ラオス 山からだより 11号           2009年4月 

   

 山からだより10号以降、9か月もご無沙汰してしまいました。通信の発行が大変に遅れて申し訳ございません。G村の図書館は開館以来、丸2年が過ぎ、3年目に入っています。水曜、金曜の週2日の開館日には休むことなく開いており、多くの子どもたちで賑わっています。図書の貸し出しの登録者は、G村だけでなく、19村の人たちが登録しており、少しずつ周辺の地域にも、私たちの「たろうの図書館」の存在が知られるようになってきているようです。図書館が魅力ある場所であり続けるためには、「人」が大切です。今年も、図書館の活動を支える村の図書館員を応援して、より魅力ある、山の村ならではの図書館となることを一緒に目指したいと思います。

これからもよろしくお願いします。

ラオスの山の村に、夢のような小さい「図書館」が出来てから2年が過ぎました。

ここまで順調に活動を続けて来られたのは、安井さんの大きい力と、「図書館」のスタッフ、村の方々、「山の子ども文庫」会員の方々のご支援の力の賜物です。ありがとうございます。

 安井さんから村の様子をお聞きしていると、私も現地に行って何かできることがないだろうかと思うのですが、なにしろゲオバトウ村は、今の日本では考えられないような不便な山奥なのです。ヴィエンチャンまではバンコク経由で8時間位ですからそれ程ではないのですが、国内の交通手段が飛行機かバスしかありません。その飛行機も一日一便、それも途中までです。そこからバスで3時間半、それから更に車で小1時間かかります。体力がない身には堪えます。私はいつも安井さんの体調を心配しながらも、小柄な安井さんの体力と行動力に驚いています。そして何もかも安井さんにまかせっきりにしています。

幸い村での「図書館」の仕事は、二人の女性スタッフが頑張ってくれているようです。

 まだ具体的にはなっていないのですが、村の方からの要望もあり、新しい建物の建設も考えています。安井さんはこれまで長年、村のお年寄りから民話の収録も続けてきています。それを活かすためにも「図書館」とつながったちょっとした「ミュージアム」あるいは「コミュニティセンター」のような建物であれば良いのではないかと思っています。

 安井さんが「地球アゴラ」でインタビューに答えて言っていたこと=村の子どもたちにとって、「図書館は新しい世界への窓」=であり続けるために、第一に安井さんが健康でいてくれることを願っています。

安井さんは昨年秋にラオスの「カボーン・ラオ」人形劇団員のノイさんという力強い伴侶を得られました。勿論ノイさんは安井さんをずっと支えて下さることと思いますが、安井さんが長く長く活動を続けていけるように、安井さんの負担が少しでも軽くなるように、どなたか安井さんと一緒に現地に行って、安井さんの手助けをして下さる方が現れてくれないものだろうかと、私はひそかに願っています。

 そのためにも、「図書館」のことを多くの方々に知ってもらうことが大事なのだと改めて思っています。

昨年は、8月に東京で安井さんの写真展がありました。11月にはNHK−BS1「地球アゴラ」で安井さんのこれまでの活動と「図書館」のことが紹介されました。

できれば、今年中には仙台でも活動を紹介できる機会を持ちたいと、いま場所をさがしているところです。決まりましたらまたお知らせしますので、どうぞよろしくお願い致します。       (武内桂子)


図書館利用者数

年月

来館者数

子ども

大人

老人

本を借りた人

2008/1

552

286

258

8

245

307

47

2008/2

417

233

170

14

159

258

51

2008/3

 428

230

188

10

188

240

60

2008/4

 553

301

238

14

242

311

63

2008/5

 655

347

288

20

292

363

 52

2008/6

 294

206

67

21

149

145

5

2008/7

 386

258

125

3

184

202

16

2008/8

404

214

172

18

175

229

15

2008/9

 423

231

156

36

231

192

22

2008/10

 587

340

228

19

279

308

 56

2008/11

 350

195

150

5

149

201

 59

2008/12

 261

131

105

25

132

129

 30

Total(2008)

