ラオス 山からだより 13号                2010年4月 








 2010年となりました。新年のごあいさつも出さずに失礼してしまいましたが、どうぞ今年もよろしくお願いいたします。私たち、ラオス山の子ども文庫基金が応援する、G村の「たろうの図書館」も丸3年たち、4年目に入ります。子どもたちは、あっという間に大きくなるので、常連だった悪戯坊主がいつのまにか中学生になって、あまり顔を見せなくなった子もいるし、生まれたばかりの赤ちゃんだった子が、いつのまにか絵本を見に来ていたり、(上の写真の子もそうです。図書館の建物を建てている頃に生まれた子)まったく、月日のたつのは早いものです。

子どもはあっという間に、どんどん大人になっていってしまう。大人になってからの時間は長いけど、子どもである時間は、本当にあっという間に過ぎてしまう。でも、その子どもの時間を、どう生きるか!が、本当にその人の人生の基礎を作ると思います。

まぁ、私たちは「他人」ですから、子ども自身の現実の家庭や環境まで踏み込むわけにはいきません。関われることには限りがあります。でも、子どもたちは現実だけの世界に生きているわけではありません。いや、子どもは現実だけに生きてはいけないんじゃないか、と最近思うのです。その現実とは離れた環境づくりに私たちは関われると思っています。それが、図書館で、子どもたちが本やお話と出会う環境づくりをすることです。

どこの国の子であれ、田舎の子であれ、都会の子であれ、その子どもたちが実際に暮らしている現実の環境は、限られているものです。G 村の子は、海も雪も知らないし、都会の暮らしも知らない。日本の都会の子は、森の中の空気を知らないし、山を駆け回る感覚や、夜の闇を知らない。親の愛情に包まれている子もいるし、愛情に飢えている子もいる。ただ、どんな子どもであっても、実際の世界を離れて経験でき、どきどきしたりワクワクしたり、現実とは違う、楽しい時間を過ごせるのが、本であり、お話の世界であると思うのです。特に小さい時ほど、そのお話の世界が子どもの心に与える影響は本当に大きい。そして、いろんな世界に会えば会うほど、子どもたちの心の世界は広くなり、人生経験が豊かになる…と言っていいのではないでしょうか? それは、現実に子どもたちが置かれた環境と同じくらいの大切さで、子どもたちの心の基礎を作ることになるのではないか…図書館で、一心に絵本に見入り、お話に聞き入る子どもたちを見ると、そのようなことを感じたりするのです。

リーのこと

昨年9月から、リーが図書館の新しいスタッフになった。リーは、2001年に太郎さんがG 村に撮影班の一人として滞在していた時、撮影班のあとを、金魚のフンみたいにくっついていた男の子だった。太郎さんは滞在中、リーのことを「よしお、よしお」と呼び、可愛がっていた。リーは大きくなると他県の高校に行き、しばらく村を離れていたが、昨年、高校を中退して村に戻ってきた。家の農作業を手伝っていたが、昨年9月、図書館で働きたいと言ってきた。太郎さんの小さな子分みたいだったリーが、自分から、「たろうの図書館で働きたい」と言いだしてきたのは、なんだか、巣立った小鳥が帰ってきてくれたような、来るべき人が来てくれたような、そんな気がして、とてもとてもうれしかったのだった。



現在、開館当初から働いてくれているツィアをはじめ、マイワァ、そしてリーの3人が水木金と週3日働いている。これまで女性のスタッフだけであったが、やはりお兄さんの存在は頼もしい。本人もまだ少年みたいで、おっちょこちょいなリーであるが、子どもたちの真っ黒な手を洗ってやったり、絵本を読んでやったり・・・気がいいせいか、彼にはあれこれ言いやすく、二人のお姉さんたちにもあれこれ指図されているが、嫌な顔もせず、動いている。図書館のお兄さんとして、ずっと頑張ってほしい。

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図書館報告 2010年2月                      安井清子

