社会福祉援助技術論問題





問題111 社会福祉計画の手法について説明した次の記述のうち,正しいものの組み合わせを一つ選びなさい。

A PERT法とは,リラックスした状態で行われるグループ・ディスカッションであり,互いの意見を批判することなく,計画立案のために質より量を重視した提案を重ねていくことで,創造的なアイディアを生み出す議論の手法である。
B ニーズ推計とは,ニーズを一定の基準でカテゴリーに分類し,それぞれの出現率の推計に基づいて,サービスの種類や必要量を算出し,サービス資源の整備目標を設定する際に用いる手法である。
C KJ 法とは,専門的見解を持つ人々がそれぞれ独自に意見を出し合い,相互参照を行って,再び意見を出し合うという作業を数回行うことにより,一定の合意を得ようとする方法で,アンケート収斂法とも呼ばれている。
D 費用・効果分析とは,計画されたサービスを実施するために必要となる費用と,それによって達成された効果を相互に関連させて,効率性という視点から分析し,評価する方法である。

1 AB
2 AC
3 BC
4 BD
5 CD


問題112 ソーシャルワークに関する次の記述のうち,適切なものの組み合わせを一つ選びなさい。
A 機能主義ケースワークでは,人と環境との生態系に着目して援助が行われる。
B 課題中心ケースワークでは,援助者が独自の視点から目標となる課題を設定し援助が行われる。
C アグレッシブ・ケースワークでは,危機的状況にありながらも,自ら進んで援助を求めようとしないクライエントを対象とする。
D 行動主義ケースワークでは,クライエントの行動変容を目指して援助が行われる。

1 AB
2 AC
3 BC
4 BD
5 CD


問題113 福祉サービスの質の評価に関する次の記述のうち,適切なものの組み合わせを一つ選びなさない。
A ドナベディアン(Donabedian,A.)が提唱した,ヘルスケアにおけるサービスの質の評価は,構造,プロセス,アウトカムの3つの側面からなる。
B ヒヤリ・ハットの事例を収集し,分析した結果を活用することは,介護事故を未然に防ぐための取組として有効である。
C 平成16年に厚生労働省が示した「福祉サービス第三者評価基準ガイドライン」は,利用者によるサービス評価に重点を置いている。
D サービスの品質に関する国際標準規格であるIS0 9001 の認証取得については,福祉サービスは対象外とされている。

1 AB
2 AC
3 BC
4 BD
5 CD


問題114 次の記述のうち,適切なものに○,適切でないものに×をつけた場合,その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。

A 人間の福利(ウェルビーイング)と社会の変革を進め,人びとのエンパワメントと解放を促していくことが,国際ソーシャルワーカー連盟の「ソーシャルワークの定義」(2000年)で唱えられている。
B ストレングスアプローチでは,クライエント固有の強さ,クライエントの有する資源や問題解決能力に焦点を当てるアセスメントや介入を行う。
C ソーシャル・インクルージョンを目指すことが,日本社会福祉士会の倫理綱領(2005年)で,社会に対する倫理責任の一つとして唱えられている。
D 構成主義アプローチは,個人と社会を客観的実在ととらえ,援助介入の焦点を個人と社会の両方に当てる。

1 ○ ○ ○ ×
2 ○ × × ○
3 × ○ ○ ○
4 × ○ × ○
5 × × ○ ×


問題115 観察技法に関する次の記述のうち,適切なものに○,適切でないものに×をつけた場合,その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。
A 体型の観察・評価に当たっては,クライエントの心理的アンバランスやストレスの存在,食行動の異常などにも留意することが必要である。
B 家族関係を観察する上での留意点は,クライエントの家族に対する言葉遣い,態度,礼儀,表情,他者との距離や座る位置に注目することである。
C ソーシャルワーカーは,自ら相手とかかわる関与者でありながら,同時に相手とのかかわり合いを観察する観察者としての立場ももっているということに留意すべきである。
D クライエントの問題状況の観察では,予断を排除するため,ソーシャルワーカーの自己覚知は必要とされない。