5310

2972

2145

193

2425

2885

476

2009/1

 416

259

106

51

165

251

 56

2009/2

 670

520

127

23

324

346

62

 図書館に来た人は、石を箱に入れることになっており、その石の数を数えることで、図書館利用者数を記録しているが、実際には石を入れない人がいたり、小さい子が、石を箱から出しておはじきにして遊んでしまったりと、あまり正確とは言い難いのだが、ある程度の目安にはなっている。小さい子が、「デックノーイ(子ども)というラオス語が読めないこともあり、最近、箱に絵をつけた。

 前年度よりは、統計の数としては減っている。やはり物珍しさ、新鮮さが薄れたためだろう。他の村からの交通手段もない(徒歩かバイク)山の村の図書館であるから、利用者数にはある程度の限りがあるとは思うが、本の補充、活動の活性化が常になされていないと、子どもたちの興味は薄れてくる。今年度も、より魅力的な場所作り、活発な利用を目指して、頑張っていきたい。

 なお、村の感覚では、子どもは小学生以下、大人は中学生以上、結婚して数人子どもを持った人は、すでに老人に含まれるのである。






新しい図書館員の紹介

 昨年11月に、図書館建設の時から村の女性たちのまとめ役となってくれ、また図書館スタッフとしても働いてくれていたニア・ノーポーが、家庭の事情でやめました。彼女は6人の母でもあり、村の女性同盟の長もずっと務めてきました。モンの人々は農繁期など、畑から家に帰らない日が何日も続くほど、作業が大変です。そんな農作業と家事と、そして図書館の仕事を両立させてきたのは、どんなに大変だったかと思います。ニア・ノーポーは、肝っ玉母さんのようなキャラクターで、頼もしい存在でした。本当にこれまでありがとうございました。

















 新しく入ったのは、マイワァ・リーという、3人の子を持つおかあさんです。彼女に声をかけたのは、とても本が好きだからです。これまでも、一生懸命本を読んでいる姿を何度か目にしていて、適任かもしれないと思っていたのです。絵も好きで、家の壁には、自分が描いた絵が貼ってあります。12月から働くことになったのですが、折よく12月半ば、SVA(シャンティ国際ボランティア会)が主催する図書館ワークショップがシェンクワン県の中心地で開かれ、G村の図書館スタッフも特別に参加させてもらうことにしました。ツィア(オープン以来ずっと働いている)とマイワァ以外は、SVAが図書箱を配布する学校の先生たちです。先生たちに交じって、村の普通の女性である彼女たちが学んでいるのは、少し誇らしくも思えました。特に、ツィアは、もう2年間実際に仕事をしているので、図書活動については先生たちよりもよくわかっているくらいでした。この3月には、たくさん新しい本を補充したのですが、まず、ツィアとマイワァが競い合うように借りていくのです。その後、マイワァの家を訪ねたら、畑仕事から帰ってきたばかりで、まだ作業着で帽子もかぶったままで、借りてきた本を、声を出して読んでいました。小柄な彼女の隣に、モンの人にしては珍しく大柄な旦那が座り、反対側には、小1の娘が座って、お話を聞いていました。とってもほほえましいすてきな光景だったのです。

図書館の仕事は、人が支えるものです。やっぱり、家事、農作業との両立はなかなか大変でしょうけれど、ぜひがんばってほしい!と願っているのです。


NHK「地球アゴラ」に紹介されました

 2008年11月16日(日)に放映された、NHK・BS1の番組、「地球アゴラ」で、村の図書館の活動の様子が、放送されました。(再放送は、NHK総合で、12月10日) 取材は、10月半ばに1週間ほど、取材班が、村に入りました。

 日本人のディレクター、カメラマン、ラオス人のガイド、外務省の役人、そして安井が、爺さんの家に雑魚寝させてもらい、山小屋での合宿みたいな状況での取材でしたが、ディレクターとカメラマンのお人柄がとても穏やかなせいか、とても和やかな雰囲気での取材でした。私自身は、取材される側に回ったことは、あまりないことなので、自分では「顔がひきつっているような感じ」がしましたけれど。

 子どもたちが絵本を一生懸命見る様子など、取材班自身が「こんなに、子どもたちが熱心に見るとは思わなかった」とびっくりしたほどでした。子どもたちは、カメラで撮られていようがどうであろうが、そんなことには構わず、本が見たい!といういつもの姿だったのです。

