心理検査@(質問紙法)




性格検査
性格に関する側面を把握するためのもの。
臨床心理学の中で性格の特徴を把握することは、クライエントの精神的成長過程や治療過程の検討などの目的で用いられる。

質問紙法
査定すべき内容に関する多種の質問項目を設定し、被検者の回答を得るという、自己報告に基づいた方法である。
個別でも集団でも実施できる。
実施対象は、小・中・高校生あるいは成人用というように検査が分けられていることが多い。
[長所]
(1) 施行方法や採点方法がマニュアル化されている。
(2) 容易に実施できる。
(3) 短時間で集団にも実施できる。
(4) 評価に主観が入らない。
[短所]
(1) 被検者の言語能力や自己評価能力に依存する。
(2) 質問項目以外のことを知りえない。
(3) 意識レベルしか知りえない。
(4) 回答の意味(意図)を確認できない。
(5) 虚偽または意識的に操作された回答のチェックが困難である。
(MMPIのように虚偽尺度を有する検査もある。)

矢田部・ギルフォード性 格検査(Y-G性格検査)
ギルフォードの人格特性理論に基づき、矢田部達郎によって作成された質問紙法の性格検査である。
因子分析によって12の下位尺度を設け、各下位尺度ごとに10問計120問の質問項目から構成される。
回答は「はい」「?」「いいえ」の3件法である。
手軽に実施でき、多面的な診断が可能であるため、広く用いられている。
回答者の意図的な反応歪曲に弱いという欠点がある(虚偽尺度を有していない)。
また、内的整合性(各項目の関係性)に基づいている検査だが、妥当性には基づいていないため、性格傾向を見ることはできるが、弁別はできい。

[12の下位尺度]
(1)抑うつ性 (2)気分の変化 (3)劣等感 (4)神経質
(5)客観的 (6)協調的 (7)攻撃的 (8)活動的
(9)のんきさ (10)思考的内向 (11)支配性 (12)社会的内向
検査時間は約30分程度であり、実施は回答にマークするだけであり、採点も容易である。
検査結果は、書く尺度の素点を結び、プロフィールを描く形式である。
全体的プロフィールの傾向から、プロフィールは5種類に分類され、類型論的な評価も可能である。

[類型レベルの判定]
A型 「平均型」
真ん中よりのプロフィールで、すべての尺度において平均的で、取り立てて特徴のある性格特徴を示してはおらず、ほどほどにバランスが取れているタイプ。
あるいは積極的な自己表現を避けて、「?」の回答を多く示すタイプの人に多い。
B型 「不安定不適応積極型」
右寄りのプロフィールで、情緒不安定、社会的不適応、活動的、外交的であり、性格のバランスの悪さが行動として現れやすく、そのために対人関係上のトラブ ルが生じる場合がある。
細かいことを気にしたり落ち込みやすい反面、活動的・行動的でもあり、学校や職場でトラブルメーカーになりやすいタイプといわれる。
C型 「安定適応消極型」
左寄りのプロフィールで、情緒的に安定し、社会によく適応できるが、消極的で内向的なタイプ。
人ともトラブルを起こさず、控えめで慎重に行動する傾向がある。
D型 「安定適応積極型」
右下がりのプロフィールで、情緒的に安定し社会によく適応できる上に、活動的・積極的というタイプ。
対人関係にも優れており、学校や職場でリーダーの役割をこなす人が多いともいわれる。
問題は少なく、B型とは逆に性格のよい面が外に出やすい、好ましい性格とされる。
ただし、自分をよく見せようとする傾向がある人の場合にも現れやすい。
E型 「不安定不適応消極型」
左下がりのプロフィールで、情緒的に不安定で社会にも適応しにくい。
内向的で消極的なタイプ。
D型とは正反対の特徴を持っている。
ものごとに対して受身的で時に無気力的なこともある。
目立ったトラブルは起こさないが、心の悩みを自ら抱えやすいタイプである。

ミネソタ多面人格目録(MMPI) Minesota Multiphasic Personal Inventory
ミネソタ大学のハサウェイとマッキンレーによって完成された、精神医学的診断の客観化を目的として開発された質問紙法の性格検査であ る。
550問の質問項目からなり、「臨床尺度」「妥当尺度」、そして多数の「追加尺度」から構成される。
回答は「あてはまる」「あてはまらない」の二件法である。
質問数の多さ、尺度の詳細性において、信頼性が高い性格検査の1つである。
精神科から心理相談まであらゆる場面で用いられ、性格研究においては最もよく用いられる性格検査の1つである。
しかしその一方で、質問数が多いため、検査に時間がかかるのが難点である。