1 ○ ○ ○ ×
2 ○ ○ × ×
3 ○ × × ○
4 × ○ ○ ×
5 × × ○ ○


問題116 ソーシャルワークの機能についての次の記述のうち,適切なものに○,適切でないものに×をつけた場合,その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。
A 社会福祉制度の目的,サービス内容,援助方法を的確に理解し,人々が自らの問題に立ち向かえるような援助を展開する。
B 人々が自らの意志を明確にして問題解決の能力を高めるように動機づける。
C 人々が自らを生活問題解決の主体であることを自覚し,ニーズに応じた社会資源を活用できるように,援助を展開する。
D 人々の安定した生活の実現に向けて彼らの無意識の領域にある葛藤を分析し,治療する。

1 ○ ○ ○ ×
2 ○ ○ × ×
3 ○ × ○ ○
4 × ○ × ×
5 × × ○ ○


問題117 高齢者の家族支援におけるソーシャルワークの視点に関する次の記述のうち,適切なものに○,適切でないものに×をつけた場合,その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。
A 高齢者とその家族を一つのシステムとしてとらえた場合,家族の相互作用そのものが問題の中心であるとみなし,システムの中で生じる諸変化に焦点を当てる。
B 支援に当たっては,関係機関の担当者からの客観的情報を優先する場合もある。
C 高齢者とその家族を取り巻く社会的環境との交互作用を把握するためのアセスメント資料としてジェノグラムを活用する。
D 高齢者の抱える様々な問題だけではなく,家族の問題に対する取組能力(coping)をアセスメントし,支援計画に反映させる。

1 ○ ○ ○ ×
2 ○ ○ × ○
3 ○ × ○ ×
4 × ○ × ○
5 × × ○ ○


問題118 シュワルツ(Schwartz,W.)によるグループワーカーの援助活動に関する次の記述のうち,適切なものの組み合わせを一つ選びなさい。
A 初回では,あらかじめグループワーカーが設定した援助目標についてメンバーの同意を得る。
B 援助過程では,主導的な活動により,メンバーに望ましい変化をもたらそうとする。
C 契約では,グループを作る目的・意義などについてメンバーが合意形成する作業を援助する。
D 作業過程では,グループのリスクを予測し,問題が起きたときはメンバーとともに立ち向かう。

1 AB
2 AC
3 AD
4 BD
5 CD


問題119 社会福祉調査法に関する次の記述のうち,適切でないものを一つ選びなさい。
1 有意抽出法による,少数の限定された標本を対象とした質的調査では,母集団の代表性について統計学的に推定することができない。
2 標本統計量と母集団統計量の間には常に標本誤差が存在し,標本調査においてはこれを避けることはできない。
3 変数a と変数b のクロス集計表について算出されたカイ2 乗値が,その棄却値を上回った場合は,帰無仮説が棄却され,両変数の関連性が認められる。
4 ダブルバーレル質問とは,一つの質問文に二つ以上の要素を含むものであり,−挙に多くの回答を得ることができるため,回答の信頼性を高める上で効果的な質問形式である。
5 事例調査における参与観察法とは,調査者自身が調査対象集団と活動や生活をともにしながら,内部から集団を観察し記述する調査法である。


問題120 保健・医療・福祉等の多職種による連携に関する次の記述のうち,適切なものに○,適切でないものに×をつけた場合,その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。
A 連携会議では,ソーシャルワーカーはスーパーバイザーとしての役割を果たし,アドバイスなどを行う。
B 協働作業では,ソーシャルワーカーは自ら立てた援助計画に対して,他の専門職との合意形成に努める。
C 複数の援助者が同一のクライエントに調整的にかかわることによって,複層的かつ多様な視点から理解,援助が可能となる。
D 多職種からなるチームの各構成員が援助目標に向けて,それぞれの役割を適切に分担することが求められる。

