605 :マユif :2005/07/20(水) 06:24:40 ID:???


PHASE−01 少女の瞳


アーモーリーワンでの進宙式を控えたその日。
宇宙港に到着したシャトルから降りたのはカガリ・ユラ・アスハ、アレックス・ディノ(アスラン・ザラ)。
そして、一般人の中に一人の少女。
少女は、港の出口で待っていた少年に抱きついた。
少女の名は、マユ・アスカ。
少年の名は、シン・アスカ。
二人は兄妹。ザフトのモビルスーツパイロットと、民間人のその妹。


カガリ・ユラ・アスハは、護衛のアレックス・ディノと共に、ギルバート・デュランダルとの会見に臨んだ。
話はそのまま、基地内を歩きながら案内するという形になり、進んでいく。
カガリの言葉にデュランダルは言う。
「争いがなくならぬから、力が必要となる」と。

軍用車を借りて、シンはマユと共にミネルバへ向かう。
特例によって、ミネルバが出港するまでの間、シンとの同行は許可された。
シン以外にマユには身寄りがない。
形だけの保護者がいるだけで、アーモーリーワンにはマユだけしか来てはいなかった。
シンが頼み込み、進宙式が終わる日までマユの寝泊まりがミネルバで許可されたのである。
信号で、軍用車が止まる。
マユとシンは、無意識に横断歩道を渡る三人と目があった。
ブロンドの少女と、マリンブルーの髪色をした少年、そしてライトグリーンの髪の少年。
だが、すぐに三人は渡り終わり、信号も変わって軍用車は走り出した。

606 :マユif :2005/07/20(水) 06:28:45 ID:???
続き


ミネルバに到着したシンとマユ。
赤い軍服に着替え、誇らしげにするシン。マユは嬉しそうに笑う。
二人はブリッジに向かい、シンはマユを紹介した。
ブリッジの面々、艦長のタリア・グラディスに、副長のアーサー・トライン、オペレーターのメイリン・ホークなどは明るくマユを迎え入れる。
挨拶を終え、二人は別の場所に向かう。
エレベーターに入り、目的の場所へと。
着くまでのその間、シンは自慢気に話し出す。
コアスプレンダーという機体が、インパルスというMSとなり、更に武器を換装できると。
説明するシンの顔を、マユは嬉しそうに微笑んで眺めている。
だが、楽しみの一時は、突然のアラートにより終わった。
顔色の変わるマユとシン。
しばらくするとメイリンによるアナウンスが流れる。
カオス、ガイア、アビスの新型MSが奪取され、その内一機がミネルバに向かっているということだった。
エレベーター内で焦るシンと、不安に満ちた表情になるマユ。
マユを心配したシンは「大丈夫だから」と優しく諭す。
エレベーターのドアが開くと、シンはコアスプレンダー目指して走り出した。
だが、次の瞬間、艦が揺れる。
接近していた一機、カオスの攻撃。
その拍子で、シンに向け機材が倒れてきた。
コーディネイターの反射神経でも避けきれない範囲。
そのままシンは機材の下敷となる。
叫び、シンに駆け寄るマユ。整備士達も集まり、機材をどかす。
苦しそうにうめくシン。
ザクなどが防衛するが、カオスの攻撃は未だ続く。
フラッシュバックする記憶。
死んだ父と母。MSによってもたらされた爆炎。
整備士達にシンをまかせると、決意の瞳を見せ、マユはコアスプレンダーに乗り込んだ。
ブリッジに通信を送り、発進を要請する。
シンとは違う、先程話したまだ幼さ残す少女がモニターに映り騒然とするブリッジ。
だが、タリアは考えた末、マユの出撃を了解するのだった……。



638 :マユif :2005/07/20(水) 23:19:43 ID:???


PHASE−02 静けさを奪うもの


カオス、ガイア、アビスの奪取に巻き込まれたアレックスとカガリ。
立ち込める煙や瓦礫のせいで、デュランダル達議会のメンバーとは分断されてしまった。
仕方なく二人だけで行動するが、近くではガイアとアビスが交戦している。
辺りを見回すアレックスは、倒れた無人のガナーザクウォーリアを発見する。
コックピットを開き、カガリと共に搭乗した。
カガリのいる中、まとも戦える状態ではない。
だがアレックスは、いやアスラン・ザラは、こんな戦いをむざむざ続けさせるわけにはいかなかった。
アレックスのザクに気付くガイア、アビス。
別の機体を片付け、一気に仕掛けるためザクを囲む。
だが、攻撃しようとした直前、ザクウォーリアとザクファントムが、それを制止する。
ザクウォーリアを駆るのはルナマリア・ホーク、ザクファントムに乗るのはレイ・ザ・バレル。

発進準備が整い、マユは緊迫した面持ちでモニターを見た。
マユはぶつぶつと何かを呟く。
「大丈夫…操縦の仕方はちゃんと覚えてる」
メイリンの発進アナウンスと共に、コアスプレンダーが発進する。
続いてチェストフライヤーとレッグフライヤーも射出され、コアスプレンダーはインパルスとなった。
突如現れたMSに、驚愕するカオスを奪ったスティング・オークレー。
同様に、ガイアを奪ったステラ・ルーシェ、アビスを奪ったアウル・ニーダも仰天している。
インパルスの装備はソードシルエット。
マユは対艦刀エクスカリバーを構えて、カオスと対峙する。
振りかざされるエクスカリバーを辛くも避け、カオスも反撃にとビームライフルを発射。
だが、インパルスも回避し、一気に間合いを詰める。
焦るスティング。
だが、距離は詰めたが、マユの手は震え、攻撃を加えることに躊躇した。
スティングはこの隙を突いて後退する。
向かい合うインパルスとカオス。
そして、マユとスティング。

639 :マユif :2005/07/20(水) 23:21:03 ID:???
続き


四足歩行形態で三機のザクを翻弄するガイア。
多数の砲門からビームを発射するカオス。
反撃するも決定打は与えられていないレイのザク。
なんとか避け、反撃のチャンスを窺うルナマリアのザク。
カガリがいるせいで、防戦一方のアスランのザク。
善戦といえるがステラもアウルも喜んではない。
今までのMSとは違い、ここまで戦闘が長引いている。
簡単に撃墜できた先程とは違い、すぐに倒せる相手ではない。
その時、アーモリーワンが揺れた。
スティング、ステラ、アウルは、それが何か気付き、戦闘をやめて三機揃って内壁に向けて移動を開始する。
インパルス、レイ機、ルナマリア機が追撃にあたるも、インパルスは接近戦仕様、二機のザクの攻撃もかわされる。
カオス、ガイア、アビスは内壁に集中放火を浴びせ、内壁に穴を作ると一気に離脱していった。
ミネルバから通信が寄越される。これ以上の追撃は認められないと命令が下された。

ミネルバに帰還したインパルス。
そして三機のザク。
格納庫に降りてきたマユ、ザクから降りたアレックスとカガリ。
明らかにザフトではない三人に、格納庫内はどよめきに包まれる……。




687 :マユif :2005/07/22(金) 00:25:31 ID:???


