適応障害
適応障害は、精神疾患の中の重度のストレス障害の一種で、ストレス因子が原因により、日常生活や社会生活、職業・学業的機能において著しい障害がおき、一般的な社会生活が出来なくなるストレス障害である。急性ストレス障害・PTSDと同様に外的ストレスが原因となって起こるストレス障害の一つであるが、急性ストレス障害やPTSDに見られるような、生死に関わる様な強大なストレスに限った訳ではなく、失恋や仕事のトラブルなどもストレス因子の一つになりうる。患者のストレスへの脆弱性が発病の起因と成っている事が多いと言われている。
日本では皇太子妃雅子がこのストレス障害にかかったことで一般に名称が広まった。
○原因
[遺伝・体質的な背景]人格障害や身体疾患などがあると、より発症しやすくなる。
[心理・社会的な背景]日常的ではあるが個人にとっては重大な出来事(就学、独立、転居、結婚、離婚、失業、経済的困難、重い病気、子離れ、親別れなど)が症状に先立っており(通常1ヶ月以内)、ストレスの源としてはっきり指摘できる場合にのみ、適応障害と診断される。
[脳・神経機能の関与]特に究明されていない。
○病前性格
ストレスに弱い人、傷つきやすい人。また、小さいときに親ををなくすなどして、心理的な支えを十分に受けられなかった人がは発症しやすいことがわかっている。性格のかたよりや身体的疾患なども適応障害をおこしやすくする。
○発現頻度
比較的に良くみられ、精神科受信患者の約10%。
思春期、青年期に多いがどの年代でも起こり得る。男性より女性により多くみられる。
○症状
ストレスが原因で、情緒的な障害が発生し、それは抑うつ気分や不安などを伴う事が多い。また青年期や小児期では行為障害や夜尿症、指しゃぶりと行った退行現象が現れる。社会生活や職業・学業などにも支障をきたし、生活機能の低下や、業績・学力の低下、場合によっては就業・就学そのものが不可能になる場合がある。情緒的な障害による気分障害により、声をあらげたり、泣き出したりするような事があり、不安やうつ状態から
動悸・ふるえ・頭痛と行った身体的不調を起こすことも多い。
・主な精神症状
強い苦しみの感情。
気分の落ち込み。涙もろくなる。絶望感。
不安感。恐怖。あせり。
学業、職業、などが続けられない(という恐れ)。
破壊的、攻撃的なことをしてしまう(という恐れ)。
・主な身体症状
不安感にともなう動悸など。
行動の障害としては、社会的ルールを無視するような行為。突然の暴力、破壊、暴走、暴飲、引きこもり、学校や社会をさぼるなど。
※症状は一般的なものであり、全ての人に当てはまるとは限りません。
○診断基準
適応障害は診断が難しく、DSM-IVとICD-10でも若干診断基準が異なる。
はっきりと確認出来る大きなストレス、及び継続的、反復的にかかり続けるストレスが発症の原因であり、そのストレスを受けてから3か月以内(ICD10では1か月以内)に情緒面、行動面で症状が発生する事。その際、ストレス因子と接した時に起きる予測を超えた苦痛の反応もしくは、社会生活、職業・学業的機能において著しい障害が起きる事。不安障害や気分障害、うつ病などの既存の病気が原因ではない事で、ストレスが死別反応などによるものではない事。
ストレス因子が排除された場合、半年以内に症状が軽快すること。ストレス因子が無くなった後も、半年以上症状が続く場合は、他のストレス障害(PTSDや分類不能の重度のストレス障害)や特定不能の不安障害などを考慮する必要がある。ただし、ICD10の場合は、遷延性抑うつ反応の場合は最長2年間持続するとされている。また、症状の持続時間が6か月以内のものを急性、6か月以上のものを慢性と呼ぶ。慢性の場合は継続的なストレスが続いている場合に適用される(たとえば、周りに犯罪が多発する場所に住んでいる。裁判に巻き込まれるなど)。
○治療
抑うつ感や不安感が有る場合は、抗うつ薬や抗不安薬の投与を行う。また、精神療法によってストレス脆弱性の体質改善も効果があると言われている。しかしながら、病気の原因に成っているストレス因子の除去が本人の治療にとって、もっとも一番不可欠な要素である。精神療法が中心で、薬物は期間を限って補助的に用いられる。
[薬物療法]抗不安薬、坑うつ薬、抗精神病薬、精神刺激薬など。