1 ○ ○ ○ ×
2 ○ × × ○
3 × ○ ○ ○
4 × ○ × ○
5 × × ○ ×


問題121 ソーシャルサポートに関する次の記述のうち,適切なものの組み合わせを一つ選びなさい。
A 隣人や友人の共感や励ましを得て利用者に自尊心を回復させるためには,情緒によるサポートを活用する。
B 利用者に,地域の人たちが相互に提供し合うサービスに関する情報を入手させるためには,評価によるサポートを活用する。
C 利用者のこれまでの行為や態度を認めて支持的な方向づけを行い,新たな生活設計を立てさせるためには,道具的手段によるサポートを活用する。
D 利用者が隣人や友人から地域の施設機関の評判を得て今抱えている問題に対する資源の選択を行うためには,情報によるサポートを活用する。

1 AB
2 AC
3 AD
4 BC
5 CD


問題122 ソーシャルワークのアプローチや実践モデルに関する次の記述のうち,適切なものに○,適切でないものに×をつけた場合,その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。
A エンパワメント・アプローチでは,クライエント自身が,問題解決に必要な知識やスキルを習得することを支援する。
B ナラティブ・アプローチは,クライエントが語るストーリーを重視して,新たな意味の世界を創り出すことを援助する。
C エコロジカル・アプローチは,生活システムにおける問題の原因について直線的な因果関係に焦点を当て分析し,問題解決を図る。
D ケアマネジメントでは,クライエントを支援するために,社会資源を有効に活用したサービスの調整を図る。

1 ○ ○ ○ ×
2 ○ ○ × ○
3 × ○ × ○
4 × × ○ ○
5 × × ○ ×


 (社会福祉援助技術 ・事例問題1)
次の事例を読んで,問題123から問題125までについて答えなさい。
〔事例〕
3人の子どもがいる老夫婦(夫75歳,妻70歳)は,長女Y子(40歳)の家族と同居している。家族は仲が良く,Y子の夫は,まじめで働き者である。Y子夫婦の二人の息子は学校での友人との関係もうまくいっていた。末っ子N男は10歳でおばあちゃん子である。ある日,Y子がN男の学校の担任に相談した。「N男がこのところおばあちゃんの世話をよくするようになって喜んでいました。数日前,風邪をひいたことがきっかけで朝起きることができず,ぐずぐずしていて,遅刻するのは嫌だといい,結局学校に行かなくなり,もう4日になります。おばあちゃんは,4年前に心筋梗塞で倒れて入院したことがあります。最近,また体調を崩して,再発の危険性があり,入院について話合いをしましたが,今のところ落ち着いているので心配ないです…。おじいちゃんの介護のこともあり,上の子は入試ですし,家族みんなが混乱していまして,N男とも話合いが十分できないままです。こんな状態のときにN男がちゃんとしてくれればいいのですが…,N男を少し見守ってみようかとも夫と話しているのですが…。」スクールソーシャルワーカーは担任から依頼を受け,相談内容を把握した(問題123)。次に,面接計画を立てた。@このような状況にいる母親の大変さを理解し,彼女の気持ちを整理する。AN男から見た現在の家族の状況について尋ね,N男を理解する。B母親の心配している気持ちをN男に伝え,一緒に面接をする(問題124)。
1か月後,祖父は介護サービスを受けるようになり,祖母は小康状態で,家族が落ち着きを取り戻し,N男は兄とともに登校している。母子面接では,N男が6歳のときに祖母の倒れた場に居合わせており,何もできなかったことへの無力感がトラウマになっているようで,N男は学校に行っている間に祖母がまた倒れるのではないかと心配していたことなどが明らかになった(問題125)。

問題123 この段階で危機介入による家族状況の把握に関する次の記述のうち,適切でないものを一つ選びなさい。
1 危機状況にあるのは家族全員である。
2 Y子は,N男と十分話していないので,N男のことが理解できないでストレス状況にある。
3 まじめな父親の態度がN男の不登校に影響している。
4 祖母の入院についての話合いがN 男に祖母の世話をする役割を奪われる不安を与えている。
5 N男の不登校には,祖母の病気など家族の不安が影響している。