PHASE−03 エグザスの砲火


艦長室に集められたマユ、アレックス、カガリ、レイ、ルナマリア。
そして、タリア、アーサーと、ミネルバに足を運んでいたデュランダル。
アーモリーワンは、未だ混乱に包まれている。
だが、奪われた三機の事は無視できない。
マユがインパルスに搭乗してしまったのと、アレックスとカガリがザクに乗り込んだのは、緊急事態であったため罪には問われなかった。
しかし奪われた三機については、早急に対処しなければならなかった。
三機は謎の正体不明艦に帰還したと報告が入っている。
タリアはデュランダルに追撃を進言。
デュランダルはそれを許可するが、追撃できる機体とパイロットが揃ってはいなかった。
インパルスの正規パイロットのシンの容態は重傷で、復帰には時間かかる。
ミネルバに配備されていたザクも、先程の戦闘で損傷していた。
それに関してデュランダルは、マユをインパルスの代理のパイロットにしようと提案した。
その発言に皆、驚きを隠せない。
だがデュランダルは、マユのその感性を信じたいと、続け様に言うのだった。
皆がマユを見つめる中、マユは静かに口を開く。
「乗ります」

数十分後、ミネルバの出発の準備が整った。
艦を降りるデュランダル、カガリとアレックス、そしてシン。
マユはシンを見送るため、出口まで同行していた。
処置は終わり意識ははっきりしているシンの手を握るマユ。
シンは悔しそうに「インパルスを頼む」と言って、唇を噛み締めて一筋の涙を溢した。そんなシンの顔を見て、マユは頷くことしかできなかった。
運ばれていくシンを見送り、マユはミネルバに戻っていく。
少し離れた場所で、デュランダルと、カガリとアレックスはその光景を見ていた。
カガリは言う。
「我々は誓ったはずだ!もう悲劇は繰り返さない。互いに手を取って歩む道を選ぶと。
何故、こんなことになる!あんな女の子が戦うことになる!」
カガリの言葉に、デュランダルは返した。
「あの少女も、インパルスに乗るはずだったパイロットも、オーブの出身なのです。
私は戦いのためにインパルスやミネルバを作らせたわけではない。道を選ぶのは私ではなく彼等自身なのですよ」
それ以上、カガリとデュランダルは会話をすることはなかった。
アレックスは黙ってカガリとデュランダルを交互に見つめている。
そんな三人をよそに、ミネルバはアーモリーワンを出航した。

688 :マユif :2005/07/22(金) 00:28:05 ID:???
続き


マユは、ルナマリアの予備のパイロットスーツを借りた。
明らかにぶかぶかだが、支障が出るほどではなかった。
タリアは、インパルスの慣らしも兼ねた偵察任務の命令を出す。
そして教育係にレイを任命し、共に偵察任務を遂行するように指示する。
マユが何故、あの時インパルスを操縦できたのか、その追求は禁止された中で。
インパルスとレイが乗ったザクは発進する。
相手の正体不明艦…ガーティ・ルーも高速艦だろうが、そう遠くへ行っていないだろうというのが、タリアの考えだった。

そのガーティ・ルー。
三機を持ち帰ったスティング、アウル、ステラは疲労して、“ある場所”で休眠していた。
三人の寝顔を仮面の下から見つめる男、ネオ・ロアノーク。
しばらく彼等の寝顔を眺めていると、その場を後にしてブリッジにあがる。
艦長のイアン・リーが事務的に三人のことを訊いた。
ネオは飄々と返答する。
と、ネオは何かを感じた。
直感とでもいうそれをネオは信じ、出撃するためにブリッジから出ていく。

689 :マユif :2005/07/22(金) 00:29:37 ID:???
続き2


ネオの乗機エグザスの発進準備が整い、エグザスは出撃する。
それに呼応するように、レイも何かを感じ取る。
その直後、熱源を探知するインパルスとザク。
レイはミネルバに近くに三機を奪った母艦がいると通信をし、戦闘態勢に入った。
マユも緊張しながら、エグザスを警戒する。
二機を捉えたエグザスは一気に攻撃を開始。ガンバレルによる全方位攻撃を展開した。
翻弄されるインパルスとザク。
エグザスとガンバレルの速い動きにフォースシルエットのインパルスでも苦戦を強いられる。
レイが通信を送る。
「この敵は普通とは違う!」
だがレイの声は、ネオにも響いた。
通信による機械を通した声ではなく、耳の奥で広がる肉声。
奇妙な感覚に囚われつつも、ネオは攻撃の手を緩めはしなかった。

ミネルバはレイからの通信を受け、ガーティ・ルーに近付いていく。
ブリッジは既に戦闘モードに移行。
奪われた三機。取り返すことができないなら、母艦ごと撃沈した方がいい。
ミネルバは攻撃を開始。だが、ガーティ・ルーもそれに反応し対応を取る。
だがガーティ・ルー側は戦闘をする気はない。機を見計らい予備の推進タンクを爆破、それに乗じて一気に離脱した。
エグザスもガーティ・ルーの撤退に反応し、攻撃をやめてインパルスとザクを引き離す。

ガーティ・ルーを逃したが高速艦同士。ミネルバの追撃は続く……。




724 :マユif :2005/07/22(金) 21:14:05 ID:???


PHASE−04 星屑の大地


ガーティ・ルーを討つべく、進撃を続けるミネルバ。
付近にはデブリが点在している。
先程戻ったばかりだというのに、マユはまた出撃することになる。
疲れていないと言えば嘘になるが、戦えないほど疲労しているわけではない。
格納庫で休んでいたマユの肩を、ルナマリアはぽんと叩いた。
ルナマリアが乗っていたザクも完全とはいえないが修理と整備が終わり、今度はマユとルナマリアで戦闘を行い、レイはミネルバで待機となった。
ルナマリアの「頑張りましょう」という言葉に、マユは微笑んで返してその場を後にする。
マユがいなくなったそこで、ルナマリアはぽつりと漏らした。
「あんまり成績よくないんだけどね…デブリ戦」
ルナマリアはとぼとぼと自機へ向かう。

最適化という名の休眠を終え、スティング、アウル、ステラは、奪った機体のコックピットにいた。
デブリが散らばる中に身を隠す。
これから戦うのはアーモリーワンで戦った新型か、はたまたあの三機のザクか。
アウルとスティングがそんな会話をする中、ステラは呆けているかのようにとモニター越しに星屑の海を眺めていた。

発進し、デブリ帯に進入したブラストシルエットのインパルスとルナマリアが乗るザク。
依然現れない敵に不信感が募る。
だが、現れないはずがない。
二機が、デブリの海の中を進むと、とうとう三機が姿を現す。
しかし、それがミネルバとインパルス達を引き離す陽動と知るのは遅すぎた。

725 :マユif :2005/07/22(金) 21:17:50 ID:???
続き


インパルス、ザク、ミネルバのレーダーから、ガーティ・ルーの反応が消失する。

ミネルバが捉えていたガーティ・ルーの反応はロストし、それが囮(デコイ)だと気付くのが遅れたタリアは悔しそうに唇を噛んだ。
背後からガーティ・ルーの攻撃を受け、浮遊する岩石の数々に反撃もままならないミネルバ。
ガーティ・ルーからはエグザスが発進し、ミネルバもレイのザクを出撃させる。
またレイの存在を感じてしまうネオ。
奇妙な違和感に、ネオはレイのザクに攻撃を加えるのだった。

デブリでの戦闘が続く。
インパルス、ザク、カオス、ガイア、アビスの、ビームや弾丸が交錯する。
カオスの兵装ポットを避けつつ、反撃するインパルス。
変形しデブリを駆けるガイア。
二機では流石にキツイのか、それともデブリでの戦闘が彼女にとって不利なせいか、とにかく回避に専念しつつ攻撃を与えるルナマリアのザク。
アビスも砲撃を続け、インパルスとザクを攻める。
インパルスを見ながら、敵意に満ちたステラは叫んだ。
「なんなのよ…!アンタはまたぁ!!」

