取り換え子


 



          

 ある晩、オレはふとした気紛れから蟲の形をとって産院に忍び込んだ 保育室のベッドへと這い進む

 幾つもの猿じみた顔をした肉の塊の中から、比較的見目の良い一匹を選び出し、肛門から入り込んで、脊椎に食い込み、上へ上へと這い登る

 数時間の旅の果て、辿り着いた脳味噌の襞の間で待ち伏せて、まだ目鼻のつかない赤子の魂絞め殺す

(死んでもいない水子が、ふらふらと大気に流れ出す)

 

 新しく目覚めた体の中でしっかり根を張り充満し、オレは祝福された生命だ

 

 

 可愛い子だ、可愛い子だと、差し出された乳房をゆっくり舌でねぶりまわし、近頃ご無沙汰だった母親の官能呼び覚ます

 胎道も羊水も記憶にない赤ん坊のいったいどこが可愛いのか、この女の独り相撲につきあって、大便垂れ流したり、ぎゃあぎゃあ泣き喚いたり、大便垂れ流したり、ぎゃあぎゃあ泣き喚いたり・・・

 

 いつまでもいつまでもこんな暮らしは続き、やがて大きくなったオレは、メシ喰ってクソしてSEXして、社会に出ても体の違和感つきまとう

 

 そのうち結婚して子供作って、産まれたその子の体にはオレと同じ蟲が巣喰っているに違いない

 

 こんな風にして過ぎていく人生 

 取り換えてみたところで何一つ変わりゃしない