問題124 スクールソーシャルワーカーがこの状況下で行うY子との面接に関する次の記述のうち,適切なものに○,適切でないものに×をつけた場合,その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。

A 担当医からの祖母の病状についての説明に関し,Y子がN男に伝えた内容を尋ねる。
B 祖父の介護に当たってサービスの活用計画について尋ねる。
C N男の現在の状況に対するY子の分析と判断について尋ねる。
D 祖母が4年前に倒れたときの家族の状況とそのときのN男の状況を詳しく尋ねる。

1 ○ ○ ○ ×
2 ○ ○ × ○
3 ○ × ○ ×
4 × ○ × ×
5 × × ○ ○


問題125 この場面における終結の決定条件に関する次の記述のうち,適切なものの組み合わせを一つ選びなさい。
A N男のトラウマは,再発の可能性があり,他機関につなぐことも視野に入れて終結を決定する。
B Y子から得た家族の現状に関する情報で,終結を決定する。
C Y子やN男とともにこれまでの経過を振り返り,その結果に対する彼らの合意を得て,終結を決定する。
D 祖母の病状は今後変化すると考えられるので,終結はできないと判断する。

1 AB
2 AC
3 AD
4 BC
5 BD


(社会福祉援助技術 ・事例問題2)
障害児がいる家族への課題中心アプローチによる支援に関する次の事例を読んで,問題126から問題128までについて答えなさい。
〔事 例〕
T子(6歳・女児)は,高熱を出し,痙學発作を起こした後,意識障害が生じた。入院中のT 子について,担当医師から病院のソーシャルワーカーに依頼があった。T子は,結婚歴15年の父親(40歳),母親Mさん(38歳)と3人暮らしである。Mさんが病院の相談室に思い詰めたようにうつむきかげんで入室し,しばらく沈黙があり,「これまでずっと泣くのをこらえてきました」と,現在と将来の不安や看病疲れ,娘の元気なときの様子を泣きながら話し始めた。さらに続けてT子の今回の病気を機に家族問題が発生したこと,しばしばT子のことをめぐって夫と口論になっていることを話した。加えて夫の面会が減っているのは娘の状態を見るに忍びないのだと思うと夫へのいたわりを示しながらも,Mさんは家族問題をなんとか解決したいと言った。数回の面接を通して,Mさんは母親として,妻として努力している気持ちを整理でき,現状での取り組むべき具体的課題が明らかになった。その中で最も優先的に取り組む課題として「Mさんの看病疲れの軽減」を取り上げ,ソーシャルワーカーはMさんとともにこれを確認した(問題126)。
それに対する計画は@Mさんと週1回のサポート面接実施の取り決め,A病棟でのT子に対する看護体制の調整,BMさんと病棟ボランティア活用についての合意形成である(問題127)。
その後も医療費の助成制度や社会資源の活用,また,T子とのかかわりや今後の療養先の計画などについて,Mさんや夫に個別面接を行い,彼らとともに取り組む課題を決定した。夫は,娘の病状を心配し,娘の顔を見るのがつらいことなどを話していたが,次第に心の整理ができたことでT子の世話をし始めた。在宅療養の準備のために医療担当スタッフが家族指導を行い,地域の関係機関との連携を図った。援助開始から2 か月後,T子の病気は徐々に回復に向かい,それとともにMさん夫婦も精神的に安定してきた。近いうちに自
宅退院となることが決まった(問題128)。

問題126 Mさんの対処能力に関する次の記述のうち,適切なものに○,適切でないものに×をつけた場合,その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。

A T子の看病を行うことで母親としての役割を遂行している。
B 自らの感情を,場をわきまえて表出することができる。
C 身体に対するストレスを意識し,自ら対処を試みようとしている。
D 妻としての役割を果たせていない自分を認めている。

