2006年6月30日〜7月2日 (大三島〜三机〜宇和島)
姫路のヨット「カロリーヌ」が火山めぐりヨットレースに出場するため鹿児島へ回航の途中で宇和島に寄港しました。
大三島から宇和島まで小説家セイラーの日野さんが同乗し、今回の航海記と写真を提供してくださいました。
いつもながら、日野さん独特の軽快なテンポの文章で、見たこと、感じたことが率直に伝わってきます。きっと楽しいクルージングだったのでしょうね。
現在、小説第2作目を執筆中とのことで、乞うご期待です!!
話は少し遡りますが。
ある日、姫路の「カロリーヌ」(パイオニア9)小島さんから、私のP/Cにメールが入った。
メールによると「鹿児島火山めぐりヨットレースに出場の為回航するのだけれど、岩城島から宇和島まで乗りませんか?予定としては、7月1日(土)の朝、岩城島出発。7月2日(日)宇和島着です」
と言うものだった。
勿論、直ちに「よろしくお願いいたします」と、メールを返信したのは言うまでも有りません。
そもそも、私と小島さんとの出会いは、去年の8月19日にハウステンボスレース前夜祭で前回、五島列島へSS38で連れて行っていただいた松岡さんと偶然にも再会し、為栗さんのハウステンボス回航レポートにも有るように、小川島にて松岡さんの紹介で初めてお会いしました。
実現すれば、それ以来の再会と言う事になりそうです・・・。
6月30日(金)
しまなみ海道を通ってバスで大三島井ノ口港へ向かう。 |
その後暫くして小島さんより、松山から来るのであれば岩城島より、大三島の井ノ口港のほうが交通の便がいいだろうと、変更のメールを頂く。
ありがたいことです。おかげで松山からバスに乗り、乗り換えなしで井ノ口港まで行く事が出来ました。
途中、伯方島を過ぎた辺りで雨になってしまいましたが、バス停から10M程の所に屋根付のポンツーンが在り、そこに横付けされている「カロリーヌ」を発見。(ヨットの場合マストが高いので探さなくても早くから目に付きますが・・・)
雨に濡れる間も無く「カロリーヌ」に乗り込めました。
コクピットに大きいオーニングを張っておられるので、全然濡れません。
早速、約10ヶ月ぶりの再会を祝い、コクピットにて、ビールで乾杯です。
(私は、バッグの奥に、お茶を入れたままなので、取り出すのも面倒と、とりあえず少しだけビールを頂き乾杯しました)
暗くなり、コクピットに電気を灯し二人で話をしていると、一人の男性が近づいてきたので「こんばんわー」と、挨拶をすると、「どちらから来られたのですか?」と、興味深そうに聞かれる。
小島さんが「姫路から来ました。どうぞこちらへ」とコクピットに誘い、ビールを勧め、それから3人で再び話が始まりました。
そのかたは、昔、外国航路に乗船していて退職した今、近くで、お花を栽培しているそうです。(船長さんだったかどうかは忘れました。すみません)
話の途中、エンジンの燃料は何ですか?と聞かれたので、小島さんが軽油です。と答えたその時、小島さんが思い出したように、「燃料が無いので、スタンドで買おうと思い、出掛けたのだけれど土曜日のせいか、時間が遅かったのか、開いているスタンドが無くて、困りました」と話すと、自分が入れているスタンドなら今からでも貰える。と、言う。
この情報に、小島さんも大喜び。
「どこですか?」と聞くと、そのかたが自分の車で買ってきてくれると言う。
「えーっ!いいのですかー」見ず知らずの人に、これ程親切にして頂くとは・・・。
結局、その厚意に甘えることにして、ポリタンク2つとお金を渡す。
もう辺りは真っ暗、本当に助かります。
やがてポリタンク2つを提げ帰ってこられたので感謝して受け取り、コクピットへと、お誘いするのですが、もう遅いからと帰られました。
なぜあのかたは、ヨットの燃料の種類など聞いたのだろう?
あの話が無ければ、燃料は手に入っていなくて、のちのスケジュールが大きく遅れたかもしれない。
元はと言えば、私の為に、岩城島から大三島へ変更したせいでもあるのだけれど・・・。
ひょっとして、神様のお使いであったのかも知れません。
まことに申し訳ないことで・・・。
情けは人の為ならず。あのかたに素晴らしい人生が訪れますように・・・・。
ただ、ただ、心から願うのみです。
感謝を胸に、それでは、こちらも寝ますかと、キャビンに降り寝る事にした。
が、
トイレに行くと言って出掛けた小島さんがなかなか帰って来ない。
(あれっ?遅いなー・・・どうしたのかなー?)
