(2012-2013の)インフルエンザワクチンについて

予防接種の内容

 今シーズンのインフルエンザワクチンは、2種類の(季節型)インフルエンザウイルス(A香港型=H3N2、B型インフルエンザ)と新型インフルエンザウイルス(2011年4月1日から季節型インフルエンザの1タイプになりました)(H1N1pdm)のとげ(H鎖)の部分をこなごなにして、精製した不活化ワクチン(HAワクチンと呼ばれます)です。
 生後6ヵ月から任意接種で受けられます。(ただし60歳〜64歳の一部、および65歳以上の老人は法に基づく定期接種(二類疾病)として接種されています。


 2012-2013年のインフルエンザHAワクチン製造株の内容は、以下の通りです。2011-2012年と比べ、AH3N2、Bの株が変更になりました。

A/カリフォルニア/7/2009(H1N1)pdm09株
A/ビクトリア /361/2011(H3N2)株
B/ウィスコンシン/01/2010株

予防する病気

 A型香港型、B型インフルエンザと新型インフルエンザ(H1N1pdm)の重症化を防ぎます。鳥インフルエンザ(H5N1)には効果はありません。

接種の方法

 ワクチンの注射液を、年齢に応じて2段階で上腕に皮下注射します。2回接種する場合は、左右交互に打つことが勧められています(副反応=腕の腫れを減らすため)。

 インフルエンザワクチンの接種量が、先シーズン(2011-12)から変更・増量されました。→6か月〜2歳は0.25ml、3歳以上は0.5ml。

 6カ月〜12歳のお子さまは、2回接種が必要です。13歳以
従来通り、1回接種でよいでしょう(65歳以上は、1回接種となっています)。
 昨シーズンは、2010年、2011年とワクチンが全く同一株だったため、3〜12歳のお子さまに関しては接種回数は1回でもよいとお話ししましたが、今シーズンは全く新しいワクチン株のため、従来通り3〜12歳のお子さまも2回接種の方がよいと思います。

接種の時期

 インフルエンザワクチンは接種後2週目から抗体が上昇し始め、1ヵ月でピークに達し、その効果は5ヵ月持続します。2回接種の場合は、2回目を4週後に追加接種した場合が最も抗体の上がりが良いので、2回目の接種は4週間後に受けるのがよいでしょう接種間隔は2〜4週とされていますが)。

 ここ通年、インフルエンザは3〜4月ごろまでだらだらと流行を引きずります。
 そのため、当クリニックは今季は2回接種の場合は10月中旬〜11月上旬に1回目、11月中旬〜12月上旬に2回目を、1回接種の場合は11月〜12月上旬に接種をお勧めいたします。

 他院がかかりつけのお子さまは、かかりつけの医院で接種を受けてください。当クリニックは一貫して、お子さまの体調をよくご存じの、かかりつけ医でのワクチン接種を強く推奨してきました。当クリニックもまた、いつも受診してくださるかかりつけの患者さんのために、現在ワクチン接種の準備を進めているところです。

●接種の年齢

 生後0〜6ヵ月まではワクチンを接種しても抗体の上がりが悪く、また母親の抗体の影響でインフルエンザにかかっても軽くすむ子が多いといわれており、ワクチン接種の対象から外れています(ワクチンは接種できません

 生後6〜12ヵ月のお子さまについては、ようやくワクチン接種量が増えた(0.25ml)ので、効果が期待できるようになりました。しかし、乳児ではプライミングの問題(インフルエンザワクチンの効果参照)もあり、効果は限定的と思われます。

 乳児のインフルエンザワクチン接種を考える場合は、まず父親、母親をはじめ、周囲の大人や年長児が積極的にワクチンを受けることが大切です。周囲の人間がワクチンを受けて、赤ちゃんへのインフルエンザ感染の防波堤になることが、赤ちゃん自身にインフルエンザワクチンを接種することより効果的だと思います。当クリニックは、乳児のご両親のインフルエンザワクチン接種を強くお勧めしています。その上で、赤ちゃんへのインフルエンザワクチン接種を検討されるとよいでしょう。

 1歳以上のお子さまについては、当クリニックではワクチン接種をお勧めしています。

「乳幼児(6歳未満)に対するインフルエンザワクチン接種について−日本小児科学会見解−」
平成12-14年度厚生科学研究費補助金(新興・再興感染症事業)「乳幼児に対するインフルエンザワクチンの効果に関する研究(主任研究者 神谷 齊・加地正郎)」の報告では、
 1) 1歳未満児については対象数が少なく、有効性を示す確証は認められなかった。
 2) 1歳以上6歳未満児については、発熱を指標とした有効率は20-30%となり、接種の意義は認められた。
 →(小児科学会の見解)わが国では、1歳以上6歳未満の乳児については、インフルエンザによる合併症のリスクを鑑み、有効率20-30%であることを説明し たうえで任意接種としてワクチン接種を推奨することが現段階で適切な方向である。

