型取りについて・その2

 ここでは型取り用レジンキャストについて紹介します。自分が始めて使ったのはニッシリのプラキャストUWですが、現在のものと較べてそう劣っているものでもありませんでした。むしろ初期タイプハイキャストの扱いづらさには泣かされましたが、これは当時の使用者みんなが思っていたことだったでしょうか?(その後はどんどん品質改良されていきましたが)。


注型剤(レジンキャスト)
 型取り成型用に使われる樹脂で、一般にガレージキット使われる注型素材は『二液混合硬化型無発泡ポリウレタン樹脂』である。通常は液状で、A液とB液を重量比(容量ではない)1:1で混合することにより、化学変化で硬化し固体となる。注型時の流動性を良くする為、溶剤には主にキシレンが使われ、いわゆる「キャストの臭い」と呼ばれる独特の強い溶剤臭がする。最近はキシレンの代わりに石油ナフサ系溶剤を使用したノンキシレンタイプが増えているが、こちらも灯油のような独特の臭いがある。ノンキシレンタイプは毒性は低いと言われているが、ジフェニエルメタンやトリメチルベンゼン等の有毒物質が含まれているため、換気と取り扱いには注意が必要。一般にはキシレンタイプよりノンキシレンタイプの方が粘性が高く流動性が劣ると言われているが、これはメーカーにより異なる。また工業用には溶剤なしのものもあるようだが、流動性が悪く個人の手流しレベルでの使用は困難な為、普及はしていない。
 「レジン」「キャスト」と呼ばれるが、古いユーザーには「キャスト」の方が一般的。だが業界的には「レジン」を推奨している模様。何でこんなことが起きたのかというと色々な事情があるのだ。
 日本で最初に一般発売されたのがポリウレタン樹脂が「プラキャスト」(ニッシリ)で、その後追いで他社が出した製品も「ハイキャスト」など、商品名に「キャスト」が使われたものが多く、一般にキャストと呼ばれるようになっていた。だが90年代のモデルグラフィックス誌上などで「キャストというのは『物を置き換える』という意味なので、注型樹脂をその名前で呼ぶのはおかしい。レジンと呼ぶべきであって、間違ったジャパングリッシュはやめよう」と訴え続けてきたのが現在に至っている。だが『レジン』という言葉自体も元々「樹脂」という意味でしかないので、素材名として使うのもある意味おかしい話である。正確には「ポリウレタン樹脂」が正しいのだが、長いので「レジン」とか「キャスト」とか呼ばれている。間違ってようが間違ってまいが「そういう経緯で定着した日本語」は幾らでもあるのだが・・・・。
 それともう一つ、オールドモデラー程「レジン」という名前を使いたがらない傾向があるようだが、これには一つ理由がある。80年代初頭に複製技術が個人レベルで試行された際、最初に挑戦したのは素材に精通した歯科技工士(を職業とする)モデラーの方達が多かった(様な気がする)のだが、この方たちが使っていた歯科技工用レジンや、当時、ディオラマ用の水や透明パーツの表現として土筆レジンクラフトが発売していた「レジン」という透明樹脂があった。これらはFRPの主成分と同じポリエステル樹脂だったのだが、こいつが恐ろしく使いにくい素材だった(硬化が遅く収縮が大きく硬く加工しにくい)。創生期は、ポリエステル系素材をレジン、ポリウレタン系素材をプラキャスト(orキャスト)と呼んでいたので、これを覚えている人はそのトラウマから「レジン」という名前に拒否反応を示すのだ(この樹脂も90年代頃まで東急ハンズなどで見かけたが、まだあるのだろうか? 実際、注型用透明ポリエステル樹脂は、日新レジン(株)から未だに「クリスタルレジン」の名称で販売されている)。まあ、この辺は年寄りの戯言として聞き流していただきたい。
 それとまたまた蛇足ではあるが、ワンダーフェスティバルガイドブックの「ワンフェス用語の基礎知識」で「2kgを有効に使い切れば、1/8サイズのフィギュアなら、約20体を複製することが出来る」とあるが、これはほとんど無理である(キャラクターの体格やキットのパーツ数にもよるが、1/8だと1体の重量は標準パーツ数でが100g弱位。ちゃんとした「量産できる」型の場合、ゲートやランナーのパーツがあるので1体抜くのに120〜150gは必要になるはず。これは「手流し」の場合だが、遠心成型の場合もゲート&ランナー分があるし、真空成型の場合は製法上もっと必要になる)。


