Drip Circle
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■600 / )  Re[5]: BM 第3章 5:捜査開始2
□投稿者/ viper(ヴァイパー) <マックル(16回)>-(2005/04/10(Sun) 21:15:32/218.119.156.136)
    「うーん…」
    いつの間にか寝入ってしまったらしい ピピルは目を覚まし体を起こし目を擦った
    「えっと、確か宿荒らしを捜して、ディコスが協力するって言って、グロスが出ていって…」
    まだ霧がかかった頭の中をスッキリさせ、慌ただしかった今までの事を整理しようと独り言を呟きながら辺りを見回した
    「あれ?」
    荒らされていた筈の部屋はいつの間にか綺麗になっていた いや壁の穴やソファのボロさはそのままだが散乱していた筈の家具は全て綺麗に並んでいる
    「あ、起きたの?」
    明るいはっきりした口調が聞こえてきた 今ここに残っているのは自分と眠たそうな声をしたミラックルの筈なのに
    フィアロンは机に向かって本を読んでいた それもかなり分厚い如何にも難しそうな本だ
    「この部屋全部フィアロンが片付けたの?」
    「うん」
    信じられなかった さっきまで飴を食べまくっていたおとぼけとこの真面目そうなミラックルが同一人物とは思えなかった
    いや、飴なら現在進行形で机の上に袋から取り出しつつ食べているが…
    あれ?飴は全部食べたんじゃなかったっけ?もしかして新しいの持ってきたの?
    ピピルがごみ箱を見ると飴の袋が3枚捨てられていた と言う事は一袋50個としてもう150個食べている計算になる
    軽く胸焼けを起こしそうなのだが…

    ピピルは気付いていないがフィアロンは糖分の大量摂取によって覚醒していた
    しかも飴を食べ続けているのでその状態が長時間持続している
    「何の本読んでるの?」
    ピピルは気になってフィアロンに尋ねた
    「「幻のマジックル」だよ」
    「ああ、いわゆるトンデモ本ね」
    「どうしてそうやって決めつけるのさ」
    「だってマジックルなんていもしないものそんな真面目に研究して、良く飽きないなって思って」
    一時期騒がれた幻の存在 マックル・キャックル・ロックル・ミラックル・ナークル・フィンクルと魔王によって作られたレンクル
    そして古代の世界に存在したと言われる第8の種族・マジックル族
    古い文献や遺跡にその存在を示唆する文や壁画があるが、実際にいたかどうかは判っていない
    「伝説ではミラックル以上の魔力を持った一流の魔術族だって話だよね」
    「フィアロンそれ信じてるの?だって確実にいたって言う証拠が見付かってないんだよ?」
    「でも絶対にいないって言う証拠もないでしょ?」
    「…それはそうだけど、例えいたとしてもとっくに絶滅して現代には残っていないよ」
    「この本では今でもマジックルの生き残りがいるって書いてあるよ」
    「良くそんな虚言を吐けるな…」

    フィアロンは一旦本を閉じた
    「この本の著者は自分であちこちの遺跡を調べたり文献や歴史書から推理したんだって。信憑性は高いよ」
    「そうかな…で、著者は何て言ってるの?」
    「その研究によるとマジックル族の遺伝子は影響力が弱いのではないかと言う事が判ったんだって。例えばキャックルとマックルの両親からは純血種のマックルかキャックルの子供が産まれるけど、マジックルとマックルの場合子供は両方の血を継いでしまい中間雑種が生まれるんだって」
    「本当?」
    「だからマジックルは自分達の血を守る為に他の種族との交流を断ち、誰にも見付からない隠里に身を潜めたらしい」
    「今でもその隠里があるって言うの?」
    「誰も知らない筈だったんだけど…200年前のカラッカとマザレルナの戦争の頃当時のカラッカ王が文献からマジックルの存在を突き止め、戦争に参加させる為に隠里に赴いて協力を求めたそうだよ」
    「え…でもそんな記録カラッカには残っていないよ?」
    「マジックル達はその驚異の魔法でマザレルナの軍勢を圧倒した。いくら魔法大国と言えどマジックルには歯が立たなかったみたいだね」
    「それが本当だったら怖いけど…だからそんなの歴史書の何処にも残って…」
    「残ってないのも無理はないよ、王はその後隠里に封印を施して彼らから魔法を奪ってしまったそうだ」
    「えっ!?」
    「戦争の道具としては頼りになるけど、平和な時代になればその力が自分達に向かないとも限らない。王としては国民の為に危険因子を排除したまでだよ」
    「非道すぎる…」
    「それが知れれば批判が飛び交うのは目に見えている。だからこの事実を歴史から抹消したんだって」

