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どこが舞台ともわからぬ無国籍風の雰囲気、アメコミ以上に濃い絵、化け物が主人公という特殊さ、本格的なホラーテイスト。どこをとっても並ぶべきもののない優れたアニメ作品、それが「妖怪人間ベム」である。
ベム・ベラ・ベロ、3人の妖怪人間たちの巻き込まれる異様な事件の数々に胸をときめかせた子供たち(大人たち)も多かったことと思う。
とにかくクオリティーが高い! 当時の制作スタッフによると、ストーリーは人形劇をやる劇団の脚本家を中心に数人で協議し作成、絵は韓国のビル一つをまるごと借り切って現地でオーディションしたスタッフ100人に技術を教え込んで描かせていたらしい。1話作るのに2ヶ月かけていたとか(数話分を平行して作っていたのかもしれないが)。
音楽もいいね。 ハニー・ナイツの唄う主題歌のTV版では使われていない2番の歌詞は、”星にねがいをかける”だったが、ボツ・バージョンでは”月にのろいをかける”だったという話を聞いたことがある。そっちの方が良かったな。BGMも雰囲気たっぷり。全体的にジャズ調である。
衣装もいいよ。ああいうファッション、はやんないかな。ま、普通に着てる人もごくたまにいるけどね。
”ベム”を子供向けだと思ってる人が多いかもしれないが、充分以上に大人の鑑賞に堪える作品である。
たとえば、幽霊船の出てくる作品がある。亡霊となった海賊船長が、同じく亡霊の乗組員たちに、「野郎ども、明日はあの町へと上陸して人間どもを一人残らず殺してやるぞ!」と叫ぶ。すると乗組員1が「明日、あの町へ行くのだね」、乗組員2「人間を殺しに行くのだね」といちいちたどたどしい相づちを入れる。この稚拙な台詞に妙な迫力が籠もっている。こういうシンプルで感覚的な表現が、魂の底の部分に触れてくるのだ。
客観的な事実・常識や物理科学や経済の発展などは、人類にとっては大局的にマイナスだと思う。大事なのはファタシーだ。妄想だ。暗い闇へ恐れと敬意が人間の根源的な実在へと辿り着く道だと思う。そんな意味で、”ベム”はとても重要な作品と言える。
実は”ベム”には1982年に、パートUの企画があった。惜しくも実現するには至らなかったものの、2話分のパイロット版(TV局などへのプロモーションのために作った仮作品)がDVDなどに収録されている。ちなみに出来はというと、もう一歩の出来。パイロット版ということもあるのか全体的に作りが雑(音と絵、ストーリーなど)なのと、キャラの絵がキレイになりすぎて逆に気持ち悪い。ベラさんは普通の(棘がない)美人に成り下がっちゃったし、ベロはやけに目がつぶらでやだ。やっぱり黄色い眼球じゃなきゃ。
もしも実写版を作る場合のスタッフ・キャストを勝手に考えてみた(俺って相当ヒマなのか?)。
監督は石井輝男がいい。これ実現したら凄いな。無国籍風ってことで鈴木清順が撮ってもいっこうに構わないぞ(笑)。外人ならデビッド・リンチだ。映像にこってりした質感がある人がいい。衣装にもそれなりの人を用意して欲しいな。変なファッション・デザイナーとかじゃなくてね。
役者は、ベムに渡辺謙か伊武雅刀、ベラに麻美れい(夏樹マリ、夏樹陽子ってのも考えたがやっぱり違う。芝居っ気がないとダメ。梶芽衣子さまも微妙に品があるから違う。若い頃の李麗泉ならいけたかも)、ベロは適当な子供(ああいう顔した子役。我が子がベロ役に選ばれたお母さんは大自慢だ!)、マンストール博士(ギャングの依頼でベラそっくりの妖怪人間を作る妖怪博士。1話しか登場しないが、もしやベムたちの生みの親かと暗示させた)に天本英世。
個人的に妖怪人間たちの生き方には共感を感じずにいられない。ベム・ベラ・ベロ、一緒に頑張ろうぜ!
早く、まにんげんになりた〜い!
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