火星の運河

The Canal of Mars








うち捨てられた遠い岸辺 色褪せた太陽が澱んだ赤光を投げかける




力なく打ち寄せる波打ち際を、 剥がれ皮を引きずりながら歩いていく



















禁断の黒い山脈を越え 赤茶けた大地をみみず走る痛ましい亀裂 牧神は終末を告げる角笛を吹き鳴らし、 大気を微かなさざなみがくすぐっていく



































玄武の方角に白光あり


はためく神鳥は凶兆か?


















神なき異教の神殿には依童が必要だ











異教の祭祀が

古代の呪文を紡ぎ出し















祭壇の生け贄が

最後の預言を吐き捨てる


















教徒たちの詠唱が

死に絶えた神の降臨を願う


































灰は灰に 塵は塵に 湧き立つ全霊が無形の

叫びをほとばしる






大地に浮き出たかさぶたの 白く乾いた山脈の裾を 赤い運河が走り抜ける









這い上がる再生への渇望が 新しい太陽の到来を...


























撮影:石川 克則 柏木 直樹




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