絶体絶命の状況に追い込まれたミネルバ。
エグザスの猛攻に、ミネルバの援護に回れないレイのザク。
岩塊に阻まれ武装も使えるものが少なく身動きが取れない中、タリアは危険な賭けを投じようとしていた。
右舷のスラスターと砲撃を岩塊に向け放射し、大きな衝撃に見回れながらも、辛くも危機を脱する。
そしてガーティ・ルーに向け回頭、タンホイザーを発射した。
回避するも被弾するガーティ・ルー。信号弾を発射し、撤退するために動きだす。
ミネルバには余力がなく、取り逃がしてしまった。

カオス、ガイア、アビスも撤退。
残されたインパルスとザクは、点在するデブリの中に残される。
マユとルナマリアはこの激戦に、息遣い荒く、疲労しきっていた……。



782 :マユif :2005/07/23(土) 22:43:52 ID:???


PHASE−05 見えぬ傷痕


静かだったユニウスセブンに取り付く影。
ジンや作業用機体が何かの装置を起動させてゆく。
そして、ユニウスセブンの移動は始まった。
ジンに乗る一人の男は、コックピットに貼られた写真に者達に向けて弔いの言葉を述べる。
そして…
「さぁ行け、我等の墓標よ…この世界を、今度こそ正すのだ!」

アーモリーワンからアレックスとカガリを連れ、プラント本国に戻ったデュランダル。
カガリは、今起こっているこの状況に焦りを隠せないでいた。
ユニウスセブンの軌道は、明らかに地球に向かっている。
まだ時間はあるがそう長くない。
議長室でデュランダル、アレックスとカガリは、話を続ける。
そんな中、議長室のドアが叩き、入室してくる二名の士官。
それは、アレックスの、いやアスランの良く知った顔。
かつての戦友、イザーク・ジュールとディアッカ・エルスマン。
突然の再会に、驚く三人とカガリであったが、昔話をしている暇はない。
イザークは今回の事件に対しユニウスセブンを破砕するための部隊を指揮を取り、ディアッカはその部隊のパイロットである。
二人は議長に短い挨拶をしすぐに出ていった。
去り際にディアッカが「じゃあな、アスラン」と、そう告げて。
アレックスはしばらくの沈黙の後、
「…今の俺は、アレックスだ」
と、イザークとディアッカがいなくなった、デュランダルとカガリと自分だけの室内で呟く。

784 :マユif :2005/07/23(土) 22:46:20 ID:???
続き


ミネルバ、雑談室。
マユ、レイ、ルナマリア、メイリン、整備士のヨウラン・ケントとヴィーノ・デュプレが集まっている。
ミネルバの修復作業を終え、各員の束の間の休息。
六人は今回のことを話していた。
次々に起こる問題に頭を抱えるルナマリア。
静かに黙っているレイ。
地球の人々を心配するメイリン。
ヴィーノはユニウスセブンをどうするかを皆に問いかけた。
レイは口を開く。
「砕くしかない」
突拍子もない発言に、訊いたヴィーノは驚いた。
だがユニウスセブンが衝突すれば地球は壊滅する。
それを阻止するには、ユニウスセブンを破壊して衝突を回避させるしかない。
レイの意見は的を射ていたが、ヨウランは半ば諦めた感じで、地球壊滅は不可抗力だと言った。
地球が壊滅すればナチュラルもいなくなり、余計なごたごたも無くなる。
ヨウランの意見に誰も返す言葉ない。
だが、マユはすっと立ち上がり無言でその場からいなくなった。
ルナマリアは「あの子、シンと同じでオーブにいたのよ!」と怒って言うと、焦ってマユを追いかける。
マユに追い付くと、ルナマリアはヨウランの言葉は冗談で場を和まそうとしていたものだと説明する。
マユは「わかってます」と、一言だけ。
よく見ると、マユの肩は震えていた。
ルナマリアは恐る恐る顔を除き込むと、マユは泣いていた。
「地球にはオーブとか、お兄ちゃんと旅行した場所とか、たくさんの思い出があって、それが無くなるなんて嫌…。
地球にはいっぱいいっぱい綺麗な所や、素敵な所があって、これからもお兄ちゃんと行きたいのに…」
嗚咽混じりに訴える。
ルナマリアは優しくマユを包み込んだ。
「だったら、私達がこんなこと止めなきゃ。艦長に頼んで、ユニウスセブンを壊しましょう」
気休めなのかもしれない。
だが、ルナマリアの言葉には暖かみがあった。
マユは顔を上げ、ルナマリアを見る。
「そしたら、今度はその旅行、私やレイ達も連れてってね」
ルナマリアはマユを見て明るくそう言った。
何かが晴れたマユは涙を拭き、笑って「うんっ!」と答える。
と、その時、パイロットを召集するアナウンスが流れる。
マユとルナマリアは顔を見合わせると、ブリッジに向かった。

785 :マユif :2005/07/23(土) 22:48:59 ID:???
続き2


ブリッジで、タリアは新たな命令をマユ、ルナマリア、レイに告げる。
ユニウスセブンの破砕作業に向かったジュール隊を支援せよ。
その命令の内容に、マユとルナマリアはまた顔を見合わせた。
タリアは不思議そうな顔をしてどうしたのか訊くが、二人はなんでもないと言った。
そして、マユとルナマリア、レイは敬礼し、命令を了解する。

地球。
各国は、この異例の事態の対応に見回れていた。
オーブも例外ではなく、現在席を外すカガリの代わりに、五大氏族のひとつセイラン家のウナト・エマ・セイランが各国との共同声明を発表していた。
テレビ中継もされ、カメラのシャッター音が響く。
そのカメラを構える記者の中には、かつてアークエンジェルのクルーだったミリアリア・ハウの姿があった。

声明発表の中継は、オーブの外れにある孤児院のテレビにも流れ、夕暮れの海に響く。
テレビから流れる音を静かに耳に入れながら、淡い夕空を力無く見上げる少年がいた…。

その頃、ある洋館に彼等はいた。
中年男性や、初老の老人達が集まる中、ジブリールと呼ばれた男は皆に向き合い不敵な笑みを浮かべる。
ユニウスセブンが地球に落下しようとしているこの事態。
地球はどうなるのか?落下後はどうすればいいのか?打開策は?
ブルーコスモスの彼等は中身のない議論を繰り広げる。
その間を割ってジブリールは、コーディネイターを責めよ、プラントを攻めよと強く訴えるのだった……。





866 :マユif :2005/07/25(月) 01:01:28 ID:???


