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アンチ・ジフラクション・マスクとは、斜鏡のスパイダー(支持金具)の影響を回避し、光度差の大きい二重星を分離するのに効果的とされているマスクです。 とある入門書の後ろのページに、発展的に紹介されていました。 2006/02/05
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次の2点は、経験的によく知られています。 ・開口部に直線の遮蔽物があると光条が生じること ・開口部が真円の場合にもっともよく整った像になること ということは、スパイダーの直線部分をマスキングして、いくつかの真円の絞りだけにしてしまえば、光条は発生しなくなり、屈折望遠鏡に匹敵する解像度が得られるということです。 本には写真入りで「シリウスの伴星が楽に分離できる」などと解説されていました。 世の中、すごい事を考える人がいるものだなー、すごいなー、 と当時は思っていました。 2006/02/05
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当時、6cmの屈折望遠鏡しか持っていなかったので、反射望遠鏡を買ったらぜひやってみようと思っていました。 しかし、自作15cmで試してみましたが、像が暗くなるだけで結果は今ひとつ。 効果があるのかどうかすらよくわかりませんでした。 さらに時は経て現在。波面解析まで手を染めて、アンチジフラクションマスクを解析した結果、驚愕の事実がっ! 2006/02/05
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数人の方から、「マスクの位置が筒先で計算されていませんか? 主鏡の表面に置くものだと思うのですが?」という質問をいただいております。 私個人的には、筒先でも主鏡の表面でも、どこでも良い(主鏡から1mや2m離れても構わない)と思っているので、あえて触れませんでしたが、アンチジフラクションマスク(花弁絞り)は、一般に、筒先ではなく主鏡の表面(開口絞りの位置)に配置します。 シミュレーションでのマスク位置は、すべて主面にあるものとして計算しています。ニュートン反射で考えると、主鏡の表面に絞りを設けたのと同じことです。 2006/02/05
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まず、マスクを入れる前のシミュレーション。 6本の光条が現れます。これが、スパイダー(支持脚)による影響です。 2006/02/05
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アンチジフラクションマスクのシミュレーション。 ま、確かに光条が消えたのですが、周囲に光芒が現れています。 2006/02/05
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さきほどの恒星像の中心部を拡大すると、こんな感じです。 残念ながらこのような状況では「劇的な効果はないか、むしろ悪影響がある」と結論せざるを得ません。回折環は東京都のマークのような形になって真円でなくなり、周囲に生じる光芒も強くなり、かえってコントラストを落としています。 参考までに、マスクが付いていない状態を示します。 2006/02/05
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解析した結果、圧倒的に「ふつうのスパイダーの方が像が良い」という結果になりました。 アンチ・ジフラクション・マスク、日本語にすると回折回避マスクとでも言いますか、名前からしてスゴイ名前のマスクなのですが、実態は全く意味のないものでした。 意外と良く見えるという意見もありますが、集光力が1/4以下に減るため、比較的暗い対象の場合は散乱光が見えなくなり、像がしまって見えるためでしょう。 ただし、回折環が不均一のため、惑星観測には使わない方が良いでしょう。存在しない模様が見える可能性があります。 2006/02/05
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