ある年、周瑜の故郷である廬江郡舒県に曹操が大軍を率いて攻め入ろうとしていた。
いち早くこの情報を得た周瑜は、兵の数の差が圧倒的である事から、この場は逃げることを選択した。
「また機会を見て、取り返せばよい。悔しいが今は逃げるが勝ちだ」
ところで、周瑜には金持ちの叔父がいた。
このままここに残れば無事ではすむまいと考え、
周瑜はこの叔父をつれて逃げようと思った。
ところがこの叔父は、
「なあに、曹操だからとて、
なにも打つ手がないわけではないぞ。
だからおぬしは心配するでない」
そういって、家財一式そのままに、残ると言い出した。
いくら説得してもきかないので周瑜は根負けしてこう言った。
「ですが叔父上、万一のことがあります。
せめてご家族だけは保護させてください」
こうして周瑜はこの叔父の頑固さを知っているので、
ただ、「ご無事を祈ります」とだけいって
叔父の家族だけを連れて逃げた。
数年後、軍を率いて曹操の虚をつき、故郷を取り戻すことに成功した。
真っ先に叔父の消息をたずね、無事であることを知るとすぐさま会いに行った。
「叔父上、よくぞご無事で!あの残酷な曹操のこと、叔父上がいったいどのような酷い扱いを受けたかと思うと夜も眠れませんでした」
「おお。儂もだ!ずっとここでこうしてひっそりと身を隠しておったのだよ。おぬしが迎えにきてくれて嬉しいぞ!」
二人は再会を祝い、叔父の家で宴を開いた。
そのとき、周瑜は家の中を見渡して、不思議な気持ちになった。
「相変わらずの豪華な家財道具だ。このような場所で隠れたといってもあの曹操が見逃すものであろうか」
そうして宴のあと、叔父は周瑜に申し出た。
「そうそう、おぬしの軍隊には感謝せねばならぬな。腕のよい料理人に肉饅頭をつくらせておぬしの軍に送るから、数を教えてはくれまいか」
「叔父上。その料理人とは曹操という名ではありませんか?」
「すまん、こうするより他に生き残る道はなかったのだ!」
叔父は周瑜に許しを乞うた。
しかし、遂には叔父の首を刎ねた。