1980年のラジオドラマ・物語抄
黒髪
豊かな黒髪を持ったヒロインが「櫛」に寄せる激しい執念を、不治の病が奪った恋しい人への思いと重ね合わせて描く。
神々の夕映え 
人間の生死はいったい誰の手に委ねられているのか。雪の北海道を舞台に、絶えず、生と死の分水界に立って悩み続ける一人の医師の目を通して安楽死と人間の生命のあり方を問う。
寒い顔
多くの参拝客で賑わう香川県琴平はまた、歓楽の街として知られた。この琴平の遊郭で仲居として働いていた加藤タツさんの証言をもとに、苦界に身を沈めていった一人の女性の生きざまを追う。
満開の桜の下
桜の花に包まれた小さな神社とその前の茶店。そこへ中年男が6年ぶりだといって訪ねてくる。現実と幻想が交差する不思議な世界。
タイフォイド・メアリー
アイルランドからアメリカに移住、料理人として働くメアリーの行くところ、なぜか必ず、チフスが発生する……。
空飛び幸吉
悲劇の発明家として戦前の教科書にも載っていた日本の飛行機野郎・表具師浮田幸吉を、母らの証言を通して描く。
夢・日本シルクロード 
辺見じゅん「呪われたシルクロード」のドラマ化。江戸時代末期から明治にかけて長野、山梨などから横浜で絹を移送した日本の”絹街道”にまつわる悪夢を。
野の端にて
明治17年の秩父事件で重要な役割を果たした晩年の井上伝蔵が、沈黙の34年間の心模様を語るモノローグドラマ。大正7年、北海道北見市で一人の男が死んだ。男は死の直前、自分は井上伝蔵であると述べる。
ギターだけが聞こえる
ある日、突然、耳が聞こえなくなった姉。その原因が母にあると考えた弟はあることを発見する。母と娘の交錯した異常な心理を追う。
この世の花
同じ劇団の演出家に結婚をえさにだまされ、ずるずると関係を続けている女優。男は妻の病気を理由に、別れ話を先延ばしにするが……。女の情念や葛藤を一人芝居で。
星の生まれた夜
会社で窓際に追いやられた星野は子供に裏切られ、妻に先立たれる夢を見る。働き過ぎのサラリーマンの悲哀をコメディータッチで。
瀬戸内少年野球団
炎天下の甲子園。高校球児の熱戦を見ながら、40をとうに越えた竜太が敗戦の年の淡路島での思い出を語り始める。「昭和20年のあの野球試合が、おれたちに生きる勇気を与えたんだ。腹をすかしたオレたちに……」
霧の岬
戦争で死んだはずの息子の帰還を待ち続ける老女が、夫を海に奪われた失意の若い女を助ける。息子を戦争で、娘を海霧の海に奪われた老女の悲しみを、彼女と同居するようになった若い女との葛藤を通して描く。
向日葵の女
病の床に伏した江口章子が最も愛した男・北原白秋との結婚生活を回想、その姿を通して、ヒグルマ(ひまわり)の花ように太陽に恋い焦れ、永遠に果たされる恋に身を焼きつくした彼女の美しくもすさまじい生涯を描き出す。
片隅の津軽
ねぶた祭の終わった8月末のある夜、青森のスナックに一人の旅の女が現れる……。"かつて追われるように津軽を去った母親をしのび、初めて津軽を訪れた娘の行動を通して、懐かしいふるさとへの心情を抒情的に。
壁の中のDJ
土曜の夜、刑務所内のスピーカーからいつものようにDJタローの声が流れてくるが……。"刑務所で行われている所内放送の記録をもとに、刑務所という極限状況下の受刑者たちの哀歓と情念。
夢供養
激しい女の愛はどれほど周囲を傷つけるのだろうか。交通事故で母が死亡、早くから家を飛び出し、母を理解しようとしなかった青年が、若い頃の母の姿を探そうと、一人で供養の旅に出る。
トコ・ジュパン
日本から見捨てられ、インドネシアのジャングルでひっそりと生きる元娼婦の老女と電源開発プラントの優秀な技師の死を対比させながら人間の幸福とは何かを問う。
夏の夜は
悩み、苦しみを持った女性が次々に訪れる京都の竹林の中にあるとある尼寺を舞台に、そこで繰り広げられる尼僧と幽霊のコミカルな対話。
機嫌のいい海
浜三とおしまは結婚して40年。おしまは海女で、浜三はその仕事を手伝っていた。一見、平和な夫婦だが、浜三はおしまに殺意を抱いていた。社会的にも家庭的にも立場の逆転を渇望する老人の悲哀を、想念と現実を交差させながら描く。
珊瑚礁の島で
江戸時代に石垣島で起こった大津波のときの島民の苦しい生活、第二次世界大戦後、工場で働いていた主人公の父親の不発弾による死などを織り交ぜ、教師として島で一生を送ることを決意する恋人と主人公の心模様。
幸福の海
島でイルカの研究を続けるうち、無力感に襲われた男が一人の少女に出会う……。イルカの研究のため九州の島を訪れた一人の研究者の目を通して、イルカによる被害に悩む漁民の姿を憂き彫りにする。
雪華の乱〜大塩平八郎
天保の飢饉と腐敗した幕府の圧政に苦しむ農民を救うため、立ちあがった大塩平八郎の乱。大塩に従った農民、圧力をかけた奉行ら、この事件にかかわった人物のそれぞれの立場を描くことによって、大塩平八郎の実像に迫る。