心配性の私は、いつもの癖で、心配し始める。
暫くすると、小島さんが帰って来られた。
「お帰りなさーい」と言うと、「今、そこのポンツーンで、おばちゃんたちが、網でイカを、すくっていたので見ていたのだけれど、大きいイカが獲れていたよー」
と、興奮気味に語り、子供のように瞳を輝かせる。
「えーっ!」(イカが網で獲れるなんて、聞いたこと無いぞー?)
私も行けばよかったなー。イカ大好き。
(私がもしもヨットを買ったなら、網を積んで置こーっと・・・イカをすくってイカ三昧じゃー・・・うまくいけばねっ)
それから又、暫くおしゃべりをして、今度は本当に寝る事にした。
雨の音を子守唄に、おやすみなさい・・・・。
7月1日(土)
朝目覚めると、やはり雨です。(梅雨ですからねぇー・・・ハイ)
私は、雨はキライではないです。
ピッカーンと、雨の、どちらがいいかと聞かれると、すかさず、雨です。と、答えます。
しとしとよりも、どわー、のほうがいい。
勿論、一番いいのは、どんより、どよどよ。の今にも泣き出しそうな曇天でございます。
小島さんは、雨は大キライで、出なくてもいいのなら、動きたくないと憂鬱そう。
普通の人はそうで、私が変なのでしょうねぇー・・・・。
で、小降りになったところで、まだ薄暗いけれど、しゅっこーう。
雨を気にしない私は、脳天気。
小島さんは、辛そう。
大きな多々羅大橋の下では雨が切れるだろうと安心していたら、放水しているのか、一箇所に集まって落ちるのか、凄い勢いでオーニングに雨が落ちて来て、「なんなんだ、これはー」その勢いと大きな雨音に、二人で顔を見合わせ、びっくり。
やがて鼻栗瀬戸を抜け大三島橋をクリアー。
この辺りから濃い霧が出始める。
視界はどの位だろう?200M位かなー・・・。
霧の中、航路の北をどんどん進む。
梶取ノ鼻を過ぎた辺りで、霧が晴れたので、今のうちにと航路を横切り航路の南を走る。
が、再び霧に好かれたようで、周りを囲まれる。(あららー!)
そのまま進むが、やたらと警笛がなるので、辺りを見回すが、霧で何も見えない。
暫くすると、霧の中から黒い物体がー・・・・。
私たちは航路のずっと南を走っているので、右前から大きな貨物船が顔を出し、右手を100M位かなー?離れたところを3隻ほどが連なり通り過ぎていった。
雨は降ったり止んだり。霧も出たり晴れたり。めまぐるしく変化して楽しい。
やがて、北条、鹿島沖。このあたりからは、霧も晴れ、天気も回復。
私が、三津浜の門田さんによく乗せて頂く、見慣れたいつもの海域へと突入。
唯一、小島さんに、辺りの説明が出来ます。
やがて三津浜も通り過ぎ、これより南は初めてでございます。
今度は小島さんより島々の説明を受け、色々な楽しい話をしながらルンルン進む。
原発沖を通過して、今日の予定地、三机港に入港する。
三机港は港の中に港がある二段構えの変なところだった。
小島さんが、漁協の前にポンツーンがあるので、本当は、そこがいいのだけれど、以前来た時に漁協の人に尋ねたら「だめです!」の一言で断られたそうです。
「あららー、それは、いかんかったですねー。すみません」
(あれ?何で私が、あやまっとんの???)
でも今回は、土曜日。夕方だし、漁協の人はいないはず・・・。
(ふっふっふっ)私に、悪いたくらみが・・・・。
「だめもとで、ポンツーンにつけてみましょうか?」
私の問いに、小島さんも首を縦に振る。
(うりゃー行くぜー)
ポンツーンを見ると、西側が空いている。(ラッキー)
とりあえず、西側に仮止めをした。が、それと同時に、北側に泊めて有った漁船から「そこは、いかんぞー」の声が掛かった。
(うおー!びっくりしたー)「こんにちは」
すかさず返事をして、その漁船の元へ。
そして、ポンツーンの西側を指差し「あそこに、今夜一晩泊めさせて頂いてもいいですかねー」
と聞くが、
「あそこは、船が帰ってくるかもしれんけん、いかん」
(帰ってくるかも、と言う事は、帰って来ないということだとおもうのだけれど?・・・)
そしてさらに「このポンツーンは、わしらのじゃけん」と、追い討ちをかけられる。
ここで引き下がってもいいのだけれど、あの牡蠣だらけ岸壁に泊めたくない私たちは、もうひとふんばり。
「お兄さんは、もう明日の朝までここを動かんの?」と聞くと、
「ああ」と言うので、本当は、ヨットマンはこんなこと言ってはいけないと言われるのを承知で
「横抱きさせてくれませんかねぇー?」と聞いてみた。
すると「泊めるんだったら向こうの荷揚げ場か、階段の所(牡蠣だらけの岸壁)に泊めたらええ、あそこなら誰も文句は言わん」と、西の岸壁を指差す。
(うーん。こりゃーだめだ。向こうへ行こう)
漁師さんに”だめですオーラ”を見た私はそう思い、諦めた。
しかし、小島さんは、まだ頑張っている。
(おっ!小嶋さん、まだ頑張っている)私も引き返して、それとなく話をするが、漁師さんは、下を向いたまま、生返事しかしない。
さすがに小島さんも諦め引き上げる。
引き上げ際に小島さんが、漁師さんに「ありがとうございました」と言ったのには、少し驚いた。
(ありがとう。ではなくて、どうも。か、すみませんでした。もしくは、失礼しました。おじゃましました。など、ではないのかなー?)