PHASE−06 ユニウスセブンの堕ちる時


ユニウスセブンを破砕するため、メテオブレイカーを持って先行したジュール隊。
作業が開始されようとしていたその時、ユニウスセブンの陰に隠れていたジン達が姿を現す。
驚くディアッカ、イザーク達。しかし、ユニウスセブンを破壊しなければ地球は大惨事に見回れる。
ディアッカはメテオブレイカーを守りながら、ジン達との交戦に入る。
イザークもザクを駆り発進した。

到着したミネルバも、謎のジン達の姿を確認する。
破砕作業を阻むなら敵なのか、フォースシルエットのインパルス、ザク二機は戦闘用の装備に急遽戻し、出撃する。
出撃したのはインパルスやザクだけではなかった。
ミネルバと同じくユニウスセブンの付近の宙域にやってきていたガーティ・ルーも、カオス、ガイア、アビスを発進させる。
ミネルバとジュール隊、謎のジンの部隊、ガーティ・ルー。
三つ巴の戦闘が始まった。
謎のジン達の攻撃に、反撃を試みるジュール隊のザク達。
旧型のジンといえど、ハイマニューバ2型の高機動機体。
その上、かなりの手練れの乗るジンに、続々とザクは落とされる。
だがその中でイザークとディアッカは、ジンの攻撃を防ぎ、避け、確実に撃墜してゆく。
かつての戦争を戦い抜いた二人の戦う様に、マユ、レイ、ルナマリアは賛嘆するのだった。

867 :マユif :2005/07/25(月) 01:03:49 ID:???
続き


地球にユニウスセブンを落とさせまいと、カオス、ガイア、アビスはザクもジンも敵と見なし攻撃を始める。
そして、因縁のあるインパルスとルナマリアとレイのザクを発見すると、敵意を露にして襲いかかった。
カオスは兵装ポッドを射出し、レイのザクに攻撃を仕掛ける。
レイは兵装ポッドから撃たれるビームを回避し、ビームトマホークをブーメランのように投擲して兵装ポッドの一基を切り裂いた。
「なんだコイツ、強いッ…!」
「……」

ガイアとルナマリアのザクも交戦に入る。
ユニウスセブンを四足歩行形態のガイアは駆けていた。
互いに撃たれるビームは交差し、二機はほぼ同時にそれを避けた。
ガイアは一気に加速し、ルナマリアのザクに迫った。
ガイアはザクを蹴り飛ばし、ユニウスセブンの地表に叩き付ける。
「これで終りね!赤いの!!」
ステラは声を上げると、ザク向けビームを発射する。
「何をーッ!!」
しかし、ルナマリアはザクをユニウスセブンから引き離し、寸ででビームを避けるのだった。

対峙するインパルスとアビス。
「お前等のせいかよ、コイツが動きだしたのはぁ!?」
コックピットの中で、アウルは怒りに声を震わせる。
その怒りに身を任せ、インパルスにビームの嵐を浴びせる。
インパルスはシールドでビームを受け止め、アビスに接近する。
「くぅ…!こんなもの、地球には絶対落とさせないもん!!邪魔しないでよぉッ!」

戦闘が続く中、イザークやディアッカ、マユ達がメテオブレイカーを守りながら戦ったお陰で、着々とゲイツRはメテオブレイカーの設置を完了させる。
地表に打ち込まれる数々のメテオブレイカーは、ユニウスセブンに大きな亀裂を作っていく。
「グゥレイトォ!やったぜ!」
思わず、ディアッカが声を上げた。
「だが、まだ終りじゃないッ!」
イザークが喝を入れる。
そう。ユニウスセブンはまだ二分されただけ、巨大な塊であることに変わりない。

868 :マユif :2005/07/25(月) 01:07:20 ID:???
続き2


ガーティ・ルーから信号弾が放たれた。
スティング、アウル、ステラは、一瞬不服そうな顔をするが、撤退を開始する。
ジュール隊とミネルバが破砕作業をしていることに気付き退かせたのか、それとも別の理由か。
三機は、ユニウスセブンを後にする。

カオス、ガイア、アビスはいなくなったが、ジンとの戦闘は未だ終ってはいない。
続々とメテオブレイカーはユニウスセブンを砕いていくが、まだ大かな破片が残っていた。
だが地球の引力の関係で、とうとう帰還信号が出される。
イザークとディアッカは悔しがるが、退避を始めた。
レイとルナマリアもミネルバに戻ろうと動き出すが、ルナマリアはレイを呼び止めた。
マユがユニウスセブンから動いていないと。
インパルスは、起動できず放置されたメテオブレイカーの取り付けを進める。
ルナマリアもレイも、マユに戻るよう呼びかけるが、マユはそれを拒んでメテオブレイカーの設置を続けた。
マユの行動に、ルナマリアとレイは帰還をやめ、メテオブレイカーの設置に加わった。
「一人でやるよりも、人数が多い方が効率がいい」
「マユだけ、死なせるもんですか!」
そう二人の言葉に、マユは「ありがとう」と心から感謝する。

869 :マユif :2005/07/25(月) 01:08:12 ID:???
続き3


だが、そんな三機に迫る三つ機影。
「我が娘のこの墓標、落として焼かねば世界は変わらぬ!」
一機のジンのパイロットが叫び、迫り来る。
通信回線を通して消えてきた声に、マユ、レイ、ルナマリアは眉をひそめた。
メテオブレイカーの設置をインパルスに任せ、レイとルナマリアのザクは三機のジンと交戦状態に入った。
一機のジンはレイによって胴体を分断され爆発し、別の一機はルナマリアの砲撃により撃ち落とされる。
だが最後の一機はザクを擦り抜け、インパルスに猛進する。
「何故気付かぬか!我等コーディネイターにとって、パトリック・ザラがとった道こそが唯一正しきものと!!」
ジンのパイロット…サトーが叫ぶ。
重斬刀の斬撃を辛くもかわして、マユは叫んだ。
「でも…こんなことしたって何も変わらない!コーディネイターもナチュラルも、同じ人間なのに憎みあってたら!!」
思いもよらぬ少女の声に、サトーは顔を歪めた。
「あの時と同じことをして、たくさん人を殺すなら…わたしは許さない!!
殺されたから殺し返すなんて、そんなことするんなら!」
インパルスはジンの背後に回り込み、一気にジンの背中を蹴り飛ばした。
ジンはその反動で、地球へと向かっていった。
インパルス、ザク二機は、最後のメテオブレイカーを起動させる。
そして、ユニウスセブンの破片は分解していていった。
胸を撫で下ろす三人。だが、もう宇宙には戻れない。
機体の帰還もできずミネルバも大気圏突入準備に入る。
三機は身を寄せ抱き合うようにして、大気圏に突入した……。





928 :マユif :2005/07/26(火) 22:31:41 ID:???


PHASE−07 混迷の響き


大型の破片の破砕には成功したが、ユニウスセブンの破片は多数が落下する。
地上に落ちた破片は都市を焼き、海に落ちた破片は津波を巻き起こす。
オーブも例外ではなく、津波や大きな揺れが襲う。
津波から逃れるため孤児院から聖堂の地下に造られたシェルターに避難したマルキオ、カリダ・ヤマトと孤児院の子供達。
そして、ラクス・クラインとキラ・ヤマト。
恐怖に身を震わせる子供達を安心させるように、ラクスは歌い始めた。
包み込む優しい歌声は、子供達を穏やかな気持にさせ、そして傷付いた世界を抱き締めるように響いていく。

大気圏を突入し、地球に降下したミネルバとインパルス達。
無事であった三機を収容すると、ミネルバは太平洋に着水した。
タリアに呼び出された三人は、帰還命令を無視し破砕作業を続けたことにたっぷりと説教を受ける。
そして最後に、タリアは優しく笑って三人のしたことを誉めるのだった。

長い説教も終り、甲板に出るマユ達。
初めて見る広大な海に、歓喜の声を上げるヴィーノ。
マユは潮風の感じに、故郷を思い出す。
懐かしい景色はまだあるのだろうか。
「オーブ…大丈夫かな」
マユは呟く。
空は暗く曇り、波は荒い。

