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「君が 竜くんかい?」
突然、名前を呼ばれて俺は我に返った。
人が珍しく感傷に浸っているというのに…。
睨みつけてやるつもりで声のした方を向くと。

絵に描いたような、いい男。

「僕たちはライバルってことだね?」
勝手に左手を取られ、握手をさせられる。

・・・だれアンタ??
慣れ慣れしく勝手に俺の名前を呼ぶな。
ブンブンッと大きく腕が振られ、どうやら友好的に握手しているようにも見える。

「悪いけど、真琴さんは諦めてくれないかな?」
こいつは何か勘違いしているらしい。
「シズカ、こいつが?」
「ああ、たぶん…」
「あ、失礼! 紹介が遅れたね、竜くん!!」
・・・だから勝手にヒトの名前呼ぶなっつうの。
「僕は、一宮 龍弥!」
ボクとか言うなーーー!!
鳥肌が立ったじゃねぇかよ!!!
仮にもライバルって相手に! ニカッて、いま歯が光ったぞ! 歯が!!
くそ〜! この家に居ると悪寒が走ってしょうがねえ〜…
「わかった、諦める。 仲良く結婚生活を送ってくれ」
ぽん、と坊ちゃんの肩を叩く。 俺より絶対10cmは身長高いな。育ちもかなり良さそうだし。
お似合いなんじゃねぇ?
「おお! 君は負けを認めるのだね!! 賢い判断だ!!」
・・・さんきゅう。
「じゃ、シズカ、俺は(今度こそ)帰るから」
「じい様には…」
「いや、この家でやってくのは無理だ。精神疲労が激しすぎる」
「あ、真琴」
「真琴さん!!」
伊集院はどうやら着物を洋服に着替えてきたらしい。
「一宮様、どうしてこちらに…」
「真琴さん!! 喜ばしいことです! 竜くんが僕たちを祝福してくれたのです!!」
一宮龍弥は伊集院の両手を取る。
「僕は身を引くから幸せになってくれと…」
キラキラッと一宮龍弥の目には星が輝いていた。
すげぇ〜。

と、その瞬間。

ふわっと一宮龍弥の身体は浮き上がり、床に落とされた。

ジジイと同じ技。
(まあ、ジジイは俺を思いっきりコンクリートに叩き落としやがったけど)

「私に触れるのは、私より強くなってからお願いしますね」
にっこりと笑う。
「ね! 竜くんv
くるっと俺のほうに振り返る伊集院を呆然と眺めた。

相手にダメージを与えない投げ方のほうが、実は難しい。


伊集院は、それを簡単にやってのけた。


・・・冗談じゃねぇぞ。

「伊集院、ジジイはどこだ?」
「え?」

「弟子入りする!」






続き







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