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賃貸マンションを考える
1.安定した経営のすすめ
 賃貸経営するうえで空き室不安はオーナーにとって最も大きいもののひとつ。
よくありがちなのがコストダウンで空室のリスクを少なくすることではなかろうか。
その結果かどうか、賃貸住宅は良質なものが少ない市場となっている。
現在でも良質な住宅を希望する入居者は分譲マンションへとながれる構図があるが、
選ぶにしても賃貸住宅の選択肢が少ないのが現状である。

よく考えてみてほしい。住宅を引き継ぐ子供が減り、住宅が余剰傾向となれば、
分譲マンションも賃貸マンションもかわらず市場に並ぶのである。
魅力のない住宅は、賃料がちょっと安いだけでは新築後の空室不安からは開放されることはなさそうである。
そこで、安定した賃貸経営のための新たな指標が必要となる。以下に項目をあげてみる。
  • 住まい手のニーズにあった住宅になっているか
  • 防犯性能は確保されているか
  • ユニバーサルデザインになっているか
  • 建築として他にない魅力が創り込まれているか
  • いつまでも地域で愛されるデザインとなっているか
  • 高耐久建築になっているか
  • 例えば20年後、間取り変更ができる構造になっているか(SI建築)
  • 設備配管など容易に改修変更可能か
  • 修繕計画は整備されているか
2、賃貸マンションの戦略
前項と若干重複するが、競争力の高い良い賃貸マンションとはどういうものか、オーナーと入居者の条件をそれぞれあげてみる。

オーナーにとっての条件
  • 20年以降も空室が少ない
  • メンテナンス費用などがあまりかからない
  • 修繕計画など将来対応ができている
  • 防災性能が高い
  • 防犯性能が高い
  • 地域環境に貢献するステータスがある
  • 高耐久でいつまでも使用できる
  • 安定した賃貸経営ができる
入居者にとっての条件
  • 予算内の賃料である
  • 交通機関からの利便性
  • 必要な広さがある
  • 快適な住環境である
  • 必要な機能がついている
  • 防災性能が高い
  • 防犯性能が高い
  • 便利なサービスがついている
  • 住戸としての割安感がある
  • 住まう上でのステータスがある
  • 駐車場駐輪場など、必要な施設がある
  • 収納スペースが十分ある
  • 高齢者でも入居できる
これらすべてを満足すればよいわけであるが、簡単ではない。それには手法が必要である。
そこで必要なのが以下の手法である。

賃貸マンション計画の手法
  1.SI建築の確立
  2.長期事業計画の策定
  3.公的制度の利用
  4.街並みの景観設計の実施

これらの手法を利用することでかなりの条件を満足することが可能になってくる。


1.SI建築の確立

●SI建築とはスケルトンとインフィルの組み合わせで建築を構成するという考え方に基づいて造られる建築のことである。
スケルトンとは柱や梁、スラブなど文字通り骨格の部分をさし、この部分については、100年以上変更の必要のない形態と耐久性と、配管などを交換できるスペースが求められる。
配管の自在性のためには小梁がスラブから出ないことが望ましく、遮音性の高いフラットスラブが必要となる。
床下の配管スペースも従来よりも大きく確保する必要があるため、階高を大きめに確保する必要がある。
必要な性能のポイントをまとめると

 ・耐震性
 ・耐久性
 ・防音・遮音性
 ・配管等の自在性
 ・配管等の更新性
となる。

●インフィルとは建物の設備を含む内装部分をさし、共用部と専用部がある。
住戸の内部は専用部となり、この方式の場合配管等の制約がないので、内部の間仕切りやキッチンお風呂など自由にプランニングでき、好きなデザインでつくることができるのが在来型と違うところである。そして完成後でも同様に各戸ごとに作り変えることができる。また、共用部インフィルは公共性を意識した管理者の意思でデザインされることが望ましい。
インフィルの特徴をまとめると、

 ・間取りの自在性
 ・更新の自由
 ・多様性への対応(ピアノ、ペット、工房)
となり、いつでも多様な要望に応える可能性を有し続けることがわかると思う。
そして、インフィル部分の新陳代謝を行いながらいつまでも魅力的な建築であり続けることが可能となる。

こうすることで機能的な面での100年建築は見えてくる。そして次に求められるのが外観デザインである。
外観をつくるのは基本的にはスケルトンだが、ディティールをつくりこんでいくのが共用部インフィルである。
この2つを建築として組み合わせたデザインが在来型との違いである。
100年以上愛されるデザインとして、デザインの良し悪しは、建築家の腕の見せ所ということになる。

以下次回記載予定

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