1 ○ ○ ○ ×
2 ○ ○ × ○
3 ○ × ○ ○
4 × ○ × ×
5 × × ○ ×


問題127 次の記述のうち,Mさんに対する援助として,課題中心アプローチによるものに○,そうでないものに×をつけた場合,その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。
A Mさんとともに具体的に取り組む課題を設定し,その優先順位を明らかにした。
B Mさんと週1度のサポート面接の実施を取り決めた。
C T子のために病院として病棟保育士の導入を図った。
D T子の見守りのために病棟ボランティアの活用についてMさんが合意した。

1 ○ ○ ○ ×
2 ○ ○ × ○
3 ○ × ○ ×
4 × ○ × ○
5 × × ○ ×


問題128 この家族への課題中心アプローチの効果に関する次の記述のうち,適切なものに○,適切でないものに×をつけた場合,その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。
A Mさんは自分の力で取り組むことができた。
B 両親に個別支援を行い精神的安定を図ることができた。
C 地域の関係機関との連携や調整を行い在宅療養体制が整った。
D 夫婦関係に介入した結果,離婚を回避させることができた。

1 ○ ○ ○ ×
2 ○ × ○ ○
3 ○ × × ○
4 × ○ ○ ○
5 × ○ × ×


(社会福祉援助技術 ・事例問題3)
次の事例を読んで問題129から問題131までについて答えなさい。
〔事例〕
ある日,知的障害者更生施設に勤務するX生活支援員(以下,「ワーカー」という。)は,中程度の知的障害をもつK さん(35歳)とその母親(70歳)の訪問を受け,面接を行った。Kさんは,約20年前に父親を亡くし,その後は母親とともに暮らしてきた。Kさんは養護学校高等部を卒業してからは,家から徒歩10分の作業所に通ってパン作りをしてきた。支援費制度が始まってからは,週2回ヘルパーに来てもらい部屋の掃除や外出時の同行をしてもらっている。母親のほかにKさんを引き取れるような親族はいない。母親は高齢になり持病もあるため,Kさんの身の回りの世話をすることが次第に困難になってきているので,Kさんの将来を不安に思い,施設への入所を考えるようになった(問題129)。
Kさんは入所当初,新しい環境で,初めての集団生活に,表情も硬く,落ち着かない様子であった。また,対人関係の作り方がうまくなく,仲間と打ち解けることがなかなかできなかった。ワーカーはKさんの希望を聞き,施設で行っている5つの作業班のうち,パン作りの作業班にKさんを配属した。当初,Kさんはほかの利用者をライバル視し,協力して作業を行うことができなかったり,嫌がらせをしてイライラをぶつけたりしていた。しかし,週に一度は母親が面会に来ることや,同じ年ごろのRさんと親しくなったことにより,3か月が過ぎたころから笑顔が見られるようになった。ワーカーは,Kさんの2年先までの生活を見据えた新しい個別支援計画の作成を担当することになり,Kさんに「将来はどのような生活を送りたいですか」と聞いた(問題130)。
Kさんのパン作りの技術は高いので,対人関係上のトラブルさえなければ,その技術を生かして将来的にはパン工房などへの就職も可能かもしれない。しかし現在のK さんは,将来の就労について思いをめぐらせることは難しいようである。ワーカーはKさんに地元にあるパンエ房への訪問やグループホームヘの体験入居を勧めている(問題131)。


問題129 この面接からのアセスメントに関する次の記述のうち,適切なものに○,適切でないものに×をつけた場合,その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。
A Kさんは,社会資源を利用していない。
B 親族からのソーシャルサポートは,あまり期待できない。
C 長年Kさんの世話をしてきた母親は,一定の支援能力を有する。
D Kさんの将来についての母親の不安が強い。

1 ○ ○ ○ ×
2 ○ × × ×
3 × ○ ○ ○
4 × ○ × ○
5 × × ○ ○


問題130 この場面におけるKさんへの支援に関する次の記述のうち,適切なものの組み合わせを一つ選びなさい。

A 施設の中で友人ができたので,友人関係作りを支援する。
B この施設で仕事のやり方を学び,その後は施設を出て,住み慣れた地域で生活できるようにする。
C 家族からの自立支援として,ここでの集団生活に早く適応できるように,家族に面会を控えてもらう。
D 施設における5つの作業班それぞれの技術を習得させることを目標にする。

