アームのテスト:Micro MA-505

針圧とバイアスが連動する合理的設計で使いやすいアームのひとつです。S字で軸受けは針先のほうに向いていますのでワンポイント軸受けと同じ動きをします(高さを変えるとわずかにシェルが横にも傾く)。それでアーム側でコネクターの角度を調整してシェルの傾きを水平に出来るようになっています。

Test 1

VTF scale (針圧目盛りの精度)

Shure SFG-2の表示(g) Shureの表示に平衡するMA−505の目盛り
without bias with G bias with E bias
0.50 0.60 0.50 0.45
0.75 0.85 0.80 0.70
1.00 1.10 1.05 1.00
1.25 1.35 1.30 1.25
1.50 1.55 1.55 1.50
1.75 1.80 1.80 1.70
2.00 2.05 2.05 2.00
2.25 2.30 2.25 2.25
2.50 2.55 2.50 2.50
2.75 2.80 2.80 2.70
3.00 3.05 3.00 3.00

備考: シュアの針圧計はお尻をスピンドルに付けて測らないと 精度がでない(つまりカートリッジと直角方向にして針がロックしない状態)。 意外とスプリングの経年変化や偏差は少ないようだ。 特に楕円針用バイアスをかけた状態(E bias)では針圧は正確。但し、この針圧計ではバイアスの横方向の力が針圧に加算されて示されるだけかも知れない。普通どの針圧計でもアンチ・スケーティング・フォースの影響を避けるためにバイアス0で測定することになっているようです。 最近A&DのデジタルスケールHL-100を入手したのでそれで再測定してみました。

MA-505の目盛り
バイアスなし
HL-100の表示(g)
0.50 0.41
0.75 0.64
1.00 0.89
1.25 1.12
1.50 1.40
1.75 1.65
2.00 1.92
2.25 2.18
2.50 2.46
2.75 2.70
3.00 2.98

Shureの針圧計で測った結果と符合しました。針圧計としてはShureのもので十分実用的なことが分かりました。偏差は実質3%程度なので高価なデジタル針圧計は不要です。針圧の静的な絶対値を知っても意味がなく、相対値が分かれば十分だからです。

Test 2 Inside Force Condition Anti-skating bias : 0 < G < E 
Case Record 室温18℃湿度55% bias : G=spherical/E=elliptical 
  カートリッジはES−70EX(楕円針)
1 Toshiba/EMI Dry Red Flat 最大(Eより上)にしても調整不能
1a Toshiba/EMI Wet Red Flat E(赤楕円)ポイントでかろうじて調整
2 Denon/MJ Dry Black Flat Zone E
2a Denon/MJ Wet Black Flat Zone G(紺丸)だが少し乾くとEに変更
3 Columbia Dry Black Flat E
3a Columbia Wet Black Flat GとEの中間

上のWetというのは無水エタノール25%水で湿り気を与えたもの (エタノールの盤への影響は切片を漬物にして別に実験中)。 Denon/MJのテストレコード以外は内周の余白平面を使ってテストした。 当然のことながら、湿り気が十分にあると摩擦は減る。 力学の理論(摩擦力=針圧x摩擦係数)によれば接触面積は関係ないはずだが、 多くのアームのバイアス目盛りは楕円針で大きめになっている。 平面で測るとき接触する針の底と音溝をトレースするときの針の側面では形状が違う。
㊟1:滑り摩擦では<1.摩擦は接触面に対して垂直加重に比例し見かけの接触面積に関係しない 2.静摩擦係数は動摩擦係数より大きい 3.ある程度の接触速度以上では動摩擦の係数はあまり変化しない>とされています(1779年物理学者クーロンCoulombが発見した摩擦の法則)。摩擦の原因は分子結合ではないようで、表面粗さと弾性・硬度によるものと思われますがその実体はよく説明されていません。33回転と45回転で平面での摩擦力の差は出なかった(実際の音溝の場合は同じ偏移量でも45回転では速度振幅は1.35倍になるのでstylus dragならびに摩擦力も一般に多くなる)。
㊟2:楕円針は丸針より接触面積が少なく、ラインコンタクトは丸針より接触面積が大きいとされているが、その接触面積というのは一定の静加圧下のものなので、各針間の接触面積の違いを云々するのは余り意味がない。音溝の壁を凹ませながら滑る針の動的な摩擦力は簡単には予想できない。一時的な変形量(接触深さ及び接触面積)及び摩擦力は針圧に比例することだけは確か。
㊟3:摩擦・磨耗・潤滑を扱う摩擦学(tribology)という学問領域があるそうです。微細加重及び微細接触における摩擦を論じるマイクロトライポロジーは「摩擦力と凝着力の関係」も扱っています。