 実際の放送では、短く編集されていましたが、でも、村の様子も、図書館の様子も、とてもわかりやすく紹介され、さすがプロだなぁと思いました。

「写真では見ていたけれど、映像で見るとよくわかる」と多くの方から言われ、映像の力を感じました。

11月16日の放送日には、安井は、ヴィエンチャンのラオプラザホテルというホテルの部屋で、パソコンをつないで、スカイプによる生出演でした。ホテルからというのは、安井の住んでいる家では、ダイヤル回線でパソコンをつないでいるので、それではダメなので、NHK側がホテルを手配してくれていたのでした。

一方では、電話も水道もなく、水汲みから薪とりから、全部自分の身体を使わないと生活できない環境、一方では、瞬時にして世界とつながって、パソコンでテレビ生出演ができてしまうこの環境・・・・ラオスでも、その環境の差ができあがってきていることも、なんだかびっくりしたことでした。
 「図書館は新しい世界への窓」とは、私がインタビューの答えて言った言葉ですが、その通りだと思います。でも、もし同じ窓といえども、村にインターネットがいきなり入ればいいか?というと、そうは思わないのです。子どもたちにとっては、まず、自分でページをめくる、お話を読んでもらう、自分で文字を読んでいく・・・そうして世界を広げていく・・・まず、そこから入ることが、子どもたちの中に、「世界を受け入れる下地」を作るように思います。その下地ができていないと、どこかで歯車が狂ってしまう気がするのです。


少年たちのねずみとりについて行って

土曜日の夕方、「ねずみとりのわなを仕掛けに行くんだよ。一緒に行こうよ」という3人の少年たち、ケェ、メドン、クーミエンについて、山へと向かった。もうすぐ暗くなり始める。人々は、山の畑から家路へ向かう時間である。私たちは逆行している。

「暗くなったらどうしよう。私は、モンの子たちみたいに、暗い中、山道なんか歩けない」と思いつつ、ついついついて行ってしまった。(私は大人なのに、なんて分別のないこと!と思いつつ・・・)

「どこまで行くのよ」「あの、山のもーっと向こうの向こう」「えー!それなら行かない」「うそだよぉ。すぐそこだよぉ」(と言ってもかなり遠くの山の斜面まで行ったのだが・・・)

いつのまにか、図書館に入っている日本の絵本、「三枚のお札」の話になる。小僧さんが山に花をつみにいくと、暗くなって迷子になってしまいました。小さな家があって泊めてもらいました。夜中にふと目が覚めると、山姥が、おしりをベロンベロンと・・・とメドンとケェが楽しそうに話しながら行く。今の日本の子どもたちには、これはただのお話でしかないだろうけれど、実際に暮れかかろうとするこの山道を歩いていると、お話と同じシチュエーションを、実感をもって、捉えられるのである。道に迷って、山姥が出てきたって、ちっとも不思議じゃない・・・・お話と実際の生活が重なる。

 予想はしていたが…下草を焼いた後の山の斜面を登るのは、やぶこぎ・・である。しかも焼け跡だから、真っ黒になる。もう、ジーパンも手も真っ黒。少しずつ暗くなってきている。特に、木々の中に入ると暗い。私も必死に目をこらし、必死に歩くにつれ、段々、自分の危険意識というか、自分の中のどこかにある、自分のことを自分で守る力・・みたいのが少しだけ芽生えてくるのを感じた。日々、こんな生活しているのだから、モンの子どもたちは強くなる。そして、生命感にあふれているはずである。ある意味では、命をかけて生活しているんだから。日本人に今、うんと欠けているのはそれなのだろう・・・と思う。日々の生活の中に、それがない。(まぁ、異常な状況の危険さはあるが・・・)自然の中で生き抜く場面がないのである。山道でも、たいていが、道しるべのある、決められた道を歩く。そうじゃない、こんな道なき道を歩くことがない。ねずみとりの少年たちについて、木の枝をくぐって歩くうちに、少しだけ、そんな感覚が戻ってきて、私は元気になってくる気がしたのだ。それにしても、少年たちは私のことを気にしてくれてはいるんだけど、どんどんすたすたいってしまう。最後は、カメラもヴィデオもしまいこんで、必死について行く。最後の斜面は、彼らは道をごろごろと転げ落ち、私はお尻で滑り落ちて、下のまともな道について、ワァ〜助かったぁ・・・・・と、真っ暗になるぎりぎり、私たちは走って村まで戻ったのである。(安井)