一般によく使われる製品
ハイキャスト
 
平泉洋行が発売しているレジンキャスト。詳しくは下の初期タイプの項を参照。色はアイボリー、ホワイト、ブラックの3種類で2kgタイプは定価4725円、1kgタイプは2625円(ただし値引等の場合、実売価格はそれぞれ、3500円、2000円前後)。他に、キシレンフリータイプ(1kgのみ、ニューフレッシュ・アイボリー各2625円)がある。可使時間は、キシレンタイプが90秒、キシレンフリータイプが120秒となっている。現在は青い恐竜シルエットの箱の入っているが、以前は別デザインでピンク色の箱の時代もあった。品質的には評判が高いが、価格が若干高めなのと、以前と較べて模型店ルートで入手しにくくなったのが難点。

詳細は平泉グループ公式サイト参照→http://www.heisengp.co.jp/
ウェーブレジンキャストEX
 
ウェーブが発売するレジンキャストで、この手の注型剤の中では店舗で比較的入手しやすい商品。現在はキシレン溶剤タイプと、ノンキシレンタイプが発売されており、キシレンタイプはハイキャストと似たような使用感で硬化後の質感も似ている。色はアイボリー、ホワイトの2色で、アイボリーが定価3654円(税込)、ホワイト(ノンキシレンのみ)が4179円(税込)である。ノンキシレンタイプは、キシレンタイプと較べて粘度が高い感じで流動性は若干劣るようだ。また同じアイボリーでもキシレンタイプは若干色が濃く、ベージュに近い感じの色である。可使時間は120秒。ホワイトタイプは柔軟性が低く、硬化直後は結構脆いので、脱型時には注意が必要。

詳細はウェーブ公式サイトから
http://www.hobby-wave.com/


NO PHOTO BE-J HG・EGキャスト
 ウェーブの店舗ショップであるBe-Jブランドで発売されるレジンキャストで、主に楽天市場のWeb通販で販売され、送料を考慮してか安めの値段設定となっている。色はアイボリー・フレッシュ・サフグレーの3色で、価格は2kg(3129円・税込)、8kg(10500円・税込)、34kg(41790円・税込)となっている。HGがノンキシレン、EGがキシレンタイプで、EGはアイボリーのみ。キシレンの旧HGタイプしか使ったことがないが、おそらく上記のウェーブEXと同じものである。

詳細はビージェイWebサイト参照→http://www.be-j.com/orijinal/ori/silikon/index.html
造形村EX−CAST
 
ボークスが販売するレジンキャストで、色はホワイト。1kg2100円、2kg3675円、5kg8925円(すべて税込)。流動性が高く細かいモールドにもよく流れ、気泡も出にくいという長所があるが、反面、他社製と比べると硬化時間が遅いという特性があり、薄いパーツなど、ゲート部の固まり具合で大丈夫と思うと「中身ふにゃふにゃ」だったりすることもある(可使時間は180秒と遅めで、完全硬化には30分以上かかる)。また、硬化時の初期収縮が若干大きいようで、ものによって成型品のパーツが合わなくなることもある(体験済み)。硬化後は他社製よりも硬めで、切磋性に優れ、いにしえの“プラキャストUW”を思わせるような質感である。夏場のアンダーゲート注型には良いかもしれないが、細かいパーツ精度を要求されるものにはあまり向かないかも。ワッカー系シリコンとの相性がよく、これを使用した型で使った場合、意外に型が傷まなかったりする。クリヤータイプの「透明キャスト」もあるが、発泡が多いようであまり評判は良くない模様。
GSIクレオス Mr.キャスト
 GSIクレオスが販売しているレジンキャスト。色はアイボリー(ノンキシレン)とホワイト(キシレン)で、定価は4189円(税込)と高めだが、扱い店舗によっては3千円台前半のところもあり価格差が大きい。可使時間は120秒で、粘性が低く流動性が極めて高いという特性があるが、成型品が脆い(脱型時破損が多い)と不評の声も多く、あまり使っている人はいないようである。硬化後は妙に軽い感じになり、柔らかく切磋性も良好。個人的感想としては、今まで問題なく使えていたので好きなのだが。製品自体は、平泉洋行か他メーカーのOEMと思われる。なお、この製品はなぜかMr.ホビーのHPには掲載されていない。