929 :マユif :2005/07/26(火) 22:33:47 ID:???
続き


プラントは早々と地球への援助を開始した。
デュランダルは会見を開き、ユニウスセブンが落下した原因は人為的なものであり、一部のテロリストが行ったものと発表した。
そして破砕が完全にできなかったことを謝罪し、難民救助に力を注ぎ救援物資を惜しみなく送り届けると誓った。
会見が終り控室に戻ったデュランダル。
「これからが大変なのだがね」と苦笑しながら室内で待っていた者達に話しかけた。
一人はピンクの長髪に髪飾りを付けた少女。もう一人はオレンジの髪の赤服の青年。

タリアは、ミネルバをオーブに向かわせることを皆に報告した。
進路的にオーブが一番近く、そしてザフトの基地は程遠い。
ここはオーブに協力を仰ぐしかなかった。
タリアは長い溜息をつく。
「マユも立て続けの連戦にストレスを溜めているでしょう。故郷の景色を見て、少しでも心を癒してくれればいいわ」

孤児院は、津波のせいで粉々に崩壊してしまっていた。
悲しがる子供達。
ラクスはそんな子供達を優しく励まし、浜辺であの日と同じ夕暮れの空を見ていたキラにそっと近付く。
「嵐が来るのですね…」
ラクスの言葉に、キラは黙って夕暮れを見続けていた。

オーブに着くミネルバ。
入港を許可したのは、ユニウスセブン落下後に帰国したカガリだった。
港ではカガリとアレックス、そして一人の軍人が同行していた。
タリアとアーサー、そしてパイロットの三人。
マユは一人の軍人の姿を見付けると一目散に走り出す。
そして、抱きついた。
「トダカさんっ!」
嬉しそうにマユは笑う。
その人物はかつてのマユとシンの恩人であった……。




7 :マユif :2005/07/28(木) 00:38:13 ID:???


PHASE−08 ジャンク


オーブに入港したミネルバは、修理と補給のためモルゲンレーテのドッグに入った。
クルー各員には自由時間が割り当てられ、中には街に出る者もいる。

マユも例外ではなく、トダカと行動を共にしていた。
トダカは、オノゴロで被害を受けたマユとシンをプラントに移住できるように手配してくれたのである。
その後、プラントに移住してからはシンのザフト入隊などもあり、連絡はほとんど取れなくなっていた。
久々の再会に話が尽きないマユ。
プラントに住み始めた頃のこと。シンがザフトに入り一人でいることが多くなったこと。
そして、成り行きでインパルスの代理パイロットになってしまったこと。
マユが話し続けていると、トダカはチラチラ時計を見始める。
ザフト艦にマユが乗っていると聞き、一目でも会えればと時間を割いてきたが、もうあまり時間がなかった。
トダカはアレックスに取り次ぎ、マユにオーブの景色を久しぶりに見せてほしいと頼んだ。
カガリは今、行政府に詰めている。
アレックスに断る理由はなく、了承した。

8 :マユif :2005/07/28(木) 00:40:26 ID:???
続き


海沿いの道を走る車。
潮風の匂いは、オーブで暮らしていた頃と何ら変わらない。
懐かしい風景の数々を見て、マユは少なからず安堵していた。
アレックスはマユを見て、ふと思い出す。
一時と互いに敵同士になってしまった親友のことを。
状況は違うにしろ、民間人が軍のモビルスーツに乗り込んでしまった。
マユはどうなのだろうか。マユもまた、同じ道を選んでしまわないのだろうか。
そんなことを思っていると、アレックスは見慣れた顔を見付け、車を停める。
慰霊碑に花を添えるラクス、そしてキラ。
「キラ!」
「……アスラン」
キラはその名を呟くと、また口を閉ざした。
マユはキラが口にしたアスランという言葉に首を傾げる。
「アスラン…?アスラン・ザラ?」
否定すれば余計怪しまれると思ったアレックスは、素直に「そうだ」と告白した。
良く考えると、ここにはアスラン・ザラと、映像でしか見たことがなったが確にラクス・クラインがいる。
マユは唖然としていた。
「アスランではありませんわ、キラ。今はアレックスでしょう。…あら、その子は?」
「マユ・アスカ、今補給を受けているザフト艦のモビルスーツパイロットだ。確かオーブの出身だったよな?」
アレックスの問いかけにマユは頷く。
マユに、ラクスは「そうですか…」と答え、キラは黙ってマユを見ている。

9 :マユif :2005/07/28(木) 00:42:43 ID:???
続き2
この空気の中、マユはユニウスセブンの破砕作業の際に交戦したジンのパイロット達の言葉を思い出した。
「あの、ユニウスセブンを壊すのを邪魔しようとしてた人達が言ったんです。
コーディネイターにとって、パトリック・ザラのとった道こそが、唯一正しいものだ…って」
その言葉に、驚愕するアレックス。
キラとラクスも驚きを隠せないでいた。
言い表しようのない何かが、また世界を包もうとしている。
「あの時、俺訊いたよな」
アレックスが口を開く。
「俺達は、本当はなにとどう戦わなきゃ戦わなきゃならなかったんだって。
そしたらお前言ったよな。それもみんなで一緒に探せばいいって」
アレックスの言葉に、黙ってはいるがひとつひとつの言葉に耳を傾けるキラ。
「…でも、やったぱりまだ……見付からない」
悔しそうに、アレックスは漏らす。
マユは心配してアレックスを見ていた。
ラクスは雰囲気を変えるためか、アレックスに質問した。
「オーブの情勢はどうなのですか?」
「……芳しくないな。今はセイラン家が幅をきかせている。カガリも頑張ってはいるが、太西洋連邦寄りには違いない」
苦笑してそう返すアレックス。
プラントに出向いたり各国へ訪問し今後を話し合ったりなど、カガリなりに尽力してはいるは、成し遂げようという意思に反し力が及ばない。
募る話はあるものの、そろそろマユはミネルバに戻らねばならない時間になっていた。
アレックスはマユを送るため、キラとラクスに別れを告げる。
「大変なんですね…アレックスさん」
「まぁ…な」

マユが奇妙な出会いを果たしたその日、カガリの抵抗虚しくオーブと大西洋連邦の同盟条約が、結ばれようとしていた……。





13 :マユif :2005/07/28(木) 22:47:27 ID:???