1 AB
2 AC
3 BC
4 BD
5 CD


問題131 Kさんに対して今後さらに展開させるべき援助活動に関する次の記述のうち,適切なものの組み合わせを一つ選びなさい。

A パン作りのチームで自らの役割を果たし,協調することを働き掛ける。
B Kさんの対人関係のトラブルはKさんの母親の不安が影響しているので,母親との関係を調整する。
C 利用者との交流を促し,Kさんにパン作りの技術を教えるリーダーの役割を与える。
D イライラをぶつけたりしないように,感情のコントロールの方法を学ばせる。

1 AB
2 AC
3 AD
4 BC
5 CD


(社会福祉援助技術 ・事例問題4)
次の事例を読んで,問題132から問題134までについて答えなさい。
〔事例〕
特別養護老人ホーム(以下,「ホーム」という。)で仕事をしているS生活相談員(30歳,女性,社会福祉士,以下,「S相談員」という。)の母(70歳)は,夫を早く亡くしたにもかかわらず,日ごろから「子どもに迷惑をかけたくないので,できるうちは自分一人で生活する。できなくなれば福祉のサービスを選んで活用する」と言って,子どもに頼らず一人暮らしを続けている。S相談員は,常々このような母を誇りに思い,自分もあのように年を取りたいと考えていた。その一方で,そんな母が時折,寂しそうにしているのを見ると「本当に一人で暮らさせていいのかなあ」と心配していた。ある日,ホームでは,車いすで生活をしているRさん(70歳,女性)が他の利用者と折り合いが悪いということが,会議で問題になり,S相談員が面接を行うことになった。初回面接でRさんは,時折訪ねてくる子どもたちが勝手に自分をホームに入れたと怒っていた。そして,「子どもは何があっても親の面倒を見るべきなのに。あんだだって,まさか親をホームに入れるつもりじゃないだろうね。あんた親の気持ちを分かるかい」とRさんがS相談員に向かって言い続けたので,面接の間中,S相談員はまるで母から責められているかのように感じていた(問題132)。
しかし,気を取り直してS相談員は,何故,Rさんがそのような考えに至ったのかを聞き始めることにした。するとRさんは,「職人だった夫は当てにならず,今まで私一人で子どもたちを育ててきたようなもの。それなのにこんな身体になったとたん,子どもたちは私をないがしろにしてホームに入れたのよ。…しかもホームの生活は合わないし楽しくない。なぜ他の人たちが平気で生活しているのかわからない」と涙ながらに話をした。S相談員は,自分の母の生き方を思い浮かべながら,どうしてRさんがそんなにまで子どもに頼るのかが理解できなかった。しかし,その日は,ひとまずRさんの今の気持ちを確認し面接を終了した。S相談員は,Rさんの支援を考えるに当たって,アセスメントを早急にしなければならないと考え始めていた(問題133)。
同時にS相談員は,初回面接でなかなかRさんの考えに共感的理解ができなかった自分,特に専門職として振る舞うことのできなかった自分を責めていた(問題134)。


問題132 この場面において,S相談員自身の対処に関する次の記述のうち,適切なものに○,適切でないものに×をつけた場合,その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。

A Rさんの気持ちに触れずに,当初の問題状況を聞くように努める。
B Rさんの気持ちとS相談員の母への気持ちを混同しないように努める。
C 専門職としてRさんに共感的理解をすることに努める。
D Rさんの言動は,子どもとの関係から出たことと,とらえることに努める。