東芝赤盤(ケース1)が硬いといわれているが摩擦も多いのか?静電防止剤が析出(Bleeding)していると言う人がいます。聴感上の違いは: バイアスなしだと力強い音ともいえるがモノ録音のサーノイズが耳につくようだ。 バイアスをかけるとバランスが良い音(柔らかい音がでる)。 バイアスをかけ過ぎると再度サーノイズが目立つ(しかも位相/定位が変)。 但し、このアームはバイアスで針圧が変わるのでその影響かも知れない。

インサイドフォースとキャンセラー装置の関連はビニルの実効摩擦係数μを0.4として計算したら以下の図になりました。μ0.4の時バイアスEと平衡するようにしているようです(μ0.3の時バイアスGと平衡)。設計上は0.4を摩擦の上限の係数としていることが想像できました。ただSME3009impと比べるとバイアスEのときでもキャンセルフォースは少なめです。特に内周側に余裕がないのはTest2の結果と符合します。針圧1.5gはアーム側目盛上の1.5gです。このアームの初期回転角(アーム支点から見てアームレストから外周の音溝をかける所までの移動角度)の設定は25度前後のようです。この角度が大幅にずれるとCancel Forceの曲線がそのまま左右にずれます。追記:VTF(垂直圧力)が同じなのにinside forceが少し異なり3本あるのはおかしいじゃん、という突込みが今のところないのですが補足説明します。針を置いた時、45度方向壁圧は静針圧(VTF)の1/√2(約71%)にそれぞれ分圧されます。横方向バイアスをかけると壁圧も僅かに増えます(垂直圧と水平バイアスの合成ベクトル)。以下のVTFは厳密には針圧(Vertical Tracking Force)ではなく、バイアスをかけた状態での音壁に直角な静圧力という意味です。私自身はトレースしたときの音壁動圧力の変化幅が非常に大きく、バイアス補正の効果は余り無い(見掛け倒し)と感じています。トラッキングアングル調整と同じくバイアス調整も実効がないと思っています。調整する(弄る)ところが色々あるほうが高級に見えるし違いの分かる男ぶるマニアを魅了するのは事実ですが。。。苦笑。

初期回転角25度前後の設定ではシェルの幅2cmの時、その端からレコードの端まで約8cm位になります。マイクロのマニュアルを読んだらアームレストポジションからスピンドルをオーバーハングするまでの全回転角は62〜75度の範囲に設定する指示がありました。するとIFCとIFがバランスする実効摩擦係数とアームのポジションは計算上は以下の通りになります。摩擦力自体変化するので余り神経質になる必要はないようです。要するに<アームの回転角が大きくなるように取り付けるほどアンチスケーティング力が少なくなる>だけです。対応する摩擦係数Equivalent coefficient of stylus dragは平均0.34を想定して設計しているのが分かります。

Coefficient of stylus drag (eqv.) Swing Angle from rest position to spindle Initial Swing Angle from rest position to record rim distance of stylus from arm rest position to record rim distance of stylus from arm rest position to spindle
0.39 63 degrees 25 degrees 90 mm 240 mm
0.34 69 degrees 31 degrees 110 mm 260 mm
0.29 75 degrees 37 degrees 130 mm 280 mm

タングステン・ワイヤーがアーム支点真上のバイアス・バーから45度の角度でアーム支点から15mmのところにつながり、そこで水平に曲げられスプリングに繋がっています。バネの共振を和らげるためか、スプリングの端末はアームの末端にゴムブッシュを介して固定されています。バネの位置について補足すると、10cm長の柔らかいコイルバネをアームの中間部とアームのベースに接続し針圧はアーム中間部のバネの支点をスライドして針圧調整するダイナミックバランスのアームを海外のオーディオカタログ(1960年頃)で見かけました(前置タイプはこれが唯一)。それではあまりに無骨なので普通バネはアーム軸受けの後ろに設置されています。

