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HAPPY、HAPPY、LOVELY ! − party −





「勘違いするかフツー?」
こんなガキに?
伊集院はシッカリしているようで、どっか抜けてんだよな。
「大体、異父妹が居るって、知ってたんだろ?」
ジジイが俺を調査させて、伊集院は確かその報告書を読んでいるはずだ。
桐香は、母親と再婚した相手との子供で、母と会う度に桐香も連れて来られていた。
「だって…」
伊集院はまだ何か言いたそうにしたけれど、俺は無視した。
まぁ、似てないけどな。
桐香は全くの父親似だし。
「あ、もしかして この間お母様のお見舞いのとき…」
「そー、桐香に会わないように昼間 行った」
昼なら学校に行っていて居ないからな。
俺がそう言うと、桐香が怒り出した。
「りゅう! やっぱり こないだ きたの!!?」
ママは来てないって言ってたのに!!と突っかかってくる。
あー、もー…お前がアホなこと言い出さなければ俺だって普通に見舞いに行ったよ。

俺が実の母親と年に何度か会っていた頃、小さかった桐香と遊んでやっていたら、ある日突然、
『 きりか、りゅう の およめさんになる! 』
と宣言し、俺も母親も見事に椅子から転げ落ちた。

まぁ、幼い桐香にしたら兄貴と どうしたら暮らせるのかっていう簡単な解決策の つもりだったんだろう。
どうせ一時的なものだから、俺は暫く桐香に会わないことにした。

あれで、ただでさえ桐香の父親とは折り合いが悪いってのに、更に関係が悪化したんだ。
あのオッサンはよー。

「桐香!」
出た!
近付いてくる気配を感じ取っていた俺は、隠れようとする桐香を前に出した。
「ばか! りゅう!!」
「竜〜? お前なんでこんなところに居るんだ?」
熊が人語を話す。
珍獣。
じゃなかった、桐香の父親。 でかい。 熊そっくり。

物心ついたときには、この男、大津 駿のことは知っていた。
元々母の婚約者だったが、母が自分の家から逃げ出したいと思っていたこと、 かなりの年下だったことから、母は恋愛対象には見なかったらしい。
それでも、大津は密かに想っていて……って、母親の誕生日に薔薇の花束とか 持ってきていたから、全然 密かじゃないけど。
でも大津が俺の両親、……母が幸せであればいい、と願っていたことは真実だと思う。
母の結婚が破綻すればいいなんて考えてはいなかっただろう。 幼いながらも、そのくらいは俺にも判った。

夕暮れ、俺は稽古が終わり、じいちゃんの道場を出て、一人の男に会った。
何度か見たことのある男だ。
佇む彼の視線を追うと、二人の男女がいる。
両親。
俺を迎えに来たんだ。
それは判ったが、俺は いつものように二人に駆け寄ることをせず、男を見ていた。
長い長い影。

男は、俺の視線に気付いて、ゆっくり、…ゆっくり微笑んだ。


古い、幼いときの記憶。


「伊集院の道場に入ったんだよ。 ジジイが じいちゃんと兄弟弟子だったんだってさ」
「へえ・・・」
大津はそう言って、伊集院兄妹を見た。
由希とは知り合いなので、お互い軽く会釈する。
「あ、どうも。伊集院 静です」
へらっと笑って、シズカが自己紹介をした。
しなくても知ってると思うけどな。
「大津 駿です。 この度はおめでとうございます」
握手をする。
あ、そっか、ジジイの誕生パーティだったんだっけ。忘れてた。
本人まだ現れてないし。

「私は…」
伊集院も挨拶をしようとすると、
「りゅう と けっこんするのは きりかだからね!」
桐香が俺の足に しがみ付いて宣言した。
「兄妹は結婚できねぇよ」
俺はハァーと溜息をついて言った。
大津も頭を抱えている。
娘に甘い このオッサンじゃ説得できないか、やっぱり。
伊集院は困ったように笑った。
「伊集院 真琴です」
「宜しく」
そう言って、大津が少し苦笑いをしたのが判った。

伊集院と俺を見て、若いときの、母と父を思い出したのだろうか。







真琴 パーティ編6











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