1 ○ ○ ○ ×
2 ○ ○ × ×
3 ○ × ○ ×
4 × ○ ○ ○
5 × × × ○


問題133 この場面でS相談員が集める情報に関する次の記述のうち,適切なものに○,適切でないものに×をつけた場合,その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。
A Rさんの入所に至るまでの経過記録に目を通す。
B Rさんと他の入所者との関係について調べ,具体的課題を確認する。
C 「ないがしろにされた」ことへの対処の仕方について,Rさんが気づくための質問を行う。
D Rさんの気持ちに沿い,Rさんの施設での生活状況について尋ねる。

1 ○ ○ ○ ×
2 ○ ○ × ○
3 ○ × ○ ×
4 × ○ × ○
5 × × ○ ○


問題134 この場面で,S相談員が直後に採るべき対処行動に関する次の記述のうち,適切なものの組み合わせを一つ選びなさい。

A 面接方法についてコンサルタントから指導を受ける。
B 職場のスーパーバイザーにこのような自分の価値観について話す。
C 専門家による講演会に参加し,専門職としての自己研讃に励む。
D 職場内でスーパーバイザーを交えながら同僚たちの意見を聞く。

1 AB
2 AC
3 AD
4 BC
5 BD


(社会福祉援助技術 ・事例問題5)
障害児の親の会に関する次の事例を読んで,問題135から問題137までについて答えなさい。
〔事 例〕
Y市の子育て相談センターを訪問したEさんの息子は,小学1年で知的障害児である。EさんはEさんの母親と息子の3 人暮らしで,夫とは離婚している(夫に親権はない)。Eさんは,育児に自信がもてないでいる。相談を受けたソーシャルワーカー(以下,「ワーカー」という。)は,当センターで開催している障害児の親の会への出席を勧めた(問題135)。
会合にはEさんは初めての参加であるが,Fさん,Gさん,Hさんは以前からの参加である。ワーカーは助言者として加わった。以下は一通りの自己紹介が終わったときの会話である。

E:子どもは,特別支援学級でお世話になっています。担任の先生は,他の障害をもったお子さんも複数もたれていて,とても大変そうです。うちの子の個別指導なんて無理みたいで相談するのも気が引けます。支援学級の親御さんとは少しは話しますが,挨拶程度で込み入った話はしません。ここでは,障害をもった子どもの教育法やしつけ方などは皆さん教えていただけないのでしょか?
F:Eさんは,ずいぶん前向きなのね。私なんか自分の気持ちの整理がつかなくて・・・。
G:Fさん,前回も,私たちの気持ちを話し合いましたよね。
H:私は,他の親の会に参加しているのですが,そこではこのような率直な話合いはしませんよ(問題136)。
(中略)
H:次回のことなのですが,みんなの体験をもっと話し合いませんか。
E:あの…,母親として,育児にも自信がもてなくなってきました…皆さんはいかがですか。
G:Eさんのお気持ちはよく分かりますよ。ここでは,お互いの気持ちを分かり合えればいいですね(問題137)。
次回の会合で話し合う内容についてお互いに確認し,会合を終了した。


問題135 次の記述のうち,この時点におけるワーカーの確認すべき事柄として,適切なものに○,適切でないものに×をつけた場合,その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。

A 育児に対するEさんの母親の協力について確認する。
B Eさんが子どもの障害をどの程度受容しているかを確認する。
C Eさんの前夫に連絡を取り,育児に関する意見を確認する。
D 育児における具体的問題点について確認する。

1 ○ ○ ○ ×
2 ○ ○ × ○
3 × ○ × ○
4 × × ○ ○
5 × × ○ ×


問題136 次の記述のうち,この場面におけるワーカーの対応として,適切なものに○,適切でないものに×をつけた場合,その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。

A Eさんが障害をもつ子の教育法やしつけの仕方について関心を向けていることについてもう少し話をしてもらう。
B Fさんが自分の気持ちを吐露しやすい雰囲気づくりを行う。
C Gさんには前回の話合いの内容について説明するように勧める。
D Hさんに他の親の会の内容について詳しく話をするように促す。

1 ○ ○ ○ ×
2 ○ ○ × ×
3 ○ × ○ ○
4 × ○ ○ ×
5 × × × ○


問題137 この時点でのワーカーの助言に関する次の記述のうち,適切なものに○,適切でないものに×をつけた場合,その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。