→ただし、この研究の後、2011年からワクチン接種量は上記のように、増量されています。

インフルエンザワクチンの効果

 インフルエンザワクチンは、インフルエンザウイルスのとげ(H鎖)を含む不活化ワクチンです。接種することにより、体内の血液中にインフルエンザウイルスへの迎撃用ミサイル=IgG抗体が作られます。
 
しかし、空気とともに体の中に進入してくるインフルエンザウイルスは、鼻や肺への通路(気管支)に直接もぐりこみ、増殖するため(インフルエンザの増殖参照)、現在のワクチンはインフルエンザウイルスの感染そのものを抑えこむ力は弱いと考えられています(ワクチンで誘導されるミサイル=IgG抗体はこれらの粘膜面には存在していないため)。

 インフルエンザワクチンは、増殖したインフルエンザウイルスが全身に広がる時に、ミサイルのようにウイルスを破壊=不活化することで発病を抑えたり、症状を軽くしたりします。しかし、もしも一度もインフルエンザウイルスの進入を受けていないヒトの場合は、インフルエンザに対する備えが不十分で、ワクチンの誘導するミサイルもうまく作動しません(初めてのインフルエンザへの備えをプライミングといいます)。

 そのため、インフルエンザウイルスの跳梁を許し、結果として発病してしまいます(これが、一度もインフルエンザにかかったことのない乳児での、ワクチンの効果が弱い理由の一つと考えられています)。

 一方、過去にインフルエンザにかかったことのある人は、インフルエンザウイルスを免疫担当細胞が記憶しています。このため、ワクチンが接種されると十分に防御レベルが高まります。これをワクチンのブースター効果と呼び、このときはワクチンの効果が高まります。
 
 また、現在のインフルエンザワクチンは、A型インフルエンザには十分な抗体の上昇が得られますが、B型インフルエンザに対する抗体の産生はあまり良くないようです。実際、2005年のB型インフルエンザの大流行の時は、実感としてあまりワクチンは有効ではありませんでした。

 また、A型インフルエンザウイルスはとげ(H鎖)の組成を細かく変えて(ドリフト=連続変異)、ヒトの防御システムから逃れようとします。H3N2(香港型)でもシドニー型とパナマ型ではインフルエンザワクチンの効果に大きな違いが出てきます。この細かい変異に対応できたかどうかで、その年のワクチンの効果が決まってきます。

 赤ちゃんで問題になる、インフルエンザ脳症に関しては、1999年の217人の脳症患者全員がワクチン未接種であったため、ワクチン接種者に脳症は起こらないといわれてきました。しかし、2000年の107人の脳症患者のうち、3人はワクチンを接種しており、その中から死亡者も出ています。上記の小児科学会の見解も以下の通りです。

「インフルエンザ脳症の発症因子の解明と治療および予防方法の確立に関する研究」(主任研究者:森島恒雄)の成績(中間報告)は、脳症患者とインフルエンザ罹患者の間でワクチン接種率に有意な差はなかったとしており、この段階ではインフルエンザ脳症の阻止という点でのインフルエンザワクチンの有効性は低いと考えられます。
 しかし、インフルエンザ脳症はインフルエンザ罹患者に発症する疾患であるところから、インフルエンザ罹患の可能性を減じ、その結果として脳症発症の可能性のリスクを減じる可能性はあり、ワクチン接種の意義はあるものと考えられる、と結ばれています。

 しかし、脳症のほとんどがA型であること(ワクチンの効果が期待できる)、インフルエンザ発病から脳症をおこすまで1.4日ほどしかないこと(抗インフルエンザウイルス薬による治療が間に合わない)などを考えると、インフルエンザワクチンの接種によりインフルエンザにかかる患者数を減らせば脳症も少なくなるはずです。インフルエンザにかからなければ、インフルエンザ脳症は起こりません。シーズン前に、お子さまにワクチン接種を済ませることを当クリニックではお勧めいたします。

●インフルエンザワクチンの作り方

インフルエンザHAワクチンの作り方の紹介です。

今季はA/ソ連型→A/新型になっています。 インフルエンザHAワクチンができるまで(アステラス製薬株式会社)より

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