「雲のむこう、約束の場所」舞台探訪

〜学校編〜



舞台探訪者の心得
 ・探訪先では、地元の人の迷惑にならないように行動する。
 ・観光地でない場所や公共施設でない場所への探訪,撮影には十分注意する。
 ・探訪者の多い場所での行動は控えめに。


 ふと気がついたら、3/19〜3/21は三連休だった。
 3/21はスペシャルイベントの春コミの日なのだが、次の日が仕事であることを考えると参加はためらわれた。
 そんなわけで、空いた連休に、比較的手近な「雲のむこう、約束の場所」の学校のモデルに行ってみよう!、と思いついて仲間うちの掲示板に書き込んだのが3月初めのこと。
 そこから話はトントン拍子に進んで、今回の舞台探訪となったのだった。

 「雲のむこう、約束の場所」の中学校 −長野県上田市−
 松本駅前でQLAND氏、SUGI氏をピックアップして、(通称)ベルレフォーン号にて三才山トンネルを抜け、上田市内にてKIZ氏と合流。KIZ氏の車に乗り換えて目的地を目指す。
 途中で線路の踏み切りを見つけては、

QLAND「踏切キター! あの踏切ですよ、山本殿ー!」
SUGI「何っ! “あの”踏切ーっ!?」
「…“あの”踏切って何だよ?」

 と、「妄想戦士ヤマモト」の第10話「おしえてティンクル」ネタで盛り上がる。

KIZ「…来る途中もこんな有り様で来たの? ご苦労さん」
「いやー、もう苦労しましたよ。KIZさん、何とか言ってやって下さいよ〜」
QLAND「オマエに言われたくねぇよ! オマエにだけは!」
「‥ホラ、鉄塔ですよ! “あの”鉄塔でござるよ、山本殿ー!」
QLAND「鉄塔キター!」
(以下、エンドレス)
KIZ「・・・・」

 それはもう、正気に返るのが怖ろしくなるほどのハイテンションっぷりである。
 そんなこんなでやって来たのは、上田市の旧西塩田小学校。

旧西塩田小学校 校門

 現在では廃校になって、地域の公共施設となっているようだ。
 上田市は地域振興のために作品のロケを積極的に誘致しているせいで、この旧西塩田小学校は「学校の怪談4」、「TRICK3」などでロケ地として使われたことがあるらしい。
 そして、今回の目的である「雲のむこう、約束の場所」、そして同じ新海誠監督の手になる「はるのあしおと」のop.ムービーもここでロケされたのだ。

 さて、車から降りて撮影道具を取り出そうとした時点で、重大な事実に気がついた。

「…み、観鈴ちんを忘れた…_| ̄|○」

 そう、撮影用の観鈴ちんのぬいぐるみを自宅に置き忘れてしまったのだ。

SUGI「何ぃー! そんな事でどうするんですか!」
QLAND「何考えてんの? 自分の役割を分かってないんじゃないの?」
KIZ「本体忘れて傀儡(くぐつ)だけ来ちゃダメじゃないですか」

 ……いや、一応、この私が本体のつもりですが…_| ̄|○

 さて、どうにかこうにかショックから立ち直って、(観鈴ちん無しで)撮影を開始。

グラウンドからの風景

 上の写真は、サユリがヒロキとタクヤの前でヴァイオリンを弾くシーンの挿入で使われたもの。
 ポールとサッカーゴールの位置からすると、実際の撮影ポイントはもう少し前で、もっと広角のカメラで撮影したのではないかと?
 作品中では夕方のシーンで画面の左側から光が当たっているため、カメラは南側から撮っているはずだが、実際にはこのカメラの位置は北側。

音楽室

 グラウンドから見て手前側がモルタル造りの建物。上の写真は、そのグラウンド側の壁。
 これもサユリがヴァイオリンを弾くシーンでのカット。
 窓ガラスの枠が5つであることと、雨どいの形から、この2階部分が作品中の音楽室と推定。けれども、実際に音楽室かどうかは分からなかった。建物に鍵がかかっているため、中に入ることが出来ないのだ。

体育館

 上の体育館の写真もヴァイオリンのシーンで登場したもの。
 モルタル造りの南側に木造の建物があり、こちらが旧校舎のようだ。
 旧校舎側に回ってみると…、

洗い場(?)

 上の洗い場は、ヒロキとタクヤがテトラパックのコーヒーを飲むシーンで使われた所。
 ほぼそっくりそのまま。

洗い場のアップ

 しかし、作中のアップのシーンは窓の大きさや梁の位置が実物と違っていて、ここはアレンジのようだ。

水道アップ

 苦労したのが、上の水道のアップの写真。
 左側の錆びたタンクの位置と、右側奥の水道の蛇口の位置を合わせるのに四苦八苦して、結局作中と完全には合わせられなかった。これでも、撮影する時はしゃがみ込んでもの凄く窮屈な姿勢になっているのだ。このアングルを撮ろうと思ったスタッフの方には脱帽。

 さて、以上がヒロキ達の中学時代のシーンで使われたもの。
 次は、物語後半のヒロキの回想シーンから。

旧校舎(?)の煙突

 旧校舎南側の煙突。
 作中ではちゃんとした煙突であるが、撮影時にはご覧の通り折れ曲がっていた。
 このシーンではカット中に桜が舞っているが、実際にもこの旧校舎南側は桜並木となっていて、モデルと合っているのだ。

水道アップ

 旧校舎南側の水道のアップ。
 作中に似せたピント合わせにしてみましたが、どんなもんでしょ?

