1975年のラジオ劇場 STORY
劇作家つかこうへい、音楽家・朝比奈尚行、詩人・松永伍一がラジオドラマ初書き下ろし
ルンペン
 安定したサラリーマン生活と妻子を捨て、ルンペンになった中年男・後藤六助と、彼の娘の恋人である若い警官との対話を通して男の生き方、ルンペンとは何かを描いたもの。
太平洋の虹
 会津とカリフォルニアで広く知られている「少女おけい」の伝説を、宮本研が現地に飛んでルポした異色のドキュメンタリー・ドラマ。
ほんとにさよなら
 漠然とした欲求不満で会社を辞めた青年。失業保険も今日で終わり。親のすすめる相手との結婚式を明日に控えながら、恋人への思いを断ち切れないでいる娘。2人の対話を通して、現代の若者たちのおびえ、いらだちを描く。
ポックリソング
1974年度の岸田戯曲賞を受賞したつかこうへいの書き下ろし。老人問題を取り上げ、嫁と姑の間に緊張関係を維持することでいきいきとした老後が送れるのでは、と提唱するブラックなゲーム劇。
蝉になった男
 土とつながらない現代の都市生活の不安を一人の蒸発人間の姿を通して描く。
昭和カブト虫番外地
 架空の公害都市「三日市」を舞台に、人間の営みのこっけいさ、むなしさを痛烈に風刺する。その市のを見下ろす山頂には絶滅の危機にひんしているカブト虫20万匹が巨大化して養殖されていた……。
しおばな
 過疎の孤島を舞台にした青春劇。都会からUターンしてきた3人組は、希望に燃え、島に戻ってきたが、現実は彼らの夢を無残に打ち砕く。
花地獄
 能を最高の芸術に花咲かせた・世阿弥元清という天才の生涯を通じての心の地獄を描く。詩人・松永伍一の初のラジオドラマ。
鬼と蛇のあいだ
 互いの自我の強さのゆえに夫と別居して3年になる「私」が取材を兼ねて訪れた丹後の山中で、常々、その生き方にひかれていた細川ガラシャと夫・忠興の愛憎の跡をたどる。
飛騨の石室
 奥飛騨に残る入寂の石室を題材に、人間の死について考える。病床にあってわがままな老母(鈴木光枝)のいる男(松村彦次郎)はある日、亡父ではない男名前の手紙を老母が大事にしまっているのを見つけ、その秘密を探ろうとする……。
卵を産みにきた蛙たち
 カエルの産卵に話を借りて、頭と体がちぐはぐになった現代人の生理を描く。恋人の子供をみごもっている女。しかし、彼女は結婚する意志はないようだ……。
あらみたま
 自ら不老不死の仙人という浮浪者。夫の戦死を決して認めず待ちつづける女。やさしいが突然暴力をふるいだす若者。3者の交わることのない魂の軌跡を描き、戦死した父たちの意味を考える。
女だけの家
 女流作家の時子と姉伸子。伸子は時子の娘のために家政婦の役割を務めて来た。彼女の心に巣食った複雑な心理と、秘められた復讐の恐怖を、2人の会話を通して描いたもの。
スーパーパパ
 俳優でありミュージシャンでもある劇作家・朝比奈尚行の初のラジオドラマ。蒸発した父を探す少年の胸に去来する父のイメージを幻想的に描く。
月のウサギ
 40歳の誕生日を迎えた広告代理店に勤めるサラリーマン。ある日、会社のOLに「課長、実は折り入って相談が…」と言われてヤニ下がるが…。「あとは転げ落ちる一方」の40代を迎えた中年の複雑な心情と、それに翻弄される家族の姿をコミカルに描いたホームドラマ。
世良修蔵の死
 仙台藩抗戦派の手で首をはねられた官軍参謀・世良修蔵の死を、長州人ち東北人の言葉の違いやコミュニケーションのなさが生んだ悲劇という視点からとらえ、維新期に消えた一人の青年の姿を描く。
海亀の背中にまたがって
 釣り好きの男がふとしたことから、洋上を大亀の背中に乗って空想旅行に出る。海の生物や海そのものとの対話を通して、男のそれまでの知識や思考は次々に否定されていく。
マイ・ブルー・エンジェル
ドキュメントとドラマと音楽劇をドッキングさせた暴力とエロスの青春劇。音楽は坂本龍一。「面白かったですよ、ホンモノの暴走族を使いましたし、喜頓さんとアイドルの三東ルシアの組み合わせも」と26年後に作者の流山児祥。「演出は女の人でした」。誰だろう?
われも子なれば
 死者の霊をなぐさめる夜行念仏講にまぎれ込んだ中年と老年の夫婦の亡き子への情愛、老いてゆく者の孤独。
太平洋の虹・還らざる一機
 日系アメリカ人の苦闘に満ちた歴史と彼らの引き裂かれた心理を、太平洋戦争を舞台に淡々と描く。
あの夏の今は
 奄美大島在住の作家・島尾敏雄夫妻の作品、手記、往復書簡などに材をとり、戦中から現在まで、30年余を激しく、美しく生き抜いてきた2人の姿を。