■477 / ) |
Re[9]: BM 第2章 7:フィアロンの記憶
|
□投稿者/ viper(ヴァイパー) <マックル(12回)>-(2005/01/27(Thu) 21:29:20/218.119.156.136)
| グロスがいなくなり、他の3人も眠り始めた頃・・・ 一足早く眠り始めたフィアロンは夢を見ていた それは昨日町を散策した時の出来事だった
他の3人が休んでいた時、フィアロンはケーキの匂いをかぎつけて街へ飛び出した 「ケーキケーキ。ショートにシフォンにチーズに生クリーム」 訳の判らない歌を歌いながらフィアロンは匂いの方向へ向かった そしてある一軒の家へと辿り着いた 「おじゃましますぅ」 一応挨拶をしたが中から返事はなかった それもその筈、家には誰もいなかったのだ 「あったあった」 フィアロンは勝手に台所に入り勝手に戸棚を開け、そこに入っていたショートケーキを取り出した 「いっただっきまーす」 そして勝手に食べ始めた
フィアロンが生クリームの柔らかい甘さと苺の甘酸っぱさとのハーモニー 生地のふわふわ感にうっとりしているその時 突然家の扉が開いた 「・・・誰だお前は」 家主と思われるその人物は口の周りをクリームで汚している侵入者に問いかけた 「んー おいしい」 しかしフィアロンは無視した 「お前は・・・・」 「ねえねえ紅茶はないの?」 家主は口を閉じた そしてフィアロンを無視して家の奥へと入っていった
すっかりケーキを食べ終えたフィアロンはしばらくの間椅子に座ったままじっとしていた そして突然立ち上がった 「・・・お皿洗わなきゃ」 不法侵入したり無断でケーキを食べたりとおよそ自分の事しか考えない行動をしていたフィアロンが突然気を利かせ始めた そして皿を流しに持っていって綺麗に洗い始めた 綺麗に拭いた後、それを先ほどの棚にの中へ戻そうとした その時フィアロンは戸棚の中に何かを見つけた 茶色い革の袋だった それを手に取ってみるとずっしりと重く、じゃらじゃらという音を立てた 「・・さっきの人ナークルみたいだったな、浮いていたし。でも色が変だな、桜色だったし」 そして暫くじっと袋を見つめた後、突然家の奥へと飛び込んだ
「まてー!」 家主は突然転がり込んできた変なミラックルに驚いた 「判ったぞ!お前は洞窟でディコスと一緒にいた魔術師だな!」 「な、なに!?」 この家の家主・・もとい魔術師の額に汗が浮かんだ フィアロンの目はいつもの眠たそうな半開きではなく、しっかりと見開いていた 「洞窟で会った時はローブを着ていたけど、ローブの裾の揺れ具合からして宙に浮いていたのは明らか つまりナークル・フィンクル・レンクルだと考えられる」 そしてピピルばりの推理力を発揮させた
一体フィアロンに何が起きたのか すべてはあのケーキが原因である ケーキから摂取した糖分は血液を通じてフィアロンの脳へ送られた 脳はエネルギー源のブドウ糖によって働く フィアロンの脳は糖分によって一時的に活性化し、眠気も吹き飛んでフル回転し始めたのだ 元々フィアロンは優秀な魔術師の家系に生まれ、幼い頃からエリート教育を受けてきた しかしあまりにハードな教育故、のんびりした性格のフィアロンはそれについていけず居眠りばかりするようになっていった そしてのんびりさに拍車がかかり、今のような常にぼーっとしているという生活習慣が身に付いたのだった マックル訓練所に入ってからは家から出られたという開放感で更にぼーっとするようになっていった 訓練所ではキッチリした食事管理がなされていて、甘い物の摂取量も制限されていた それがフィアロンの脳をますます鈍らせていたのだ しかし今、フィアロンの脳は久々の糖分を得て活発な活動を始めた
「更にローブから羽が突き出ていなかった事からナークルと特定される」 「一体何の事ですか?確かに私はナークルですが、あなたが見たその魔術師と私が同一人物だという根拠が何処にあります?」 フィアロンは先ほど棚から持ってきた袋を見せつけた 「これにはお金が入っていますね、それも相当たくさん。これはもしかしてディコスから報酬として受け取ったのではないですか?」 「それは元々私の物です」 「この袋に入っている硬貨は最近出回った新しいデザインの物です。200年間誰も訪れた事のないこの町にそんな物があるなんて可笑しいです」 「何!?」 イブレムの町は200年前に周囲との交流が途絶えてから新しいものが入ってこなくなった この街では当時流通していた硬貨がそのまま使われている 今外の世界で使われている硬貨は50年ほど前に新しいデザインに直されたものだ 「あなたは洞窟からでる時に「リターン」の魔法を使った・・・この魔法は入ってきた入り口へしか戻れないと聞きます。もしフィンクルの里側から入ってきたのなら僕たちが来るであろうこの町にわざわざ戻ってきたりしない筈」 フィアロンは魔術師に迫っていく 「しかしあなたはここに留まった。ここに自宅があるからと言うよりは、ここから他の場所へ行けなかったからではないですか?」 魔術師は黙って聴いていた 汗が頬を伝っていった 「魔術師ならワープの魔法を使えば何処へでも行ける、自分が行った事のある場所なら。しかしこの街から出た事のないあなたはここに戻るしかなかった」 「さっさとこの家からで出て行け!不法侵入で訴えるぞ!」 「あなたは一体何を考え・・・」 その時フィアロンのまぶたが下がり、いつものような眠たい目になった
「くっ・・ばれたからには仕方がない。そう、私がお前達を邪魔した魔術師だ」 フィアロンは糖分を使い果たし、脳の働きは再び鈍り始めていた 「あのディコスという奴が突然私の家にやってきた時は驚いた。だが金の入った袋を持ってきた時はもっと吃驚したさ。そしてお前達を邪魔すればこれをそっくりくれるとも・・・」 フィアロンは魔術師の声を聴いていた しかし鼓膜で振動を感知し、電気信号に替え、それを脳内で処理するという作業に恐ろしいほどの時間がかかっていた 「これだけの金があれば外の世界に行って治療を受けさせてあげられる・・あのディコスとやらは信用できないが、どうしても金が必要だった・・」 突然魔術師はフィアロンに向かった杖をかざした 「サンダーS!」 雷がフィアロンを襲った ミラックルコーティングのお陰でダメージは受けなかったが、その衝撃で家の外へと吹っ飛ばされた 「わー!」 「待っていろ!お前達をウェイダンに行かせはしない!もう一回妨害してやる、そしたらまたあいつから報酬を貰えるからな!」 フィアロンの脳は先ほど働いた反動で今まで以上に活動が低下していた そして眠ろうとしていた 薄れていく意識の中で魔術師の最後の言葉を聞いていた
「フィアロン、起きてよ」 ピピルがフィアロンを揺り起こした 「もう疲れは取れたよね?僕らもぐっすり寝たし、そろそろ出ようよ」 フィアロンは眠たい目をこすった そして辺りを見回した 「・・アレ、グロス?」 「ああ、グロスは僕らを置いて先に行っちゃったよ」 フィアロンはろれつが回らないまま訴えた 「駄目・・・早く行かないとぉ・・魔術師ぃ・・邪魔してくゆ・・」 「え?何?」 「グロス危ない・・・」
パーティに迫り来る危機 しかしそれを知るのはフィアロンただ一人(糖分切れ) そして先に行っていたグロスは・・・・
|
|