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■56 / inTopicNo.1)  第2章 9:「復興された最古の王国」
  
□投稿者/ ぴよきち <一般人(36回)>-(2004/11/10(Wed) 01:13:58/220.22.84.102)
        水路の最南端までやって来た勇者たちは、送って貰った礼を言って船頭を帰し、南に
       ある「復興された王国」へと向かいました。
        「黒い霧が飛んで行った方角を考えると、この国でディアーザがまた何者かに乗り移
       っている可能性が高い・・・ 油断は禁物だな」と勇者は思いました。
        南へと進む勇者たちの前に『グリーンアーマー』『サワーオニオン』『ローパー』『
       悪の僧侶』というモンスターが度々現れました。徐々に出現するモンスターが強くなっ
       てきているようです。戦士は決めゼリフが何回も言えて嬉しそうでした。
        「おや、ここは‘勇気の神殿’があった場所では・・・」僧侶が王国の巨大な門を見上げ
       ながら言いました。「とりあえず、中に入りましょう。」
        門をくぐり、中に入った勇者たちが見たものは・・・
        世界中にいるマックル族ではなく、かつて勇者たちの前にモンスターとして現れたド
       ラゴン族が、あちこちで普通に生活をしている風景でした。
        勇者たちは一瞬ドキッとしましたが、彼らは以前の猛々しいモンスターとしての殺気
       など微塵も感じさせず、自分たちマックル族と何ら変わりない生活をしているようでし
       た。よく見ると、遊んでいるちびドラゴンの姿もありました。
        僧侶が以前聞いた話を思い出して、こう言いました。「そう言えば、元々ドラゴン族
       は草食のおとなしい種族だと聞いたことがあります。昔は、その姿から凶暴な種族だと
       勝手に勘違いをされて、色々と酷い目にも遭ったそうです。」
        早速、側にいたグリーンドラゴンに話し掛けてみました。
        「ようこそ‘龍の王国’へ・・・ と言いたいトコだけど、お城の中に行くんだったら、
       気を付けたほうがいいよ。どういう訳か、突然、王様が衛兵たちにこの国に来ていたマ
       ックル族を捕らえるように命令したらしいんだ。お城の外に衛兵は居ないから、お城の
       外だったらどこへ行っても大丈夫だよ。」
        話を聞いたモンクがいみじくも言いました。「そうか、ワイらがディアーザを倒して、
       ドラゴン族も元の姿に戻ったんやな。なんや、よう見たらドラゴン言うても可愛らしい
       もんやないか。」
        「しかし、妙でござるな。ブルードラゴンとグリーンドラゴンは見掛けるものの、エ
       ンシェントドラゴンの姿が全く見えませぬが・・・」戦士の言った通り、ドラゴンの国だと
       いうのに、何故かエンシェントドラゴンは全然居ませんでした。
    
        勇者たちは他にも色んなドラゴンたちに話し掛けてみました。何故、国王がマックル
       を捕らえさせたのかを知りたかったからです。
        「この国は世界で一番歴史がある国なんですよ。我々ドラゴン族はマックル族よりも
       早く誕生した種族ですから。でもこの国はディアーザとモンスター共によって真っ先に
       占領され、この国のドラゴン族も少数の逃げた仲間を除いて、モンスターに変身させら
       れてしまったのです。でも、ディアーザが倒れて、生き残った仲間が力をあわせてやっ
       とここまで復興させたんですよ。」
        「仲間の大半がモンスターにされている間、この場所はディアーザを倒しに行く戦士
       の為のトレーニング施設としてマックル族に提供されていました。マックル族の人たち
       は‘勇気の神殿’と呼んでいたそうです。でも、ディアーザが倒れて、また私たちに返
       還されました。」
        「まだ復興して間もない国ですが、この国の王様は実に聡明で先見性もあり、いつも
       私たち国民のことを考えていらっしゃいます。かと言って決して権威を振りかざすこと
       もなく国中の皆から慕われている立派な方です。その王様がここ数日・・・ 大きな声では
       言えませんが、とてもあの王様とは思えない変わりようで・・・」
        「王様が『捕らえよ』と命令したのはマックル族だけではありません。エンシェント
       族も一斉に捕らえられてしまいました。私たちにはさっぱり訳がわかりません。」
    
