Qcam Pro 4000/QV-61 Nikon Fマウント改造

●Qcam Pro 4000

 Webカメラでの天体(惑星)撮影と言えばフィリップスのToUCamなんですが、入手のしやすさからQcam Pro 4000を買うことにしました。(買ったのは2003年なのですが、いまだに1万円前後で売ってます。)



 本当に使えるのか、調べてみても情報はほとんどなかったのですが、星ナビ2003年9月号でも記事が載っていたようなので、どうにかなるでしょう。

 このまま接眼レンズに押し当てて撮る方法(コリメート法)もあるのですが、どうせ1万円もしないカメラなので、レンズ外し改造をして直接CCDに結像させることにします。

 レンズ外し改造の方針として31.7mmスリーブにする方法と、カメラマウントにする方法がありますが、直焦点撮影と拡大撮影の切り替えができるという点でカメラマウントに改造することにしました。


2005/12/18
●Step1 レンズ外し

 星ナビでは『付属のレンズのピント調整ネジを回してゆくと、レンズユニットが簡単に外れてしまう。』とありますが、それでは外れません。

 そもそも、「ピント調整リングを回していたら、レンズがポロっと外れてしまった」では、欠陥商品ですからね。ある程度以上は回らないように(不用意にレンズが外れたりしないように)、しっかりと作られてます。

 ということで、分解の王道、ドライバーで分解です。
 「左耳の穴」にドライバーを突っ込んでネジを外します。


 ケースを外します。


 基板を引き抜いて、レンズ先端部分を外します。


レンズを外します。先端の花びらのような部分をまわせば外れます。
 星ナビの説明は、この段階です。


外した部分以外にレンズはないので、これでCCDが拝めます。
 赤く反射しているのが赤外線カットフィルタと思われます。


 これ以上分解すると、赤外線カットフィルタが外れてしまうので、これ以上は分解しません。(レンズを支える筒は、裏側からネジ止めされています。分解したければどうぞ。)
 コントラストにこだわるなら、内側をつや消し黒で塗るのもいいかもしれませんね。私は、厚紙の裏をサインペンで黒く塗ったものをまるめて突っ込んでます。


2005/12/18
●Step2 組み立て

逆の手順をたどって組み立てます。


 レンズと、レンズ先端部分が余ります。

 このままでも、外したレンズをネジ込めば、機能的に元通りになります。


2005/12/18
●Step3 Fマウントの取り付け

 レンズ先端部を外したので、レンズ部に大穴があいてますが、ここにケンコーのCマウントアダプタをネジ込みます



 まるで計算されたかのように、Cマウントのネジ径と穴のサイズが同じですので、Cマウントアダプタが傾かないように注意しながらそのままネジ込みます。接着は不要です。

 もし、レンズの取り付け角度が気に入らないようでしたら、Cマウントアダプタ側にイモネジがあるので(3本のうちの1本が写ってます。)それをゆるめて回して調整してください。

 星ナビ方式(レンズキャップに穴をあけて接着する方法)に比べて値段は張りますが(Cマウントアダプタは定価3,000円)、工作は圧倒的に楽です。穴あけ加工不要、接着剤不要、おまけにセンタリングも確実に出るので、星の導入がとても楽です。

 ただし、あまりガッチリ食いついているわけではないので、強い力を加えると抜けます。(または、壊れます。)



 ↑足が付いていますが、分解した際に足も外してください。

 なお、偶然Cマウントのサイズに合っているだけで、焦点位置(CCDの位置)はCマウントの規格に合致していません。したがって、このままカメラレンズを取り付けても数cm〜1メートル前後にしかピントが出ません。(カメラレンズでの無限遠の撮影はできません。)


2005/12/18
●Step4 望遠鏡への取り付け

 ニコンFマウントになっているので、カメラの代わりに取り付けます。



 本体が軽いので、たわみなどは出ません。
 この軽さはWebカメラの強みですね。(よって、冷却改造しません。)

 CCDは1/4インチだそうなので、直焦点撮影でもプローセルの10mmぐらいに相当する視界しかなく、拡大撮影となると、かなり視界が狭いです。


2005/12/18
●Qcam、設定はどこまで可能?

