| ディコスに先を阻まれ、先を越されてしまったショックはなかなか治まらなかった。「イカダ」という残り限られた道を求めて、一行は早朝から材料探しに行くことにした。 「眠いよ〜〜。早いよ〜〜。」とうなっているフィアロン。あそこまで歩かされて、あそこまで頑張ったのに何も無く、お菓子ももらえなかったフィアロンはさすがにバタンとしていた。「もうダメ、休む・・・」と言って、勝手に宿屋へ帰ってしまった。
グロスは早朝から元気だ。なんと、ちくぼうマッサージ機をまたしても作ってきたのだ。 「どうだ! ちくぼうマッサージ機は。この前は暗かったから血がドッペリついてしまったが、今度はちゃんと洗ったし、ツボがうまく当たるように改良したから問題ないぞっっ!!」 確かに前よりはすっきりしているが、でもこれがちくぼうだと思うと誰も乗ってはくれない。 「今度はかなりいいと思うんだが・・・。」とグロス。だから乗らないって。 するとグロス、何を思ったか、マッサージ機にある細工を始めた。怪しい、怪しい、グロス皮剥師の始まりである。
・・・。
グロスの鍛冶は置いておこう。
一方、ピピルと材料探しをしていたが、どこも伐採禁止であった。ここ「フィンクルの里」は、景観を害さないためという「カラッカ王」と「スラック爺」の勝手な取り決めによって、伐採できる木はかなり少なくなっていた。確かに、この取り決め自体は悪くないが、ウェイダンへいくやつのことも考えてくれ・・・。いったいどうやって行けというんだ・・・。 「まぁ仕方ないですよね」とピピルが前向きに言った。「フィンクルの里周辺の森が破壊されても困るし・・・。」 でも木は切ってはいけないという規則はやりすぎとは思うが。
そうしているうちに、あのスラック爺がノコノコやってきた。 「なんじゃ、無事だったのか・・・。くたばって、ウェイダンの牢屋に監禁されているのかと思ったわい」 少しは無事でよかったとでも言ってくれればいいのに。 「2日もいなかったから、どこにいたかと思ったぞ。ウェイダンへ行くと言っておきながら、さては孤島のビーチでワイワイ楽しんでおったのじゃろ!! ほんとに、うらやましい、のんきなやつらじゃ」 「なわけないでしょ」と珍しくピピルが突っ込む。スラック爺は4人が絶対にどっかへ行ったに違いない、そうでなきゃ2日以上も町を離れたりはしないとかごちゃごちゃ言って、話を混乱させていた。この辺のどこにそんな場所があると言うんだ・・・。
それでもスラックとピピルの話はやまない。 「ビーチへ行ったじゃろ! 顔が濃いぞ!」「もともとです」 「なぜワシを誘わなかったのじゃ! もし誘われていたら、飛んでも行くぞ!」「だから違いますって」 「あぁ〜〜、そうやって恥ずかしがる〜〜怪しい・・・。ワシにはすべてお見通しじゃ」「何ですか、それは?」 「お主、その色・・・。もしや結婚の誓いでもしたろ!」「色がどうしたっていうんです! 関係ないですよ!」 「お主はほんとに正直じゃ、顔に書いてあるぞ。今日はビーチで遊んで楽しかった、とな!」「何考えてるんですか」 「今日のことは即時実行! 早くビーチへ戻るのじゃ!」
こんな会話が3時間近くかかっていた。フィアロンも、あまりの騒々しさにふぁ〜〜と言いながら出てきた。「何はなしてるの・・・?」とりあえず、スラック爺の自慢話、と答えておいた。
