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■28 / inTopicNo.1)  第1章 5:「そして祝福の花が」
  
□投稿者/ ぴよきち <一般人(18回)>-(2004/10/25(Mon) 01:05:41/220.22.84.128)
        「誰か〜、助けてくれ〜」レオンの叫びと共に2人は手前の左を向いた「矢印の床」
       に乗りました。当然の如く2人は「矢印の床」の上を強制的に左へと移動させられ、
       当然の如く上へと移動させられました。このまま永久に「矢印の床」をぐるぐると、
       時計回りに廻り続けてしまったのでしょうか。
        2人が左側に並んでいる上向きの矢印の一番上まで来た時‘ピュッ’と音がして矢
       印が右に向きを変えました。花の周りに二重に並んでいる「矢印の床」の内側の反時
       計回りの四角へ移動です。当然、今度は下、そして右へと移動させられました。
        そして一番右にある右向きの矢印に乗った瞬間、また‘ピュッ’と音がして今度は
       矢印が上を向きました。ということは・・・
        「ありゃ・・・ 入っちゃった。な、なんでえ、何も考える必要なんて無かったじゃね
       えか。でも、あんた何で判ったんだよぉ・・・ 何? 勇気? 勇気がどうした。はぁ?
       あのサイモンとやらが『勇気が必要』と言ってただと? あんた、それだけで矢印に
       乗ったのか! なんてこった。信じらんねぇよ全く・・・」
        ともあれ、怪我の功名とでも言っていいのでしょうか。勇者の「勇気」によって2
       人は白い花に手が届く所まで辿り着きました。
    
        改めて白い花を見た時、レオンが思わず呟きました。「これはまた、なんて可憐な
       花なんだ・・・」レオンの口から「可憐」などという言葉が出てきて、勇者は思わずぶっ
       と吹き出しそうになりましたが、なるほどレオンの言う通りその白い花は実に小さく、
       1本の細い茎から2枚の細長い葉が申し訳無さそうに生えていて、茎の先端に付いて
       いる花も、小さな数枚の花びらを纏って寂しそうにやや下を向いているだけでした。
        おそらく道端にこの花が咲いていたとしても、殆どの人は気が付かないでしょう。
       それほど小さく目立たない花ですが、その白い花は見た者の心を揺さぶる「何か」を
       醸し出していました。
        「おい、どうする? とてもじゃねえがこの花を踏むなんてことは俺にはできねえ
       ぞ。あんただってそうだろ。」レオンの言葉に勇者は頷き、とりあえず「調べて」み
       ました。
    
        「この花を持って行きますか?」「・・・はい」「勇者は‘祝福の花’を手に入れた」
    
        勇者が手にした‘祝福の花’を見て、レオンが言いました。
        「今、変なこと考えちゃったんだけどさぁ・・・ 例えば、今、あんたがその花の茎を
       ポキンと折っちゃおうと思ったら簡単に折れるよな。いや、あんたじゃなくったって
       誰だってできる。まぁ俺でもいいや。仮に俺がその花を折っちまったとしても、俺は
       別に罪に問われることはないし、その小さな花が恨み言を言うわけでもない。花はた
       だ黙って折られちまうだけだ。」
        「コイツ、何を言い出したんだ?」と勇者は思いましたが、レオンが話を続けたの
       でとりあえず黙って聞いていました。
        「だからって、俺もあんたもそんなことはとてもじゃないができない。何故だ?
       俺たちはさっきまで赤い花や緑の花の上を平気で歩いてた。まあ、踏んだからって、
       あいつら何も変わらなかったけど。でもその花だけは『大事にしなきゃ・・・』って気に
       させられるんだよな・・・ あんただってそうだろ。」勇者は頷きました。レオンの話は
       まだ続きそうです。
        「弱いって言えば、その花ほど弱い存在はない。どんなひどいことをされても何も
       言えず、自分を攻撃する者がいたら黙って命を落とすしかない。そう、小さな花でも
       ひとつの命がちゃんと宿っているんだ、その命を絶やしてしまうのは簡単なことだ。
       でも失くしてしまった命はもう取り戻すことはできない。その花を創りだすことは俺
       たちにはできないんだ。だからこそ俺たちはその花を『大事にしなきゃ』って思う。
       弱い存在だからこそ『守らなきゃ』って思う。それが、俺たちマックル族が持ってる
       『心』っていうモンだよな。」
        「そうだな・・・」と勇者も思いました。レオンは更に続けます。
        「でもな・・・ この世界にその花を平気で踏ん付ける奴が一人だけいるんだよ。」
        レオンの目が厳しくなって、それ以上は何も言いませんでした。
    
        とにもかくにも‘祝福の花’を手に入れて、勇者は「矢印の床」でできている四角
       から出なければいけません。
        「なあに、右か上に行きゃ良いんだよ。」レオンがもう完璧に解ったという感じで
       勇者に言いました。そこで右に並んでいる上向きの矢印に乗ると、上、そして左へと
       移動して最後の左矢印が‘ピュッ’という音と共に上向きになり、右、そして下へと
       2人は進みました。
        結局、最後の下向きの矢印が右向きに変わって、2人は「矢印の床」でできた四角
       の外へ出ることができました。
        矢印の床は、見た目と違って実際は下の図のようになっていたようです。
    
                      →→→→→→→→↓
                      →↓↑←←←←←↓
                      ↑↓     ↑↓
                      ↑↓     ↑↓
                      ↑↓  花  ↑↓
                      ↑↓     ↑↓
                      ↑↓     ↑↓
                      ↑→→→→→↑↑→
                      ↑←←←←←←←←
    
        「さあ、進もう・・・」レオンに促され、勇者は恐らく「ラント東の洞窟」の出口にな
       るであろう北に見える階段へと歩き始めました。
    
                                         つづく

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