 2月中旬、1週間ほどG 村を訪ねた。寒い。私の日記には、初日―キリ、寒い。2日目、霧、もっと寒い。3日目、霧、またまた寒い…と書き込まれた。本当に寒かった。

 というわけで、風の通り道にある図書館も、これまた寒かった。毎日、図書館の外に作ってあるかまどに火を入れた。このかまどからの煙がオンドルの床を温める構造になっているのだが、実際には床が暖まるには時間がかかり、みんな、かまどの火に直接手をかざしては暖まり、かまどの脇に座り込んで絵本を読んだ。寒いけれど、火にあたりながらお話するのは楽しい。しかし、この寒い時期、もう少し、図書館内を暖める方法を考えなくてはいけないかな?と思うのだが、でも、一番寒がっているのは私であり、モンの大人たちも子どもたちも、私よりずっと強いことは確かである。子どもたちは、毛の帽子をかぶりマフラーを巻いていても、足は裸足だったり…薄手の上着のチャックが壊れていて、お腹が丸出しの子もいる。私などは、5枚も重ね着をしているのに。

 毎回、行くたびに「新しい本持ってきた?」と楽しみに待っている子どもたちがいる。ラオスの出版事情も、以前に比べればずっとよくはなっているが、まだまだしょっちゅう新しい絵本が出るという状況ではなし、私の方も準備するのを忘れたりするのであるが、今回は、「絶対、これはみんな好きだぞ」という紙芝居を準備して行った。「花ぬのむすめ」という中国の苗族のお話に、尾崎曜子さんが絵をつけた紙芝居で、ご本人から頂いたものだった。もう在庫がないとのことで、カラーコピーを頂いた。中国の苗族とモン族は、つながっている民族である。お話もモンの子どもたちには、なじみのあるものであろう。私は、日本語から再びモン語に訳し返し、訳を裏に張り付けて、図書館でさっそく演じてみたところ、やっぱり、「もう1回読んで」「また聞きたい」と、子どもたちが言う。やはり、民族の話はすんなりと受け取ることができ、心の奥まで入っていくものらしい。

s099この紙芝居を持ち込んだのは、子どもたちが好きだろう…という予想も立っていたが、絵好きの図書館員、マイワァを触発することができるのでは?と思ったこともある。マイワァは、絵を描くのが好きで、なかなか上手なのである。絵本をいきなり作るのは難しいが、紙芝居の形態の方が作りやすいかもしれない。苗族の話で、モンとちかい民族衣装が描かれた紙芝居を見て、「自分もモンのお話を紙芝居に描きたいな」と思ってくれるといいなぁ…とひそかに期待しているのである。






2009年〜2010年3月 日本での活動  
   
(全部の活動は紹介できませんでした。すみません)

仙台 広瀬小学校にてお話                                                   2009年6月18日

5年生にお話。ラオス南部の小学校建設のために、同校の小学生たちが行ったバザーでの収益金を、ウン100万も寄付したという行動力を持った小学校、小学生たちに脱帽。普通の大人などよりも、ずっとラオスのことに詳しい子どもたちにびっくり。G 村の子どもたちが水牛に乗っているヴィデオが一番人気であった。ヴィデオを通じてではあるが、山の子どもたちに出会ってくれたことが嬉しかった。


ギャラリーカフェ亀福 で写真展  2009年6月26日〜30日

 東京、国立にある、とても心が和む台湾茶の喫茶店、「亀福」にて、G 村の子どもたち、生活を撮った写真パネル(2008年に新宿のコニカ・ミノルタプラザで行った写真展「子どもの時間 ラオス 山の村に生きる」で使ったもの)を展示した。おいしい台湾茶とハープの音が流れ、心地よいギャラリーでの展示は、とても好評。写真だけでなく、ツィーばあちゃんの最期の刺繍の作品を飾ることもでき、モンの山の世界のイメージを膨らませることができたように思う。




私設ゆりがおか児童図書館にて講演            2009年10月6日

 ゆりがおか児童図書館とは、神奈川県にある私設の児童図書館で、長年に渡って児童図書活動を継続されてきた人々の思いと、本やお話に夢を広げた子どもたちのわくわくが蓄積されている場所、私たちの目標にしたい場所です。山の村の図書館のことをお話させていただいた。

仙台にて写真展・講演                                              2009年10月9日〜14日

仙台の東北工業大学一番町ロビーにて、写真展示と講演を行う。同大学と、仙台の支援者の方々のあたたかいご協力を得て、とても素敵な展示となった。通りすがりに入って下さった方も多い。「自分の子どもの頃の姿を見るようだ」と涙を流しながら見てくださった方など、印象深かった。265名の入場者。