[MMPIの測定尺度]
・臨床尺度(10尺度)
心気症 精神面を無視する傾向や疾病への懸念
抑うつ 現状への不満・不適応感や抑うつ傾向
ヒステリー ストレス対処の仕方、自分の感情の洞察
精神病質偏奇 人および規制の体制・権威に逆らう傾向
男子性・女子性 ステレオタイプな性的役割を取得している程度と性役割感
パラノイア 対人関係上の敏感さ、猜疑傾向
精神衰弱 不安感をはじめとする種々の神経症的傾向
精神分裂病 統制と疎外感
軽躁病 活動性
社会的内向性 社会参加や対人接触を避ける傾向

・妥当性尺度(4尺度)
疑問尺度(?尺度) 不決断や拒否的態度
虚構尺度(L尺度) 社会的に望ましい方向に答える傾向
頻度尺度(F尺度) 受検態度の偏りと適応水準
修正尺度(K尺度) 防衛的な受検態度

・追加尺度
その他の研究者がそれぞれに開発した尺度群であり、およそ500に及ぶといわれている。
顕在性不安尺度(MAS) Manifest Anxiety Scale
1953年にJ.A.テイラーによって、個人の不安を測定するために開発された。
MMPIの中からN.キャメロンの慢性不安反応に関する理論を基に不安を記述していると思われる項目を50項目選択抽出している。
日本版MASでは、15項目の虚偽尺度が加えられ、全65項目となっている。
回答は「そう」「ちがう」の二件法であるが、両方に×をつけて「どちらでもない」とすることもできる。
最も問題とされるのは、この検査が顕在性の不安の検出を目的とするもので、無意識的な不安の検出には不適であることである。
これは主観的、内観報告としての不安の抽出に基づく限界であり、これらの問題を回避するためにはロー ルシャッハテストなどの投影法的な検査をテストバッテリーとして組むことが望まれる。
児童用MASとして、CMASがあり、これは42の不安項目と11の虚偽項目の計53項目からなる。
・抑圧尺度
・自我強度尺度 など

モーズレイ人格目録 (MPI) Moudsely Personal Inventory
1950年代にアイゼンクによって開発された質問紙検査。
アイゼンクは特性論的な立場と類型論的な立場とを繋ぐものとして、外向性−内向性と、神経症的傾向という2つの因子を見出した。
この因子を測定する目的で構成されている。
「外向性−内向性」はE尺度、「神経症的傾向」はN尺度と命名されており、日本版MPIでは各々24項目の質問で構成されている。
これに虚偽尺度(L尺度)20項目がさらに付け加えられており、さらに採点からは除かれている緩衝項目12項目を加えて全80項目である。
回答は「はい」「?」「いいえ」の3件法である。
プロフィールの類型化に関しては、E、N各々について3つに分類されており、3×3=9類型化が可能であり、解釈も比較的容易である。
その反面、9つの類型の中で解釈が困難なものがある場合もあり、また、9つの類型の中でさらに様々な下位型があるため、それらの判定に関しては慎重な態度 が必要である。

EPPS性格検査 Edwards Personal Preference Schedule
エドワーズがマレーの社会的欲求の概念に基づいて、その顕在性欲求リストを取り入れて作成した質問紙法性格検査。
マレーの社会的欲求の区分を基に15の性格特性が測定される。
検査は15の特性の中から2つの陳述を組み合わせた叙述文対(AとB)からなる225項目の質問で構成される。
対をなす陳述は社会的望ましさがほぼ等しいものが組み合わされており、そのいずれかを強制的に選択させる。
そのため、性格検査で生じやすい、社会的に望ましい方を選択するという回答傾向を統制できる。

[15特性分類]
(1)達成 (2)追従 (3)秩序 (4)顕示 (5)自律 (6)親和 (7)他者認知
(8)救護 (9)支配 (10)内罰 (11)養護 (12)変化 (13)持久 (14)異性愛 (15)攻撃

[EPPSの特徴]
正常・異常を鑑別する数少ない性格検査である。
正常者の性格傾向を多面的に測定できる。
受検者の反応態度が検査中どの程度一貫しているのかわかる。
「社会的望ましさ」の要因が除去されている。