        「どうやら、間違いなさそうでんな。」モンクには事情が掴めたようです。
        「黒い霧とやらが悪さをしとるんであろうな。」戦士が‘犯人’を特定しました。
        「となれば、敵陣に突入するしかありませんね。」僧侶がこれからの行動を示唆しま
       した。勇者たちは‘龍の国王’がいる城のほうへと歩き始めました。
        城の入り口には門番がいました。「うん? 何故マックル族がこのような所をうろつ
       いておる・・・ あっ、あなたはディアーザを倒した伝説の勇者・・・ うーむ、あなたなら
       王様の異常な言動の原因を突き止められるかも知れない。かと言って、門番としてあな
       たを無条件に通すことは命令違反になってしまう・・・ そうだ、私は暫くよそ見をしてい
       ますから、その間に通っちゃって下さい。」
        勇者はよそ見をしている門番にぺこりと頭を下げて城内に入って行こうとしましたが、
       慌てて門番が勇者たちを引き止めて言いました。「ひとつだけお願いがあります。王様
       の周りには衛兵がいます。あなたが王のもとへ行こうとすれば、彼らはあなたを必死で
       止めようとするでしょう。勿論、あなたにとって衛兵など簡単に倒せます。しかし、衛
       兵はモンスターではありません。普通のドラゴン族で我々の仲間です。できれば彼等に
       キズを付けないで欲しいのです。」
        勇者はにっこりと微笑んで頷きました。
    
        城の奥に地下へと向かう階段があったので、勇者たちは下りて行きました。そこは地
       下牢があるだけの殺風景なフロアでした。牢の中には数多くのエンシェントドラゴンと、
       数人のマックルが居ました。残念ながら‘オスヤコディの鍵’で牢を開けることはでき
       ませんでした。勇者は牢内のひとりのマックルに話し掛けてみました。
        「私はカラの道具屋です。この国が復興して以来、何回も行商に来ていたのですが、
       先日に限っていきなり捕らえられてしまいました。理由はさっぱりわかりません。」
        「もう暫くするとカラに帰れますよ。」僧侶が道具屋に応えました。
    
        勇者たちは1階に戻り、今度は2階への階段を上がって行きました。2階には王の居
       室、つまり玉座の間があるだけでした。流石に復興して間もない国らしく、城の中も質
       素な造りになっていました。或いは王の主義なのかも知れません。
        その時、勇者の道具袋の中で‘国王の紋章’が光っていました。
        玉座には今まで見たことのない黒い龍が座っていました。その玉座を取り囲むように
       衛兵が周りを固めていて、王に直接話しかけるのは不可能みたいです。仕方がないので
       王の前に居る衛兵に話し掛けてみました。すると、閃光が走り・・・
        勇者たちと『龍の衛兵』のバトルが始まりました。
        バトルが始まったものの、勇者たちは目の前の敵に攻撃をする気にはなれませんでし
       た。門番と約束したこともありますが、それより自分たちと同じく平和を愛し、仲間を
       大事にし、自分たちの国をやっと復興させたドラゴン族の兵を攻撃することなどできま
       せん。勇者はやむなく「退却」を選択しました。
        勇者たちに向かって剣を振りかざしたまま衛兵が言いました。
        「何故、掛かってこないのだ。お前たちは王に危害を加えるためにここに来たんだろ
       う。だったら掛かって来るがいい。私は衛兵として命を賭して王をお守りする。」
        衛兵としての職務を全うしようとする強い意志を持ちながらも、攻撃してこない相手
       に対して無条件に剣を振り下ろすことはしない・・・ 彼はまさしく平和を愛するドラゴン
       族そのものでした。
        衛兵は続けました。「王に何の用事があってココまで来たのだ。何、王と話がしたい
       と・・・ 話をするだけだな。よし、謁見を許そう。但し、少しでも怪しい素振りを見せた
       ら遠慮なく捕らえるぞ。」と言って振りかざしていた剣を収め、正面にいた衛兵は部屋
       の隅に下がりました。王の周りにいた他の衛兵たちも、全員が部屋の外まで退きました。
        これぞ阿吽の呼吸とでも言うのでしょう。正面にいた衛兵は「退却」を選んだ勇者の
       真意を理解し、わざと部屋の隅まで下がり、他の衛兵を部屋の外まで退かせたのです。
       「少しでも怪しい素振りを見せたら・・・」と言っておきながら、あんなに下がってしまっ
       ては咄嗟の対応など出来ようもありません。
    
        もし、彼を倒してしまっていたら・・・ 実は、バトル終了と同時に強制的に国外へ出さ
       れてしまうことになっていたのです。
    
        勇者は目の前で玉座にのうのうと座っている、自然界では居る筈もない極端に目付き
       の悪い‘黒い龍’を睨み付けながら話し掛けました。
    
                                          つづく

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