    ピピルは驚愕の内容に吃驚していた それ以前にフィアロンとこんな高度な会話が出来た事に吃驚していた
    いつもはフィアロンが寝ぼけているから高度とかの以前にまともに会話が成り立たないのだが
    「…でもマジックルなんている訳」
    「著者に依れば純粋なマジックルはもういなくなってるだろうって。でも現代にもその血を引いた雑種がいる可能性は大いにあるよ」
    フィアロンは座ったまま大きく伸びをした
    「所でさ、ピピル」
    「な、何…?」
    突然話題を転換されたのでピピルはどもってしまった
    「この本棚可笑しくない?」
    ピピルは部屋の隅にある大きな本棚に目をやった あのボケ宿主の蔵書としては似つかわしくない大量の本が入っている
    ぱっと見る限りでは特に変わった様子は見られない
    「別に普通の本棚だよね?」
    「そうじゃないよ。この本棚隙間が多すぎない?」
    確かに本が入ってないスペースがかなりあった フィアロンが綺麗に直したらしいが全部が本で埋まっている段はなかった
    「本のサイズと段の高さを合わせて仕舞ってみたけどね、明らかに余っているんだ」
    「元からそうじゃったんじゃない?あのボケ(宿主)が本を熱心に集めてるとは思えないし」
    「それなら本が倒れない様にブックエンドを立てるなり工夫する筈さ。それに本が入っていないと空いたスペースに埃が溜まったり汚れたり日焼けしたりするけどそれもないし」
    「…元々この本棚は全部本が詰まっていたと言う事?」
    「消えた本はおそらく宿荒らしに持ち去られたんだろう」

    フィアロンの推理はしっかりしたものだった ピピルは平静を装っていたが正直戸惑っていた
    「だとするとこの部屋の異常な荒らされ具合も納得がいくんだ。金目当てならお金のありそうな所だけ漁るだろうし、荒らせば荒らす程犯行に時間がかがる」
    「確かに、派手な音立てて壁を壊したりしたら人目に付いてしまう」
    「犯人の目的は金ではなく本だったんじゃないかな?」
    「本が無くなった事をカモフラージュする為に部屋をメチャメチャにしたって事か」
    だが疑問が残る
    「フィアロン、その考えは面白いけど…じゃあ何で本を狙ったんだい?」
    「それは犯人に訊かないとね」
    フィアロンは飴の袋に手を突っ込んだがもう飴は一つも残っていなかった
    「この辺りで聞き込みをしたら同じ様に本を盗まれたって人がいるかも知れない。どんな本が盗まれたかが判れば犯人の目的も判る筈」
    見開いていたフィアロンの目がだんだんと眠気を帯びてくる
    「早速出掛け…」
    糖分が切れたフィアロンはソファに突っ伏して眠ってしまった

    「…今の何だったの?」
    異様に真面目で物凄い推理力を発揮したフィアロン しかし脱力した寝顔は間違いなくいつものフィアロンだ
    謎が頭を駆けめぐったが今それを考えるよりも大事な事がある
    「聞き込みか、やる価値はあるね」
    ピピルはフィアロンが読んでいた「幻のマジックル」を本棚に戻し、宿を出た
    その時ふとある疑問が浮かんだ
    「中間雑種が生まれたら体の色とかどうなるんだろ?普通の種族とは違う色になったりするのかな…」
    ピピルはイブレムの町の人々を思い出した だが今は宿荒らしの探索が最優先だ そのまま町に向かって飛んでいった
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