上図は505mkIIIのOperating Manualからのものですが初代型の現物と少し違っています。アーム末端はもっと深く切られていて、ゴムブッシュ付きバーをスプリングの輪に通しT字状にして、縁に引っかかる形で水平に固定されています。

Test1のVTF実測とアーム構造の分析(といっても三角測量)により下図を得ました。1g目盛から2gにするとワイヤーが4.9mm巻き取られ約20g張力が増えるのでスプリングのばね定数は4.1gf/mmと計算しました。VTFの実測ともほぼ一致しました。バイアスを掛けない時の針圧が少な目になっているのはスプリングが伸びたためか(正確な針圧を出すためには4.56gf/mm必要)、あるいは設計なのかは分かりません。バイアスを掛けたままだと針圧側にも少しテンションがかかりますので、バネ定数が違ってもバイアスによる針圧の変化は避けられません。従って、このアームの0バランスはバイアスネジを左に回しきりバイアスを0にして調整するのが良いようです。念のため、反ったレコードをかけたときの針圧差を計算しましたらレコード面+2mmで+16mg、-2mmで-17mgになりましたので、アームの垂直感度や内部配線による抵抗と大差ありませんでした。

Vinyl EngineのLibraryからMA-505の日本語ユーザーマニュアルがダウンロードできる。テンプレート図面なども含まれている。それを見ると初期型MA-505のインサイドフォースは楕円用・丸針用に目盛り分けされておらず、カウンターウエイト軸内部のワイヤーガイド(wire guide precision bearing)軸が外に突き出している(改良型は2箇所ネジ止めした上でその穴を黒い塗料で埋めている?)。ターンテーブルシステムDD-7に付属してからは改良型が一般に出回っている。初期型MA-505の実物は見たことがない。改良型(又は後期型)の方を後にMA-505Xと呼ぶようになったらしい。ワイヤーガイド軸が外に突き出していない平らな表面のカウンターウエイト軸にはダンプシステムが追加可能なのでXとしたのかはよく分かりません(オプションでX用のダンプユニットもあった)。外箱はMA-505で取説とアームにXが付いたものも多く見受けられます。私のMA-505の末端にはマイクロのロゴシールが張ってあったが取れてしまい、蟹目ボルトの蓋がむき出しになっています(Xのシールでは無いが内容はXと違いがない)。

505シリーズモデル名 発売年月
MA-505初期型>MA-505後期型(改良型) 1975年後半。初期型はワイヤーガイドベアリング軸が突き出している。後期型はXと同等。
MA-505L初期型>MA-505L後期型(改良型) 1976年12月。初期型はワイヤーガイドベアリング軸が外に突き出している。後期型はLXと同等。
MA-505X & MA-505LX 1977年後半。アームの端にマイクロのロゴの代わりにXのシールの付いたものが多い。Sが登場した時に、区別するためにXとSにシールを分けたと考えられる。
MA-505S/LS アームの端にSのシール
MA-505XII/SII/LII 1980年7月
MA-505III 1981年12月

主なバリエーション:Lは実効長282mmのロングアーム。Sはアーム内配線が銀。II以降はリング状のdamper holderがカウンターウェイトの前に付き、アームベースが肉厚になり、高さ調整はストレート・レバーとコレットチャックによる(II以前のモデルではネジ止めによる高さ荒調整とヘリコイドによる微調整の2段式で微調整後のずれを防ぐためL字型レバーを時計回りに捻って固定する)。IIIはアームパイプが交換できる(標準はシェル一体型のストレートでシェル交換型S字はオプション)。リフター機構との接触を防ぐためのアームベースの切り欠きの形は初代モデルでは半円だったものがII以降では大きく切欠いた非対称の形になっています。

これ以外にもターンテーブルDD-35にはMA-505より短い実効長222mmのショートアームが搭載され、直径40cmのプラッターを持つDD-100には実効長267mm(スタンダード237mmとLタイプL282mmの中間の長さ)のMA-505が使われ、BL-10XにはナイフエッジのマイクロのアームMA-500が載っていました。あの時代(アナログ最盛期)日本のメーカーは矢鱈に何でもやり過ぎた。