と思っていたが、良く考えると、向こうの桟橋なら泊めてもいい、あそこなら、誰も文句は言わん。と、教えてくれていたのを思い出した。
さすが、小島さん。人間が出来ています。
私は、まだまだ修行が足りませんねー。
(漁師さん、ありがとうございました)
届かないけれど心の中で言わせて頂きます。
という訳で、西側の牡蠣だらけの岸壁に舫を取った。
しかし、舫を取ってしまうと(大変だけれど)トイレは近いし、階段は有るし、意外といい。(開き直りかー?)
近くにあった食堂で食事を済ませ、お風呂を探す。
やっと宿屋を見つけて「お風呂だけなのですが、いただけますか?」
と聞くと、「泊り客が誰もいなくて私だけなので風呂は沸かしていない。
シャワーでよければどうぞ」との、優しいお言葉。
「ええ、シャワーで結構です」と答え、シャワーを済ませた。が、
残念、値段を先に交渉すべきだった。(あえて値段は公開しませんが・・・でも気持ちよくて、助かりました。)
いい勉強になりました。
これからは何事も先にすべき事は先にする事です・・・・・。
(けんかは、先にするべし。と言う先人の言葉を思い出した)
でも、お腹はいっぱいになったし、身も心も(?)綺麗になったところで早めに寝ることにする。
いよいよ明日は、速吸瀬戸を越え、西村さんの所へ着きます。
井ノ口港を出港し多々良大橋下を通過。 | 鼻栗瀬戸を抜け大三島橋へ。 | ||
低い雲がたち込め、所々濃霧が発生。 | 濃霧の中からボワーッと貨物船が出てきた。 | ||
伊方原子力発電所沖を通過。 | 本日の目的地、三机港入り口。 |
7月2日(日)
朝、目が覚めると、やはり雨です。
今日一日、降られるのは、昨日から覚悟しているので、カッパを着て気合を入れ、スタートぉー。
しかし、時々強く降るものの、意外と天気は良くて、すぐに暑いくらいになった。
佐田岬灯台近くで、朝食を食べ佐田岬を越える。
それからは、天気も良く波も無く、ベタ凪の中、ただ、ただ、ひたすら南下する。
あまりに天気がいいので眠くなり、二人ともウトウト夢心地。極楽、極楽。
日振島が見えてくるまで、ぼんやり、のほほーんとする。
しかし、日振島が見えてくるようになると、がぜん忙しくなる。
と言うのも、今回、私には、西村さんのポンツーンへの水先案内人としての役目も有ったのだ。(どきどき)
いつもなら明浜の大崎鼻より水荷浦鼻をめざすが、今回は、佐田岬からで、かなり角度が違い、水荷浦鼻のイメージが少し変・・・。(ドキドキ)
そこへヨットがやってきた。(ラッキー)
ヨットは「風見鶏」(松本さん)でした。
「どちらからですかー」と聞くので。
小島さんが「姫路からでーす」と答え、
私が、「ホワイトホークの西村さんの所へ、行きまーす」
と大きな声で言うと同時に、小島さんが「案内していただけますか」と聞くと、松本さんは大きくうなずき、セーリングを止めて案内してくれた。
(やはり、小島さんにも私のドキドキが通じてたみたい)
人の人情に本当に助けられます。ありがとうございました。
おかげさまで、無事、西村さんのポンツーンに到着。
仕事を終えた西村さんも駆けつけてくれて、もう一度舫を取り直し
無事、今回のクルージングを終了いたしました。
終ってみれば、天気もそんなに悪くなくて、本当に楽しい二日間でした。(勉強も出来たし・・・)
お世話になった皆さん、本当に、本当に、ありがとうございました。
この場をお借りしてお礼を申し上げます。
佐田岬通過。 | 「風見鶏」に先導されて、真珠イカダの間の水路を進んで行く。 | ||
ホワイトホーク桟橋に係留。 | 日野さん(左)と小島オーナー(右) |