太陽黒点の観測のしかた(1)機材編

●観測方法

 太陽観測の方法は、大きく分けて
(1)投影法…太陽投影板に太陽を投影し、観測用紙に黒点を写しとる方法
(2)直視法…減光フィルタで減光して、直接眼視で観測する方法
(3)撮影法…カメラで撮影する方法
 の3種類あります。

 しかし、安全性や記録の正確さ、そしてランニングコストの面で一般には投影法による観測が主流です。

 そこで、投影法による観測方法を説明します。

 【注意】
望遠鏡を使った太陽観測は、太陽の光をレンズで集光するため、危険をともないます。火災や失明といった事故が起きる可能性があることを充分理解し、安全に配慮しながら観測を行ってください。



2006/09/09
●望遠鏡

 口径6〜8cmの屈折(アクロマート)式を選びます。投影法の場合は太陽観測用絞りは使いません。分解能を稼ぐには口径が命であることに違いはありませんので。

 ただし、口径が大きいと集光力があって危険ですので、口径10cmを超える場合は、口径を絞った方が安全です。

 蛍石/ED系は、長期間太陽光に当てると紫外線でレンズが化学変化を起こし、失透する「可能性がある」そうで、投影法には使わない方が無難かもしれません。

 反射式は投影板に投影しようとしてもピントが合わないので、使えません。
 (一般に口径が大きいため、斜鏡に光が集中して過熱する危険があるなどという面もあります。)


2006/09/27
●架台

 経緯台、赤道儀どちらも可です。
 経緯台を使う…太陽黒点観測は継続するのが肝心なので、個人的には経緯台が軽いのでお勧めです。
 赤道儀を使ったところで、昼間に設置する場合は極軸を正確に合わせられないので、赤道儀をあえて選ぶ意味もありません。観測時間も長くないので、経緯台で充分です。
 経緯台は視野回転を起こすので手早く(5分以内に)観測する必要があります。
 (見かけ上、1時間で15度傾きます。よって、視野回転を1度以内に納めるには4分以内に観測を終了しないといけません。)

 赤道儀を使う…自動追尾できるので、比較的長時間(10-15分程度)余裕をもって観測でき、据え付けの場合は、観測精度の面では経緯台より優れます。
 一方、毎回セッティングしての観測だと、赤道儀は重量があるのでだんだん観測するのが面倒になりやすく、長続きしにくいので注意が必要です。

 このため、赤道儀による観測はあまりお勧めできません。

 とりあえず、最初の1ヶ月は赤道儀で始めて、その間に軽くて丈夫で微動装置が使える経緯台を厳選する(2005年末現在、ポルタぐらいしかないけれど)のもいいかもしれません。


2007/02/13
●接眼レンズ

 太陽全体を投影しますので、倍率は40〜50倍程度になるようなレンズを選択します。倍率が高すぎると部分的にしか拡大できません。倍率が低すぎると像が小さいために、所定の大きさに投影するために接眼レンズから投影板までの距離が長くなりすぎてしまいます。


 投影法に使う接眼レンズは、太陽光が直接集光する関係で、貼合していないタイプの接眼レンズを使います。
 この条件に合うのはH(ハイゲン)式と、HM(ハイゲンミッテンゼー)式だけです。

 ところが、H(ハイゲン)式は多くの場合使えません。というのは、現在あるH式は初心者向けに製造されており、プラスチック製の枠(わく)に入れられているため、レンズは大丈夫でも、レンズセルが熱で溶けたり発火する可能性があって危険です。

 入手できればHM式がベストです。アクロマート式対物レンズとの相性も良いのでHMは特にお勧めです。(HMは、ED/蛍石レンズに取り付けると、球面収差で像が悪化します。)

 最近は接眼レンズの高級化にともなって、HMは絶滅の一途を辿っています。入手できないのなら貼合式ですが、最新式のプローセルなどで良いと思います。

 旧式のOr(オルソ)やK(ケルナー)の場合、レンズをバルサム(松ヤニ)で貼合してあるため、太陽観測に使うと熱で溶けてダメになる可能性があり、使用できません。
 しかし、最新式レンズであれば、レンズを接着剤で貼合してあるため熱でダメになることはないと思われます。


2007/02/13
●ファインダー

 使いません。
 特に、不特定多数を相手にした観測会では、ファインダーを覗く子どももいるので、外してしまいます。

 ファインダーに太陽光を通すと、熱で視野リングが溶けたり、発火しかかって煙で内面が曇ったり、十字線が外れるなどの事故・故障の原因になります。
 接眼レンズもケルナー式で貼合レンズなので、レンズをダメにする可能性もあります。


2006/09/07
●太陽投影板

 接眼レンズから出た光を投影する板です。
 投影法による太陽観測には必須です。



 太陽投影板には直接投影するタイプと、天頂プリズムで折り曲げて投影するタイプの2種類あります。直接投影するタイプは裏像に、天頂プリズムで折り曲げて投影するタイプは倒立(または正立)像になります。

 裏像と倒立像の説明が逆じゃないのかと思った人がいるかもしれませんが、この説明で合ってます。
 「投影板に投影したものをスケッチする」という段階で裏像になりますので。一方、天頂プリズムで折り曲げて投影するタイプは、天頂プリズムで折り返した段階で裏像になり、それを投影板に写してスケッチしてまた裏像になるので、裏の裏で倒立になります。あとは、投影する方向や、観測者の姿勢によって像が回転していきますし、何ならスケッチ用紙を逆さにセットすれば正立像になります。


 本格的な観測をする場合には、直接投影するタイプを使う場合が多いようです。


2007/02/13
●太陽面経緯度図

 トレーシングペーパーに経緯度線を印刷した用紙で、黒点の経緯度を読み取るのに使います。
 主に恒星社厚生閣(15cm:300円)のものと、ビクセンのもの(10cm:300円,15cm:500円)があります。(写真は、ビクセンの15cm用)
 1セット買えば、買い直すことは滅多にありませんし、飛ぶように売れるモノではないので、在庫切れになると当面の間、絶版になります。
 一度絶版になると、再販されるまで、数年(3〜5年程度)かかるようです。




2005/12/23
●スケッチ用紙

 直径10cmか直径15cmの円と、必要なデータを記載する欄を作っておきます。
 たまに天文ガイドに観測用紙が載るので、参考になるでしょう。

 円のサイズは経緯度図に合わせます。直径15cmの太陽面経緯度図を使う場合は15cmの円を描きます。
 用紙としてはケント紙が良いとされますが、高価なこともあって、ケント紙を使った例はあまり見たことがありません。
 WordかExelあたりでA4サイズの観測用紙を作って印刷するとラクです。



 観測者、望遠鏡の種類、使用接眼レンズや倍率、観測地などは、一般に毎日コロコロ変わるものでもないので、別記してあれば毎日の用紙に書く必要はありません。

 あと、円の中心はわかるように必ず記載してください。


2007/02/13

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