マイクロ精機は海外(特にドイツ)向けにストレート・ロウマス・質量集中タイプのダイナミック型アームを発売していましたが、それらのモデル(1978年MA-707とそのパイプ部分をカーボンファイバーに換えてさらに軽量化した1981年CF-1など)は日本では知られていません。アームの実効質量(effective mass)の軽量化を試みたもので、主にMMカートリッジ向けでしたが、パイプ上でウエイトをスライドすることにより実効質量を可変にする備品がついていました(低域共振を10Hz前後に調整できる)。ヘッドシェル部分は特殊な着脱式を採用しています(シェルの自重:MA-707 6g/CF-1 4g)。以下はCF-1のカタログより。自重7gのカートリッジ(合計マス20g)で共振周波数を10Hzにするにはコンプライアンスは13cu程度。同じカートリッジを使い錘をずらしてヘッドマスを10g増加し合計マス30gにすると共振周波数は8Hz程度ーたいして変わりませんね。共振周波数を下げる発想というのが分かりません。当時の主流はヘッドマスを軽量化し共振周波数を10Hz以上にして共振周波数の影響を軽減することにありましたが、混変調を生む<重い低音が好きな>低音病に罹った日本のアナログファン(過去の私もその一人)には受け入れられなかった思想です。パイプ上でスライドする錘の重さを以下の表から予想すると20gになります。計算方法は(position^2/実効長237^2)xweightが針先から見た追加実効質量です。

ハンノーバーのall-akustikは1972年設立のハイファイ機器の輸入会社だが1976年頃から自社ブランドスピーカーQuadralシリーズを発売しそのブランド名でドイツ国内では有名で入力のピーク値を示すためLED6個を使い特許出願(DE2626680A1-1977)もしていました。その1978年のテストレポートが興味深い。MICROについてはDDX-1000とMA-505がレポートされています。テスト方法は当時のDIN規格にほぼ忠実に測定していますー最近の測定はDIN規格番号を示すことがあっても、簡略化して都合の良いことしか示さないのは残念なことです。以下の数値自体は余り信用すべきものではないが測定方法は参考にすべきです。

ターンテーブルDDX-1000
DIN45544によるランブル干渉電圧比=unweighted(Rumble interference voltage distance)
  外周 44dB
  内周 48dB
DIN45544によるランブル雑音電圧比=weighted (Rumble noise voltage distance)
  外周 68dB
  内周 70dB
DIN45545ワウフラッター測定盤を中心だししてワウフラッター測定
  リニア (unweighted)=聴感補正なし ±0.09% 
  DIN聴感補正カーブによる評価 ±0.05% 
  2 sigma(5秒)による評価  [私注:sigma functionを持つ計器使用] ±0.07%
アームのトレース・パーフォーマンス (Shure V15IIIを搭載)
dhfi(独ハイファイ連盟)の300Hzテストレコード(3000Hzとあるのは誤植)を綺麗にトレースした最大振幅(amplitude)
私注:300Hzの振幅50/90/100μを速度振幅(cm/s)に換算するとそれぞれ9.4/17/18.8 cm/s peakになる。垂直側のトレース能力をテストするこのレコードは特別で垂直側全てが50μになっているのはdhfiのテストレコードの垂直側録音は50μのみだったから。後の1980年DIN45549ではモノラル=水平315Hzだけで中低域トレース能力を測定するようになった(50〜120microns 0 to peak)。ステレオ録音では垂直振幅側が圧縮されていた背景(depth control)もあるので300Hzで垂直振幅50μがトレースできれば十分だった。minimum top widthが25μで垂直側振幅50μなら最大groove depthの実数は110μ程度になります(25/2+50*2-[bottom radius 5*√2-5])。
   針圧 MICRO MA-505 SME 3009
水平 垂直 水平 垂直
   0.75g 90μ 50μ 90μ 50μ
   1g 100μ 50μ 100μ 50μ
Shure Test Record TTR-103における10.8kHzの最大速度振幅29.3cm (30cm/sだったはずだが?)における歪率
   針圧 MICRO MA-505 SME 3009
   1g 0.65% 0.65%
   1.5g 0.65% 0.55%
DIN45542による周波数混変調歪(FIM distortion)測定 300Hz/3000Hz 6/1.5cm/s (私注:各試験信号の速度振幅比は4:1で片チャンネルreference tone level 8cm/sの半分4/1cm/sでFIM歪1%を超えないことが最低要件)
   針圧 MICRO MA-505 SME 3009/2 (=3009/S2)
   1.5g 0.7% 0.7%
トーンアームの共振周波数 MICRO MA-505 SME 3009
5.5Hz以下 6Hz 
私注:当然ながらトレース能力はアームよりもカートリッジ自体が持つ能力が主体。但し、このようにアームを変えてテストした結果を示す測定例は貴重。アームの共振周波数(Eigenresonanz)についてはテストしたShure V15IIIの共振周波数におけるコンプライアンスが非常に大きいか(40cu以上)、もしくは重いヘッドシェルにShure V15IIIを搭載しそれをアーム間で交換したかは不明。針先から見たアーム(カートリッジなしだが標準シェル付き)の実効質量はMA-505が14.5g、SME Series II improved 3009 with shell type S-2 (Model 3009/S2 detachable shell)が9.5gとされている。