PHASE−09 傲慢な毒牙


翌朝。
カガリとアレックス、そして侍女達が暮らす館。
アレックスが朝食を食しているところに、せわしなくカガリがやってきた。
昨日も行政府で一日中詰めていたというのに、今日も閣議があると慌てながら朝食をかき込んでいく。
侍女のマーナにどやされながら、カガリは食事を進めた。
「どうなんだ、オーブ政府の状況は?」
アレックスが訊くと、カガリの表情が曇る。
やはり芳しくはないらしい。
大半の首脳陣は、大西洋連邦との同盟を結ぶことに賛成している。
今それをカガリだけが我儘で抑えているという感じになってしまっていた。
「今日の決議で結果が出るだろう。私の望まない結果が」
苦虫を噛み潰したような表情をし、カガリは悔やむ。
条約内容に被災した各地の救助と支援が含まれているといっても、締結すればそれは大西洋連邦と、いや地球連合とも手を組むということになる。
自分の力量が、まだまだ至らないことをカガリ自身もわかっていた。
アレックスは立ち上がり、そんなカガリに元へ向かうと、左手をゆっくりと掴みポケットから取り出した指輪を薬指にくぐらせた。
「今は困難な状況に屈してしまうかもしれない。だが、必ずお前の言葉がみんな通じると、俺は信じている。
だから俺は、オーブの一国民アレックス・ディノとしてカガリの力になれるようサポートする。
今はその指輪を、アスラン・ザラだと思って、持っていてくれ」
アレックスの突然の申し出に、カガリは目を丸くしていた。
そして一気に顔を紅潮させると、声を荒げる。
「こういう指輪の渡し方ってないんじゃないか!?しかも食事してる最中に!」
「……悪かったな」
顔を見合わせる二人。
思わず「プッ」と笑みをこぼした。
「では、よろしく頼む。アレックス」
「了解しました。カガリ様」

14 :マユif :2005/07/28(木) 22:49:42 ID:???
続き


プラントでは急遽、評議会と国防委員会の面々が集まって会議が開かれた。
大西洋連邦を始めとする地球連合各国から寄越された文書。
テログループの逮捕、引き渡し。
以前報告した調査結果で既に全員死亡したことを了承したはずなのに、だ。
その上、賠償金、武装解除、現政権の解体、連合理事国の最高評議会監視員派遣という、正気のさたとは思えないオマケ付き。
要求に従えるわけがない。
だが、それを口実に、地球連合が仕掛けてくるのは明確だった。
しかし、デュランダルの考えは変わらない。
「防衛策に関しては国防委員会にお任せしたいが、それでも我等は今後も対話での解決に向けて、尚いっそうの努力をしていかねばなりません。
こんな形で戦端が開かれるようなことになれば、まさにユニウスセブンを落とした亡霊達の思う壺だ」
デュランダルは一拍置いて、また口を開く。
「どうかそのことを、くれぐれも忘れないでいただきたい」

デュランダルの言葉も虚しく、地球連合は開戦表明を地球圏各地に流した。
オーブに停留していたミネルバにもそのニュースは飛び込む。
警報が鳴り響き、寝ていたマユが瞼を擦ってゆっくりと身を起こした。
先に起きていたルナマリアが、モニターを凝視していた。
マユも眠たい目を凝らしてそれを見る。
そして、驚きで一気に眠気が冴えていった。

地球連合の艦隊がプラントに向けて進軍を開始する。
傷の完治したシンは、怒りに震え上がる。
ミネルバに戻って、大変な思いをさせたマユを元の平和な生活に返すはずだった。
なのに、自分がミネルバに戻る前にこんなことになった。
シンは一時的にハイネ隊という部隊に配属になり、それに関しデュランダルから呼び出される。
デュランダルと、そしてシンが配属する部隊の隊長ハイネ・ヴェステンフルス。
背後には、モビルスーツがそびえる。
デュランダルは言った。
「君にこの機体を託したい」と。
名はセイバー。
カオス、ガイア、アビスと同時期に造られたモビルスーツだった。

15 :マユif :2005/07/28(木) 22:52:19 ID:???
続き2


ハイネ隊、ジュール隊など、数々の部隊がプラント防衛のため出撃した。
シンも例外ではなく、セイバーに乗って発進する。
「何でこんなこと…また戦争がしたいのか!アンタ達はぁッ!!」
憤怒し、次々とダガーLを撃破していく。
「ふ〜ん…シンてヤツ、やるじゃないの。負けてらんないねぇ!」
オレンジをパーソナルカラーとするハイネのザクが、セイバーに続いて怒濤の攻撃を繰り広げた。
「ハイネ・ヴェステンフルスと新型に先を越されたな」
「ふんッ!どちらの腕が上か、すぐにわかる!!」
それを見るイザークとディアッカも、彼等と負けず劣らずの猛攻で地球連合を圧倒していった。
次世代のエース、そして過去の戦争を生き抜いた勇士達。
だが、そんな彼等の激戦をよそに、核を持った別働隊が動き始めていた……。




39 :マユif :2005/07/29(金) 22:58:38 ID:???


PHASE−10 憎しみの呪縛


「核攻撃隊!?極軌道からだと!?」
思わずイザークが声を上げる。
本部から受けた通信文に、イザークは驚愕した。
現在展開しているザフト全軍に通達された命令。
「じゃあコイツ等は…全て囮かよ!?」
敵機を撃滅するとディアッカも叫んだ。
「クソォォォ!!」
ジュール隊は転進し、核攻撃隊を阻止するためバーニア全開でスピードを上げた。
他の隊もそれに続く。
「核…?なんでそんなもの!?やるせるもんか…絶対に、撃たせるもんかぁッ!」
一瞬、シンの中でオノゴロでの出来事がフラッシュバックした。
セイバーを変形させ、核攻撃隊の進行を阻止するために急ぐ。
「うまいこと連合に出し抜かれたな…だかな、それほど議長は甘くないぜ!!」
ハイネも核攻撃阻止に向かう。

ザフト全軍が核攻撃隊に迫るが、核を搭載したウィンダムが一斉に核ミサイルを射出した。
プラントの危機に、焦り息を飲むザフト兵達。
しかし、核攻撃隊の前面に位置していた一隻のナスカ級に装備された、ニュートロンスタンピーダーが起動する。
放たれる閃光。
それは核ミサイル、核攻撃隊、そして核攻撃隊の搭載艦を包み込み、完全に消滅させた。
地球連合はおずおずと撤退していく。
プラントへの被害はゼロ。
ザフト兵一同、ニュートロンスタンピーダーに唖然とするも、プラントが無傷でいることに安心した。

40 :マユif :2005/07/29(金) 23:02:40 ID:???
続き


翌日のプラントは、昨日の核攻撃の事実が知れ渡り、騒然としていた。
もう地球連合と戦うしかないと叫ぶ者。
戦ってはいけないと否定する者。
恐怖に当たり散らす者。
様々な声がプラントに響きあう。
殺伐とした雰囲気の中、街頭モニターが一人の人物を映し出す。
「みなさん…ワタクシは、ラクス・クラインです」
突然の登場に、民衆は皆モニターに目を向けた。
「みなさん、どうかお気持ちを鎮めて、ワタクシの話を聞いてください」
ラクス・クライン。
そう名乗る少女は、街頭モニターや、プラントのテレビなど至る所に現れた。
軍のモニターにもそのラクス・クラインの演説を映し、皆挙って画面を食い入るように見つめる。
イザークとディアッカは、どこか気に食わない表情をして互いに顔を見合わせた。
民衆に語りかける懐かしき顔。懐かしき声。
シンも自室で彼女の演説に注目し、最後まで見守る。
デュランダルと共にいたハイネは淡白な笑みを浮かべ、議長を見る。
「馬鹿なことをと思うがね。だが今、私には彼女の力が必要なのだよ。また、君の力も必要としているのと同じにね」
「無いよりは、有ったほうがマシ…備えあれば憂いなしってヤツですか?」
そんな二人の会話は外に、モニターに映るラクス・クライン、いやミーア・キャンベルの言葉に民衆は心安らいでゆく……。



71 :マユif :2005/07/30(土) 22:34:23 ID:???