 QcamはImageStudioという付属ソフトで操作するのですが、動画ファイルはAVIファイルで保存されますので、Registaxでは問題なく処理できます。(静止画も撮れますが、残念ながらjpegで、圧縮率の指定はできません。)

 なお、ImageStudio(付属ソフト)を起動させたままRegistaxからAVIファイルを読もうとするとエラーが出ますので、画像処理をする際は付属ソフトを終了させる必要があります。

 カメラの設定のほうは、画素サイズを160×120、320×240、640×480、メガピクセル(ソフト補完)から選べます。

 カメラのもっと細かい設定は、「設定」→「カメラの設定」→「カメラの詳細設定」→「追加の設定」を選ぶことで明るさ、コントラスト、ガンマ、彩度、ゲイン、ホワイトバランスの設定ができます。
 シャッタースピードも、1/15、1/50、1/200、1/750、1/2500、1/10000から選べるようですが、設定画面をいじっていたら、いつの間にか1/5、1/10、1/25、1/50、1/100、1/200、1/500、1/1000、1/2000、1/5000、1/10000という区切りになってました。どうしたらそうなるか、今のところ謎です。

 おまけ機能として白黒、左右反転、上下反転なんかも指定できます。
 また、「ビデオを撮影」の「ビデオ取り込みの設定の変更」で、フレームレートを変更できます。

 必要な機能は、ほぼそろっている感じですね。

 …ただ、設定が有効にならない場合があるバグがあるようで、設定したとおりに動いているのか少々不安です。今のバージョンは7.2.0SEですが。
 ま、普段、誰もいじらない部分か。


2005/12/18
●画質はどう?

 んで、実際に火星を撮影してみました(2003/8/13、改造当日夜)。

 ↓こんな感じです。(素のフレーム画像)


 ↑640×480で撮像してトリミングしてます。原寸大です。
 大気のゆらぎの影響を受けて変形したりしてますが、予想以上に良く映るのには驚きました。
 ↓これらをregistaxでコンポジット処理すると、こんな感じになります。


 いやぁ、最近の画像処理システムって、すんごいですねぇ。
 (@o@)
 あれだけのメチャクチャな画像でも、数百枚重ねるとここまで出るんですから。




 えー、画像処理の可能性を判断して頂くために、あえてwaveret変換やコントラストアップなどは行っておりません。逆に言えば、実視イメージに近いです。

 昼にカメラを改造して夜に撮ったばかりですし、まだまだ技術的にも改善の余地はあるでしょうが、とりあえずご参考まで。


2005/12/18
●その後(1)

 Nikonのレンズを付けたとき、ピントが合わないという点は、途中に凹レンズを挟むことで幾分解決できます。(画質は少々落ちますが…)


 作例は、ビクセンの2倍バローレンズの先端12mmを切って貼ったもの。
 広角レンズから標準レンズまでは無限遠にピントが合います。
 接着剤なしで脱着できるので、もう一方はレンズなしのもの。


2005/12/18
●その後(2)

 Qcam Pro 4000は、現在のところ31.7mm→Cマウントアダプタ(国際光器)をつないで、31.7mm仕様になっています。
 Fマウントアダプタは、QV-61(CMOSの30万画素)の方に組み替えてあります。

 QV-61は、原理的にQcamPro4000と同じ工作でFマウントアダプタを取り付けていますが、微妙に金型が違います。レンズを取り払った後の穴の径はCマウント径よりちょっと大きいです。

 で、驚いたのがQV-61ではフランジバックがNikonとほぼ同じになる事。厳密にはそのままだと1mmぐらい長くなって無限遠に合わないのですが、そこはQV-61の開口部1mmぐらい削って合わせました。ピントチェッカーに使えるほどの精度では合わせてませんが、35mmのレンズで3メートル先ぐらいなら充分ピントが合います。



 ちなみに、奥にあるのは、128MBのUSBメモリです…。


2005/12/18

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