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■11 / inTopicNo.1)  第1章 1:「祠の跡へ」
  
□投稿者/ ぴよきち <一般人(4回)>-(2004/10/09(Sat) 12:35:50/220.22.84.128)
    第1章 1:「祠の跡へ」
    
        勇者がラントの町を後にしようとした時、「カラッカの勇者よ・・・」急にま
       じめな口調になったスラックが言いました。「魔王城の島に祠があったじゃろ
       う、お前さんがディアーザを倒すと同時に消えてしもうた祠じゃ。おそらく、
       身体を捨てて結界を抜けられるようになったディアーザが消してしもうたんじ
       ゃろう。よほど目障りだったようじゃ・・・」ここまで喋ったところでしばらく
       考え事をしていたスラックが再び口を開きました。「しかしのう、いくらディ
       アーザとて結界のすべてを消し去ることはできなかった筈じゃ。となると、そ
       こにディアーザの行き先を示す手掛かりがあるかも知れん。いやなに、実はあ
       の祠を造った者をわしは知っとるでな・・・ あいつのことじゃ、何かしら仕掛
       けを施しとったはずじゃ。先ずは祠の跡をよーく調べて来るんじゃ。わかった
       かの・・・」
        スラックに言われ、早速ワープを唱えようとした勇者でしたが「???・・・」
        「おお、そうじゃ、お前さんワープは使えんぞ。いやワープは使えるんじゃ
       が行き先を消されとるわい。ディアーザを倒した後、カラッカ以外の場所には
       行けんかったじゃろう。そいつもディアーザの仕業じゃ、全く呪いは掛けるは
       行き先は消すは・・・よほどお前さんのワープが気に入らんと見える。カラッカ
       に戻った時点でカラッカにも行けんようになっとるはずじゃ・・・」
        スラックの言うとおり、ワープを唱えようとしてもその行き先がラント以外
       はすべて消えていました。カラッカを出てから、平和になった世界をこの目で
       確かめたくて歩いて(旅の扉経由)ラントまでやって来たものですから、勇者
       は、まさかワープが使えなくなっているとは夢にも思っていませんでした。
        「まあ、消えてしもうたモンはしょうがないのう・・・ 行き先はまた一つひと
       つ足していくしかあるまい。なに、祠の跡へは洞窟を抜ければ行けるじゃろう。
       もっとも、ディアーザが消えて洞窟の中がどうなったか分からんが・・・」
     
        とにもかくにも、かつて「魔王城への洞窟」と呼ばれたあの洞窟から祠の跡
       へ行かなくては、ディアーザの手掛かりは得られそうもありません。もっとも、
       魔王城が無くなった今は、単に「ラント東の洞窟」と呼ばれていました。
     
        「いずれにしても・・・ 油断は禁物じゃ。今も言ったとおり洞窟の中がどうな
       っとるかわしにも分からん。ディアーザが生きとる以上、またぞろ魔物も復活
       しとるやも知れん。うーむ・・・・・・」
        出発しようとした勇者を引き止めておきながら、大魔道師スラック翁は長考
       に入りました。
        「うーむ・・・」 1分経過。
        「うーむ・・・」 5分経過。
        「うーむ・・・」10分経過。
        「この爺さん、寝とるんじゃないのか。」と勇者が思ったその時・・・
        「やむを得ん・・・ おい、レオン!」とスラックが教会の修復を手伝っていた
       レオンを呼びました。「お主、祠の跡までこの少年に付いて行け!」
        「ええっ、だって俺は腕っぷしの方はからっきしダメだぜ。」レオンがとんで
       もないという風に首を横に振りましたが、スラックは聞く耳を持ちませんでした。
        「謙遜をするな。お主も一応はLv.57のキャックルナイトじゃろう。魔術
       師と精霊使いの副職まで付けとるのをわしが知らんとでも思っとるのか!」
        「げっ、知ってたのか・・・ ちぇっ、戦闘はどうも性に合わないんだよなぁ。」
        「つべこべ抜かすな!」
        「わ、わかりましたよ・・・ こうなったら仕方ねえや。あんた宜しくたのむぜ」
       と言ってレオンは勇者に右手を差し出し二人は握手をしました
    
        「祠の跡に着いたらコレを使うのじゃ」と言ってスラックは一枚の護符を差し
       出しました。「コイツを結界の一番強い場所に貼ればええ。ディアーザの行き先
       を示す何かが手に入る筈じゃ。」
        「『結界の一番強い場所』ってどうやって調べるんだよ。」当然と言えば当然
       の疑問をレオンが口にすると、「行けば判る。心配せんでもええ・・・」と吐き捨
       てるようにスラックが言いました。「大体、お主は屁理屈が多すぎるんじゃ・・・」
        「屁理屈じゃないと思うけど・・・」と勇者も思いましたが、何も言いませんでし
       た。さすがに慣れているのかレオンも黙っていました。
    
        こうして最初のダンジョンである「ラント東の洞窟」へ‘スラックの護符’を
       手にしてLv.60のマックルロード勇者(副職は今は秘密)とLv.57のキャ
       ックルナイト(魔術師→精霊使い)の2人が向かうことになりました。
    
        洞窟へと向かう2人の若者を見送りながら、スラックは深長な面持ちで呟きま
       した。「またあの少年は戦いの日々を迎えることになったのか・・・ しかしあの子
       の他にこの世界を護れる者はおらん。因果な運命を背負った子じゃ・・・」
    
                                       つづく
    
    

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