PHASE−11 選べぬ道


カガリはわめいていた。
やはりカガリの一人よがりになっている。
首脳陣やユウナ・ロマ・セイランは、やはり大西洋連邦との同盟を結べとカガリに畳みかけた。
会議室前で待っているアレックスも、中の様子を聞いて苦しい表情を浮かべた。
安全保障とそう銘打ってはいるが、それは即ち同盟を結ばなければオーブも敵対国と見なすという強迫でもあった。
守ってきた理念を捨てるか、国をまた焼くか。
カガリは決断を迫られる。

評議会はジブラルタルとカーペンタリアを包囲している地球連合への攻撃を決定。
だが、デュランダルはこの侵攻をあくまで積極的自衛権の行使とし、戦火が拡大しないよう処置を取る。

そんな中、イザークとディアッカは、半ば無理を通して休暇を取りかつての戦友や同胞達の墓地を訪れた。
二人はひとつの墓石に花を添える。
再び始まった戦争。
また、どれだけの犠牲がでるのか、また誤った道に進んでしまうのか、不安は尽きない。
そんな二人の元に、近付く足音。
二人は顔を向ける。
そこにいたのはマーチン・ダコスタだった。
砂漠の虎と呼ばれたアンドリュー・バルトフェルドの右腕として、そしてクライン派としてエターナルに身を置いた元ザフト兵。
ダコスタは静かに口を開く。
「あのラクス・クラインは本物ではない」
その言葉にイザークとディアッカは一瞬動揺するが、二人は何か確信的なものを感じた。
ダコスタは「何か裏があるかもしれない」と、そう告げて去っていく。

72 :マユif :2005/07/30(土) 22:36:03 ID:???
続き


カガリとアレックスはミネルバに赴いた。
同盟締結はやはり覆せず、このままではザフトであるミネルバは敵艦となってしまう。
タリアやアーサー、マユ達パイロット三人の前でカガリは深々と頭を下げた。
タリアは残念だか仕方ないと、そう言う。
カガリの顔は晴れない。晴れるはずもない。
そしてカガリは、マユの前でもう一度頭を下げる。
自分の非を責めてほしかった。罵ってほしかった。
あの時オーブを襲った地球連合と手を組んだことを。地球連合が攻めてこなれば両親を失うこともなかったと。
だが、マユは罵倒を浴びせることもなく、と優しく言う。
「間違ってしまったなら、直すことができます。今はできなくても、この国なら、カガリさんなら、きっと」
マユの言葉に、カガリの瞳から涙が溢れそうになる。
「ありがとう」
マユに感謝し涙を拭くと、カガリの瞳には強い意志が宿っていた。
オーブ近海を無事出られるまで精一杯協力をさせてもらうと、カガリは約束する。

カガリとアレックスがミネルバを後にすると、ミネルバはオーブを出る準備を開始した。
艦の修理と物資の補給はモルゲンレーテが急ピッチで行ってくれたため心配するほどではない。
明朝、ミネルバは出港する……。


167 :マユif作者 :2005/08/01(月) 00:30:44 ID:???


PHASE−12 炎に染まる海


軍本部にてやってきたユウナ。
冷笑を浮かべ士官に尋ねる。
士官は複雑な表情をした後、モニターに目をやった。
モニターには、地球連合の艦隊が映る。

朝日が差し込む中、ミネルバはオーブを出るため進行し、領海を出る。
だが直後、前方に多数の熱紋を感知した。
それはユウナが寄越した地球連合の空母数隻を含む艦隊だった。
ミネルバを挟むようにもオーブ艦隊もミネルバ後方の領海内に部隊を展開する。
カガリの言葉を思いだし、舌打ちし、タリアは唇を噛んだ。
全てはユウナ、いやセイラン家が行ったこと。
しかし、ミネルバのクルーはそのことを知らない。
ミネルバはコンディション・レッドを発令。艦内の緊張が高まる。

パイロット控え室でメイリンのアナウンスを聞いたマユは驚きを隠せないでいた。
カガリのあの約束はどうしてしまったのだろうと不安にかられる。
オーブとは戦いたくない。勿論、できるなら地球連合ともだ。
自分は軍人ではない。だがインパルスに乗って、戦うことを選んだ。
だから戦うしかない。
両親を失った時の悲劇を繰り返したくないから、大切な仲間を守るためなら鬼にもなろう。
マユはそう決めて発進準備のためコアスプレンダーに向かった。

168 :マユif :2005/08/01(月) 00:32:44 ID:???
続き


戦闘が始まる。
インパルスはミネルバ周辺で迎撃にあたり、レイとルナマリアのザクは甲板にて上空の敵機を狙う。
向かい来るウィンダムを薙ぎ払い、撃ち落とし、インパルスはなんとかミネルバを守る。
二機のザクとミネルバも砲撃を行いウィンダムを仕留めていった。
まだまだ数が多いウィンダム。
しかし、それよりも危険なモビルアーマー・ザムザザーの発進準備が進められていた。

事に気付いたカガリは、アレックスと共に軍本部に来る。
カガリは今現在オーブ軍のに出されてる命令を撤回するため口を開くが、ユウナに制止された。
「国は貴女の玩具ではない!いい加減、感傷でものを言うのはやめなさい!」
ユウナの言葉にカガリはキッと睨みつけた。
もう自分の意志は曲げたくない。
「あの時この国を焼いた軍に味方して、その上懸命に地球を守ろうとしてくれたミネルバを敵になるからと撃つ。
人として最低な行為をしているんだぞ!こんなことをして国が助かっても、民達が喜ぶとでも思っているのか!!」
カガリはユウナを一喝し、マイクのスイッチを入れてトダカのいる旗艦に連絡する。
「トダカ一佐、頼む」
カガリの行いに憤慨したユウナは、カガリの顔目がけて平手を振り下ろす。
が、アレックスが素早くユウナの腕を掴み、それを防いだ。
「自分の思い通りにならないからと手を上げる…国家元首にでもなったおつもりですか、ユウナ様?」
アレックスは静かにそう言い放つ。

「セイランのドラ息子の横暴に屈せず、自分の信念を貫いたか…カガリ様も成長なされた」
トダカは静かに呟くと、ミネルバに通信を送る。
「こちらオーブ軍、過激派による横暴で行動に制限が出ていたが、これより貴艦の脱出を支援する」
トダカはそう告げると、待機させていた各機を出撃させた。
ウィンダムと対峙して、ミネルバを突破させるために各機攻撃を加える。
ここでミネルバを手助けしたところで、いずれは敵になってしまう。
だが、そんなことは彼等に関係なかった。
ユニウスセブンを破砕に尽力し地球への被害を食い止めてくれた同志を、今度は我々が助ける番だと全力で戦う。

169 :マユif :2005/08/01(月) 00:34:53 ID:???
続き2


オーブ軍の支援により、離脱できる兆しの見えたミネルバ。
タリアは大気圏内だがタンホイザーを使用して一気に突破する策を選ぶ。
タンホイザー起動、白い閃光を放ち陽電子のビームは一気に地球連合艦隊に向かった。
しかし、タンホイザー発射直前に発進したザムザザーが艦隊前方に待機し、タンホイザーを受け止めた。
陽電子リフレクターにより衝撃は大きかったが損傷はゼロ。艦隊も無傷。
ザムザザーはそのまま一気に畳みかけるようにインパルスを襲う。
ザムザザーの猛攻をなんとかかわすインパルス。
しかしバッテリー残量は僅か。
焦るマユ。
焦りが油断を誘ったのか、ザムザザーのクローがインパルスの脚部を掴んだ。
更に、とうとうバッテリーが切れてしまった。
VPS装甲の効力はなくなり、軽々と掴んだ脚部が千切り取られる。
振り落とされ強烈な衝撃と共に海面向けて降下していった。
恐怖に満ち、マユは茫然自失となった。
「嫌……」
逃げるため森の中を必死で走った。ビームによって吹き飛ばされた自分達。そして、両親の死体。
押し寄せる死への恐怖が、マユの奥底に眠る何かを覚醒させた。
弾ける種子。
一気に現実に引き戻されたマユは、生きたいという思いに支配される。
「デュートリオンビームを照射して!それから、レッグフライヤーとブラストシルエット射出準備!!」
ミネルバに通信しマユは激しく叫んだ。
普段はおとなしく心優しい少女だった面影が残っていない。
タリアはメイリンに、マユに従うよう指示を出す。

