心的外傷後ストレス障害(PTSD)
1.症状
以下の3つの症状が、PTSDと診断する為の基本的症状である。
@精神的不安定による不安、不眠などの過覚醒症状。
Aトラウマの原因になった障害、関連する事物に対しての回避傾向。
B事故・事件・犯罪の目撃体験等の一部や、全体に関わる追体験(フラッシュバック)
患者が強い衝撃を受けると、精神機能はショック状態に陥り、パニックを起こす場合がある。その為、その機能の一部を麻痺させる事で一時的に現状に適応させようとする。その為、事件前後の記憶の想記の回避・忘却する傾向、幸福感の喪失、感情の麻痺、物事に対する興味・関心の減退、建設的な未来像の喪失などが見られる。特に被虐待児には感情の麻痺などの症状が多く見られる。
精神の一部が麻痺したままでいると、精神統合性の問題から身体的、心理的に異常信号が発せられる。その為、不安や頭痛・不眠・悪夢などの症状を引き起こす場合がある。特に子供の場合客観的な知識がないため、映像や感覚が取り込まれ、はっきり原因の分からない腹痛、頭痛、吐き気、悪夢が繰り返される。
2.診断
主に以下のような症状の有無により、診断がなされる。
@恐怖・無力感
自分や他人の身体の保全に迫る危険や事件その人が体験、目撃をし、その人の反応が強い恐怖、無力感または戦慄に関わるものである。
A心的外傷関連の刺激の回避や麻痺
心的外傷体験の想起不能や、感情の萎縮、希望や関心がなくなる、外傷に関わる人物特徴を避ける等。
B反復的かつ侵入的、苦痛である想起
悪夢(子供の場合はっきりしない混乱が多い)やフラッシュバック、外傷を象徴するきっかけによる強い苦痛
C過度の覚醒
外傷体験以前になかった睡眠障害、怒りの爆発や混乱、集中困難、過度の警戒心や驚愕反応
これらの症状が1か月以上持続し、社会的、精神的機能障害を起こしている状態を指す。症状が3か月未満であれば急性、3か月以上であれば慢性と診断する。大半のケースはストレス因子になる重大なショックを受けてから6か月以内に発症するが、6か月以上遅れて発症する「遅延型」も存在する。
3.治療・性質
治療は通常、薬物治療と精神療法の双方が用いられる。PTSDを持つ人はしばしばアルコール中毒や薬物中毒といった精神的問題を抱えるが、それらの状態は異常事態に対する心理的外傷の反応だと考える研究者や臨床家もいる。心理的外傷となる出来事への情緒的な反応を解決するには、トークセラピーが最も有効だと考えられている。
科学的には、PTSDは通常の処理能力を超えた極端なストレスが引き起こす生化学のメカニズムによって生成されているとも考えられている。それは、深刻な過去の外傷からの回復へ向けて戦う人にとって、意識的なコントロールが及ばない領域の話であり、これがPTSDの性質の一面である。
4.予後
PTSDは、脳内に永続的な変化をもたらす。特に成長途中におきれば、脳の成長にダメージが加わり、人格形成に破壊的な影響を及ぼす。成人の場合でも、原因となった刺激があまりにも強すぎた場合、廃人となり、一生涯、食事も一人では取れなくなるなど生活に重度の支障を来す場合も起きうる。
PTSDにおける回復とは、事件を繰り返し整理し、異常な状況や事件を思い出すことによる無力感や生々しい苦痛に襲われなくなる状況や、それに強く影響されず、最低限の生活ができるようになった状況を指す。
しかし、後遺症としてストレスホルモンによる海馬の萎縮、脳機能の低下が起きているので、この記憶処理作業には大変な困難がつきまとう。扁桃体の興奮によって「焼き付けられた異常」の処理は難しい。
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