 以上で、「雲のむこう、約束の場所」で使われた作中のシーンは終了。本当は作品には建物の中のカットも登場するのだが、建物には鍵がかかっていて入れないのだ。

家庭科室(?)の天井

 教室内のシーンは旧校舎側だと思われるが、1階の教室部分は天井が漆喰(しっくい)で塗られていて、作中のような板目ではない。それに、小学校のために教室は作中よりも小さい。
 部屋のサイズと天井の板目、蛍光灯の感じからすると、教室のモデルはむしろ1階の家庭科室? でも、2階部分を見ることが出来ないので断言は出来ない。

 「はるのあしおと」の学校 −同上−
 校内を回っている途中で、SUGI氏が、
 「ここが『はるのあしおと』のオープニングで使われた所ですよー!」
と、「はるのあしおと」のビジュアルファンブックを振り回しながら言うので、プレイした事は無いのだけど「それじゃついでに」、と撮影。

「はるのあしおと」op.?

「はるのあしおと」op.?

 何しろプレイしたことが無いのでよく分からない。
 ん? そういえば、SUGI氏はプレイしたんだっけ?

SUGI「今回の件でようやく開けてオープニングだけは見ましたよ?」

 アナタ、いつもそんなのばっかりやん…○| ̄|_

 「遠い世界」のローカル線 −長野県南佐久郡八千穂村−
 QLAND氏が、新海監督が作った自主制作アニメの「遠い世界」に出てくる背景のローカル線が近くにあるというので、さらに車で遠征。
 KIZ氏の車のカーナビは10.4inchの大画面で多機能だ。

KIZ「あ、またフリーズした…」

 って、ノートPCそのまんまやん!

「何か、.aviってファイルが置いてあるんですが…」
KIZ「見てみる?」
ポチッ。
PC「ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ〜♪
 ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ〜♪」
「よりによって、『撲殺天使ドクロちゃん』ですかー!?」

 こうして、車内に「撲殺天使ドクロちゃん」の第1話〜第2話を流しながら、車は目的地へとひた走る。
 でも、あとで後ろを走って気がついたけど、後ろの車からPCの画面が丸見えなので、車内であまり恥ずかしい映像は見ない方が良いと思いますよ?>KIZ師匠

 そんなこんなで、1時間半ほど走って着いたのは、小海線の高岩駅周辺。

「遠い世界」のローカル線

 QLAND氏が背景のコピーを見せながら、「ホラ、ここに石垣があって、ミラーがあって、線路がこう曲がってる、と。監督が『記憶で描いた』って言ってるけど、電柱の位置までそっくりじゃん」と解説。
 なるほど、この描写の確かさには恐れ入りました。

 というわけで、本日の目的は全て終了。
 しかし、私の胸はなぜか晴れなかった。
 そう、観鈴ちんの入った写真を撮れなかった事が、ノドに突き刺さった魚の骨のように心に引っかかっていたのだ。

「そうだ! SUGI君、そこで線路の上を歩くのだ」
SUGI「はぁ? 何ですか、それ?」
「『雲のむこう、約束の場所』の中でヒロインが線路の上を歩く有名なシーンがあるではないか。幸いに電車が行った直後だし、しばらくは大丈夫。さぁ、やるのだ」
SUGI「はぁ、こんなもんですか?」

サユリの真似に挑戦するSUGI氏

 うむ、観鈴ちんと比べると役者不足だが、僕達は君の勇姿を忘れないぞ。
 こうして、胸の晴れた我々は「雲のむこう、約束の場所」の舞台探訪を締めくくったのだった。

 以上で、「雲のむこう、約束の場所」の舞台探訪は終了。
 建物の中に入れないせいで撮れないカットがいくつかあり、心残りが無いわけではないですが、静かにたたずむ校舎は、作品世界の雰囲気を感じさせてくれて、十分に満足出来た舞台探訪となりました。

 新海誠さんの作品には、「ほしのこえ」,短編漫画の「塔のむこう」,そして「雲のむこう、約束の場所」、と出会って来ました。
 そのいずれも胸を締め付けるような強い切なさを感じさせられたのですが、何に感動したのかというのは自分でもよく分からなくて、他人にうまく伝えることが出来ません。
 強いて言えば、喪失した絆、絶望からの救いを待つ少女、絆の回復と一般社会からの逸脱というテーマ(KEYに共通点がある?)、そして雨や雲、風や水たまりといった、透明感に満ちた情景世界が「総合的な共感」を与えてくれる、とでも言うべきでしょうか。
 そして、新作の「雲のむこう、約束の場所」も、そんな期待にたがわぬ、みずみずしい感動を与えてくれた作品でした。

 さて、最後になりましたが、今回参加していただいたQLAND氏、SUGI氏、そしてナイスなナビゲーションを披露して下さった(笑)KIZ氏に感謝です。

  終わり。