それでようやく落ち着かせた後、 「いい加減、指輪作ってもらえませんか?」とピピルが続けた。「ダメじゃ。言ったはずじゃろ。『30分も』かかるんじゃ、精神力も必要じゃし面倒でならん」とスラックが即答。「嫌じゃ、絶対嫌じゃ、それに町に頼まれてせっかく封鎖したのに、また開くとはまた面倒な。泳いででも行け!!」 「それでは、イカダに使えそうな木をください」とピピルが言うと、「ダメじゃ。『フィンクルの里保護法』はお主も知っているはず。切りたいなら、どこか別の場所にするんじゃな」とこれまたスラックが反論。これではまったく話にならないので、ここで話題をちょっと変えて、ディコスが島を脱出したことについて話してみた。するとスラックは、 「ワシの知ったことじゃない」とあっさり。「金品を盗まれているわけでもなし、ワシのものが特に盗まれていないんだから問題ない」ときっぱり。でも指輪盗まれて、壊されたじゃないかい・・・。
ある程度もう話し終えたのかと思ったのか、「さぁ、帰るかの・・・。」と動き出した。このまま返されたらと思って止めにかかると、「なんじゃ、しつこいのう」と怒られてしまった。どうしても、とスラックを説得すると、 「しょうがない・・・。めんどくさいが、これをやろう」と言って、一つのビンを手渡した。「これは『ワープの霊薬』といってな・・・。お主の行ったことのある場所を念ずれば、そこへ飛んでいってくれるという優れものじゃ。これでいいじゃろ」
結局、この霊薬だけが残った。 残ったものは特になく、材料の木も手に入らない。外に出ればいいと思うかもしれないが、何せ敵キャラがいるため木を持ちながら切りながらの戦闘はきつい。たとえ、もう弱くなりつつあるあくマックルといえども。。
こうして困っていると、あの「皮剥師」がやってきた。 「よし! できたぞ〜〜。」とはりきるグロス。「何ですか、それは?」とある意味聞いてはいけないような質問をピピルがすると、「これは、チクチクコウラ。オークナイトの皮とマックルの皮を何重にも重ねてコウラ状にしたものにちくぼうのトゲトゲをつけたものだ。身を守っていながら、攻撃ができる。お前にピッタリだ」といって、またしてもフィアロンに装備させた。もうフィアロンは、グロスの手下になりつつあるかもしれない。フィアロンも、何もしなくても攻撃ができるのはさすがにうれしいようだ。もとを正すと、良くないことではあるが・・・。
「ところで、イカダの材料は手に入ったんだろうな?」とグロスが話を変えて聞いてきた。 ピピルは「何も・・・。」と言うしかなかった。するとグロス、怒り出して、 「なにぃ!! 何もないだと! 3時間以上もかかってるじゃねぇか! ふざけるな、この辺の木いっぺんに切り倒せばいい」と、いきなり木を倒そうと構えると、 「待ってください。ここの木は切ってはダメなんです」とピピルが止めた。が、 「関係ない、こっちの勝手だ」とか言って、木を倒そうとするもんだから、ピピルと一緒に止めにかかった。 「何でダメなんだ、じゃ別の場所へ行けばいい、行くぞ!」 「待ってください」とピピル。 「またかよ!」と、ピピルの止めにちょっと切れ気味のグロス。「レンクルの羽は、さぞかし剥いだら金になるんだろうな・・・。」とか例の脅し文句で切りつけたグロス。またそっちのほうに走るのか?