170 :マユif :2005/08/01(月) 00:36:11 ID:???
続き3
インパルスへの位置を補足しデュートリオンビームが発射される。
ビームを受けエネルギーが回復し、インパルスは一気にザムザザーに向かった。
ザムザザーは迫り来るインパルスにビームを放つが、シールドで防がれそのまま押しきられる。
リフレクターを展開する間もなくザムザザーはインパルスのビームサーベルに貫かれた。
インパルスが離れたと同時にザムザザーは爆散する。
「シルエット射出ッ!!」
マユの言葉に、カタパルトからレッグフライヤーとブラストシルエットが射出される。
破損したレッグフライヤーとフォースシルエットを分離して、新たなレッグフライヤーとブラストシルエットに合体する。
マユはそのまま艦隊をロックし、ビーム砲とレールガンが火を吹いた。
巨大な火線が巡洋艦と空母を次々と包み、撃滅していく。
インパルスの怒濤の快進撃により残った地球連合軍の艦は撤退していった。

その鬼神のようなインパルスに、ミネルバクルーもオーブ軍も圧倒されていた。
(やはり君はSEEDを持つか、マユ・アスカ……)
トダカは心の中で静かに呟く……。


187 :マユif :2005/08/02(火) 00:26:29 ID:???


PHASE−13 翼よ、再び自由の空へ


ザク二機を収容し、インパルスも帰投した。
オーブ軍に感謝し、別れを告げ、ミネルバはカーペンタリアに向けて進行する。
一息つくタリアは、この戦闘を生還できたのはマユのお陰だと、正直な感想を漏らす。
それを聞いたアーサーは浮かれた様子でインパルスが地球連合艦を次々と沈めていくあの光景を語っていった。
タリアは長い溜息を吐いた。
シンなら、まだ素直に喜べる。
だが、この結果をもたらしたのは、民間人のマユなのだ。
シンと共にオーブからプラントに移住したことは、デュランダルから聞いている。
オーブに住んでいた頃、少しばかりモビルスーツの操縦訓練を受けたいたということも。
しかし、それだけでは今までのマユの操縦センスの説明がつかない。
アーモリーワンであの時、少しでも可能性があればとマユをインパルスに乗ることを許可したが……。
(議長もまだあの子に関して何か隠しているみたいだし…)
タリアは何度目になるかわからない溜息をまたついた。

歓喜の声が上がる格納庫。
しかし、その主役であるマユは、依然としてインパルスから出てこない。
心配になったルナマリア達がコックピットを外部から開くと、マユは涙を流しながらカタカタと震えていた。
自分がしたことが今となって怖くなる。
生に執着し、目の前が見えなくなった。
意識もあり確かに覚えている。なのに、自分がしたことに恐怖している自分がそこにいた。
ルナマリアの呼び掛けにハッと気付いたマユ。
ルナマリアの顔を見ると瞳を更ににじませて彼女に抱きつくと、マユは泣きじゃくる。

188 :マユif :2005/08/02(火) 00:28:44 ID:???
続き


マユとルナマリアの自室にて、ルナマリアはレイを交えてマユが泣いていた理由を訊いた。
普通なら、この功績に大騒ぎして喜んでもいいくらいのはずだ。
マユは嗚咽混じりに、自分を取り巻いていた先程の恐怖を語った。
このままでは、自分は酷い凶悪な人間になってしまうのではないか。
マユは二人にそう訴える。
ルナマリアはマユを優しく頭を撫でた。
「そんなことない。マユはマユだよ。私達はマユに助けてもらったの。そんなマユが、悪い人になるわけない」
レイも普段はあまり見せない微笑みをマユに向け、
「なんにせよ、お前が艦を守った。生きているということは、それだけで価値がある。明日があるということだからな」
諭すようにそう言うと、マユの頭を撫でていたルナマリアの手の上に、レイも手を添える。
ルナマリアとレイの暖かさにマユは安堵し、「ありがとう」という言葉と一緒に二人に抱きついた。

夕日がオーブを柔らかく照らす。
高台に作られた理念を貫き散った者達の慰霊碑の前にカガリとアレックスはいた。
その者達の中には、カガリの父でありオーブの前元首のウズミ・ナラ・アスハの名も刻まれている。
カガリのあのミネルバに対しての手助けが、首脳陣に波紋を広げた。
カガリは糾弾される。
「仮にもこれから同盟を締結しようという相手になんたる行為をしたのだ」と、激しく責め立てる。
この件はなんとか説得によって解決したが、首脳陣はカガリを許せないでいる。
カガリのしたことは人としては正しいのかもしれない。
だが、政治的にも、外交的にも、元首としてやってはならないことだった。
満場一致でカガリを謹慎に処したいと決議され、カガリもそれを受け入れる。
そしてカガリはここにいる。
振り返り、アレックスを見る。
父の言葉。
ウズミ・ナラ・アスハとパトリック・ザラ。
どちらが正しかったのか、何が間違っているのか。
二人は深刻に、答えを導きだそうと考え込む。

189 :マユif :2005/08/02(火) 00:30:47 ID:???
続き2


その夜。
キラ達は突如として、危険な訪問者に襲来される。
海辺の孤児院が被災し、マリュー・ラミアスやバルトフェルドの暮らしている屋敷に移っていたキラ達。
銃声が辺りに響き、キラ達はシェルターに走る。
マリューとバルトフェルドが応戦するも、優勢とは決して言えない。
なんとかシェルター前のゲートまでやってきた。
だが、そこにも刺客が、通風口からラクスを狙う。
それに気付いたキラは、ラクスを覆うようにその場から素早く退け、撃たれた銃弾を避ける。
マリューとバルトフェルドは通風口に何発か発砲して、侵入者を排除した。
ゲートが開くとシェルターに皆一斉に駆け込む。
ラクスは深刻な顔をして、バルトフェルド達を見た。
「狙われたのは…わたくしなのですね」
キラ、マリュー、バルトフェルドは神妙な面持ちで顔を見合わせる。
相手の身のこなしからコーディネイターの部隊だとわかる。
ザフトなのか、何故ラクスを狙うのか。
不可解な現状に囚われながらも、更にシェルターの奥へ進む。

シェルターを激しい揺れが襲った。
これは明らかにモビルスーツによる攻撃。
バルトフェルドは、ラクスに「扉を開ける」と言った。
動揺するラクスに、キラは物静かに、大丈夫というような視線を向ける。
ピンクハロの中に隠された鍵を使い、扉が開かれた。
扉の中には、主の帰りを待つ、フリーダムの姿があった。
ザフトの新型機アッシュが館を攻撃するなか、館の裏手の山からビームの一閃が光り、その山からフリーダムが現れる。
自由の翼が、再び空に舞い上がる……。