ところが周瑜はといえば、
「私は興味ありませんから、どうぞお一人で」
という。
仕方が無いので一人で出かけて行った。
そして帰ってくるなり、
「俺は嫁を貰うことに決めたぞ!」
と言う。
周瑜はおどろいたが、同時に孫策の心を捉えたと言う二喬に興味を覚えた。
次の日、孫策は大喬を訪れ、
橋玄公の桃園を二人で歩きながら話をした。
にこやかに笑うけれども時々、ふっと、寂しい顔をする大喬に、
孫策はそのわけを問いただした。
すると大喬は孫策を見上げて言った。
「妹のことです。
私が貴方さまの所へ興入れするとなると、あの娘は一人になります。
どなたかあの娘をもらってくださる殿方はおりませんでしょうか」
孫策が小喬にとひっぱってきたのは案の定、周瑜であった。
半ば強引につれてきたが、二喬を見て、やはり心が揺らいだようであった。
孫策が周瑜の肩をつついてどうだとばかりに自慢する。
周瑜は本当はまだ妻帯するつもりはなかった。遠征ばかりでそんな余裕はないと思っていたのだ。
しかし、こうして見るとやはり美しい女性だった。
さすがの周瑜も心惹かれた。
「 一個大喬ニ小喬 (姉は大喬 妹は小喬)
三春容貌四季嬌 (春の華のようで四季の美しさ)
五顔六色調七彩 (そのあでやかな美しい容貌)
難劃八九十分描 」 (絵筆ではとても描ききれない)
という詩を周瑜にしたためて贈った。
これは小喬の難題であった。
「 十九望月八成園 (十九夜の空の月は八分)
七人巳有六人眠 (七人のうち六人が眠り)
五更四点鶏三遍 (鶏が三度鳴いて五更を告げ)
ニ喬出題一夜難 」 (二喬の難題に苦労して1夜を明かした)
この詩はその朝小喬に届けられ、彼女はその出来映えにほれぼれとした。
「お姉樣、私、あの方の伴侶になりとうございます」
と言った。
それを孫策から聞いた周瑜は自分も小喬を娶りたいと申し出て、この縁談は成立した。
喜んだ孫策は
「では二人、一緒に婚儀をあげようではないか!これで晴れて俺達は本当の兄弟になるのだ」
と言って、たいそう喜んだ。
(終)