆく。 どうやら、何が来たのか偵察に来た様子。

 10時頃に左舷前方に黒い塊りを見つけレンズを向ける。 船が十分近付いたところでシャッターを切ったが、夏羽がきれいなウミスズメだった。その後は、相変わらずのフルマカモメのほかに、ハシボソミズナギドリハイイロミズナギドリ(ハシボソと比べて圧倒的に数が少ない)、ハイイロウミツバメが出現。海獣はシャチの親子。

 19時頃に択捉島の最南端を過ぎたところでUターン。

フルマカモメ:択捉沖(かなり暗色型)

オットセイ:択捉沖(停泊中の船をのぞきに来た若い個体)

ウミスズメ:択捉沖 10時。

7月18日(日)国後島北端〜知床沖: 朝4時に目が覚め、デッキに出てみると生憎の海霧。近くに見えるハズの国後島も全く見えない。おまけに雷が轟き、雨まで降ってきた。このままではしょうがないということで、この海域をパスして知床の斜里側を覘いて見ることになった。

 知床に近付くにしたがって海霧がやや晴れ、時々薄日まで射してくるようになった。もっとも、昨日のような快晴より、こんな天気の方が鳥見には良いようで、ハイイロウミツバメなどは昨日のほぼ半分の距離まで近付いてくれる。ほぼ夏羽のハイイロヒレアシシギも船と平行に飛んでくれる。そのほかには、トウゾクカモメ数羽とウトウ、そして相変わらずのフルマハシボソ。 それにしても、この海域で見られるウミツバメの99%はハイイロウミツバメだった。もしかしたら、コシジロウミツバメなどはもっと陸地側で生活しているのかもしれない。

 知床半島の先端部の海岸ではヒグマエゾジカオジロワシが見 られた。

 根室の港祭りの花火を遠くに眺めながら就寝。

ハイイロウミツバメ:知床沖

ハイイロヒレアシシギ:知床沖(まだ夏羽が残っている)

トウゾクカモメ:知床沖(若い個体)


7月19日(月)色丹島南端〜根室港: お天気が気になって朝3時にデッキに出てみると、薄暗い中をコアホウドリクロアシアホウドリが近くを飛んでい て、なんだか今日は絶好の鳥日和になりそうな予感。完全に明るくなるのが待ちきれずに4時前には後部デッキに三脚を立て、感度を上げて撮影を始める。

 5時を少しすぎた頃だったろうか、左舷 を見ていた人たちから悲鳴が上がる。真打のエトピリカの登場だ 。エトピリカはウトウと違って比較的高い位置を 弾丸のようにすっ飛んで来る。ちょうど朝日が当たってくれていたので、なんとか視野に入れて撮影。デジタルのいいところで直ぐに画像をチェックしたところ、1カットだけ止まっていた。画像を見ながらみんなバンザイ。その後も、若い個体が海面に浮かんでいたり、目の前を飛んだりで、30年ぶりの再会を堪能することが出来た。

 その後は、10頭以上のシャチの群れに囲まれたり、イシイルカミンククジラマッコウクジラを見たり。 それにしても、真近で見るシャチは圧巻だった。

 船はハイイロヒレアシシギアカエリヒレアシシギの大群を蹴散らしながら、18時頃に根室に帰港。 こんな風に1500kmの長いようで短い充実した航海が終了。夕食は72時間ぶりに足元が安定したホテルの宴会場で花咲ガニを食べながら、楽しかった航海に感謝して皆で乾杯 (もっとも、カニを食べている時は皆、寡黙だった)。

コアホウドリ:色丹島沖

エトピリカ:色丹 島沖(海上に浮かぶ成鳥)

シャチ:歯舞諸島沖(船の周りを10頭以上が泳ぎ回っていた。これは雄)


7月20日(火)霧多布、厚岸、そして灼熱の羽田へ:朝5時 に目が覚め、外を見るとものすごい霧。ホテルのフロントでもらったパンフレットに書いてあった根室市のキャッチコピー「霧も深いが、情けも深い」のとおりである。これでは撮影も出来ない ので、ロビーでユックリとコーヒーを飲んでいる私の前を、近くの公園に出かける人々が通り過ぎて行く(みんな元気です)。 あとから聞いたところ、ベニマシコなどが結構近くで見られたとのこと。街中の公園といっても、さすがに北海道だ。

 10時にホテルを出て、バスで霧多布湿原、厚岸町の小公園を廻ったあと釧路空港へ向かう。どういう訳か、鳥見をした2ヶ所だけは霧がほとんどなく、霧多布湿原ではシマセンニュウ、厚岸町ではコゲラのほかに、ゴジュウカラキバシリコマドリ( これは囀りだけ)を観察することが出来た(添乗員の山本さんは「私は晴れ男と自分に言い聞かせている」とのこと、もしかしたら当たっているかも)。

 釧路発17時45分のANAで羽田へ。空港から一歩出ると、ものすごい熱気に体を包まれる。聞けば、この日の都心の気温は39.6℃で、観測史上最高記録だったとのこと(釧路の倍の気温です)。帰りの車の中でも、外気温計はず〜と34℃を下がることはなかった。9時前に自宅に着き、2500カットの成果の整理にとりかかり、適当なところでアップしました。

 それにしても、こんな突拍子もない旅を企画・実現してくれたワイバードの山本さんありがとうございました。そして、講師の高田勝さん (全員がエトピリカを見られたあとの、ホッとした笑顔が素敵でした、あのあとは冗談がいっぱい出ていましたネ)、ツアー参加の皆さん、同乗の北大・小城先生、いろいろ教えていただき感謝します。

シマセンニュウ:霧多布湿原

コゲラ:厚岸町