AXSON ファストキャストF18
 ノンキシレンキャストとして早くから(2004年頃?)から登場し、その品質の高さから話題を呼んでいるフランス・AXSON社製のレジンキャスト。色はアイボリー。ほぼ無臭で、流動性が高く硬化時間が遅めで、手流しでも気泡が出にくいという特性があり、なおかつ硬化後収縮が極めて小さいということから、マスター用や精度を要するものの複製用として注目されている。ポリ製容器に入っており、品質保持の為にA液ボトルを最初からへこませているのが印象的。いいとこ尽くめのようだが、問題は1.8kgで6090円(税込)と価格がかなり割高なことと、取扱い店が少ないこと。それに加え、可使時間210秒、脱型可能が45分というのは量産用には時間がかかりすぎるとも言える。国内販売はAXSONジャパン(http://www.axson.jp/)、模型店ルートではファインモールドが代理店となって販売しているが、最近になって価格据置で容量が2kg(容器も缶入りに変更)になった新タイプが登場した。同社の通販では、硬化時間の早いF38タイプも販売しているが、こちらが更に割高である。。
詳細はファインモールド公式サイト参照→http://finemolds.co.jp/



懐かしの製品いろいろ

プラキャストU(&UW)
 GK用注型樹脂の元祖。ニッシリが発売していた二液混合型ポリウレタン樹脂で、発売開始は1981〜82年頃。本来は工業用だったが、それが一般造形の複製用として発売されたもので、初期のガレージキットはほとんどがこの製品を使用していた。ポリ製容器に入っており、容量は1kg。ベージュ色のプラキャストUが2300円、白色のプラキャストUWが2500円で、UWはかなり後から発売された。後の同系ウレタン樹脂と比べると、硬化が早いが成型品はかなり硬めで、薄いパーツの場合、気を付けないと脱型の際に割れることもあった。プロユースとして大容量タイプもあったようだが、後続の他社製品に押されたか、ニッシリは一般向け分野から撤退し、1990年代初頭には店頭から姿を消した(最後に使った記憶が92年頃だが、いつ頃まであったのだろう?)。なお、「プラキャスト」というのはニッシリの商標で、この時期にはポリウレタン樹脂以外にもシリコーンゴム(S-9、S-10等の少量シリコーンゴム)や、脱水剤・シリコーン硬化促進剤等の各種マテリアルが「プラキャスト」ブランドで販売されていた。ニッシリ自体は、もちろん今も健在で、現在ではシリコーン(信越シリコーン)や、合成樹脂等、各種工業用マテリアルを製造・販売している。



ハイキャスト(初期タイプ)
 平泉洋行が発売している二液混合型ポリウレタン樹脂で、80年代末に登場し、業界的には最も普及していると思われる。当初出回っていたのは、写真の容量1kgの丸筒の缶タイプ(2200円)で、後に2kgの角缶タイプ(4500円)へと移行し、1kgタイプは消滅したが・・・が、最近になって「ハイキャストミニ」として角型缶1kgが復活した。
 発売当初、プラキャストより若干割安な価格だったが使用特性が異なり、「柔らかく柔軟性があるが、硬化後の経時収縮が大きい」「混合比がプラキャストと比べると若干シビアで、目分量で混合すると硬化不良を起こしやすい」「注型料が足りなかった場合、硬化してから追加分を継ぎ足す『二度流し』が出来ない(境界線で割れる)」等の相違点があり、若干扱いにくかった。色は当初はアイボリー一色だったが、後にブラック、フレッシュ、ホワイト等も追加され、90年代にメーカーから発売されていたガレージキットは、このハイキャストを使ったものが多かったようだ。当初問題とされた部分は後に改善され、現在のものは高品質である。


スーパーキャスト
 「懐かしの〜」扱いにするには新しすぎるが・・・
 登場は90年代初期くらい(?)。92年頃には各種イベントで販売されていた。1990年創立の造形素材新鋭メーカー・(有)イメージモデリングクリーチャーズが発売していた。流動性が高く、硬化が早いのが特徴。・・・・だが、若干早過ぎる嫌いもあり、アンダーゲートで抜くと流れてる途中でで固まってしまうこともあるので、アンダーゲート用の型には向かないようだ。また、他社製に比べ発熱量が高く、連続注型の際の型の熱膨張が起きやすかった(硬化後の品質は良かったのだが・・・)。色は、アイボリー・ベージュ・ホワイトの三色。以前は専門店等で割と多く扱っていたが、2005年の同社の東京店舗閉鎖と共に活動を停止しているようで、いろいろ便利だった各種ケミカル類と共に入手不可となって愛用者は困っているようだ。



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