精神医学解答
問題1 次の記述のうち,誤っているものを一つ選びなさい。
1 心身症では,器質的ないし機能的な身体症状が認められる。
2 神経症の病理は,人間の正常な心理の延長線上のものとして了解可能である。
3 うつ病では,身体症状の愁訴がみられることが多い。
4 統合失調症の急性期には,意識障害がみられる。
5 初期から脱抑制と性格変化を伴う認知症では,ピック病をまず疑う。
<解答:4>
統合失調症の急性期(陽性症状)としては以下の症状が現れる。
・幻覚(UFO・霊が見えるなど)
・幻聴(周りに誰もいないのに声が聞こえたりする、時には命令されたりする)
・妄想(被害妄想、誇大妄想など)
・まとまりがない(会話、行動など。落ち着きがない)
・感情の起伏が激しくなる(些細なことでイライラ、興奮しやすくなる)
・自分が病気だという認識を持たない など
尚、心身症、神経症、うつ病、統合失調症、認知症については「精神疾患」のページを参照。
問題2 次の記述のうち,正しいものに○,誤っているものに×をつけた場合,その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。
A アルツハイマー型認知症への移行段階として,軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment;MCI)が注目されている。
B 脳血管性認知症では,症状はしばしば段階的に進行する。
C レビー小体型痴呆の脳画像所見では,症状のわりに萎縮が強くない。
D アルツハイマー型認知症は,塩酸ドネペジルの投与により,その進行を阻止できる。
1 ○ ○ ○ ×
2 ○ ○ × ○
3 ○ × ○ ○
4 × ○ ○ ○
5 × ○ ○ ×
<解答:1>
A 正しい
⇒解答作成中!!
B 正しい
「精神疾患」のページを参照。
C 正しい
⇒解答作成中!!
D 誤り
⇒解答作成中!!
問題3 次の記述のうち,正しいものの組み合わせを一つ選びなさい。
A アルコール依存症のリハビリテーションプログラムとしては,回想法がよく行われる。
B 病的酩酊とは,飲酒中にもうろう状態となり,衝動性興奮を示すもので,しばしば少量の飲酒でも生じる。
C アルコール離脱症候群には,ベンゾジアゼピン系薬剤が有効である。
D アルコール幻覚症では,意識障害を伴わずに活発な幻視が出現する。
1 AB
2 AC
3 BC
4 BD
5 CD
<解答:3>
A 誤り
⇒解答作成中!!
B 正しい
⇒解答作成中!!
C 正しい
⇒解答作成中!!
D 誤り
⇒解答作成中!!
問題4 次の記述のうち,正しいものの組み合わせを一つ選びなさい。
A 被害妄想と関係妄想は,統合失調症の診断において特異性の高い症状である。
B 統合失調症の社会生活機能の障害は,認知機能障害と関連が深い。
C 小児自閉症は広汎性発達障害に分類される。
D 統合失調症は緩徐に発症したものほど,一般に予後がよい。
1 AB
2 AC
3 BC
4 BD
5 CD
<解答:3>
A 誤り
被害妄想と関係妄想は,統合失調症の診断のみならず、うつ病や認知症などの診断においても用いられる。そのため、特異性の高い症状とはいえない。
B 正しい
⇒解答作成中!!