「ランブル数値は針を置くレコードの溝径によっても変化し、一般に内周側より外周側の方がランブルの影響が大きいー高さ変化も大きいせいでしょうか?」と私がターンテーブルの項で述べていることを傍証しています。レコードの高さ変化は0.8mm程度は変形しているのが当たり前ですーJISで解説され推奨された製造時のソリは1.5mm以下!


MA-505のラテラルバランスについて

付属ラテラルウエイト2種。

アーム軸上ではなく垂直軸受部の延長にあるバー上で錘をスライドするこのアームのラテラルバランスは特異なもののように見えます。一般にラテラルバランサーは<カウンターウエイトやオフセット角の曲がりなどのためにアーム全体の重心位置が針先と支点を結ぶ直線から横にずれアームを傾けて取り付けた時水平ベアリングに作用してアームを横方向に回転する力を生じるのを防ぐ>のが目的です。他のアームのラテラルバランサーはアームパイプ本体についている(特にジンバルサポートやワンポイント軸受けでは構造上アーム軸上にしか付けられない)のであたかも垂直(運動)ベアリングに作用するかのように勘違いしやすい。それはあくまでも見かけで、本当は水平(運動)ベアリング上のアンバランスを防ぐのが目的。その観点から見る(つまり水平ベアリングの上物として見る)とマイクロのこのS字アームのラテラルバランサーは他のアームのものと異曲同工と考えられます。私は台の水平をチェックした上でラテラル錘はアームの支点近くに付けていますが、多少離してつけても或いは無くても、実際には何の問題もありません。このアームのカウンターウエイトはほぼ針先と支点を結ぶ直線上にあり主にアームの曲がり部分がアンバランスの要素となりうるが寡少なため無視できる。此処で言う水平ベアリングは水平運動ベアリング、垂直ベアリングは垂直運動ベアリングの意味ですー欧文ではベアリングの配置に注目して水平ベアリング(lateral bearings)というと垂直運動のベアリング、垂直ベアリング(vertical bearings)は水平運動のベアリングを指すのが通例なので欧文を読むときは注意が必要です

<アームを傾けて取り付けた時>って変ですよね。でも垂直運動をしたときの動的なモーメントによる左右アンバランスまで考えるのは静的なラテラルバランスとは別な方向になります(静的なバランスしか考慮しないのが通例)。J字やS字のアームよりも、ストレートでヘッドだけオフセットしてラテラルバランスの必要の無いアームの方が理論上優れている理由もこの辺にあると思います。マイクロのこのシリーズの最終型MA-505IIIはストレートでラテラルバランサーはありませんでした。

ダイナミックバランスのアームの垂直動軸受けの大半(FR/IKEDA/MICRO)は針先に向かって正対しています。リニアオフセットラインに合わせた軸受けのEmpire 990(S字)やSME VやREGA RB300は上下運動してもシェルの左右の水平が保たれるようになっていますが、針先への加重と盤からの反発力は軸受からオフセットされた方向にあります(軸受けが片持ち状態になりやすい)。正対した軸受けは上下運動や高さ調整で水平が少し狂いますが、軸受への力のオフセットはありません。カートリッジ側のオフセット角はあるが軸受けについては両持ちでバランスが良い(バレーボールのレシーブ)。理論と実際面での使用でどちらが優れているかは分かりません。アナログにはたくさんの理論倒れ(もっともらしい工夫だが実際は疑問)がある。


ホームページへ戻る