「これを使いましょう」とピピルがスラックにもらった霊薬を取り出した。 グロスが例の霊薬に気づいたらしく、何じゃそりゃ?と聞いてきた。事情を話すと、「それは好都合」とグロスが言い出した。「それで行きたいところを念ずればいいんだろ。こんなところより、もっとマシなところへ行こうぜ」と言い出した。「ココには、あまりいいことがないからな、そんなとこよりさっさと行くぞ!」といって、取り上げた。
行ける場所は4つあった。「カラッカ」「フィンクルの里」「ディコスのアジト」「謎の洞窟出口」だった。 「一番海岸に近いのは・・・。さっきのところだな。ちくぼうマッサージ機もあることだしな」と、勝手に決めていた。さっき作ったじゃないか、と言うとあれはあれ、これはこれだ。といって聞かなかった。結局、「謎の洞窟出口」へ行ってみることに。大丈夫かなぁ・・・という不安をよそに、グロスは使いだした。 ・・・。
結局、元のところへ来てしまった。橋も壊されて、どうしても進めない。グロスはちゃっかりちくぼうマッサージ機を回収して、いい気分に浸っている。これからどうするの、というフィアロンの問いに、答えられるものはいなかった。 一方グロスは「やったぜ! ちくぼうマッサージ機! この刺激がたまらねぇ〜〜」と言って完全にリラックス状態。 そう言っていたフィアロンはもう「昼寝」タイム。どこにでも寝られるフィアロンは、どこかうらやましい。しかし今はこんなところで寝ている場合じゃない。
それより、先に進む方法を考えるほうがはるかに先だった。 「後ろは山、海側は断崖絶壁、とても進める状況じゃない」とピピルが不安そうに言うと、「何言ってるんだ。ここなら木は有り余るほどあるだろ。変な注文なんて、ここでは関係ないからな」とフィンクルの里にせいせいしていたグロスがマッサージ機をしながら言った。でも後先考えようよ・・・。
場所も場所なので、橋沿いを歩いていると、フィアロンが「う〜〜ん、甘い匂い・・・。これはもしやケーキ!!」と騒ぎ出して勝手に先へ行ってしまった。仕方ないヤツだな、とグロスが愚痴をこぼしつつマッサージ機を片付けフィアロンの後を追うと、なんとそこには、まったく知らない光景が広がっていた。
町。しかし、その光景は、町と言うより小都市とでも言えるようなところだった。 町の規模は決して広くない。周りは山、海側は断崖絶壁だった。 すると、マックル族には違いないが、見たこともないような薄黄緑色のマックルがいた。 「旅人かい? そうだとしたら実に200年ぶりだなぁ。にしてもすごい格好してるね、君たち」と話す分には、普通のマックルとそんなに変わらなかった。が、200年とは、ずいぶんと間が空いている。格好は、あまりにひどい格好だったから、どうかと思ったが、問題はないらしい。よかった、よかった。(これでなんのツッコミもないやつも相当珍しいと思うのだが)
事情を話し、ここについて聞いてみると、「ここはイブレムの町さ。狭いけど、地下や上にどんどん張り巡らされていて、今ではちょっとした港町になってるんだ。とはいっても、交流なんてないけどね」ということだった。 話を良く聞いてみれば、ここは200年前までは、カラッカの隣にあった町だったのだという。ところが、そのときの大地震と大量の土砂によって囲まれてしまい、他のマックルたちとの交流が途絶えてしまったらしい。町の住民は、外に出ようと思えば今では出られる状況ではあるが、もう長く時間が経ってしまったし、ここの暮らしのほうが安全ということもあって、離れようとはしなかった。まさに、「閉ざされた町」というわけだ。 「ここを案内してやろうか」とさっきの薄黄緑色のマックルが視線を向けた。「慣れてないやつにとっては、かなり迷うだろうからな・・・。」そう言って、ブラブラと散策することにした。
そこには、本当に見たことのないマックルたちがいた。さっきの薄黄緑色のマックルのほか、クリーム色のフィンクルのようなやつがいたり、薄い紫色のキャックルがいたり・・・。 「何か不思議なところだな。ちょっとフワついていて、フィアロンには絶好の場所だろうな」とグロス。確かに、少しフワついているような感じは受けるが。ところで、フィアロンはどうしてるんだろうか。「敵が出てこねぇから、心配はいらねぇよ。どうせまたケーキでもほおばってんだろ」とグロスは跳ね返した。出発するときに、行くのが嫌だとは言わないだろうか・・・。それだけが心配だ。
そのときフィアロンはと言うと・・・。ケーキの匂いのした家に勝手に上がりこんでいた。
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