C 正しい
記述の通りである。
D 誤り
緩徐に発症したものを破瓜型(解体型)といい、統合失調症の中で1番多いタイプである。15〜25才の若い年令のときに発病することが多い。症状がひどくなると人格崩壊に繋がり、目的なく行動し何をするか予測がつかない。思考障害が目立ち、感情が欠落し、何に対しても意欲がなくなるのも特徴的である。
問題5 次の事例を読んで,この患者への対応あるいは治療として正しいものの組み合わせを一つ選びなさい。
〔事 例〕
56 歳の男性。転勤して1か月後から,気分が沈みがちで疲れやすくなった。寝つきが悪く,朝も早く眼が覚める。食欲が低下したため,内科を受診したが,異常なしと言われた。仕事がはかどらず,家族には,職場に迷惑をかけるので退職したいと言い出した。
A 家族から患者をはげますように促す。
B 職場がストレスとなっているため,なるべく早く退職を勧める。
C 自殺念慮の有無については本人に尋ねる。
D 治療薬として選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が考えられる。
1 AB
2 AC
3 BC
4 BD
5 CD
<解答:5>
A 誤り
うつ病の患者は責任感が強いので、叱咤激励してはならない。具体的には「頑張れ」や「甘えるな」という言葉が患者を追いつめるので注意が必要である。励ますと余計責任を感じてしまい、それがストレスとなって病状が悪化し、最悪の場合は自殺してしまうこともある。逆に「心配するな」「気楽に行こう」と声をかけるのがよい。
B 誤り
重要な決断は先延ばしにする。今回のように退職するか如何かと言った重要な決断はなるべく後回しにして、思考が低下した状態にある患者に無理をさせてストレスを与えたり、誤った判断をさせない事が大切である。
C 正しい
自殺念慮の有無については本人に尋ねることは案外タブーのように思われがちであるが、うつ病の場合、周囲に自殺念慮をほのめかすのは重症とされており、差し迫った自殺の危険性があるため速やかに医師の診察を受けさせる必要がある。
D 正しい
セロトニン系に選択的に作用する薬剤SSRIや、セロトニンとノルアドレナリンに選択的に作用する薬剤SNRI等は、従来より用いられてきた三環系あるいは四環系抗うつ薬よりも副作用が比較的少ないため、患者の負担は軽減される。
問題6 次の事例で認める精神症状として正しいものの組み合わせを一つ選びなさい。
〔事 例〕
22 歳の女子学生が,電車に乗っていた時にたびたび,動悸,胸痛,めまい,息苦しさと共に,そのまま死んでしまうのではないかという不安感に襲われた。いずれも数分でおさまった。その後に,一人で電車に乗るのを避けるようになった。
A 妄想気分
B パニック発作
C 転換症状
D 広場恐怖
1 AB
2 AC
3 BC
4 BD
5 CD
<解答:4>
広場恐怖は、もし何か(不安発作)が起きたら…」と恐れる恐怖症。従って広場に限らず、旅行や家の外に出ること・群集・不安発作時に避難できない場所などが、恐怖の対象になる。パニック発作は、パニック障害に限った症状ではなく、他の不安障害においても、起こりうる症状である。さらに不安障害に該当しない方でも、恐ろしい場面や非常に緊張する場面に直面した時には、パニック発作が起こる可能性がある。
転換症状については、「精神疾患」のページを参照。
問題7 次の症状とその検査の組み合わせのうち,適切でないものを一つ選びなさい。
1 発熱,頭痛の後出現したもうろう状態―髄液検査
2 失語症―人格(パーソナリティ)検査
3 小児のことばの発達の遅れ―知能検査
4 高齢者の物盗られ妄想―長谷川式簡易知能評価スケール
5 手足がけいれんする発作―脳波検査
<解答:2>
失語症の原因としては、脳やストレスなど話す器官に異常が無い状態であり、脳の異常によって引き起こされる言語障害の一種である。認知症等と勘違いされる事が多いが、人格や判断能力は正常なままである。そのため、YGやバウムテスト等の心理的な人格(パーソナリティ)検査は適当とはいえない。
問題8 次の記述のうち,誤っているものを一つ選びなさい。
1 非指示的カウンセリングでは,無条件の肯定的関心や共感的な理解が重視される。
2 うつ病の認知療法では,状況の受け止め方を合理的にすることで気分の変化を図る。
3 森田療法では,安静を確保するとともに症状をあるがままに受け入れる時期を経て,徐々にやるべきことをやるよう勧める。
4 行動療法では,反復練習・訓練による再学習が重視される。
5 SST(社会生活技能訓練)では,生計を立てる職業的技能を訓練する。
<解答:5>
SST(社会生活技能訓練) は認知行動療法の一つである。コミュニケーションを要する日常の出来事に対して、ロールプレイを用いて練習する。
基本的な流れは
@課題設定
A実践(ロールプレイ)
B正のフィードバック(よかったところをみんなで見つける)
