ヒノエの夏物語T 「望美。ほら。お前のために咲いてる花だぜ?」 「・・・」 「我が愛しい人に・・・」 そっと望美の耳に赤いハイビスカスの花を添えるヒノエが・・・ 「・・・嗚呼うるさいなぁ」 暑さでパラソルの木陰でぼんやり足を抱えて座り込む。 「うるさいとは・・・。ご機嫌斜めだなぁ。眠り姫」 「・・・。この暑さの中、照れくさい台詞どっからうまれてくるわけ?」 「こっからーv」 「わぁ!」 ぐいっと望美の頬を胸板に引き寄せる。 トクントクン。 「・・・なぁ?」 「・・・あっついったら!もう!!」 「うッ!!」 ヒノエのみぞおちに一発食らわせて 一人、ビーチから離れ、島の裏の岩場へと歩いてく望美・・・ (やれやれ・・・。夏は開放的で歓迎だけど・・・我が姫は 暑がり屋だったかな) 望美の跡をそっと追いかけるヒノエ・・・。 (はぁー。乗せられるんじゃなかった) 岩場で左足を抱えてチャポンと水面に足浮かべる。 (・・・可愛いかったからワタシも気に入ったんだけど・・・) ヒノエが気に入ったという水着。 白い割と清楚なフリル付きの水着だ。 「おー。岩場で一休み中の白いマーメイド」 まったくもってヒノエ調は衰えていなく・・・。 「・・・(汗)マーメードなんて雑誌で覚えたの?」 呆れ顔。 ”白いマーメード”という名の化粧品のCMやってます。 「俺達の時代にも人魚伝説はあったんだぜ? まぁ・・・さしづめ、海賊の酒のつまみだったけどな」 静かに望美の隣に腰を下ろすヒノエ。 「・・・。ねぇヒノエ君」 「はい。姫」 「たまには素のヒノエ君見せてよ」 「素?オレ、毎日素だけど?」 「・・・。なかなか大変な毎日ね(汗)」 今日はヒノエの調子に合わせる余裕が無い。 暑さのせいもあるが・・・ (他の女の子にまで同じ子といって・・・) ちょっと虫の居所が悪い望美だった。 「・・・はぁ・・・。潮の香り・・・」 ヒノエは深呼吸。 「時代は違っても・・・海の匂いは変わらないな」 「・・・。海が大好きなんだね」 「そりゃあ・・・。海の男ですから」 海に行きたいと言うヒノエ。 水着が見たいというお調子ヒノエだが 本当は 自分の時代の光景が見たかったのかもしれない。 「ねぇ」 「ん?」 「帰ってもいいよ。あっち時代のことも 色々あるんでしょう?」 「嗚呼まぁ・・・。っていうかホントは明日 帰ろうと思ってた」 「え。そんな急?」 思わずヒノエの腕にしがみついてしまった。 「そ。なーにまた龍神のうろこで戻ってこれるさ」 (そうだけど・・・) こちらの世界には龍神はいない。 うろこの力がいつなくなるとも限らない。 「おお。寂しがってくれてマスカー?うれしいネェ」 「・・・茶化さないで。割と深刻な話じゃない・・・」 「あっはっはー。オレはねぇ。姫君」 ぐいっと望美の肩を引き寄せるヒノエ。 「不可能を可能にすることが大好きでね。 だから、ほしいものは絶対に逃さないし、離さない。 」 「でも・・・」 「・・・。恋人に不安を与えてしまったようだ。 ごめん」 「・・・大丈夫・・・。私、ヒノエ君のこと信じてるから」 「そう。信じてください。俺の愛を・・・」 見詰め合って・・・ ヒノエの赤い髪と望美の長い髪が風になびく・・・ くいっと望美頬に手を添えるヒノエ・・・ CHU! (ん?しょっぱい?) 目を開けたば・・・。 ヒトデとキスしちゃったヒノエ君。 「・・・(汗)ナンデ?」 「この先は家に帰ってから。お腹すいちゃった!」 「・・・オレは望美愛と唇が据え膳で、もう耐えられません!! 白い砂浜で床を共に・・・」 バシャン! 更に波を浴びせられて・・・ 「昼食がさきっ!さ!パラソルに戻ろう!」 一人元気に走る望美。 「・・・ふぅ・・・。うーん。 どうやらご機嫌直ったらしいな」 (元気なのが一番・・・ってな) 夏の太陽。 燦々と輝く。 (あの太陽みたいに・・・) 好きな女性が元気がない と自分も元気が出ない。 「さーて。”据え膳”にならないように 策をねらねばっ!!」 赤いハイビスカスの花を手にとって 望美を追いかける ・・・世界で一番大切な人の髪に添えるため・・・ ・・・ヒノエの夏は始まったばかりだ。