 他、みどりの森幼稚園にて、園児に、ラオスの山の子どものヴィデオを見せお話をすると、さっそく園児が水くみを真似るなど、子どもたちの心にも通じるものがあるのだな…と感じる。同幼稚園、宮城学院女子大学の主催で、メディアテークにても講演。

金沢文庫芸術祭 街角アートギャラリーに参加                 2009年10月16日〜18日

 横浜市金沢文庫で毎年行われる芸術祭に参加、ASABAアートギャラリーにて、写真展示と、スライド・ヴィデオトークを行う。

静岡県立吉原高校国際科にて講演                                         2009年10月19日

文化祭にてモンの刺繍の販売をして、収益の一部をラオスの村に寄付して下さった高校生にお話。

東邦大医学部看護学科にて、写真展示・講演                      2009年10月31日〜11月1日

 医学部看護学科の医療の匂いがする部屋に、写真を飾ってもらう…写真パネルにとっても、初めての経験であった。「生きる」ということに深くかかわっている…という点で共通点を感じた。


明木図書館にて写真展                                              2010年3月10日〜4月10日

 山口県萩市の明木図書館は、日本で、村立としては一番最初にできた図書館。小さいが、子どもの本のコーナーやお話スペースもあり、学校帰りの子どもたちが走りこんでくる、とてもあたたかい図書館。その図書館の小さな壁を埋めて、「図書館に集う ラオス・モンの子どもたち」として写真展示を行っている。明木小学校でも全学年、約60名の子どもたちにお話をした。1年生から、よく聞いてくれる。小さくても、しっかり生きている同年代のラオスの子どもたちの姿に、子どもたちは心を動かされるようである。

萩市内の光塩中・高等学校でも講演


G 村をモデルにした絵本が出版されました

 2009年10月に、「ラーシアのみずくみ」(文:安井清子、絵:砂山恵美子 こぐま社)という絵本が出版されました。これは、以前に安井がモンの村で見た光景…3歳の男の子がおねえちゃんにくっついて、一生懸命に水を入れた重いタンクを運ぼうとしていた光景からヒントを得て、作った話です。モデルになった3歳の男の子ラーシアは、G 村の子ではありませんが、このお話を絵にするにあたって、実際に砂山さんが訪れモデルにしたのは、G 村の風景で、ラーシアのモデルになったのは、トゥージェです。トゥージェは私がいつも泊めてもらう家の男の子。図書館の常連です。

 子どもたちは、小さいころから、なんでもやろうとします。タンクを持ったり、ほとんど身体の大きさが変わらない弟や妹をおんぶしたり、くわをふるったり…それは、その子が、周りの大人たちや、お兄ちゃんお姉ちゃんを見て、また自分もやろうとすることなのです。小さい子どもたちは見よう見まねで遊び半分、でも、少しずつ挑戦をしながら、人の役に立つ喜びを感じていくようです。なんでも自分でやること、経験すること…それは、子どもたちが育っていく上で、なんて大切なことなのだろうと、村の子どもたちを見て、思います。そんなことを絵本で描いてみたかったのです。この絵本は、日本図書館協会と、学校図書館協議会の推薦となりました。

機会がありましたら、ぜひ読んでみてください。

計画変更についてのお詫び

 昨年9月の12号で、「国際ソロプチミスト東京‐葵」のみなさまから、建物増設のためのご援助を頂き、集会所を作るということをご報告しました。その時には、今頃までに完成する予定でいたのですが、その計画がまだ未着工で、延期または中止になるかもしれません。理由は、村の村長、副村長が代わることになり、まだ新村長が決まっていないことや、長老が相次いで亡くなり、村のまとめ役が不在であり、今、村がまとまって、建設に対応できる状況ではないことです。今後どうするか?は、新しい村長たちと新たに話し合いをしていかなくてはいけませんが、4月以降は雨季となり、農繁期でしばらく建設作業は難しいこともあり、やるとしても来年以降に持ち越すことになりました。もう一度最初から、必要か否か?というところから話し合いをしていきたいと思います。

 ご援助下さいました「国際ソロプチミスト東京-葵」の皆さまには、大変なご迷惑をかけることとなり、まことに申し訳ございませんでした。心よりお詫び申し上げます。今後の経過につきましては、追ってご報告させていただきます。