Cさらに前進するための助言
D必要があれば他の人の実践(ロールプレイ)
E再び実践
F正のフィードバック
G(できれば)生活場面への取り入れ(宿題・課題の設定) である。
この方法の特徴としては、批難(批判)しない、相手の意見を受け入れる、自分の意見を適切に表現するなどの特徴がある。
問題9 次の事例を読んで,「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に基づく入院形態として最も適切なものを一つ選びなさい。
〔事 例〕
65 歳の男性。最近,駅付近の地下通路で寝泊まりしていた。3 日前から夜昼となく意味不明な怒鳴り声をあげ,奇異なしぐさが認められ,身体的にも衰弱が著しく,独歩困難となった。他人に危害を加えるおそれはない。疎通性不良で会話が成立しないが,所持品から精神科の古い診察券が発見され,身元が判明し,妻がいることも分かったが連絡が取れない。
1 緊急措置入院
2 措置入院
3 医療保護入院
4 応急入院
5 任意入院
<解答:4>
この事例においてポイントとなるのは次の3点である。
@自傷他害の恐れはない⇒緊急措置・措置入院にはならない。
A疎通性不良⇒任意入院は不可能。
B妻がいるが、連絡は取れない⇒医療保護入院は不可能。
よって、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第33条の4項により応急入院となる。
ただちに入院させなければ、その者の精神障害の医療及び保護を図る上で著しく支障がある状態であるが、上記@〜Bにより任意入院や医療保護入院、措置入院を行うことができないため、応急入院指定病院であれば、精神保健指定医の診察を経て、72時間まで、本人の同意がなくても入院させることができる。
現実には、このケースのように保護者の存在が不明の患者や、生活史(記憶)を想起できない患者で問題となる。生活史を想起できない患者では、応急入院の手続きをとった場合でも、その後の医療保護入院とする場合の保護者としての市町村長同意、医療費の支払いと連帯保証人、生活史を想起できないまま病状が固定し退院可能となった場合の受け入れ先などが問題となる。身元不明の場合の調査継続も必要となる。実際の入院事務に際して、氏名、年齢、生年月日など、暫定的に個人を特定するための仮の情報を作成せざるを得ないことさえある。
問題10 次の記述のうち,正しいものの組み合わせを一つ選びなさい。
A 抗精神病薬は,統合失調症の慢性期の陰性症状よりも,急性期の陽性症状に治療効果を発揮しやすい。
B 統合失調症では,寛解した際には抗精神病薬の服用を終了するのがよい。
C 三環系抗うつ薬では,口渇,尿閉などの抗コリン性副作用がしばしば認められる。
D 電気けいれん療法では,十分な筋けいれんを起こさせることが治療効果と関連している。
1 AB
2 AC
3 BC
4 BD
5 CD
<解答:2>
A 正しい
陽性症状には抗精神病薬が治療効果を発揮しやすく、陰性症状には抗精神病薬の効果が低い。薬物療法画治療の中心となるが、時に応じて精神療法が有効となる。
B 誤り
寛解したからといって、服薬を終了していいことは何もありません。統合失調症の方が服薬をやめることができる可能性としては以下の2つの場合があると考えられる。
@60歳以降となり、数年にわたり少量の薬で病状がかなり落ち着いている場合。晩期寛解という言葉もあるが、統合失調症の症状が加齢現象で枯れてきた場合。
A統合失調症の診断がされているが、発病時のエピソード、その後の経過などから、統合失調症の可能性が低いか、または誤っていると考えられる場合。
以上の2つの場合です(合併症などの問題で薬を中止する場合は除く)。
どちらの場合も医者の判断が必要である。それでなければ薬を継続服用すべきである。
C 正しい
従来より用いられてきた三環系あるいは四環系抗うつ薬は、セロトニン系以外にノルアドレナリン系、ドーパミン系にも作用したり、抗コリン作用を有しているため副作用が強かった。それに対して近年開発された、セロトニン系に選択的に作用する薬剤SSRIや、セロトニンとノルアドレナリンに選択的に作用する薬剤SNRI等は副作用が比較的少ない。各薬剤に長所・短所があり、症状や年齢、性別、身体合併症などを考慮して選択する。
D 誤り
頭皮の上から電流を通電し、人工的にけいれんを起こす事で治療を行う。それに伴って起こる全身の筋のけいれんは治療のために必要でないばかりか、血圧を上昇させたり骨折の危険を起こしたりと、有害である。そのため、筋弛緩剤で筋を弛緩させて、麻酔科医が呼吸管理(人工呼吸)を行いつつ、頭部に通電するという「無けいれん電気けいれん療法」が開発されて日本でも主流になりつつあるが、現状では、精神科単科の病院では麻酔科医の確保は不可能に近い。
薬物療法が無効な場合や自殺の危険が切迫している場合などに行う。
あなたは
人目の訪問者です。