伴性遺伝と血友病
○伴性遺伝とは
性染色体の遺伝子の遺伝様式は、常染色d体上の遺伝子の遺伝様式と異なり、何時も性別と関係した特別な遺伝をします。性染色体は、男に
X と Y
各1本、女は X 2本あります。伴性遺伝の形式は、次ぎの4型に分けられます。
1) 絶対的 X 連関遺伝。
この形が一般的なのです。X 染色体の対の相同部に異常遺伝子がある場合、男ではこの部の対合が出来ず、絶対的 X
連関と名づけられます。伴性遺伝子の大多数は X
の非相同部にあり、ふつう伴性遺伝子といえばこの部類を指します。劣性と優勢がありますが、殆どが劣性型です。
女では、X
が2本なのですが、優勢では、異常遺伝子のホモ(2本共異常)と、ヘテロ(片方が異常)のどちらでも異常を現し、劣性では異常遺伝子がホモでは異常を現す
が、ヘテロでは保因者と呼ばれて正常です。男では、X
が1本で対立遺伝子が無いので、異常遺伝子があれば、異常が現われます。保因者と呼ばれることはないのです(伴性遺伝に関してのみ)。
劣性型は、赤緑色盲、血友病、進行性筋ジストロフィー(幼年型)、レッシュ-ナイハン症候群などで、優勢型は希で、エナメル質石灰化不全の一例のみで
す。
2) 限(男)性遺伝
異常遺伝子はY 染色体の対の非相同部にあり、父から男児に伝わります。水掻き足指の一家系、耳殻多毛症、重症ヤマアラシ状魚鱗癬の報告があります。
3) 限(女)性遺伝
母から女児に伝わります。付着 X 染色体上に異常遺伝子があるものと推定されています。Cunier の色盲家系と増田脾腫の一家系があります。
4) 不完全伴性遺伝
異常遺伝子はXY両染色体の、相同部にあり、男女の頻度は集団全体では等しいが、家族ごとにみるといずれかの性に偏ります。しかし、この疾患には異論も
多い。
<常染色体性優勢遺伝>
常染色体にある優勢異常染色体は、対立(相同)遺伝子も常染色体ですから、常遺伝子に優勢異常遺伝子があれば、必ず異常が現われて、ホモ(二個共に異
常)、ヘテロ(一個が異常)に関係なく起こり、正常な両親からは、絶対この疾患は起こらないのです。男親からも女親からも子へ伝えられる確立は同じです。
短指(趾)症brachydactyly 、遺伝性メトヘモグロビンM 症、ジルベール病などがあります。
<常染色体性劣性遺伝>
常染色体にある劣性異常染色体によって起こされますが、劣性異常遺伝子は二つ揃う(ホモ)と異常が現われますが、一つの時(ヘテロ)は保因者と呼ばれて
異常は現われないのです。ですから、両親ともにヘテロの保印者から起こる極く希な疾患なのです。遺伝学的考察から、近親結婚を繰り返すと、この劣性遺伝子
が揃い(ホモ)疾患が現われる可能性が高くなるのです。しかし、稀な例ですが、非常に知性の高い家系が近親結婚で現われた事実も存在するのです。
代表的な疾患は、全身白子、先天性魚鱗癬、テイ.
サックス病、ウイルソン病、糖原病T型、アルカプトン尿症、ガラクトース血症、フェニルケトン尿症、ファンコニ−貧血、嚢胞性線維症などです。
○血友病とは?
日本ではほぼ4〜5千人の人が血友病(血友病Aもしくは血友病B)に罹患している。血友病にかかっている人は、通常の血液凝固に必要な因子
の一つが欠けているか、因子の供給量が少ない。血中のこれらの因子の量により、血友病は軽い、中程度、重症となる。
血友病は伴性劣性遺伝による先天性疾患である。母方の]染色体の第VIII因子または第IX因子の遺伝子部位に異常があった場合、それが]染色体を1本
しかもっていない男性に受け継がれ、血友病を発症する。女性は稀に発病するが、数は極めて少ない。女性のほとんどは保因者になる。しかし、遺伝子の突然変
異により血友病を発症したと思われる例も多く、血友病者の約3割に家族歴が見られない。明確な割合は分からないが、血友病の発症には遺伝と突然変異の2つ
のパターンがある。
血友病遺伝子は女性のX染色体の一つによって運ばれ、男系の子孫へ遺伝する。このような理由から、血友病は判性劣性遺伝と呼ばれる。血友病を保因する女
性(キャリア)は、正常な遺伝子を持つ一つのX染色体と異常な遺伝子を持つ一つのX染色体を保持している。この場合50%の確率で男子へ血友病遺伝子が遺
伝する。言い換えれば、生まれる男の子が血友病になる確率が50%あるということである。また、生まれる女の子に血友病遺伝子が遺伝する確率も50%であ
り、これは女の子がキャリアとなる確率が50%であることを意味する。
全てのケースの3分の1は、家族に病歴がなく、新規もしくは突然変異によって血友病が発生する場合である。このような状況での血友病遺伝子の存在は、血
友病の息子を産んだ後に母親がスクーリング試験を受けた時のみ明らかにされる。
不完全な遺伝子を受け継ぐ男性は例外なく血友病となる。これは、女性と違って男性は一つのX染色体しか持たないからである
(性によって持っている染色体は異なり、男性は XY、女性は XX を持つ) 。
Y染色体は主に性の決定と深い関係があり、血液凝固因子の生成に関する遺伝子は含んでいない。血友病の父親と、キャリアではない母親から生まれる男の子は
血友病とはならない。これは、男の子がX染色体を母親からもらい、Y染色体を父親から受け継ぐからである。しかし血友病の父親から生まれる女の子は、父親
の血友病遺伝子が遺伝する。これは、女の子がX染色体を母親と父親の両方から受け継ぐからである。このようにして彼女はキャリアとなる。幾人かのキャリア
女性は、健康上の問題や、血友病遺伝子の保有に関する徴候は全くない。これらの女性は無症候性キャリアとして知られる。しかし、幾人かのキャリア女性は
(血友病ほどではないが) 出血に対する凝固因子のレベルが低い状態にある。
発症頻度は、血液凝固因子異常症全国調査2002年度の報告によると、日本では血友病Aが3841人(男性3821人、女性20人)、血友病Bが842
人(男性838人、女性4人)が確認された。 報告されていない人数を考慮すると、発症頻度は男性1万人に対し、0.8〜1人と考えられる。
<参考文献>
・血友病 / 福井弘編 . -- 西村書店 , 1993.11 . -- (血液科学シリ−ズ) (N)493.17
・血友病Q&A / 後藤三雄著 . -- 〔後藤三雄〕 , 1984.10 (N)493.17
・血友病の診療 / 藤巻道男,長尾大〔ほか〕編 . -- 血液製剤調査機構 , 1993.1 (N)493.17
・血友病の治療とその合併症の克服に関する研究 . -- [坂田洋一] , 2005.3
・新病気とからだの読本 . 9 こどもの病気 / 岩田 誠/〔ほか〕監修 . -- 暮しの手帖社 , 2004.11
(N)598.3
あなたは 人目の訪問者です。