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LOVELY、LOVELY、HAPPY ! - part time job -





「きゃあ〜一宮くぅん、久しぶり〜 v
派手だけれどセンスのよいジャケットと、シックなロングスカートを履いた 男の人が帰ってきた。
「変な声出すな!!」
ガスッ!と竜くんは遠慮なく抱きつこうとした相手を殴る。
「んもう乱暴ねぇ」
ぶうぶうと文句を言って、その男性はスリッパを履いた。
20代後半くらいだろうか?
170cmくらいの細身で短く揃えられた髪は青が混じったゴールド、顔立ちは柔らかい。
ベルトに さりげなく留められたアクセサリーも一級品だ。

「あらぁ?」
緑色の目が私に向けられる。
「はじめまして。伊集院 真琴です」
今朝 会った女の人は同居人で、実際の家主はこの人らしい。
「ちょっとぉ、友達って聞いてたのにぃ彼女なんじゃな〜い」
「友達だよ」
「ベッド汚さなかったでしょうね?」
蹴るぞ
「んも〜照れ屋さん。シーツ交換するからどこの部屋…」
ガス!
「伊集院、こいつが本條。ちょっと頭おかしいけど気にすんな」
ひどぉいと言っている本條さんを無視して竜くんが私に言う。
「本当に彼女じゃないの?」
「そーだよ」
「ふうん…」
そう言って、本條さんは竜くんと私を交互に見る。
「なら一宮クン貰ってもいい?」
「え…」
今夜は めくるめく一夜を…
ゴス !
「いたぁーい!」
「こいつホントおかしいから気にすんな」
「いーじゃな〜い。駄目?」
駄目です!!!
慌てて竜くんの前に出る。
「竜くんは絶対 駄目!!!」
「そーお? 残念」
ちぇっと唇を尖らせる。
そんな私達のやりとりに竜くんは溜息をついた。
「あーもういいから、バイト代…」
「じゃあ 真琴ちゃん ちょーだい
「え?」
「可愛いわぁ v
「え?え?」
戸惑っている間に顎に指を当てられる。
「あ、伊集院、そいつバイだから気をつけろ」
しかもタチ悪ぃぞ、と私の腕を掴んで竜くんの後ろに下がらせた。
「今朝のヨーコさんも本條の恋人の一人だよ」
…の一人、ってことは………恋人が一人じゃないってこと…よね。
「虫も殺さねぇ顔して S だし」
私が本條さんを見上げると、彼はにこりと笑った。
「一宮クンみたいな生意気で強い子、快感に泣かせたいわぁ」
考えるだけでゾクゾクしちゃう、と うっとりした表情を浮かべる。
た、確かにタチが悪そう…。
「いーからバイト代よこせ」
竜くんは慣れてるのか、本條さんに手を出して催促した。
「んもう、つれないわね。最近 会ってないんだから もう少し…」
「仕方ねーだろ。俺は受験生なんだ」
バイトを制限している竜くんはそう応える。
「ん、確かに。さんきゅ」
「夕飯くらい食べてったら?」
「遠慮しとく。また店でな」
竜くんは名残惜しそうな本條さんを置いてさっさとサンダルを履いた。
私も慌てて後を追う。
「真琴ちゃん、頑張ってね」
「え…」
本條さんがウインクをする。
あ…やっぱり判ってて からかわれたんだ…
「どうした?」
「あ、」
「ウチの子たち可愛かったでしょ?」
にこ、と本條さんが言う。
「…うるさかった」
囲まれたことを思い出したのかムスと竜くんが応えた。
「アズキは可愛がっていましたよね」
竜くんが限界そうだったので、とりあえず家の中に連れて行こうすると、 アズキが竜くんの傍を離れたがらなかった。
『あ、そいつはいいや』
と竜くんもアズキは大人しくしていることが判ったのか、そう言った。
そのあと家から覗くと隣り同士でお昼寝をしている仲の良さだった。
「アズキ? あー…あいつか、ああ、うん、あいつは可愛かった」
素直に頷く。
…やだ、一瞬アズキに嫉妬しちゃった…
(可愛いなんて言ってもらったことないもん!)
「あの子、一番 躾が良かったでしょう」
CDT(コンパニオンドッグトレーナー) の子が躾けたのよね〜と懐かしそうだ。
「別れるときに連れて帰るって言って、どうしようかと思ったわよ」
「そうなんですか…」
「帰るぞ」
くい、と先に私を玄関から出す。
「んふ、やっぱ大事にしてんじゃない」
「うっせえよ」
「じゃあね、真琴ちゃん。また会いましょ」
にっこりと笑って本條さんは手を振った。
明るい玄関の光を背にしたその姿は、どこか、少し淋しそうだった。

「アイツ、ぜってえ一人じゃいらんねぇの」
竜くんが言う。
「恋人多いの、そのせい」
「え…じゃあ…」
今日は誰もいないってことで…。
「夕食くらい一緒しても」
「バカ、まじ喰われんぞ?」
本気で節操ないんだ、と竜くんは呆れたように言った。
「そのために犬飼ってんだから、いーんだよ」
屈んでバイクの鍵を外す。

一人になりたくないから、たくさんの恋人と、犬を飼う本條さん。
誤魔化しは要らない、と家族も恋人も拒否して一人でいる竜くん。

対照的だけど、どこか似ている気がするのは何故だろう?






つづく




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