16PF The sixteen Personality Factor questionaie
R.B.キャッテルの創案によるものであり、日本でも日本版16PF人格検査が公刊されている。
16PFの構成は12個の根源特性、4個の根源特性とに分けられ、各々10段階の標準得点化されており、プロフィール化が可能である。
回答方式はは3件法であり、合計で187項目である。臨床、産業などの様々な場面で使用されているが、いくつかの因子が明確に分離されていない点が、特に 日本版での標準化の過程で明らかにされている。

TEG(東大式エゴグラム)
交流分析理論を背景に自我状態とそれらに配分された心的エネルギーを視覚的に理解しようとする検査。
3自我状態5要素からなり、合計60項目、3件法で回答する。

・SPI(下田式性格検査:6性格特性、3件法70項目)

・精研式パーソナリティインベントリィ(5類型、4件法50項目)

・CPI(カルフォルニア人格検査:4群18尺度、2件法480項目)

・SG式向性検査(5因子、3件法100項目) など

cf. その他の代表的な質問紙法
コーネル・メディカル・インデックス(CMI) Cornel Medical Index
1955年、コーネル大学のプロードマンらによって、医学的面接の補助手段として、初診時に短時間で患者の状態を把握するための問診 表として作成されたチェックリストである。
精神症状だけでなく、身体症状も加えた両面からスクリーニングできるのが特徴である。
また、情緒障害の評価としても有力な手がかりとして用いられる。
現在では、心身症や情緒障害の発見の手がかりとして用いられることが多い。
また、職場のメンタルヘルスに関するアセスメント手段として広く用いられる。
強迫神経症や恐怖には適さないという意見もある一方、器質的障害の症状を的確に反映するともいわれている。

[質問項目]
・身体的自覚症状(12項目の下位項目)
(1)目と耳 (2)呼吸器系 (3)心臓脈管系 (4)消化器系
(5)筋肉骨格系 (6)皮膚 (7)神経系 (8)泌尿生殖器系
(9)疲労度 (10)疾病頻度 (11)既往症 (12)習慣
・精神的自覚症状(6の下位項目)
(1)不適応 (2)抑うつ (3)不安 (4)過敏 (5)怒り (6)緊張
一般精神健康質問紙(GHQ) General Health Questionnaire
イギリスのD.P.ゴールドバーグによって開発されたもので、日本でも日本版が公表されている。
GHQは神経症の複雑な症状を広く収集し、それを一般人に質問することで、どの程度その諸症状が存在するのかを見極めることを目的としている。
したがって、集団で精神健康度をチェックするためのスクリーニングテストや職場の健康管理のための資料として使用される場面が多い。
ただし、健康−不健康という一次元的で連続的な尺度を想定しており、性格特性を把握するためのものではないため、構造的にも論理的にも弱い部分がある。
それゆえ不健康という場合に、性的異常などの下位尺度での診断は不可能である。
また、一次元的尺度のどこに異常の線を引くかは一応は経験的にわかっているとはいうものの、今後の研究の余地は大いにあるといえる。
オリジナル版は60項目で、4件法で回答する。(ただし、採点の際は2件法を採用する)

[質問項目](7のカテゴリー)
(1)一般健康と中枢神経 (2)心臓脈関係、筋神経系、消化器系 (3)睡眠と覚醒 (4)個人独自の行動
(5)客観的行動(他者との関係) (6)自覚的感情(充足感欠如、緊張) (7)自覚的感情(鬱、不安)

質問項目を因子分析した結果は、必ず7つのカテゴリーに分類されるわけではなく、「身体症状」「不安・不眠」「社会的活動障害」「鬱傾向」の4因子が見出 されたという場合もあれば、「一般的疾病傾向」「身体的症状」「睡眠障害」「社会的活動障害」「不安・気分変調」「鬱傾向」の6因子が見出されたという場 合もある。
その点では因子的妥当性に関しては疑問視されることがある。
また、GHQには短縮版としてGHQ28、GHQ30があり、GHQ28は上述の4因子から各7項目を選んで構成されており、GHQ30は上述の6因子か ら5項目を選択して構成されている。

ツァン自己評価式抑うつ尺度(SDS) Zung's Self-Rating Depression Scal
ツァンにより開発された、抑うつ症状の重症度を評価するための代表的な質問紙による心理検査である。
重症度の評価だけでなく、スクリーニングなどにも用いられることが多い。
20の質問項目より構成され、各項目は四段階評価され、総得点で抑うつ度を示す。
cf. ベック抑うつ性尺度(BDI) Beck Depression Inventory
抑うつ症状の重症度を評価するための代表的な尺度。
21項目から構成され、気分及び認知に重点が置かれており、身体症状に関する項目は比較的少ない。
評価方法はSDSと同じである。






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