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直線型スパイダーを使うと、光条が発生することは経験的に良く知られています。 ↑三本スパイダーによる六本の光条の様子(シミュレーション) では、なぜ光条が発生するのでしょうか。 アンチジフラクションマスクや曲線スパイダーでの結果がどうなるのか、その根源的な原理は知っておくべきでしょう。 ちなみに、スパイダーとは副鏡支持脚のことです。 2006/05/07
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まず、任意の光学系によって、恒星から来る光が焦点Fに結像した状態を考えます。 ちょっと見慣れない、わかりにくい図かもしれませんが、ご了承ください。 弧AHBは、焦点Fを中心とした半径が焦点距離fの球面を示していて、主面と呼ばれます。 主面とは、入射する平行光線と焦点に入射する光線の逆延長の交点が作る面のことで、無収差の光学系ではどのようなタイプの光学系であるにせよ、主面は焦点Fを中心とした半径が焦点距離fの球面になります。 焦点距離fは、線分HFの長さです。 焦点Fに恒星の点像ができるのは、恒星から来た平行光(平面波)が、焦点で同じ位相で干渉するからです。 焦点に集まる光は、焦点を中心とした球面波で、主面から同じ位相で光が発せられたのと同じ状態になります。 主面から焦点Fまでの距離は、どこからも(たとえば、主面上の任意の点AやBから焦点Fまでの長さは)全く同じです。 HF=AF=BF 焦点Fに集まるべき光波の波面は、弧AHCそのものと言えます。 余談ですが、現実的には加工誤差や残存収差で波面が乱れますが、その乱れの大きさを波面誤差と言います。 天体望遠鏡クラスであれば、波面誤差は最低でも1/4λ以内でなければなりません。それほどの誤差レベルでの「同じ」です。 2006/05/07
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ここで、像面上の焦点でない、任意の点Pを考えます。 さきほどの図に任意の点Pを追加します。 弧CHDは、半径がHPである球面を示します。球面というよりは、等距離になる線と考えてください。 焦点Fに集まるべき光波の波面は弧AHBです。 そこで主点Hを通過した瞬間のこの波面が、点Pから見てどんな波面になっているかを考えます。 線分HPの長さに比べてAPの長さは長くなりますね。線分PCより距離が長いということは、到達時間がかかるということ、つまり位相に遅れが出ます。 一方、線分BPの長さは、線分HPより短い(線分DPより短い)ので、到達時間がHPの距離を進む時間よりも早まります。位相が先行する訳です。 線分HPより上側では、主点Hから離れるほど位相が遅れ、下側では主点Hから離れるほど位相が進みます。 これを、点Pから見た開口部の位相分布を図にすると、たとえば下図のようになります。 明るい縞が位相の合う部分、暗い部分が位相が反転する部分を示します。(※厳密に言うと、光波はベクトル波のため、位相分布は単純には表せません。これは、電場成分あるいは磁場成分のみを抽出した位相分布です。) 像面には、これらの位相分布の波が重なり合った結果が現れます。 焦点の外では、ちょうど、正相の波と逆相の波の量が釣り合って打ち消してしまい、結果的に像面には何も結像しません。つまり、真っ暗になる訳です。 正相+逆相+正相+逆相+…=0 なお、焦点Fに近づくほど位相差の縞の間隔は広く(位相差は少なく)なり、離れるほど狭く(全体の位相差が大きく)なります。 いずれにしても、円形無遮蔽の場合は正相成分と逆相成分がほぼ同じ量で出現するため、結果的に打ち消されて真っ暗になります。 2006/05/07
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さきほどの図に十字型スパイダーで副鏡を支えた場合を想定して、そのマスクをかぶせてみました。 円形無遮蔽のときは、うまく正相・逆相の波が重なってうまく打ち消されていたのですが、遮蔽物があることによって、そのバランスが崩れます。 特に注意したいのは、横方向のスパイダーで、中央部分の正相部分をマスクしてしまっています。 スパイダーや中央遮蔽によるマスクによって、特にスパイダーに直交する方向では慢性的に「正相成分が少ない」というアンバランスな状態になってしまいます。 焦点像以外の部分は、正相・逆相の波の干渉の結果、差し引きゼロにならなければならないのに、そうならなくなってしまう訳です。 焦点から離れるほど縞の間隔(全体的な位相のズレ)は大きくなりますが、中央部分が隠れていることに違いはなく、ずっと尾をひくことになります。 これが光条を作る原因となります。 2006/05/07
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