「芸術劇場」(金曜日10・20〜11)
駆逐艦雷電の告別
太平洋戦争戦死者の幽霊と戦後派青年の奇妙な対話を通し、戦争の傷跡をつきつめることで、生きようとする戦中派と、戦争を知らず観念だけで戦争反対を叫ぶ戦後派との食い違いをコメディータッチで描く。芸術祭賞受賞作。
途中
ある町で、急に人々の成長が止まってしまうという不思議な現象が発生。「成長の停止」というSFタッチの設定で、右往左往する人々の様子を喜劇タッチで。
ネーミング
メーカーの新製品愛称懸賞募集に夢中になる主婦の夢と現実をリアルに、そして繊細に。
五色沼幻想
功なり名を遂げた作曲家が、吹雪の中を五色沼に向う。この沼は若い頃、人妻だった恋人葉子と訪れた思いでの場所だった。裏磐梯の神秘的な五色沼のイメージをもとに作られた幻想的な作品。
猿の道
東京の新聞記者石田は野生の猿の餌付けに成功した志乃を取材しようとある山村を訪れる。自然保護と産業開発が激しく対立する渦の中で一人の女が選んだ道とは。
くわえ煙草伝兵衛の幻想
本来、対立する立場の刑事と容疑者との間にコミュニケーションを成立させることで、疎外された現代人の人間関係を逆説的に描いたもの。「熱海殺人事件」の別バージョン。
きのうの果て
戦時中の異常な体験を風化させまいとする老人。しかし、過去の暗い時期を共有した女と再び出会うこととなり……。
日曜日ごとの町
一人の青年があこがれる安住の世界を通して現代社会に対する憤りと悲しみを寓話として描く。
二人の愛のテーマ
家計簿をつけてはため息ばかりのサラリーマンの妻。ついにスナックでアルバイトをすると言い出すが……。狂乱物価を背景にした都市生活者夫婦の生活不安を風刺する。
消えていく日のため
世代の違う男女の愛とエゴイズムに傷つく悲しみをとらえ、現代に「愛」は可能かを探る。
百年戦争
終戦から30年。そのまま時間が停止したままの老人の現実とも幻想ともつかぬ一人語りを通して日本人にとってあの戦争とは何であったかを問う。
修平爺さんと邪馬台国
幻の邪馬台国探しに情熱を傾ける老人とその心情を。邪馬台国探しの旅に出かける前、レントゲン写真を撮られたことがなぜか気になる修平爺さん。芥川賞受賞後第一作。
エウ・ソウ・ジャポネーズ
ブラジルの日系人社会から孤立して、日本人への不信をあらわにしながらも日本国籍を捨てようとしない一人の男の心の軌跡。74年度芸術祭優秀賞受賞作。
親守り子守唄
児殺しと代理戦争という現代社会の2つの病理を重ね合わせながら、人間存在の本質を考える寓話。
帰ってきた忠犬ハチ公
14年間、忠犬ハチ公の銅像の前に立ち続けたと称する中年男と、毎夜、銅像を磨きに現れる老人との間のくだらぬ論争に巻き込まれた青年。彼もまた、いつしか幻想の世界に引きずりこまれていく。
冬のうちわ
故郷の同窓会に出席した男が友人からうちわをもらう。男はそれを東京に持って帰り、これは自分の妻とは正反対の、気品があって教養豊かな女性によって作られたと空想するのだった。
ホップ・ステップ・ダウン
現代の都会の家庭を舞台に、平和の中にひそむ不気味な不安を描く。
ラストシーン
73年に得度して尼になった瀬戸内晴美の書き下ろし第2作。男と女の愛のはかなさを淡々と。
とも子の歳月
青春の夢を持ちつづけながら、時間に押し流されてきた46歳の主婦が娘に自分の夢を託したものの、その期待は見事に裏切られる。
十六歳のかくれんぼ
ある高校生の自殺と学友たちの反応を通して理由らしい理由もないまま自殺に走る現代の青少年たちの生態を描く。
小判と割箸
膨大な資産を持つといわれる廃品回収業の老人源やん。その仕事を嫌ってスナック・チェーンを作るのが夢の息子夫婦の意地と欲の人間模様。
1・2・3・4・5
行政管理庁の手で始まった国民総背番号制の研究を背景に国家と個人の問題をSFタッチで。
旅に病んで
漂泊の歌人・芭蕉における”旅”の意味と、その人間像をさぐる。病に伏した芭蕉。その胸に去来するものは……。
女優志願
女優になることを夢見ながら青春をおくる若い娘と、暗い人生を歩みつづけてきた見知らぬ老婆との奇妙な対話の中に、娘を襲う未知の世界への不安を描く。74年度芸術祭優秀賞受賞作。
ふな屋の居る街
人間にとって幸福とは何か。別役実の創作童話をもとに詩情豊かに描く。
首きられ馬がやってくる
四国・讃岐山脈のふもとにある平家落ち武者伝説にまつわる”首切られ馬の墓”に隠されたナゾ。
みどり色のパラシュート
蔵王の火口湖に緑色のパラシュートで飛び降りた若者が別世界へと迷い込み、過去、現在、未来の時が列をなして並ぶ中で自らの生を見つめ直す。
峯入り行者
真っ暗闇の山中に踏み迷う山伏の姿を、狂言の演技を借りて描く。閉塞した時代状況を風刺する。
カエルの命日
文春漫画賞を受賞した滝田ゆうの初書き下ろし。大衆酒場、雨にけぶる裸電球の街燈、路地を抜けていく酔っ払い……。