A Eさんに話すことができた気持ちについて次回も深めるように促す。
B GさんがEさんの気持ちに理解を示したことを評価する。
C 参加者全員が完全に気持ちを分かり合えたことを賞賛する。
D 一人一人の発言の内容については口外しないようにと助言する。

1 ○ ○ ○ ×
2 ○ ○ × ○
3 ○ × × ○
4 × ○ ○ ×
5 × × ○ ○


(社会福祉援助技術 ・事例問題6)
次の事例を読んで問題138から問題140までについて答えなさい。
〔事例〕
Tさん(58 歳,男性,無職)は,妻と息子との3人暮らしである。半年前に脳梗塞を患い,S総合病院で3か月間の治療後,左半身麻痺の後遺症を残し,自宅での療養生活を始めた。ADL上は一定の回復が図られ,退院時には要介護度1と判定された。しかし,自宅に戻ってからの生活では,Tさん自身のリハビリテーションヘの意欲は見られず,月一度の定期的な通院も理由をつけてしなくなった。そのことを心配した妻はS総合病院のAソーシャルワーカーに相談し,その結果,Tさんに日中の生活の幅を広げることが提案され,Tさんは,S総合病院のAソーシャルワーカーが事前に連絡をしておいたデイケアセンターを訪ねることにした。そこで,デイケアセンターのBソーシャルワーカー(以下,「Bワーカー」という。)が,Tさんに関するインテーク面接を行った(問題138)。
Tさん夫妻がデイケアセンターの見学を終えた後に,Tさんと個別に相談の場を設け,直接Tさんからデイケアを利用するに当たっての気持ちを尋ねた。すると,Tさんは開口一番,「私はもうどうなってもいいと思っている。それなのに,妻は何かと言っては私を外に出そうとする。私はそっとしておいてほしいのに…。」とつぶやくような声で話した(問題139)。
さらにBワーカーは,Tさん自身がどのような生活をし,また,今後どのような暮らしを望んでいるのかについて尋ねた。すると,Tさんは「そんなことはもうどうでもいい。私のことなんか放っておいてほしい。どうせ,自分が邪魔者になっているのは分かっているのだから。」と興奮した声で話した(問題140)。


問題138 この場面において,Bワーカーが留意しなければならない点に関する次の記述のうち,適切なものに○,適切でないものに×をつけた場合,その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。
A Tさんと妻のデイケアセンターヘの訪問目的を確認する。
B デイケアの機能について説明する。
C Tさんの現在の状況やTさんの気持ちを理解することに努める。
D 今後の居宅介護支援計画の合意を得るようにする。

1 ○ ○ ○ ×
2 ○ × × ○
3 × ○ ○ ×
4 × ○ × ○
5 × × ○ ×


問題139 この場面におけるBワーカーの応答について,次の記述のうち,適切なものに○,適切でないものに×をつけた場合,その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。

A 「家族の方が皆さん心配していますから,期待に添えるようがんばりましょう。」と励ます。
B 「病院に通院しなくなった原因を聴かせてください。」と尋ねる。
C 「今の気持ちをもう少し詳しくお話ししていただけますか。」と言う。
D  Tさんの孤独な気持ちを傾聴し寄り添う。

1 ○ ○ × ○
2 ○ × ○ ×
3 × ○ ○ ×
4 × ○ × ○
5 × × ○ ○


問題140 この場面でのBワーカーの対応に関する次の記述のうち,適切なものに○,適切でないものに×をつけた場合,その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。

A このようなTさんの態度に即座に対応して,Tさんをなだめる。
B このようなTさんの態度は,Bワーカーの質問がTさんを刺激したからだと判断し,対応する。
C このようなTさんの態度を受容し,Tさんの気持ちを理解するよう努める。
D 話題を変えて,Tさんにデイケアの感想を尋ねる。

1 ○ ○ × ○
2 ○ × ○ ×
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